Phase198 FWパニック・CONVERGE
15th Connect〜過去のかけらと未来の結晶〜


「…お前までここにいることはないのでは…?」

「いや、個人的な感情で勝手に私闘をやろうとしたんだ…。これくらいは当然だ。それに…、お前とゆっくり話す時間も欲しかった…。」

前回の戦いで主に棄てられたセルベリアは、クルトに怪我の治療を薦められ、怪獣にされてしまった謎の少女二人とともに、ここ、エリアルベース内の医務室に連れてこられていた。

その場所には、意外にも彼女の看病をしているイムカの姿も。

彼女はセルベリアに復讐するという個人的な感情に突き動かされ、あわや無許可の処刑という事態になったため、自主的に謹慎を申し出てきたのだ。

そこで、その償いの意味も込め、彼女の体力が回復するまでの間の面倒を見ることになったのである。

また、ネームレス・ハウンド唯一の衛生担当である、No.46――クラリッサ・キャラハンも同席。

異世界の医療技術の勉強の一環として、手伝いをすることにしたのだ。

「……今更、こんなことを言っても許してもらえないのは承知だが…、言わせてくれ。…お前の故郷の人々に、申し訳ないことをした…。すまない…。」

セルベリアのその言葉に、イムカは首を振った。

「…もう謝ることはない…。それに、仇を討ったところで全てが戻るわけでもない…。むしろ、私が故郷のみんなに謝らねばならない…。」

「…?」

イムカは、そういうと、独り言のように話し始めた…。





“ダルクス人は決して報復をしない”という掟を、私は今まで破り続けていた…。

故郷を失ったあのとき、私はみんなの死と悲しみから逃れたかった…。

そのためには、過去も思い出も、全てを捨てて、復讐のために生きるしかなかった…。

結局私は弱く、愚かだったんだ…。

あのときの悲劇を受け入れられないまま、クルトやリエラ…、ネームレスのみんなに冷たく接していた…。

それだけじゃない…、復讐のために、兵士として何十人もの人間を殺めてきた…。

そのせいで、私と同じように深い悲しみと憎しみを持った人間を生み出してきた…。

気づかぬうちに、私も“人殺し”の烙印が押されていたんだ…。








「……」

戦争であるがゆえ、誰かを討たなければならないという、兵士としてのジンクス。

そして、空虚な悲しさと憎しみしか生まないという、言葉にしがたい苦しみ。

イムカは、一人の人間としてその重さをようやく知ったのだ…。

「…お前は優しい女だな。」

「…え?」

セルベリアに言われたイムカは、一瞬、目を丸くするが…。

「戦っていたときとは言葉がまるで違う。それが、本当のお前なのだな。」

「あ…。」

そうだ、自分でも知らない間にいつもの棘のある言葉づかいから、一人の女の子としての柔らかい口調になっていたのだ。

イムカはやがて、その理由を語ってくれた。

「言葉に棘があったのは、復讐するものとして生きていたためだ。本当なら、誰にも頼らず、目的も明かさず、甘えることもしないまま、死ぬつもりだったから…。」

「味方すらも頼ろうとしないつもりだったのか?なぜだ?」

「一度でも優しさに甘えれば、復讐のために研ぎ澄ましていた怒りの刃が錆付いてしまう…。それが怖かった…。」

誰かに対する優しさは心の弱さ。

強さと力を求めるものであれば、一度は考えそうな概念である。

「でも、お前に抱きしめられて、心の底から泣いたとき、それまで心の奥底にあった苦しさや怖さが、全て吹き飛んでいくのを感じた…。どこか懐かしさを感じさせる、温かさだったから…。」

「…そうか…。」

素直で自然になったイムカの言葉に、セルベリアも見せたことのない微笑を返す。









―――コンコン。

「「…?」」







扉をノックする音に反応し、二人は視線を向ける。

そこにいたのは、先ほど宇宙での戦闘に参戦していたピンク色の髪の少女だった。

「しつれ〜い。お話中だったかしら?」

「いや、構わない。」

「お前は…確かあのときに通信をしてきた…。」

「そ。私はキリエ。キリエ・フローリアンよ。」

現れたキリエ、なぜか両手を後ろにして何かを隠しているような状態で、そのままイムカたちのところに近づく。

「イムカさん、あなた、“ティルカ村”の生まれって言ってたわよね?この花、覚えてるかしら?」

そう言って後ろから差し出したのは、鉢植に納まった一輪の小さな花。

ピンク色とも紫とも取れる淡い色合いのきれいなものだった。

その花を見た途端、イムカは目を見開いた。

「!!!…それは、まさか…、エイルシュ!!??」

驚きのあまり声が震えたイムカの言葉に、キリエは肯定を示し、その花を手渡す。

「…間違いない…、本物だ…!!…でも、どうして!?」

「…信じられないって顔しているわね。」

「当たり前だ!ティルカ村が滅びたとき、このエイルシュも全て焼き払われていた!もう二度と、見ることもないって思ってたのに…!」

すると、キリエは一瞬の間を置いた後、その理由を語りだした。







あたしのパパ…グランツ・フローリアンが以前、バサラワールドの色々なところを旅して回っていたとき、偶然ティルカ村を訪れたことがあったの。

ティルカ村でしか咲かない特有の花、どこの世界にも存在しない特別な花。

その存在に興味を持ったパパは、その花をもらって、それをエルトリアの荒野に咲かせたいって考えて、色々と研究を続けていたの。

あたしは物心ついたときから花の世話をするのが好きだったから、この花の世話も続けていたのよ。

特別な花だからどの花よりも大切にしなきゃいけないって、パパに言われていたから…。








「でも、なんだかんだいってこの花があたしの中で一番大好きって言うのが大きな理由なんだけどねぇ。」

キリエとアミタの父親が偶然見つけたエイルシュの花。

偶然とはいえ、それがティルカ村という故郷の記憶を繋ぎ止める大きな結果を担うことになったのだ。

「イムカさん、その花、そこに置いておきますね。」

クラリッサは、エイルシュの花を預かり、セルベリアのベッドの片隅の机に置いた。

「…あ、そうだ。」

ふと何か思い至ったキリエは、懐から手のひらほどの小さなビンを取り出す。

「イムカさん、これ受け取って。」

受け取ったビンの中には、植物の種と思しき小さなものがいくつも入っていた。

「…!…これって…!」

脳裏に思い至った節があり、イムカはまたしても目を丸くした。

その表情を受け取り、キリエは笑みをこぼす。

「エイルシュの種。初めて花を受け取ったときから研究と育成を続けていくうちに、結構いっぱいできてきたの。あなたなら、受け取る資格はあると思う。」

失われた故郷の記憶のかけらが、幾年ぶりに手元に戻ってきた。

その嬉しさからか、泣き笑いにも似た表情のイムカの瞳から、またしても涙が…。

セルベリアに抱きしめられ、凍てついていた心が溶かされてから、イムカも一人の人間としての一歩を踏み出していた。

イムカは、受け取った記憶のかけらを、胸に抱きしめ、祈るように膝を突いた







……村のみんな…、この種、私が守っていくね…!

いつの日か、ティルカ村の記憶を、新しい故郷に咲かせていきたいから…!!









――ビュワワアアァァンッ!!!



『!?』








またしても亜空間のゲートが開いた!?

――ザッ、ザッ、ザッ…

「はぁ、はぁ…。」

現れたのは、西洋の騎士を彷彿とする赤色のヘルメットで顔を隠した、一人の兵士だった。

しかもところどころ傷だらけではないか!?

「て、帝国兵!!??」

「っ!!…どうしてここに!?」

イムカとクラリッサの声に気づいたその兵士は、二人の姿を目視で確認する。

「“ネームレス・ハウンド”か…!こんなところで会うとは…!」

「!?」

命運が尽きたともとれる、彼女ら二人とさほど変わらない歳であろう青年の声。

すると、彼の声に聞き覚えがあったのか、セルベリアは傷だらけの体を起こす。

「…その声……、もしや、カールか!!??」

「…!!ぶ、ブレス大佐!!??」

『えっ!!??』

顔見知り!?

意外な言葉が彼女の口から発せられ、その場にいた面々は驚かざるを得なかった。

そして、現れた兵士もヘルメットを外して、その凛々しくて若い顔つきを見せる。

「おぉ…、やはり貴公だったか…、カール・オザ・ヴァルド…!」

「大佐!!」

カールと呼ばれたその青年、セルベリアに会えた喜びか、傷だらけの体を押して彼女のところへと寄った。

「よく生きていた…。」

「はい…!またお会いできて、大変嬉しく思います…!」

どうやら彼女の仲間のようだが…、主従関係とは表現しがたい何かがあるような…そんな気も伺えなくはなさそうだ…。







「ふぇー、なんとかたどり着きましたね…( ̄Д ̄ =3)」

「亜空間から脱出できたのはいいですけど、ここはどこなのでしょうか…?」







あれ?他にも亜空間から脱出した面々が!?

一同が視線を向けると、ほぼ同じくらいの大きさの二人の小さな女の子の姿があった。

いずれも開いている本の上に乗って浮いているが、一方の真面目気質な少女の服装は、未来世界の教祖ともとれる印象の紫と白の正装を纏っており、もう一方は歳相応の少女の印象を持つ薄紫色の衣服を纏っていた。

「う〜ん…一体なんなの…?」

「頭がいたいです〜。」

ふと、亜空間ゲートの諸々のトラブルで騒がしかったのか、気を失っていた二人の少女が目を覚ました。

「!?…コンパさん!アイエフさん!」

「え、イストワール様!?」

「あ、いーすん、久しぶりです〜。」

えっと、今度はそっちで顔見知り!?

「あらら〜ん?これって、一つ一つフラグを回収しなきゃいけない感じ〜?」

面倒ごとが増えてしまったと感じざるを得なかったキリエ、ややこしいことになったと思いつつも、話を聞いていくことにした…。



















































所変わって、先ほどまで戦闘が行われていたエリアルベースの訓練施設。

そこに、宇宙空間での戦闘に参加していた面々が続々と集まってきていた。

「うぉ〜!!!!こいつぁスゴ過ぎるぜぇ〜!!!」

その場で、出会った人たちに所かまわず友情のシルシを交わしまくる弦太郎。

これだけ多数のヒーローとダチになれるなど、人生で二度とない経験だからか、ただ一人興奮しまくっていた。

「さて…、ゴーバスターズ、ギャバン、フォーゼにメテオにアクア、ストライクウィッチーズの静夏ちゃん、スマイルプリキュアに始まって…。」

「キョウリュウジャーやコンボイたちを始めとするべスティアの一行や、ウィザードにウルトラマン、加えてフロニャルドの一行にワンダーロボ。」

「そして、エリアルギルドにケロロ小隊に太陽と月の巫女に、なぜかお互いに顔見知りの小五郎さんたちや森羅カンパニーの一同。」

「さらに、勇者特急隊やゴルドランチーム、異世界のロボットパイロットのゼンガーさんやレーツェルさん、クライドさんの知り合いのサイブラリオンご一行。」

「おまけにウルトラマンの存在に熟知している特殊部隊W.M.G.の面々や、異次元世界バサラワールドからの新参者…。」

「…んでもって、さっき聞いた話じゃ“ゲイムダストリー”って言う世界も巻き込まれたらしいよなぁ…。」

「極めつけは別次元の宇宙からやってきた“炎の海賊”に、貴明さん率いる“蒼穹紅蓮隊”という謎の特殊部隊…。」

一方でアキッキーとNEXTの二人、情報を共有していくうちに次第にイライラを募らせていった様子で…。







「…マンネリ化っていうやつかも知れないけれど…。」







――いくらなんでも多すぎるよコレ!!!!!!!









またしても怒り爆発…。

まぁ、これだけの大所帯が一箇所に集まれば、そうなるのも無理はないが…。

かたや、なぜか部屋の片隅でちょこんとしている一同が…。

先ほど医務室で襲撃を受けていたマナたち5人だ。

「ねえ、“スマイルプリキュア”がいるっていうことは、ここって…!」

「数年前の世界…っていうことよね…。」

「にわかには信じられない話ではありますが…。」

「できれば、私たちもあの人たちの力になりたいけれど…。」

「えぇ、妖精たちとアイちゃんがいなければ、どうにもなりませんし…。」

片隅でこそこそと話をしている一行。

何やら色々と意味深な言葉を話しているようですが…?







「わたしたちがどうかした?」

――ドキッ!!!







そんな彼女たちの話を聞いていた、キュアエコーこと坂上あゆみ。

「え?いやいや、なんでもないから、気にしないで。」

六花が慌てる様子で“気にしないで”というが―――。

―――ヒラッ

彼女の服のポケットから一枚の写真が零れ落ち、偶然それがあゆみの足元に…。

「これって…?」

『あ!』

あゆみがそれを拾うと、その写真には―――。







「………え?」







信じられない光景が写っていた。







「えええええぇぇぇぇぇ!!!!????」

「!!??」








あゆみの叫び声に反応した一行は一斉に視線を向ける。

「あゆみちゃん、どうしたの!?」

スマイルプリキュア一行が駆け寄る。

「みんな、これ…!!」

『…?』

全員が、あゆみの拾った写真を見る。

するとそこには―――。







それまで見たことのない5人の美少女戦士が写っていた。







「な、何コレ!!!!????」







他の一同も一斉に駆け寄ってその写真を見る。

「これって、もしかしてプリキュアか!?」

「だとしても、こんな少女たち見たことがない…。」

「ちょっと待った!!!」

弦太郎と流星が首を傾げたそのとき、アキッキーが思わず待ったをかけた。

おもむろにその写真を取り上げると、ズカズカとマナたちともとまで歩み寄る。

そして、まじまじとその写真に移った少女の顔と目の前の5人の少女の顔を見合わせる…。

“写真の美少女戦士とマナたちの顔がどこか似ている”…。

そう思ったアキッキーは、NEXTをモバイルフォームに変形させた。

「NEXT、この写真とこの子達の顔を照らし合わせてくれる?」

「?…了解だ、バディ。」

突発的な指示に戸惑うNEXTだったが、言われたとおりにその写真を照らし合わせる。

すると、次第にNEXTの液晶顔面が驚愕の表情に変わった。

「……!!!…バディ、もしかして、そういうこと…!?」

「うん…。で、結果はどうだった?」

すると、NEXTはさらに驚愕の事実をぶつけた。









「“この写真の戦士と、彼女たちが同一人物である”確率…、95.87±4.1%…!!!」









『なんですとおおぉぉぉぉ!!!!????』







マナたちもプリキュア!!??

「やっぱり…。」

一同がびっくりする中で、アキッキーは大方推測していたのか、半ばあきらめ顔である。

「あちゃ〜…。」

「ついにバレてしまいましたね…。」

やがて彼女たちが、自身らがつい先日まで体験していた恐ろしい出来事について語りだした…。



















































「大丈夫か?」

「う、うん…。」

こちらはアドラメレクの研究室内。

めだかたちと信奈たちが艦内で邂逅を果たした瞬間、すぐそばで亜空軍に襲われている少女を発見、彼女を助けてこの部屋に身を潜めたのだが、一つわかったのが――。

「それにしても…まさか河童だったなんてね…。」

「実際に見たのは初めてだけど…。」

信奈と良晴が目を疑うのも無理はなかった。

一行が助けた少女――河城にとりは河童の少女だったのだ。

…とはいえ、その姿は二人の知るソレとは大きくかけ離れた…一言で言えば“あまりにも可愛い”姿の存在だったのだからさらに驚きである。

外見は10代くらいの少女だが、技術者を彷彿とする作業服と帽子を身に着けている。

ちなみに“河童”だとわかったのは、先ほど敵軍に襲われた際に偶然、“普段は隠している”帽子の下を見てしまったのが原因である…。

「…ところで、これからどうすんだ…?いずれ他の連中もここをかぎつけるぞ。」

「そうだな…。ここはどうやら研究室のようだし、やつらの情報でも色々といただくとするか。」

さて、一行は潜伏がてら研究室内のデータを物色することにした。

しかし、いざ調べてみると、さすがは亜空軍の研究施設、人体の洗脳や各種バイオ兵器、さらに最新装備の研究資料など、掘り出せば掘り出すほど見過ごせない様々な情報がごろごろと転がっていたのだから恐ろしいものである。

「善吉さん、この人たち…。」

「ん?」

ふと、良晴の目線が、ポッドで眠りについているイービルライダーズの姿を捉えていた。

「これってもしかして…。」

「…あぁ、亜空軍に洗脳されているかもな…。」

「なんとか助け出してやりたいけどな…。」

彼らの洗脳の呪縛、何とか解放する術はないものか…。

「みんな、こっちへ来て!」

にとりが何かを見つけたのか、全員を呼び集める。

彼女は偶然置いてあったノートパソコンを物色、中にあった色々なデータを見つけていたのだ。

「そのポッドの中の人たち、ウイルス兵器で操られているみたいだよ!」

「何だって!?」

PCの画面には、イービルライダーズたちに投与されているであろうウイルス兵器のデータが映し出されていた。

「…良晴、“ういるす”って一体?」

「えっと、わかりやすく言うと、“人の体に悪い影響を与えるもの”ってところかな?」

信奈は戦姫列島――バサラワールド以外の場所に赴いたことがないため、当然ながら近未来的な用語にはかなり疎い。

「そう、そんな感じ。だけど、この人たちに使われているのは、そんな甘い言葉じゃ片付けられないみたいだよ。」

「…というと?」

「このウイルスは、敵軍の科学者たちで作り出した人工的なもので、投与された人間は洗脳されてしまう効果があるんだって!」

「洗脳だと!?」

彼らが“アグル・ウイルス”と名づけたそのウイルスの力に驚愕するめだか。

「ちょっと、“洗脳”ってどういうこと!?」

「だから、この薬を使われた人間は、あの化け物たちの操り人形にされてしまうってことだよ!!」

「!!!!!!」

亜空軍の予想もつかない技術力に、信奈もようやく敵軍の想像以上の脅威であることを知った。

「嘘でしょ…!?…あいつらがそんなこと…。」

「貴方の世界じゃ信じられないかもしれないけど、別の世界に出ればそれもまたよくあることなんだよ。」

別の世界など、彼女にとっては信じられない話だった。

…いや、実際“別の世界から来た”という良晴の存在が、最初からそれを決定付ける証拠になっていたのかもしれなかった。

「善吉、これも含めて、PCのデータをありったけコピーしてくれ!信頼できる人間たちに見せて、対抗策を練る!」

「よし!」

「だったら、コレを使って。私のSDカード。250GBあるから十分コピーできるよ。」

「サンキュー!」

善吉はにとりと操作を交代、彼女から受け取ったSDカードへのコピー作業を開始した。





――ガタンッ、ガラガラガラガラ…!!!

「きゃっ!!??」

『!?』






背後で何かが崩れる音がした!?

振り返ると……。





信奈が足を踏み外したのか、後ろのテーブルをひっくり返していた…。





「なにやってんだよ、信奈!しっかりしろ!」

「ご、ごめん、良晴…。」

立ち上がろうとしたとき、ふと逸らした視線が謎のアイテムを捉えた。

「…?なに、これ…?」

それは、刀がついたバックルと、濃い赤と銀色の錠前だった。

「錠前…?」

そしてその傍らには、異なる形のメカニカルの錠前と、ジューサーを模した赤いバックルが幾つか転がっていた…。

























―――キャアオオォォォォッ!!!!!

アドラメレク格納庫に謎の雄たけびが響いた。

そこにいたのは、予想もしなかった存在だった。







「きょ、きょ、恐竜だああぁぁっ!!!!」

『どわああぁぁぁっ!!!!』








そう、それはなんと青いボディのメカニカルな巨大恐竜だったのだ!

巨大な亜空間ゲートから現れたその存在に、案の定、格納庫の整備と警備に当たっていた戦闘兵たちは大混乱。

「逃がすなトバスピノ!!!スピノブーメランだ!!!」

トバスピノと呼んだ恐竜の頭の上に乗っていた、竜の亜人の少女が指示を飛ばし、トバスピノは背中のブーメランを展開し、それを投げ飛ばして敵軍を一気に吹き飛ばす!

「そこです!」

――バシュンッ!!!

その隣でボウガンで光の矢を放つのは、緑色の衣服を纏ったウサギの耳の少年だった。







彼らの意外な活躍、そしてその存在は、後に連合軍の大攻勢のきっかけになろうとは、誰も知らない……。



















































所変わってこちらは、次元空間に浮かぶ“ディスタンスフォース”の本拠地・“プロヴィデント・フォートレス”。

その司令室で、一人静かに席について構える存在が。

組織の総司令官“ギル・グレアム”である。

ミッドチルダのまさかの消失、さらに数多の次元世界がシードピアに強制融合されたという予想だにしなかったであろう事態が発生し、局員たちは右往左往していたのである。

その状況下で対応できるのは、“彼ら”しかいない。





――ピーッ、ピーッ!





そう思い立った瞬間、彼の元に通信回線がつながった。

「!…グレアム司令、ナツメ隊長から通信です!」

「ん、繋いでくれ!」

その回線を開くと、そこには見知った顔の少年と、彼の仲間たち、さらにその指揮官を勤める壮年の男が控えていた。

『グレアム司令。』

「君たちか。現在の状況は、把握しているな?」

『もちろんです。シードピアに関する情報も随時。』

ミッドチルダの消失から、向こうのほうでも独自に動いていたのか、“すでに準備万端”といわんばかりの表情だった。

「向こうに放たれている亜空軍の攻勢があまりにも大きいため、君たちの手助けを頼もうと思っていたところだ。」

その言葉に対し、通信相手の青年――キョウスケ・ナツメは笑みを浮かべ―――。

『ご心配なく!すでにこちらは“クラウドドラゴン”を含め、全ての出撃準備を整えています!』

さらに、その回線に一人の男が割り込んできた。

『こっちもだ。“超星艦隊”全4隻、いつでも出れるぞ!』

『イクトさん!』

「そうか…、すぐに対応できるか。」

準備もすでに整えており、後はこちらの出撃要請のみ。

グレアムは立ち上がり、全軍に指示した。

「よし、諸君は直ちにシードピアへと転移し、連合軍のメンバーとして参戦するのだ。出動せよ!!!」

『了解!!!!!』



















…回線終了後、キョウスケを始めとする一行は後ろを振り返り、司令官であろう壮年の男に目線を送る。

また、イクトと呼ばれた青年を始めとする“戦艦組”4人も、モニター越しで指示を待つ。

やがて、視線の先の男は立ち上がり、キョウスケに指示を送る。

「キョウスケ、出動命令だ!」

「了解!!!」









――“リトルバスターズ”、ミッションスタート!!!!!!



---to be continued---


☆あとがき
今回はインターミッションパート前編として書かせていただきました、198話。
しかし、色々と片付けなければいけない事項が増えてしまっています…。 “ヴァルキュリア”から断章限定キャラのカールが、“ネプテューヌ”から二人のイストワールが、そしてさらにはまさかまさかの『リトルバスターズ』シリーズが電撃参戦!!! しかも後者に至ってはものすごい存在が絡んでいます…。

さて、次回はインターミッション後編!まだまだ大混乱は収まりません!……色んな意味でね。(苦笑)










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