Phase213 FWパニック・CONCLUSION-Take13-
覚醒するP/古の魔法少女 〜君の中の英雄〜


空中戦艦ミカサの甲板へと続く連絡通路。

そこを走る複数の影。

それは、スピリチュアルキャリバーの特殊部隊・“ロマネスク・ブラヴィオン”たちであった。

『甲板上で感知した謎の反応を確かめに向かえ。』

米田から告げられたその命を果たすために向かっていたのだ。

「それにしても、私たち以外の人たちがこの空間にいるなんて…!」

「普通の人間だったらいいのだがな。」

「闇の力だったら、俺たちが摘み取るまでだ!」

彼らは大神たちが率いるモビルスーツ部隊とは異なり、白兵戦が主体。

決して出来ることはそんなに多くは無い。

だが、少しでも彼らの負担を軽減するために戦い続ける。

それが、彼らの信念でもあるのだ。

やがて、甲板エリアの扉が現れ、勢いよくその扉を開く―――!!!



――ズドドドオオォォンッ!!!!

「きゃぁっ!!??」
『うわっ!!??』




その瞬間に轟いた爆発音と巻き起こった粉塵。

思わず一行は目を瞑る。

やがてそれが収まると、目の前の現状が見えてくる。

「えっ!!??」

「なんだこりゃ!?」

しかし、それは一同の予想を遥かに凌駕する壮絶な戦いへと発展していたのだ。







『たああああぁぁぁぁ!!!!』



ジュウオウイーグルが縦横無尽に飛びながら、気合の一声と共に攻撃を繰り返す。

その攻撃は、鎖のようにしなる専用武器・イーグライザーの一閃。

広範囲にも及ぶ強烈な一撃で、Dディケイドだけでなく、プリムたちすらも吹き飛ばす。



放!!!!』



一方、地上のジュウオウジャーたちは、アバレンジャーのアバレモードを彷彿とする力を解き放つ。

鮫、ライオン、象、トラのそれぞれの獣の力を体現させる、“野生解放”モードである。



「野生大解放!!」



ジュウオウザワールドに至っては、両肩にサイの角、右手にワニの尻尾、左手に狼の爪という、合成獣のような荒々しい姿を見せている。

「ちょっと待て!そんなのありか!?」

思いもよらないその姿に、アビスもたじろぐ。

その油断を突き、一同が突撃!

さらなる追加ダメージを与える。

まさに獣の荒々しさを絵に描いたような戦いである。







一方、こちらは仮面ライダーたち。

次々と沸いて出てくるプリムたちを、自慢の武器で一気に切り捨てていく。



<キウイスカアァッシュ!>
<メロンエナジー!!>




斬月と龍玄の弓矢と撃輪の一撃。



<DONGURI-SPARKING!!>
<KURUMI-SQUASH!>
<DURIAN-AU LAIT!>




グリドン、ナックル、ブラーボの武器と拳を交えた強烈な攻撃。



<TIRE-Koukaan!“MIDNIGHT SHADOW”!!>



かたや、仮面ライダードライブはボディのタイヤを紫色の手裏剣型武装に変え、忍者のごとく分身しながら、手裏剣型のエネルギー弾を乱れ打ちする。



<シグナルコウカン!“カクサーン”!!>

<ズーット、“チェイサー”!!>




こちらはマッハとチェイサー。

マッハは右肩のシグナルを、“カクサン”を意味する標識に変え、武器の“ゼンリンシューター”でエネルギー弾を文字通り拡散させて牽制。

チェイサーがその弾幕を潜り抜け、シンゴウアックスと言う固有大型武器で豪快に振り回しながらプリムたちを圧倒する。



「オーブグランドカリバー!!!」



そしてウルトラマンオーブは、“オーブカリバー”と言う武器を地面に突き刺し、稲光を轟かせてプリムたちを攻撃、勢いよく吹き飛ばした。



「ほいっと!」



続いてのお目見えは真田昌幸。

自らの帽子を勢いよく上に放り投げると、吹き飛んだプリムたちをまるで掃除機のように、帽子の中に次々と吸い込ませていく。

そして、全部を吸い込み終えると………、それらが一気に落ちてきた!?



「一気にやっちゃうよ!!!」

「え―――いっ!!!」




その獲物を逃すまいと、リンクルの2丁ボウガンの乱れ撃ちと、ナツの高速攻撃が牙をむく。



「どおおぉぉりゃああぁぁっ!!!!!」



昌幸の子息・信之は、梯子に似た大型の武器を豪快に振り回しながら敵の大群目掛けて突撃する。

メタルプリムなどを始めとする面々がその勢いを止めようとするが、それは信之にとっては石ころ同然だったのか、簡単に吹き飛ばされてしまう。



「こいつら…冗談抜きで強いぞ…!」

「プリムどもがこうもあっさりと…!」

ダークライダーたちにとって、ここまで圧倒的に劣勢に立たされたことはなかった。

「ちょっと二人とも!」

「余所見をするな!!」

「「!!!」」

その油断の隙を突いて、カサンドラとアンゴル・フィアが攻撃!

フィアはその力で敵を退け、さらにはアビスのパートナーであるアビソドンすらも撃破する。

カサンドラも、旅の中で積み重ねてきた自分の剣術を駆使し、ダークディケイドと対峙する。

「くそ…!!調子に乗りやがって…!!!」

「こんなところで、負けてたまるかぁっ!!!!」

意地を見せるダークライダーたちも武器を握りなおして応戦する。







「これは、すごい…!」

新たなヒーローたちの善戦と奮戦に驚くアキッキー。

「ジュウオウジャーの強さは前々から知ってはいたが、他の連中もなかなかデキるじゃねぇか。」

マーベラスたちもヒーローたちの戦いを興味深そうに見ていた。

………そんな二人の背後からひっそりと忍び寄る影…!?

新たなプリム軍団がいつの間にか生まれていたのだ!!







―――ズバババッ!!!!

「「!?」」








その油断をつかれそうになった二人、背後で何かを斬った物音に気づき、振り向いた。

そこには、全く予期していない面々が現れていたのだ。

「大丈夫ですか?」

「油断は禁物ですよ。」

二本の剣を両手に持つ黒服の青年と、レイピアを片手に持つ白服とブロンドヘアの女性。

いずれも自分たちより少し年下だろうか…?

「あ、あぁ…。」

「誰だか知らねぇが、ありがとな。」

そんな一行を振り切るかのように、さらなる影が飛び出す。

「お兄ちゃん!アスナさん!そっちはお願いね!」

「この周りの連中は――!」

「ボクたちが引き受けたから!!」

緑色の衣服と羽を持つ金髪の女妖精と、紫色の羽を持つ黒服の少女の妖精。

そして、スナイパーライフルを携えた水色のショートヘアの少女。

いずれも、先ほどの二人とほぼ同じ年代くらいと見受けられるが、とても一般人とは思えない度胸と覚悟を兼ね備えている。

只者ではなさそうだ…!





―――シュババババッ!!!!





その敵軍の中を、目に見えない速さで一気に駆け抜けていった二つの影。

「“バーストリンク”の力を持たぬこやつらなど―――。」

「ボクたちの敵じゃない!……ですよね、先輩。」

「…フッ。」

黒金の体を持つ、全身が刃物のような体の存在と、白銀の体と翼を持つ謎の存在が、余裕の発言を口にする。

その言葉どおり、予期せぬ彼らの登場と奮戦によって、敵戦闘兵は一気に蹴散らされ、残ったのはダークディケイドとアビスだけになった。

「うそだろ…!?」

「こんな、バカな…!!!」

あっという間の展開に呆然とする二人。



「こうなったら……奥の手を使ってやる!!!」



<KAIZIN RIDE、“Contrabass-NEGATONE”、“Cymbal-NEGATONE”、“Orgel-DESERTRIAN”、“Violin-ZETSUBORG”、“Tuba-ROID”、“Capricorn-ZODIARTS”、“MUZIC-no-MAZUARTA”、“YABAICAR”>




そう言って、ダークディケイドはライドブッカーから“カイジンライド”カードを取り出した!

放り投げたカードの中から、コントラバス、シンバル、オルゴール、バイオリン、チューバに酷似した化け物、さらには暴走族を彷彿とする車型の怪人に、山羊をモチーフにした星座の怪人、そしてコオロギに酷似した異形の怪人が飛び出してきた!

「うわあっ!なんだぁ!?」

「これって、楽器!?」

「だとしたら…こっちの3体は…、何なんだ?」

意表をつかれた新たな敵軍の増援に、連合軍一同が怯んだ……その隙をつく!

「お前ら!やれぇっ!!!」



―――♪〜〜〜〜!!!!

『うわあああぁぁぁっ!!!???』




ダークディケイドの合図で周囲に強烈な音波が響いた。

だが、ただの音波ではない!?

音の中に闇の力も混ざっているような、聞いただけで心が引き裂かれそうな、そんなネガティブな音だったのだ。

「ぐあ…っ…!冗談、じゃ…、ねぇよ…!!」

マーベラスもこんな音楽を聴いたことがなく、ここまで心にグサリとくるのは今までなかった。

その力をさらに増幅させたのが、後者3体の怪人たち。

前者をオーケストラ軍団とするならば、彼らはさしずめ、悪のボーカリスト。

おそらく、並の人間がこの歌声と音楽を聞かされれば、たちまち身も心も悪に染まってしまうこと請け合いだ。

これ以上こんな音楽を聴かされれば、一気に戦意を失ってしまう…!

頭がおかしくなりそうだ…!!





「みんな!演奏開始!!!」

―――♪〜〜♪〜〜!!!!






するとどこからかソレとは違う音色が鳴り響き、相手モンスターたちの邪悪な音楽を一気にかき消した!

「…ッ?!…音が、止んだ!?」

「いや、まだ何か音が聞こえるぞ?」

「アキッキーさん、ご無事ですか!?」

「えっ!?」

アキッキーの背後から聞こえた女の子の声。

振り向くと、楽団をイメージした白い戦闘服を身に纏った一団がそこにいた。

その中心にいたのは、かつてアキッキーも何度か会った事のある存在だったのだ。

「…もしかして、“シードピア・シアターハウス”の音子ちゃん!?」

「はい!ここからは、私たちもサポートします!こんな邪な音色、すぐにかき消しますから!」

チームリーダー・雅 音子の言葉を合図に、管楽器を持った5人の青年がポジションに移った。

「みんな!一気に畳み掛けるよ!事件は、プレリュードのうちに!!

―――Si Maestro!!

その号令とともに青年たちが管楽器を吹き、浄化の力を込めた音色を奏で、モンスターたちの音色を一気に鎮めていく。

さらに音子自身も、フルートを取り出してそれを吹き、彼らの音色と重ねていく。

それはさながら、仮面ライダー響鬼たちの特技である“音撃”に酷似していた。

「そんなバカな!?」

「モンスターたちの音色が、かき消される、だとぉ!?」

思わぬところで繰り出された反撃に、Dディケイドもアビスも唖然。

「ヘッ、音楽が効かなくなったってンなら!」

「俺たちの本来の戦闘能力で!」

「片付けるまでだぁぁ!!!」

こんなところでライブをダメにされてなるものかと、ボーカリストたちが一斉に飛び掛る。

その矛先は、ヒーローに変身していないアスナたちに向けられていた!

「ッ!!!」

「しまった!!」


反応が一瞬遅れてしまったアスナとキリト。

大ダメージが免れない―――!!!!











―――ガキイイィィィンッ!!!!!!











「…………?!」

………アスナが目を開くとそこには―――。





「「「なにっ!!!???」」」





怪人たちの攻撃を一気に弾いた白い影と、自分をかばうように抱きしめた一人の女性の姿が。

「……ッ…!!!!」

その後者の人物の姿と顔、アスナは見間違えるはずがなかった……!



「…か……母、さん…!!??」



自身の母親――結城京子、その人だったのだ!



「明日奈、ケガはない!?」

「え、あ…、うん。でも、どうして…。」

困惑するのも無理はない。

ただでさえ、親に抱きしめられた記憶がないに等しいアスナは、いきなり現れた母親の突拍子な行動に…、いや、そもそもその母親がここに来たこと自体が信じられなかったのだ。

「話は後よ。少しだけ、待っていなさい。」

最低限の返事を返し、再び彼女は怪人たちに面と向かって立ちはだかる。

その隣には、先ほど怪人たちの攻撃を退けた青年―――カナタの姿もあった。

「カナタくん、いいわね!?」

「えぇ、行きましょう!」

二人が持ち出したアイテムの形に、異世界のアーマードライダーたちは見覚えがあった。

「何ッ?!“ゲネシスドライバー”に“エナジーロックシード”!?」

「“戦極ドライバー”と銀色の“ロックシード”も!?」

ただし、二人の持っているロックシードは、本来なら、“彼らですら知るはずのない”ものなのだが。



<マツボックリエナジー!> <シィルバー!>



二人は各々のロックシードを開錠し、それをドライバーに装填した。

その頭上には、巨大なマツボックリ、そして銀色のリンゴが浮かんでいる。



<LOCK ON(ロック・オン)!>



まるで既に使い方を熟知しているかのような、迷いのない手順を踏んだ二人。

そして―――!!



「「変身ッ!!」」

<リキッド!> <ソイヤッ!>




その瞬間、二人の頭上に果実が覆いかぶさり、その体が仮面ライダーに変化した。



<マツボックリエナジーアームズ!>

京子の体は、マツボックリを模した黒いアーマーと黒いスーツ。

その手には、三日月型の刃が付いた長槍が装備されている。

この姿は向こうの世界では、“アーマードライダー黒影”と呼ばれているそうだ。



<“シルバーアームズ”!白銀・ニューステージ!!>

一方、カナタは対称的に、蒼と銀色のアーマーと白いスーツに身を包んだ、眩い姿。

その手には、兜の飾りと同じものがあしらわれた特有の武器・蒼銀杖(そうぎんじょう)が握られている。

その仮面ライダーの姿には特有の名称は存在しないが、一部の世界では“仮面ライダー冠(かむろ)”という名が付けられているそうだ。



そんな二体の仮面ライダーが登場し、一同唖然。

アスナに至っては、母親が仮面ライダーに変身したこと自体が意外すぎて、呆然としてしまったくらいだ。



「小癪なああぁぁぁぁっ!!!!!!」



その数秒の沈黙を破り、3体の怪人が一斉に二人に襲い掛かる!

しかし、その二人は戦い方を既に分かっていたのか、新参者とは思えない戦いぶりを見せた。

黒影は長槍のリーチの長さを活かして敵を寄せ付けず、時にはそれを巧みに振り回しながら相手を翻弄していく。

一方の冠は肉弾戦。

装着者であるカナタの本来の身体能力のこともあってか、戦闘力は引けを取らない。

その持ち前のテクニックで、相手に着実にダメージを与えていく。

怪人たちは、相手が新参者と油断したこともあり、一気に心身双方でダメージが溜まった。

「京子さん!一気に止めをお願いします!」

その隙にカナタが飛び上がり、自身の体をリンゴ型のボールに変化させた。



<マツボックリエナジースカッシュ!>



そして、京子はドライバーのレバーグリップを押し込んで、エネルギーをチャージし、カナタの位置まで飛び上がる!







「「ライダーボレーシュート!!!!」」

―――ズドオオォォォンッ!!!!








その攻撃によって見事にボレーシュートを決めた二人。

怪人たち3体を一気に爆散させた!

「ゲゲッ!!??こ、この流れは…!」

「どう考えてもまずい…!」

思わぬ抗戦にまたまた予測が大きく狂ったダークライダーたちは困惑、八方ふさがりとなった。

「ジュウオウジャー、オーブ、一気に片を付けろ!!」

「ああ!」

「任せてください!!」



<ジュウオウシュウウウゥゥト!!>
<ジュウオウザバアアァァァァスト!!>




チャンスをつかんだ連合軍、ジュウオウジャーの6人が共通射撃武器で発射態勢に入る。

そして、ウルトラマンオーブも―――。



<解き放て!オーブの力!!>



自身の武器・オーブカリバーを、左手に召喚したオーブリングの輪の中に通してリミッターを解除、光の力をその刀身に宿した。

さらに、カリバーの中心のリング部分を高速回転させ、剣の中に宿っていると思われる力も一気に解き放った。

「まずい!必殺技を撃つ気か!?」

「そう簡単には…!!」

畳み掛けられると判断したアビスとDディケイドが即座に飛び出すが―――。

「お生憎さま――!」

「こっちの台詞だ!!!」



―――ガキキィィンッ!!!



アスナとキリトが武器を抜刀して急速接近し、二人の武器を弾き飛ばした!

しかもその刀身には、必殺技を放つためのエネルギーがいつの間にか充填されていた!



「“スタースプラッシュ”、発動ッ!!!」



まずはアスナがレイピアの連撃を浴びせて大ダメージを与える。



「キリトくん、“スイッチ”!!」

「了解だ、アスナ!!」




そして攻撃の終わる瞬間、キリトが入れ替わるようにして割り込み、両手の剣を構えた。



「スターバースト、ストリームッ!!!」



目にも留まらぬ速さのその剣戟。

それはさながら地上に降り注いだ星屑が舞い散るかのようなきらめきにも似ていた。

その怒涛の攻撃が時間稼ぎにもなり、本命の一同の攻撃準備が整った―――。





「オーブスプリーム、カリバアア〜ァァッ!!!!!!」





その瞬間、オーブカリバーからの巨大な一閃と、ジュウオウジャーの合体射撃が同時に放たれ、二人に直撃した――!!





―――ドッカアアアァァァンッ!!!!!

「「うあああぁぁぁぁっ!!!!!!」」






一気に吹き飛ばされた二人、今の攻撃によって変身も解除された。

「よっしゃ!決まった!」

「お見事!」

見たことのない怒涛の攻撃に感銘するナツと、賞賛の声をあげる昌幸。

「良かった、終わったみたい。」

実は京子やカナタと共にここに合流していた七瀬ゆい。

しかし、戦う力を持たない彼女は密かに物陰に隠れ、その戦況を見守っていたのだ。

安全が確認され、彼女も一同のところに合流する。

仮面ライダーもウルトラマンオーブも変身を解除してアキッキーたちのところに合流する。

「いやー、皆さんのおかげで助かりました、ありがとうございます。」

「いえいえ、お礼には及びませんよ。」

アキッキーのお礼の言葉に少し照れるオーブ――クレナイ・ガイ。

その一方で…。

「…母さん…。」

「明日奈…。」

思いもかけない場所で再会した一組の親子。

どういえばいいのか分からない娘に、京子は何も言わず……。



―――ギュッ

「…?!」




彼女の体を抱きしめた。

「…無事でよかったわ、明日奈…ッ…!」

よく見ると、母の目じりには涙が浮かんでいる。

アスナは困惑していた。

今まで母からこんなに強く抱きしめられたことなんて、ほとんど記憶にない。

それどころか、自分の進路を気にかけすぎると言うくらいに厳しい人だったため、母親の優しさを感じたことなど、皆無に等しかったのだ。

……しかし、そんな忘れかけていた温かさを感じて何かがこみ上げてきたアスナ。

今はこの温もりを感じていたい。

涙と共に溢れた感情を胸に抱いた彼女は、いつの間にか母の胸に顔をうずめて、その体を抱き返していた。

「…母さん…ッ、心配かけて、ごめんね…ッ…!」

「…いいえ…もういいのよ……、あなたが生きていれば、それでいいから…。」

そんな様子を遠巻きに見ていた彼女の仲間たちの大半は困惑していた。

ただ、キリトとユウキだけは微笑ましく見ていた。

“心配する必要はないのかもしれない”。

そんな安心感を想いながら。



「それよりも、ここは一体ドコなの?」

「全然知らねぇところに迷い込んじまったし…。」

そんな中で持ち上がった今後の方針。

自分たちの現在地が全く以って分からない状況なのだ。

しかし、この場に集まった面々は、いわば“意図せずに巻き込まれた面々”がほとんどゆえ、当然ながらソレに関する有力な意見が出てこないのが必然である。

「うーん、う〜ん……。」

そんな一同の隅っこでなにやらうなっている人物が一人。

緑衣の少女・リンクルだ。

地図を色々な方向に傾けて首を傾げてる。

現在地を確認しているつもりなのか?

この状況でそんなことをしても―――。



――バンバンバンバンッ!!!!!!

「ッ!!!!???」




…………え゛――!?


その場にいた一同が一瞬で凍りついた。

リンクルの持ってた地図があっという間に蜂の巣状態になっていたのだ。

表情が青ざめた彼女が後ろを振り向くと、ゴーカイガンを持っているマーベラスとアキッキーが。

銃口から煙が出ていることを考えても、今の銃声は間違いない。



「おい女…、西も東も分かんねぇトコで地図広げても意味ねぇだろ…!!」

「頼むから混乱させないで。でないと…その地図みたいになっちゃうよ…?」




どうやら二人を逆ギレさせてしまったようだ。

リンクルは内心で恐怖しながら首を縦に振った。

度が過ぎるとも取れそうな制裁ではあったが、ナツにとってはありがたいことだった。

「いや〜、二人とも助かったよ。ありがと、あの子を止めてくれて。」

正直、あのリンクルのボケを止めてくれるツッコミ担当が自分以外誰もいなかったという事情もあったのだ。





「……おい…、お前ら…!」

「…まだ、終わって、ねぇぞ…!!!」

『!!??』






力を振り絞るかのような声が聞こえ、全員の背筋が凍った。

振り返ると、ダークライダーに変身していた電我と裕人がボロボロの状態で立ち上がっていたのだ。

まだ余力が残っていたというのか!?

「今度こそ…お前らを、倒す!!!」

「ズタズタに…してやるからな…!!!」





「…もういいんだよ。」

―――!!??





どこからか少女の声が響き、空間にひびが入る。





―――ガシャアアァァンッ!!





その瞬間、ステンドグラスが割れるかのようなエフェクトと共に、一人の少女が姿を見せた。

薄ピンクの髪に真っ白なドレス、背中に羽の生えたその姿は、天使…いや、小さな神様とも表現できそうな姿だった。

「あなたたちは、闇の中で苦しんで、充分に傷ついた。……もう、これ以上傷つくことはないんだよ。」

「なんなんだ、お前…!?」

「何を言っているんだ…!?」

すると、彼女の両手から優しくも眩い光が粒子となって放たれ、二人の変身アイテム――Dディケイドライバーとアビスデッキに降り注ぐ。

その光はアイテムを通じて二人の体の中にも注ぎ込まれ、二人の中の闇の因子に反応する。

「…ぐぁっ?!な、なんだ、これは…!!」

「頭の中に、何かが、入って…。」

その瞬間、一気に苦しみだした二人。

それと同時に、二人の体から黒いオーラが滲み出されていく。

「これって、もしかして…!」

「本物の、魔法…?!」

目の前で起こっているそれは、もはやそうとしか考えられない…!

少なくとも、キリトたちはそう確信していた。



「全ての苦しみと悲しみは、私が全部摘み取っていくから…。」





「「ぐああああぁぁぁ〜〜っ!!!!!!」」

―――パキイィンッ!!!
―――ガシャアアァァンッ!!!








謎の少女の魔法によって、二人の体に蔓延っていた闇の力が消滅し、その動力源とも言うべき存在だったアビスデッキとダークディケイドライバーは完全に破壊、ついには粒子となって消滅した……!

これによってとうとう意識を手放した二人は、その場で倒れこんでしまった。

「え!?ちょ、ちょっと!」

「おいおいおいおい!」

あまりにも唐突な状況にまたまた困惑しかけた一同だが…。

「大丈夫、気を失っているだけ。私は、二人の体の中にあった闇を取り除いただけだから。」

“闇を取り除いた”…!?

まさか、二人を洗脳していた何かしらの要素を取り除いたとでも言うのか…!?

にわかには信じがたいその言葉。

ふと、音子が前に出てその少女に一つ、質問を投げかける…。





「あなたは……誰なの……!?」







「私は、鹿目まどか。古の魔法少女と言われた者…。」



---to be continued---


☆あとがき

半年振りの大復活だああぁぁぁっ!!!!!!

……というわけで、ついに続きを載せることが出来ました、シードピア213話!
リアルワールドで色々なことが重なってスランプに陥っていたこの半年間、本当に載せられるのかと言う不安もありましたが……書ききれて良かったぁ〜ッ(泣)

さて、今回はミカサ編の中間地点、ついに円環の魔女・鹿目まどかの登場となりました。
彼女の存在が、Sアキッキーの新たな決意を呼び込むことになります。
次回は、その模様をお届けしたいと思います!




<次回予告>
(イメージナレーション:関智一)



次ィ――――――――回、第214話!!


「俺たちが春香たちを攻撃していたなんて……。」



闇にとらえられていたことに心を捕らわれる2人に、悪魔の囁きが―――。



「魔法少女の力を得ればどうってことがないよ。」



激昂するアキッキーの新たな決意―――。



「ボクがすることがわかったよ…。」



――ほむらちゃんを…引っ叩いてでも助ける!!!



『よくぞ言った!!赤き勇者よ!』



その思いに呼応する、勇者たちの激励―――!





『覚醒するP/未来からのメッセージ』
―オーブの祈り―






―――俺たちに……、力をくれ!!!!!!!








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