Phase219 FWパニック・CONCLUSION-Take19 of intro-
語り継ぐ夢と砕け散る幻 〜I don't obey〜
「…苦労の末にやっと捕まえたぜ。」
「さあ、よく見てみなさい!!」
「これがあなたの運命を狂わせた、“真の元凶”よ!!!」
―――パキャアァァンッ!!!
「っ!!!」
かつて“第1次シードピアクライシス”を戦い抜いた、ブレード、椿、マリアの3人が捕縛した、“まどかの運命を狂わせた元凶”。
それは、白い姿をした1匹の“動物の皮をかぶった悪魔”だった…!
「―――キュゥべぇ!?」
まどかも目を見開いた。
自分と契約を交わしたのを機に姿を消していたはずのキュゥべぇが、再び自分の目の前に現れたのだ。
「こいつがインキュベーターってやつか…!」
「見た目は可愛らしいけど…。」
ちなみに、本来だったらキュゥべぇの姿は魔法少女以外の面々には見えないはずなのだが、なぜか今回に限っては周りにいたアキッキーたち全員に見えていた。
「油断したよ…。思いも寄らないところから邪魔が入るなんてね。」
この流れは予想していなかったキュゥべぇ。
しかし、うろたえる様子はまだなさそうだ。
「…邪魔してんのはお前だろ。年端もいかねぇ女の子たちを言葉巧みに乗せやがって!」
「そうよ!あなたのせいで、プラズマ界のあらゆる女の子たちが絶望に打ちひしがれたんだから!」
「しかもこの期に及んでまた魔法使いたちを集めようって言うの!?いいかげんにしてよ!」
まどかたちを甘い誘惑に落とし込もうとしていた行為にブレードたちは怒り心頭になっていた。
「魔法の力を手にしようとしたのは彼女たちの意思だよ。まどかだって最終的には自分の意思でここまで来たんだよ。ボクは彼女たちの行く道の選択肢を与えただけ。言ってみれば、磁石の針も同然なんだから。」
「ふざけてんのか!?てめぇのような薄汚ぇ野郎にどうこう言われる筋合いがどこにあるってんだよ!!!」
食い下がるキュゥべぇに一部の面々が逆上し始めた。
しかし、彼はそんな面々の気持ちに怯むどころか……。
キミたちにも何人か経験はあるんじゃないの?
自分の大好きな人や、仲のいい人たちが目の前で死んでしまったりしたことで、自分の無力さを呪ったり嘆いたりしたこと。
或いは、親しい人がそういう経験をして悲しみにくれるのを目撃して、何もできない自分を不甲斐なく思ったりしたことが。
そういう人たちが行き着くのって、結局はその人の敵討ちとかなんじゃないの?
そうなったら、最終的には力が欲しいと願うのは当たり前。
ボクの役目はそういう人たちの手助けに過ぎないんだ。
「それを簡単に見下すって言うのは、過小評価もいいところなんじゃないの?」
ああいえばこう言う。
キュゥべぇの言葉に反論すらも出てこない一同。
実際、彼の言葉どおりの出来事を痛感した面々も幾人かいるため、図星を指され、古傷をえぐられたともとれる。
このインキュベーター、どこまで愚劣なんだろうか……。
「………ねえみんな、プラズマ界が平和になったら何をしたい?」
『えっ…?』
「ど、どうしたですか?一体……。」
アキッキーが沈黙を破ったと思いきや、あまりにも突拍子な発言に全員がポカンとした。
ボクは宇宙を旅したい。
そして宇宙の人々にスーパー戦隊の伝説をつないでいこうと思うんだ。
…これまで何度も亜空軍たちと戦っている中で思ったんだ。
この目で、戦隊の歴史の続きを見ていきたい…!
……そして、ボクの言葉で途切れていったスーパー戦隊の歴史を語り継いでいきたい…!!
そんな周りの面々の戸惑いすらも気に留めず、自分の思いを口にするアキッキー。
「アキッキーさん…、何もこんな時に―――。」
「こんな時だからと気だからこそだよ。シードピアを救っても終わりじゃない。みんな平和になったら、誰だってすることがあるだろ!」
困惑するまどかの不安も一蹴し、自分の強い意思を言葉にした赤き勇者。
すると………。
「……俺はプログラマーになりたいな。」
「え……キリト君…?」
キリトが真っ先に口を出した。
「プログラマーになってしっかり勉強して、いつかアスナとユイと一緒に3人で歩いていきたい!」
守りたいものを見つけた彼は、家族としてこれから先も一緒に進んでいきたい。
その思いを胸に刻んでいた。
すると、徐々にではあるが、他の面々も思い思いの夢を語り始めた。
「もちろん俺たちの夢は決まっていますね!」
「naturel!(当り前よ!)ワテクシたちは立派なパティシエを目指すこと!最高のドルチェを作っていって、この世界で一番素敵なパティシエになって見せるわ!!」
戦いの傍らで生きる道を見出した城ノ内と、その手を差し伸べた鳳蓮。
「だったら写真撮影は任せてくれ。世界一の立派な写真を撮って、みんなにもっと見てほしいんだ!」
あらゆる世界を放浪し、その眼で見た景色を写真に収めてきた剛。
「わ、私は…シノンさんと一緒にお兄ちゃんみたいな素敵な恋を見つけたいです!!」
「り、リーファ!?」
次に口を開いたのは、その表情を真っ赤に染めつつ告白したリーファだ。
巻き込まれたシノンの表情は彼女のソレよりも真っ赤になっているかも知れなかった。
「こ、こんなのっていいんですよね!?」
「当たり前だよ!平和になった世界だからね!!」
リーファの戸惑いに対して、それを受け止めるアキッキー。
「まったく…人を巻き込むんじゃないわよ……。」
…とか言いつつも、自分も実はリーファと同じ夢を密かに胸に抱いていたため、その顔はまんざらではない様子だ。
「俺だって大好きな春香を一生かけて守っていきたいんだ!」
“恋”と言うキーワードが絡む夢なら裕人とて同じこと。
この戦いで悲しませてしまった自分の愛する春香を、今一度守りたいと願う心は、誰にも負けないのだから…!
「ボクの夢は、ホープキングダムを復興させて、みんなを笑顔にすることだ!」
「そして、カナタさんの見て来た思いの記録を、私が絵本にしてみます!」
亜空軍の攻撃で、崩壊の一途を辿りつつある自分の故郷を守りたいと言う意思を示したのはカナタ。
親友として夢をかなえてあげるため、思い出を残すことを決めたゆいも賛同する。
「それじゃあ、もしそのときが来たら僕にも手伝わせてくれますか?」
「あぁ、一人でも多ければなお良いよ!」
「よろしくお願いします!」
その思いに賛同した光実。
自分の歪んだ思いが、世界を壊してしまいかけたことがあったゆえのことなのかも知れない。
「俺も手伝うぞ。大変な事だけど、手を貸せるならできることをしよう!」
兄の嵩虎もその思いは同じだった。
今度こそ間違った道へは歩んだりしない。
その思いを証明するには、こうして手を差し伸べるのが一番だ。
「俺の場合は少し違ってくるかも知れないが……平和になった後もずっと戦い続けていくさ。戒斗や鉱汰、みんなとの戦いで紡がれた絆を守っていきたいから…!」
平和になった後も、それを脅かす者と戦っていく。
ザックの夢は過酷な道だ。
「もし、その旅路の中で困ったことがあったら、いつだって俺たちに相談してくれ。」
「人々を脅かす事件が起こったら、俺たち警察官が必ず食い止めてあげよう!」
その平和な世界をいつまでも守り続ける。
洸一と進ノ介の思いは決まっていた。
「たとえ離れた場所でも、朝日のように戻ってくるからな!!」
世界を流離う風来坊のガイも、彼の戦いを後押しするかのようにエールを送る。
「わ、私は…あの…先生みたいなことをやってみたいです。」
「ユイちゃん?」
次は手を挙げつつ自分の意見を口にしたユイ。
「いつか、世界が平和になっても困ったりする人たちに勇気を与えてくれる……そんな人になりたいです!」
コンピュータ世界のAIとして生まれたユイにとって、まだ知るべきことはたくさんある。
その知識を、後世に伝えていきたい。
そんな思いが、彼女の中にいつしか生まれていたのだ。
そんな彼女の体を抱き上げる影。
それはアスナの母の京子だった。
「あなた、意外におませさんね。勉強だったら私が色んなことを教えてあげるわ。」
学校の教授という経歴を活かして、自分の持ちえる色々なことを伝授する。
それは、京子だからこそ出来る手助けだ。
「勇気を与える仕事なら、私たちS.C.に任せてください!」
その傍らに、音子も合流する。
「元々、私はS.C.の舞台に立って踊りたいという夢を持っていました。今でもそれを忘れていません。いつか、憧れの先輩たちと一緒に眩いステージを作りたいのですから!」
舞台に立って演技をすることは、お客さんの前で自分のパフォーマンスを披露すること。
誰もが緊張する大舞台に立つこと自体、勇気が必要なのだ。
その心を、強く持ち続けたいと願うのが、音子の意思なのである。
「俺はもちろん、あらゆる次元世界のお宝をこの手でつかみたいんだ!今いる場所で待っている仲間たちと一緒にな!」
「俺だって、ジューマンと人間が一緒に笑いあっていける世界を作りたい!ジュウオウジャーの仲間たちのような、大きな絆を!!」
スーパー戦隊のリーダーである二人の赤き戦士たちも、彼らに負けじと大きな夢を告白する。
「私は…まだ見ていない加速世界の王になりたい。そして加速世界の人たちが手を取り合うのを見ていきたいからな!」
加速世界の中での黒き王として活動する黒雪姫。
その器は大きいが、それに比例して胸のうちに宿す夢も大きい。
「先輩、ボクも協力しますよ。どこまでだってついていきますから!」
そのパートナーとして戦うハルユキ。
彼女の支えとして、恋人として、いつまでも守りたいから…。
「………。」
キリトたちの傍らで瞳を伏せている少女。
ユウキだ。
体にAIDSを抱え、いつ死んでもおかしくない病状。
現実の友人すらも皆無な彼女に、夢なんてないに等しい状況だった。
でも、今の自分はもう一人じゃない。
腕を高めあうライバルのキリトが、もう一人の姉とも言うべき親しい友達のアスナが、仲間たちがいる。
なら、自分も夢を語るくらいいいじゃないか…!!
「ボクは、まず病気を治してその後は……あの…アキッキーさんと旅をしてみたい…。」
「…!」
思わずアキッキーは目を見開いて振り向いた。
「だって、アキッキーさんは世界の広さを教えてくれた!だから今度はボク達自身の目で、宇宙のすべてを見てみたいんだ!!」
その思いに、賛同した者がいた。
「だったら旅をする仲間は多いほうがいいだろ。俺も乗るぜ!」
絶望から立ち上がって、戦う意思を固めた電我だった。
「いつかキズナと再会して世界中の全てを回ってみたいんだ!」
その二人の決意に感慨深くなったアキッキー、二人の傍に歩み寄った。
「二人とも、ありがとう!それじゃ、全てが終わったら、ボクと一緒に来てくれるかい?」
「当たり前だろ、アキッキー!」
「どこまでもついていくよ!」
手を握り合い、未来の約束を交わす3人。
その光景はとても微笑ましく映った。
次々と膨らんでいく一行の夢の大きさに、徐々にたじろぎ始めたキュゥべぇ。
彼は人間の心の奥底の力というものを読み違えていたようだ。
「いかにキミたちが大それた夢を口に出しても、所詮は冷めるもの。誰かに現実を見せ付けられて打ち砕かれれば、それこそ終わりじゃないか!」
「でも、だからって捨てきれない夢もあるでしょ?」
そんなキュゥべぇの言葉に対して反論したのは、カサンドラだった。
「あたしは、魂を蝕む邪剣を打ち倒すために戦う。そして、いつか姉さんの支えになりたい。そのためなら、どんな厳しい道だって歩んで見せるわ!!」
故郷の世界で、自身の姉の身を案じたが故に戦いに身を投じたカサンドラ。
どこかにいる姉ともう一度出会い、一緒に戦いたい。
その一心で進んできたのだ。
「ならばそのための仲間は必要であろう?そなたの戦い、私が支えてやろう。」
その戦いに同乗したのは意外にもアンゴル・フィア。
姉妹の身を案じると言う彼女の思いに共感していたのかもしれない。
「わたしはもちろん、一人前の勇者となって、困っているみんなを助けてあげるのが夢です!このコンパスをその証に掲げて、私の信じる道をまっすぐ進みます!!」
リンクルの掲げる夢は微塵も迷いがなかった。
実際に道に迷い続ける感覚はともかく、誰かを助けてあげたいと言う正義感については誰にも負けないようだ。
「俺の夢は、バサラークに名を轟かす真の武士となること。そのためなら、どんな修練も厭わない!」
「そんな倅殿を支えるのは、親であるワシの役目!後ろから見守らせてもらうよ!」
バサラークの武人の家系である真田家。
その信念は炎よりも熱い。
それはもしかしたら、長年仕えてきた主に影響されてのことかも知れない。
「アタシは一流の封魔の忍として戦い続けることが目標さ。もしも妖怪の類の事件があったら、アタシが解決して見せるからな!」
忍の腕としてはまだまだ半人前レベルのナツ。
だが、世を蔓延る邪な物の怪を退治して、罪なき人々を守りたいと願う使命感は強い。
その信念は、師匠に引けを取らないと自負しているのだから。
夢に満ち溢れた面々の心は、闇を打ち払うと言わんばかりの輝きが宿っていた。
キュゥべぇの心の余裕も少しずつ削られ、追い詰められていく……。
ふと、いつの間にか電我がまどかの傍に歩み寄っていた。
彼女の心の中にまだ迷いが残っていることを察していたのだ。
「まどか、まだキュゥべぇに着いていっていいか迷っているのか?」
「………。」
答えが出てこないまどか。
そもそも、人として死に絶えた自分に夢なんてあるわけがない…。
そう思っているのだから…。
「案ずることはない。」
『?!』
周りに響いた凛々しい女性の声!?
すると、まどかの傍に光の玉が現れ、それが一人の女性を形作った。
緑と黒を基調とした衣服を纏い、その髪は緑色とブロンド色が共存している不思議なものだった。
そしてその右手には、得物である弓矢が。
さらに特徴的なのは、獣の耳と尻尾を供えているということだった。
「えっ…!?フロニャルドの人間!?…だけど…今まで見たこともないな……。」
似通った人たちを見たことのあるアキッキー、初めて遭遇する亜人に困惑。
「困惑することはありませんわよ、赤き勇者殿。」
『!!?』
またまた別の声が響いた。
しかもアカレッドのことを知っている人物!?
「そ、その声は…!!」
アキッキーが何かに感づき振り向くと、やがてその場所に、とてつもなく大きな女性の姿が現れた!
「ええぇぇぇ!?きょきょ、巨大な女性!!??」
「まま、マジで!?」
「う、うそ……!?」
案の定、初見の一同はあまりの迫力に困惑したり呆然としたり……。
「やっぱり!空海の巫女ファリーヌ様!!」
「久しぶりですね、アカレッド。」
―――えっ!?知り合い!!?
ここで、アキッキーに代わって手短に説明しよう。
バサラワールドの西方に位置する、獣の亜人が住まう国・フロニャルドには、“空海(そらうみ)”と呼ばれる独自の天空世界が存在する。
巫女ファリーヌは、空海の大精霊・星鯨(ほしくじら)の体内に住まう土地神の一人であり、地上との仲介役を担う存在である。
実はかつて、アキッキーたちレンジャーズストライクが、修行の一環としてフロニャルドを訪れた際、星鯨を巣くう謎の魔物の存在と遭遇。
ファリーヌと星鯨の民との連携でこれを撃退、その窮地を救ったことがあるのだ。
「バサラークの西方にそのような国が存在するという噂は聞いたことがあったが…。」
「まさか実在していたとはねぇ…。」
バサラークの中でしか生活したことのない真田親子にとっては、未知の状況だったが…。
「ここまでくると、アタシも驚くことはないな。」
対称的に、異世界の冒険の経験者であるナツは、あまり衝撃は受けていない様子だった。
「さて…、このままの姿では大きすぎますから…。」
ファリーヌはそう言い、自身の体をアキッキーたちとほぼ同じくらいの大きさにまで縮小化させた。
「…うん、この方が話しやすいでしょう。」
自分の目線と姿を再確認し、改めて歩み寄る。
「さあ、アタランテ。まどかさんとアカレッドたちに自己紹介を。」
「あぁ。」
名を呼ばれた獣の亜人は、数歩下がって距離を置き、跪いた。
「改めて名乗らせてもらう。私はアタランテ。狩猟の女神・アルテミスの加護を授かって生まれた、“純潔の狩人”と呼ばれた存在。アーチャーのサーヴァントだ。」
「アーチャー…?」
「さ、サーヴァント…だって?」
まどかはもちろん、アキッキーとて聞きなれないキーワードに困惑。
「…へっ……、そういうことか…。」
だが、アタランテの言葉に対して心当たりを持つものがあった。
マーベラスだ。
「お前、特異指定世界“フレームーン”に存在するって言う、英霊の一人だろ?」
「…フッ、ご明察だ、宇宙海賊。」
予想外の返答にアキッキーは驚いた。
…いや、そもそもマーベラスはなんて言った!?
「えっ…!?特異指定世界…だって!?」
「ま、俺も旅路の中で聞いた噂話でしか聞いたことがなかったんだがな……」
第X管理外特異指定世界・フレームーン――――。
リアルワールドの地球と瓜二つの文明と世界を構築しながら、魔法の存在すらも同居するという、まさにパラレルワールドの地球と呼ぶに相応しい世界の一つ。
その世界では数十年に一度、万能の願望器と言われるロストロギア・聖杯を求めて戦うという“聖杯戦争”が存在する。
サーヴァントとは、その戦いにて召喚される英霊・英傑たちの総称。
彼らは召喚主=マスターと二人一組のチームとして戦いに挑み、最後の一組となるまで戦い続ける。
それが、聖杯戦争である。
「その戦いは言ってしまえば、聖杯を巡って生死をかけた殺し合いともとれるらしい。ま、もっとも俺はそんなものには興味がないけどな…。」
「こっ、殺し合いだって…!!?」
その言葉にゾッとした者がいた。
“ソードアート・オンライン”というバーチャルゲームの事件を経験したキリトたちだ。
当時、プレイヤーのゲームオーバーがユーザーの死に直結する瀬戸際の状況にあった中、その恐怖すら厭わぬならず者たちが次第に出没するようになった。
それが、ゲーム内で殺人や窃盗などの犯罪行為を繰り返すアンチプレイヤー……“オレンジプレイヤー”と呼ばれる存在である。
キリトとアスナはかつて、そのオレンジプレイヤーたちに狙われたことがあり、彼らによって命の危険にまでさらされた記憶も残っているため、ある種のトラウマともなっているのだ。
「シノのん、大丈夫…?」
「え、ええ、大丈夫よ……。」
一方、シノンの場合は、現実で命の危険にさらされた極限の状況を経験しているゆえに、そのトラウマは誰よりも重くのしかかっていた。
キリトやアスナたちのおかげでそのプレッシャーは少しは払いのくことは出来たものの、やはりどうしても思い出してしまうようだ。
「願いを叶える“聖杯”と、それを巡る戦争か……。」
「あの戦いと同じ状況が別世界でも起こっていたなんて……!」
ザックと光実たちの脳裏で思い出すのは、もちろん故郷の世界で起こった“黄金の果実”を巡る戦い。
異世界から侵略してきたモンスターたちから自分たちの世界を守るために、何度も繰り返されてきた死闘。
その中で生まれてしまった幾つもの犠牲。
思わず一同は顔をしかめる……。
ふと、ユウキはまどかの表情を見た。
色々なことが立て続けに起こっているせいなのか、呆然としているようだ。
「ねえ、まどかは怖くない…?」
「えっ、うん……。私が円環の理になったのは、少し前の事だったから‥‥。」
……それにしても、まどかとユウキ、二人の声が似ているのは気のせいだろうか…?
…え?『それを言うなら同様の面々が数人いるじゃないか』…ですと?
………そりゃそうですよねぇ〜……。
閑話休題。
いつの間にか、アタランテがまどかの傍にまで歩み寄っていた。
「さて、まどか。」
「えっ?…あ、はい。」
まどかの名を呼んだアタランテは、目線を彼女に合わせるようにして膝をつく。
「そなたは、今の姿になる以前……人として生きていた頃…、家族は…兄弟はいたか…?」
「あ…、はい。」
その言葉に対して脳裏に浮かんだのは、故郷の世界で生きている“まどかの家族”だった存在。
お酒が好きで、キャリアウーマンとして働きつつ、豊富な経験を活かしてアドバイスをしてくれた母――。
そんな母を心から信頼し、あらゆる家事を一手に引き受けるほどに支えてくれた父――。
まだ覚えている言葉は少なく、天真爛漫な性格だが、家族に癒しと明るさをくれた弟――。
いずれもまどかのことが大好きで、彼らもまどかのことをとても愛してくれた存在だった。
その話を明かすと、アタランテは……。
「そなたは、そんな家族をも守るために、今まで戦い続けていたのだな…。」
徐に、語り始めた……。
“世界の平和と、人々の笑顔のために戦う赤き勇者”―――。
私もかつて、ファリーヌからその話を聞き、彼に共感を覚えたことがある。
“全ての子供たちが幸福に暮らせる世界を作りたい”。
私はそんな願いを抱き、サーヴァントとして聖杯戦争に参じた。
だが、同志として共闘していたあるサーヴァントを巻き込んだ戦いで、つい自分の怒りを利用されたことがあり、自暴自棄も同然の空しさを経験した。
その悲しみは最後まで拭いきれず、ついには野獣の姿(バーサーカー)となって暴れ続けた末に、仲間に討たれてしまった…。
私のしたことは間違いだったのか…、それとも、たとえ正しかったとしても止めることは叶わなかったのか…。
最後まで去来する思いに、私はとうとう答えを見出すこともできなかった…。
……しかし、幾年月を超えてファリーヌと出会い、赤き勇者の話を聞くにつれ、我が胸の内の迷いが晴れていった。
子供たちを守りたいと願う意志は、世代を超えても変わらずに受け継がれ続けている。
たとえ世界が呪われ続けているとしても、その意志を永劫に抱く限り、望みは費えることはない。
だから私は、私の新しい夢を求めるために歩き出そう…!
そう決意したのだ……。
戦いの中で絶望に落とされ、狂うままに戦った純潔の戦士。
しかし、時を越えて自分の思いがしっかりと受け継がれていることを知り、決して自分の思いがムダではなかったことを悟ったのだ。
「まどか…、そなたが全ての魔法少女たちの不幸を断ち切るために自らを犠牲にしたその決意、確かに凄まじいものだ。」
英霊であるがゆえか、まどかの存在も知っていた様子のアタランテ、彼女に対してさらにこう続けた。
「だが、そなたが今のまま傍観しているだけでは、あらゆる子供たちの不幸を見過ごすことになる。それは即ち、世の子供らに愛情すら注げないことを意味する。」
――そなたは……それでよいのか?
―――ッ!!!!!!
思わぬ指摘にまどかは息を呑んだ。
……そうだ、自分は円環の理として生まれ変わって以来、世界をただ見守る立場になっていた。
だが、それは“何もせずにじっと見ているだけ”……。
生きる人々の喜びや笑顔ならまだしも、反面、悲しみや涙すらもただ見ているだけだった。
…自分は何もせず、ただ、変わりゆく世界を傍観しているだけに過ぎなかったのだ…!
それを悟った瞬間、振り返った彼女の視線の先に、複数の影が見えた…!
・自分自身を冷たい眼差しで見ている、アキッキーや大和達…?
・「我、関与せず」といって無視して生きて来た、かつての友達と先輩…?
・様々な事に苦しめられている大切な親友…?
………しかし、まどかにはその影の正体が分かっていた…!
迷いを振り切ったまどかは今まで使っていた愛用の弓矢を取り出し、それを構えた―――!!
「なっ…!?まどか、何を――――!!!!」
キュゥべぇが驚く間もなく、まどかは矢を放つ―――!!!
――ダンッ!!!!
――ピキッ……ピキピキピキ…ッ……!!
――ガシャアァァンッ………!!!!!!
『……………!!??』
「……さようなら、今までのわたし…。」
まどかは、鏡の奥の自分の影に、別れを告げた…………!!!
---to be continued---
☆あとがき
219話、アキッキーさんからの原稿案を大幅に膨らませ続けた結果、予想外の分割掲載と相成ってしまいました。
…/(-_-;;)\<ナンテコッタイ
さて、Sアキッキーたちが夢を語るこのパート、一部の方でどこかで見たことあるような…と思った方が出てくるかも知れませんが……、実は、『宇宙戦隊キュウレンジャー』終盤のあるシーンをオマージュしています。
本編視聴経験者なら、Sアキッキーのあの台詞で感づくかもしれません。
次回はいよいよキュゥべぇに対する天罰が下されます。
アキッキーさん本人が、叛逆の物語に対するアンチテーゼと称していたこの219話、まだまだ終わりませんよ!!!