メディアステーションに突如として現れた“レスキューフェニックス”。
ミッドチルダにおける特殊部隊“レスキューブレイバー”の活動拠点として機能しているはずの建物だが、ブラジラの繰り出した“ミキシングローバル”の力で強制転移させられ、大パニックの様相を見せていた!
『超忍法!6人影の舞!!!』
『クロックアップ!!!』<CLOCK UP!!>
<Start up>
―――ズドドドド、ドカアァァンッ!!!
…というのも、先ほどから亜空軍の戦闘員100万人体制を相手に、入り乱れの大乱戦を繰り広げていたのだ!
ハリケンジャーの合体攻撃と、カブトたちとファイズが超高速攻撃で敵を翻弄し―――。
『コラボレーション・ダイナマイト!!!』
『ジー・マジカ!!!!』
「マジランプバスター!」
「「ツイストルネード!!」」
「「コンプレッサンダー!!」」
「「プレッシャワー!!」」
「エンド・オブ・ワールド!!」
「ボイスターズシャウト!!」
「ガタキリバキック!!」
「「トリガー・フルバースト!!」」
ダイナマン、ファイブマン、メガレンジャー、マジレンジャーの合体攻撃、ゴセイジャーたちの天装術、さらにゾルダ、電王、オーズ、W(甜歌、愛実)たちのフィールド全体を巻き込んだ大射撃。
「「デュアルドラグーン・フルバースト!!!」」
「フェザー・インパクト!!」
「ハンドビーム・インパルス!!」
「グリフォンアタック!!!」
さらにはキラたちガンダム一同の攻撃も加わって、徐々に敵の勢いも弱まりつつあった。
「小十郎、ついてこいよ!!」
「はっ、正宗様!!」
「行くぞ、幸村!!」
「うおぉ〜っ、参りますぞおおぉぉ!!!」
「前田の風来坊さんよ、俺たちもド派手にやろうじゃねぇか!」
「あぁ!行こうぜ孫市、異世界での晴れ舞台だ!!」
「フッ…さぁ、お立会いだ!!」
一方で、バサラークの戦国武将たちも自慢の武器を片手に敵を蹴散らす。
場所と空気が違えど、さすがは歴戦のつわ者、いかなる敵ももろともしない。
「わたしだって、やるときはやるんだから!!」
バサラークの風の巫女・タリムも、風を感じることのない宇宙の世界で、その武器を振るう。
「ウガァッ!!グオォッ!!」
ネクリッドと呼ばれる緑色の異形の怪物も、連合軍たちや人間たちに味方するのか、亜空軍の繰り出したプリムたちを、変幻自在のエネルギー体を操って一掃する。
もちろん、レスキューブレイバーや他のスーパー戦隊たちも、怯みを見せてはおらず…、とにもかくにも連合軍の軍勢が述べ400人に対して100万の戦闘員をぶつけてきた亜空軍も徹底攻勢の姿勢を崩さなかったため、互いの戦力バランスはいまだに崩れることはなかった。
―――ドカアアアァァァンッ!!!!
『!!??』
一際大きな爆発音が響いた。
振り向くと、そこには一行が予想だにしなかった面々が現れていた!
「今度こそ叩き潰してやる!」
「あ、あいつは!!」
ルナマリアたちゴーゴーファイブに叩き潰されたライオンファンガイア。
「まだまだ暴れたりないからなぁ!!」
「しつこいねぇ、あいつ!!」
フワニータ率いるジュウレンジャーとアルフたちにやられた、凱力大将ブランケン。
「覚悟しやがれよ、貴様ら!!!」
「ちっ、ややこしい奴らだぜ…!」
ディケイドたち仮面ライダーと対峙した流星のデレプタ。
「今回こそは引導を渡してくれよう!!」
「あいつ、まだ生きてたの!!??」
デカレンジャーたちにやられたはずの日輪仮面など、各エリアの行動隊長だったのだ!!!
「「キュアブルーム、キュアイーグレット、もう一度勝負だ!」」
「き、キントレスキー!!??」
「それに、カレーパン!!」
「中辛がオススメ…って、だから俺は“カレハーン”だっつーの!!…ていうかこのツッコミ懐かしいなこんにゃろ!!」
本人とまた邂逅してのノリツッコミ、どこかで懐かしさを感じていた本人である。
「あら、プリキュア5のガキどもじゃないの。」
「久しぶりだな、お前たち。」
「かつての屈辱、倍にして返してくれるわ!!」
一方でこちらも因縁の幹部3人と再会を果たしていた。
「ハデーニャ、ギリンマ、ネバタコス…!!」
「あなたたちも復活してたのね…!!」
できれば二度と会いたくない相手ではあった。
そして、ここにもう一人…!!
―――ズガガガッ!!!
「!!??」
「サフェロントン、トーマ・アヴェニール。」
攻撃の直後、“久しぶり”という意味になるリアルワールドのフランス語で挨拶したのは、彼にとって因縁深い存在だった…!!
「エンター!!??どうして…!!」
かつて自分たちがやっとの思いでシャットダウンした“ヴァグラス”の幹部・エンターである。
「“復活したか”、ですか?簡単なことです。次元世界をさすらう幽霊船ヘルヘイムの船長・ロズダークの力によって再稼動し、狂気の報復者“サルベンジェンス”の幹部として活動していたのですよ。」
「そんな…!!」
幽霊船が存在していたというまさかの事実に、思わずひるんだトーマ。
「だけど、また現れたなら、もう一度シャットダウンするまでだ!!」
「それはどうでしょうか?こちらもそれなりに対抗するまでです。」
すると、愛用のノートPCを取り出し、緑色系統のカードを取り出したと同時に通信回線をつなぐ。
「ムッシュ・スカリエッティ、ドクターカゲロウ、例の少年たちは?」
『大丈夫だ、いつでも出せる。』
『各種改造処理も完璧だ。』
マッドサイエンティスト二人と連絡を取ったエンターは許可を受け取り、笑みを浮かべた。
「“イービルライダーズ”、全軍転送!!」
「なにっ!!??」
すると、バトルフィールドの各所で転送ポートが出現し、アドラメレクの研究施設内で眠りについていたイービルライダーズたちが一斉に現れたではないか!!
「うわっ、イービルライダーズ!!??」
「っ!!こんなときにっ…!!」
ただでさえ戦闘員の対処に負われているこの状況下で、彼らの投入はかなりまずい…!!
「クロスビーナスポリス!君たちはイービルライダーズを頼む!こいつらは僕たちがやっておく!」
「え、でも!!」
コースケの指示に、シャナたちはこの場を離れるのをためらった。
コレだけの軍勢を相手に、しかも自分たちの“仲間”のために戦力を分断させるわけには…。
「彼らを救うのが、あんたたちの大きな目的のはずでしょ!?」
「僕らのことだったら気にしなくてもいいから!」
空課長とソラに後押しされ、クロスビーナスポリスたちはそれぞれのイービルライダーズのところへと向かう。
「シャナ、ワシらも協力するで!ギンガマン全員、ギンガレッドに続けぇ!!!」
『オッケー!!』
ダンチョ団長の指示を受けたギンガマン一同も、彼女の後押しをするために協力を申し出る。
―――ズドドドオオォォンッ!!!!
「そう簡単にはやらせないよ、僕たちがいる限りはね!」
しかし、これも想定の範囲内だったのか、海東純一率いる“ダークシュバルツ”の怪人軍団も、戦闘員たちを引き連れてバトルフィールドに合流してきた!
だがこのとき、その中になぜか、ビートルファンガイアの姿が見当たらなかったことに、純一ですらも気がつかなかったのである…。
――ドカアァァンッ!!!!
『!!!???』
今度はマジレンジャーとメガレンジャー、そしてライダーマン(結城)のところで爆発音!?
一同が振り向くと、そこにはいつの間にか形成されていた亜空間ゲートが。
「新たな敵か!?」
「油断するな…!!」
そこから現れたのは、黒いフードをかぶって表情を隠した4人の少年少女、そしてそれを率いているのは、結城にとって因縁深い相手だった!
「っ!?…徳川青山…!!」
「久しぶりだな…、裏切り者…!!」
かつてブルーコスモス・ファミリーの特殊部隊“シェード”のリーダーとして活動していた男・徳川青山。
しかし、トーヤを始めとする一部のメンバーたちによって彼らが秘密裏に計画していたものがばれてしまい、ダイダルストライカーズの手によって処刑されたはずだったのだが…!
「まさか、貴様も亜空軍に…!?」
「あぁ、どうやらタブーの力によって復活したようでな。」
その笑みは恐怖を感じ取るほどの威圧感をかもし出していた。
「結城丈二…、今度こそお前に死のバラを送ってやろう…!新たな力でな…!!」
―――パチンッ!!!!
指を鳴らし、フードの4人に合図したのか、彼らは勢いよくそのフードを取り払う。
『!!!???』
そこに現れたのは、なのはたちが全く予期していなかった相手。
「え…!?」
「うそ…!?」
「あたしたち…!?」
なのはに酷似したショートヘアの少女、フェイトと瓜二つのスカイブルーのツインテールの少女、はやてに似た白髪の少女。
それに加えて、イービルライダーズの電我に似ている顔つきの少年までいたのだ。
「お初にお目にかかります。」
「オッス、ボクらのオリジナル!」
礼儀正しく挨拶するなのは似の少女と、くだけた感じでなのはたちをオリジナルと呼ぶフェイト似の少女。
しかし後者の言葉に、フェイト本人は疑問を覚える。
「え…、私たちがオリジナルって…!?」
彼女の疑問に、はやて似の少女が威厳に満ちた台詞で答える。
「我らは貴様らの力と姿を模った戦闘機人なのだ。」
『!?』
まさかの言葉に絶句する一同。
新たな戦闘機人が登場するなんて考えもしなかったのだ。
「驚いたか?…んじゃ、俺たちの自己紹介させてもらうぜ。」
電我似の少年の言葉を皮切りに、4人の戦闘機人たちは名乗り口上をあげた…!!
「希望を斬り裂く刃、アブソルート・ナイトメア!!」
「光を塗りつぶす漆黒の王、ロード・ディアーチェ!!」
「炎を纏いし闇の星、シュテル・ザ・デストラクター!」
「雷光散らして、ボク参上!!レヴィ・ザ・スラッシャー!!」
――我ら、紫色の天(ししょくのそら)を織り成す、暁の戦士!
“トワイライト・マテリアル”!!!!!!
いわば、自分たちの分身、自分たちの影を相手にするという予想外の事態に、なのはたちも目を見開いた。
「これで驚くのはまだ早い。俺たちの新たな力を見せてくれよう。」
すると、青山がマテリアルたちの前に出て―――。
――インストール、“ネジレンジャー”!!!!!!
さしずめ、“ネジライザー”と表現すべき禍々しいブレスレットに各々の音声を入力した途端、彼らの姿が変身。
同じシルエットの禍々しい怪人型のスーツを纏ったのだ。
―――ネジレッド!
―――ネジブラック!
―――ネジブルー!!
―――ネジイエロー!
―――ネジピンク!
――邪電戦隊、ネジレンジャー!!!!!!
さしずめ、悪のスーパー戦隊と表現すべき、想像以上の強敵が現れてしまった。
ユグドルシオン・メインブリッジ――。
シードピア連合軍の作戦司令本部とも表現すべきその場所も、メディアステーション中枢部のレスキューフェニックスのオペレートとサポートでてんてこ舞いの状況になっていた。
特に、ミキシングローバルの発生に伴って、肥大化・混迷していた現在のメディアステーション内部の状況と座標把握に、想像以上の労力を使い果たしていたのは否めない。
「あらら、これは参ったわねぇ…。」
クアットロが、分析したメディアステーションの現状を見ていると、かけている伊達メガネを取り外した。
「これじゃあ、この間もらった内部構造データが役立たないのは当然ね。」
そこに、セイコーたち司令官メンバーたちが合流する。
「クアットロ、どうだい?」
「正直、どうもこうも言えた状況じゃないわ。見て頂戴、これ。」
そう言ってみせた一枚の紙。
それは、メディアステーションの現在の上面図だった。
内部にミッドチルダ、バサラワールド、その他各種次元世界の一部の要素が一気に凝縮されてしまったことにより、まさに内部はギュウギュウ詰めのおもちゃばこ状態になっていたのだ。
「…ちょ、ちょっと待てよ、これ…!!」
「うそでしょ…!?」
「こんなことが…!!」
セイコー、マリュー、タリアの3人はこの状況に目を見開かざるを得ない…。
その上でクアットロはさらに衝撃的な事実を告げた。
「全体的に中の広さも以前の2倍以上に膨れ上がっているわ。この間ヴェルス司令からもらったデータ、あっという間に使い物にならなくなっちゃったわ。」
ここまで肥大化すればそうなるのも無理は無かった…。
「ところで、連合軍たちは?」
その言葉を受け、ウーノとクアットロがコンソールを操作して現在の連合軍たちの状況を映し出す。
そこは今まさに、彼らの激戦の様子がリアルタイムで映し出されていた。
「メディアステーション中枢部、各エリアに通ずるエレベーターホールで戦闘中なんだけど…、そこにも異世界の建物があるらしいのよね…。」
しかも勢力図を見てみると、亜空軍の軍勢がさらにその数と勢いを強めつつあり、なかなか打開の糸口がつかめないようである。
―――ピピピ、ピピピ!
「!…クアットロ、こちら宛に緊急通信が入っているわ。」
「え?」
専用の通信回線が繋がるとなると、こちらの味方のようだが、一体誰が…?
クアットロはコンソールを操作してモニターを繋ぐ。
<あ、良かった!通信が繋がった!>
『あ…アキッキー!!??』
メディアステーション融合後から行方の知れてなかったアキッキーから通信が繋がった!
「あんたどこにいたのよぉ!?仲間たちが心配していたわよ!」
<ごめん、さっきコースケにも心配されたところ…って、そうだ!!クアットロ、メディアステーションの今の状況は!?>
慌てるアキッキーの言葉に、クアットロ、マリュー、セイコーの3人が順番に答える。
「各エリアの亜空軍はほぼ全て一掃されたところよ。あんたの持ってきたスーパー戦隊の力はもちろん、ミッドチルダの魔法使いや、仮面ライダーなどの助けもあってね。」
「だけど、ステーション中心部のエレベーターエリアにその両陣営の全軍が大挙している状況なの。」
「はっきり言って、亜空軍の方が数でも圧倒的に優勢だ!アキッキーがこっちに戻ってきてくれれば、みんなの士気も上がるはずなんだ!」
<分かりました!ユグドルシオンの格納庫のハッチを開放してください!到着次第、即座に現場に向かいます!>
簡易的な状況報告を受け取ったアキッキーは、すぐさまユグドルシオンのハッチの開放を頼み込む。
「それはそうと、アキッキーはどこから通信しているのよ?こっちに来るのはいいけれど。」
<あ、すみません。今、現在地の情報と予定ルートのデータをそちらに送ります!お願い!>
アキッキーは回線を繋げたまま隣にいる仲間に話を繋ぎ、ユグドルシオンにそのデータを送信していった。
一方、こちらはメディアステーション内自然公園。
しかし、いつもと様子がかなり違う。
このメディアステーションに存在しない謎の植物が公園内を埋め尽くしており、しかもそれまで見たことのない謎めいたモンスターたちが多数たむろっていたのだ。
しかも、そのエリアを襲っていたであろう亜空軍の戦闘兵士たちが、怪物たちにやられたのか、全員がばったりとうつぶせになって倒れていた。
そしてその中に、ただ二人、白髪の人間の男女が二人、怪物たちの中心にいた。
男のほうは、白銀の鎧とマントを纏った騎士とも王ともとれそうな威厳に満ち足りたような雰囲気の存在。
かたや女性は肩を露出した真っ白な衣服を纏った“巫女”の雰囲気を思わせる存在。
ただ一ついえるのは、二人は人であって人あらざる存在であるということである。
その異様な空間と化した自然公園に、一つの影が…。
「久しぶりだな、始まりの男。…いや、葛葉鉱汰と呼ぶべきか。」
視線を向けると、どこかの民族衣装のような雰囲気の男が現れていた。
「…その名前を覚えていたか、DJサガラ。」
「ふっ、お前もその名前で俺を呼ぶんだな。」
DJサガラ―――。
先ほどまでフェアリーパークエリアにいたあの中年の男だ。
「それにしても、お前のところまでこの衛星に融合しちまったのか?」
「…そのようだ。インベスたちと共にあの星を開拓していた最中に、いきなりこっちに前触れ無く来てしまったからな。」
「サガラは、そのことについて何か知っているの?…それに、この中をうろうろしていた、この戦闘兵は一体…?」
“運命の巫女”と呼ばれる存在――高司 舞はこの状況について聞く。
「亜空軍と呼ばれる闇の陣営が繰り出した、世界融合の儀式“ミキシングローバル”の影響だ。このシードピアを中心に、ミッドチルダや、バサラワールド、べスティアと呼ばれる次元世界を始め、あらゆる世界の要素がこの中につぎ込まれているようだ。」
「…ということは、この黒い戦闘兵たちはその亜空軍のものっていうこと?」
「そうだ。連中はこいつらを“ゼクトプリム”と呼んでいたな。」
ゼクトプリム―――。
亜空軍の主力戦闘兵として活動している彼らも、インベスたちの脅威にはかなわなかったようだ。
「あぁ、そうだ。葛場に折り入って頼みがある。」
「…?」
―――ズババババッ!!!!!!
所変わって、メディアステーション2Fエリアの某所。
このエリアもミキシングローバルの影響を受けており、数多くの亜空軍の戦闘兵がたむろっている…はずだったのだが。
どういうわけか、たった一人の人間にあっという間に一掃されてしまったのだ。
しかも、ただでさえ宇宙空間という寒い空間にもかかわらず、所々に氷が張っていた…!?
だが待て…!?
よく見るとこの男、腕が怪人そのものだぞ…!?
しかもその氷の中に閉じ込められているゼクトプリムもいるぞ!?
「火野映司くん!」
「…!」
名前を呼ばれた青年は、ゆっくりと振り返る。
そこには、スーツを身に纏った一人の男が勇ましいイメージの中年の男が立っていた。
「鴻上さん、お久しぶりです。」
「久しぶりだね。最後に出会ったのがいつだったか…。」
「数年前のことがかなり昔に思えますね…。」
火野映司――。
鴻上ファウンデーションにかつて協力していた放浪の青年。
そして、先代の仮面ライダーオーズでもある。
「その分だと、どうやらグリードの力を制御できているようだね。」
「はい。“人間を守るための力が欲しい”というのが僕の欲望ですから。」
「その力を見込んで、君に頼みがある。新たなオーズの力となるためにもね!」
「!?」
新たなオーズが生まれたことは、映司にとっては初耳であった。
やがて鴻上は、その新たなオーズ=平賀才人の存在についてと、自分が消えてからの今までを語り始めた…。
一方、次元空間の某所。
その内部を、一隻の大型船が航行していた。
鳥の形を彷彿とした姿と銀色に光るボディの独特の艦―――。
その存在を知る者たちは、その艦のことを、“第5やたがらす丸”と呼んでいた。
そして今、その艦内のブリーフィングルームに、やたがらす丸の主要クルーたちが集められていた。
その中には、艦内のサポートを担当するであろう、てれび戦士と同じくらいの年齢の、赤ジャケットを着た子供たち12人も集められていた。
「うむ、集まったようだな、諸君。」
一同の視線の先には、彼らの直接の指揮官であるスキンヘッドの老人がいた。
諸君も知っての通り、先日我らの故郷であるルヴェラが亜空軍の侵攻を受け、世界の一部が切り取られてしまっている。
その影にいるのは、ドクターカゲロウが盗み出した“闇のアーカイブ”から復活を遂げた“魔天使のブラジラ”だ。
彼らの力によってルヴェラが大規模的なダメージを被ってしまっている。
世界を取り戻すためには、亜空軍全てを倒さなければならない…。
指揮官の言葉に、全員が緊迫した表情になる。
しかし、二人のリーダーが口を開く。
「確かに今まで以上の脅威となるのは感じています。しかし、我々は決してその脅威に屈したりはしません!!」
「スーパー戦隊が命をかけて守ってくれたあの世界を、必ず取り戻します!そのために私たちはここにいるんです!!」
その力強い言葉に、周囲の12人の少年たちもうなずく。
スーパー戦隊消滅後のルヴェラを守り通してきた自分たちには、彼らから受け継いだ愛と勇気がある。
今こそ、その想いを示すんだ…!!
――ヴィーッ、ヴィーッ!!
ここで通信が入った!
<わわわ、ヤバイよヤバイよぉ〜!!!>
独特の声で大慌てする中年男の顔がいきなり現れた。
「で、出川隊長!!??」
「どうしたですかいきなり!?ふざけている場合じゃ――。」
<ふざけていたら亜空軍とおっかけっこなんかやっていないって!!>
『!?』
亜空軍とおいかけっこ!?
その理由は、すぐにはっきりした。
副長の女性――虎南有香がハンドコンピューターを操作して状況を確認すると――。
「大変です!!ダグベースがこちらに向かって急速接近!その背後に亜空軍の戦闘メカが追尾しています!!」
メディアステーション合流前に亜空軍とひと悶着ということか!?
「大野くん、シードピアに向かう前の前哨戦だ!」
「了解しました!!」
状況を聞いたリーダー――大野拓郎が動いた。
「よし、総員緊急配備だ!第5やたがらす丸、Let's!!緊急発進!!!」
所変わってこちらはアドラメレク内部。
「…よし、コピーが終わった!!」
その研究所では、艦内に偶然迷い込んでいた5人の男女――織田信奈、相良良晴、黒神めだか、人吉善吉、河城にとりが研究所内の持てる分のデータとアイテムを収集し終えていた。
「それにしても、艦内が色々と慌しいな。」
「それにさっきの人たち、いきなり消えちゃったし…。」
目の前には、“先ほどまで”イービルライダーズたちが入っていたポッドがあった。
実は、データのコピーが終了する数分前に突然彼らの姿が消えてしまったのだ。
「何だかいやな予感がするな…。そろそろこっから脱出したほうがいいな。」
「そうだね。」
一同の考えは一緒だった。
彼らは持ち帰れるものを傍にあったかばんやケースに詰め込み、隙を見て研究室から逃げ出す。
「貴様ら、そこで何をしている。」
『!!??』
…全員が扉から出た瞬間、背後からかけられた声!?
振り向くと、そこには左半分が青色、右半分が赤色の怪人――収監エリアの警備を担当していたはずのクラスター・ジャドウだ!!
「研究室に潜り込んでいたところを見る限り、妙なことをたくらんでいそうだな…。何をしていた!?」
「それを簡単に話すほど、俺たちが馬鹿じゃないってことくらい、あんたもわかるんじゃねぇのか!?」
善吉の挑戦的な態度の言葉に、クラスターは納得した表情になった。
「ふん…確かにな…。大方そんな口をたたくとは思っていたがな…。ならば、仕方あるまい…。」
―――暁黒(ぎょうこく)!!!
キーワードと思しき言葉を口にした途端、クラスターの体に瞬時に漆黒のバトルスーツが装着された!
見ようによってはロボットともとれるメカメカしい風貌の存在に、一同はたじろぐ。
「そ、その姿は!?」
「これは“ブラックブートレグ”。宇宙刑事のシステムを参考に作り上げたバトルスーツだ。」
どうやらクラスターが作り上げたもののようだ。
おそらく戦闘力も計り知れないはずだ…!
―――待てっ!!!
「……!?」
クラスターの背後から一人の男の声。
振り向くとそこには、白銀の鎧兜を身に着けた青年の姿があった。
「…!?貴様、バサラークの浅井長政か!?」
「おぉ、私と同じ世界の者か!?」
信奈が口にした青年の名を耳にした途端、クラスターは耳を疑った。
「ナガマサだと!?…貴様、セルバンテスに処刑されたはずでは…!?」
その疑問に答えたのは、背後に現れた一つの幻影だった。
『このザムシャーが、この者と一体化し、新たな力を与えたのだ。』
「なんだと…!?」
幽霊の魂と一体化して復活するというチートにも似たこの手段は、クラスターとて予想だにしなかったことだった。
「お前たち、この者は私が相手する。その内に逃げるのだ。」
「え、でも…。」
『案ずることはない。それに、この艦は予想もつかない事態で混乱している。脱出するなら、好機は今しかない。』
クラスターに敵対するということを考えると、長政はこちらの味方ということになるのか?
一同は困惑したが、迷っている暇はなさそうだ。
「……生きてまた出会えたら、改めて礼を言うわ、長政!」
「…幸運を祈る!!」
信奈とめだかがエールを送り、仲間たちと共に通路の先を行く。
そしてその場には、長政とクラスターだけが残り、緊迫したムードが包む。
数分の沈黙の後、相対する二人は剣を抜刀し、剣戟を交わし始めた…!!!!
こちらはアドラメレク監獄スペース。
そこには、円月刃を携えた亜空軍の戦士・ティラの姿があった。
クラスターと急遽、見張りの交代を進言し、ここにいるのだ。
「…まったく、冗談じゃないわ…!メディアステーションに軍勢を送り込んだ瞬間にこっちで異常事態なんて…。」
そう、ティラは知る由もなかったが、艦内で侵入者が複数登場したり、しかもそのうち大型軍勢と一緒に出てきている連中は格納庫で大暴れ中ということで、収集がつかなくなってきているのだ。
「このままじゃこの場所も安全とはいえないわ…!でも、あいつらも馬鹿よね。ここに人質が捕らえられていることに気がつかないなんて…フフフフフ。この際、この牢屋の連中も地獄に送っちゃおうかしらねぇ☆」
「それは、この艦ごと爆破処分するってことか!?」
「!!!」
意外すぎる声がティラの背後から聞こえてきた。
振り向くとそこには、すでに剣を抜刀していたビートルファンガイアの姿があった!!
「ちょ…どういうこと!!??あんた、メディアステーションに向かったんじゃなかったの!!??」
「人質を盾にして亜空軍に協力させようという貴様らのやり方に納得がいかなかったのでな、悪いが縁を切らせてもらうことにした!」
予想だにしなかった絶縁宣言。
その状況に、ティラの表情が一変した…。
「…前々からあんたの存在は気に食わなかったんだけど、まさかこんな状況の最中に絶交されるなんて思わなかったわ…。でも…。」
ティラは円月刀を構えなおす。
「これであたしは気兼ねなくあんたを殺せるってことよね!だったら遠慮なくやらせてもらうわ!!」
メディアステーションで敵軍が総攻撃を仕掛けている一方でのアドラメレクの内部崩壊の前兆…。
世界融合の大混乱は、誰も予期し得ない流れを生み出していた…!!!!
――ギュワワアアァァンッ、キキイイィィッ!!!
一方、再びメディアステーション。
いきなり亜空間ゲートが開いたと思ったら、そのゲートの中から一台の赤いスポーツカーがと各種警察車両が現れた!?
スポーツカーのドアが開くと、中から一人のたくましい女性刑事が現れた。
その腰には、銀色のベルトを装備している。
そして、パトカーの中からは小学生相当の年齢を思わせる少年が姿を見せる。
「ここがメディアステーションだね。」
[ようやく着いたか。]
「ここにてれび戦士たちがいるのか…。」
女性刑事はてれび戦士たちの存在を知っているのか、彼らとの再会を待ちわびている様子だった。
[彼らはこの衛星内の中心部にいる。各エリアに通ずるエレベーターエリアだ。]
「よし、全速力で急ぐぞ!ベルトさん、ナビゲートは頼んだぜ!」
[任せたまえ、秋山刑事!!]
そう言うと彼女たちは再び車に乗り込んでエンジンを噴かした。
[勇太、我々も行くぞ!ミッドチルダの仲間たちを助けるために!]
「オッケー!ブレイブポリス、全速急行だ!!」
『了解!!!』
少年刑事――友永勇太も決意を胸にパトカーに乗り込んで、仲間たちと共に秋山刑事たちの後に続いた。
---to be continued---
☆あとがき
ついに累計200話達成〜!!!!!
…というわけで、予告からおよそ1ヶ月。
ようやく記念すべき200話の掲載ののろしを上げることが出来ました!
この200話では3部構成に分けてFWパニックの終焉を描いていきたいと思います!!
その足がかりとも言うべき前編では、両陣営の大きな動きを中心にお届けしましたが、亜空軍は現場は善戦にもかかわらず本拠地は悪戦苦闘という対極をなしています。
この混乱、どこまで広がるんでしょうか…!?
一方で新たな参戦フラグも立ってきている様子。
この200話で一気にその活躍も書かせていただきたいと思います!!!