Phase191 FWパニック・CONVERGE8th Connect〜合流と情報と新たな前兆〜
「おぉ〜っ!お館さまぁ〜っ!ご無事で何よりいいぃぃ!!!!」 「貴様もなぁ!!!幸村ああぁぁぁっ!!!!!」―――バキイイィィッ!!!!『え゛!!!???』 バサラワールドの真田幸村、自らの主である武田信玄との再会を喜ぶや否や、いきなりその本人とクロスカウンターパンチ!!?? しかもお互いにクリーンヒット…。 「お館さまぁ!!!」―――ドゴッ!!!「幸村ぁ!!!」―――バキッ!!! 「お館さまああぁぁ!!!」―――ベキッ!!!「幸村あぁぁ!!!」―――ズドンッ!!! 「お館さまあああぁぁぁ!!!」―――ドガンッッ!!!「幸村あああぁぁぁ!!!」―――ベシッッ!!! 「ぅぅおお館さまあああぁぁぁぁぁ!!!!」「幸村あああああぁぁぁぁぁ!!!!!」 ――ドゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!!! それどころか二人は強烈な拳でお互いを殴り合っているではないか…! しかもそのレベルが徐々に高くなっている…。 「Oh,my…、まぁた始まっちまったか。」「あの二人、事あるごとにあぁやるよね…。」 戦友の正宗と、知り合いの良太郎、この光景には慣れたのか、若干あきらめもただようくらいの雰囲気だ。 「なぁ、止めなくていいのか?」思わず士が指さして二人の様子を心配するが…。 「あぁ、No problemだ。あの二人はあれがいつもの光景なんだからな。」 「それに、ようやく合流できたって言う喜びがあるせいか、あれでも少しだけ羽目を外しているくらいだから…。」 あの勢いでメディアステーションがさらに壊れないか心配なんだけど…。 「それにしても、凄いわね…。」ハルヒは目の前の光景に感心していた。 つぼみたちプリキュアの先輩が、コレだけ多く存在していたということをこの瞬間に初めて知ったのだから。 「合計で、えっと…?」「23人。」「はわ〜…、すごいですぅ…!」 キョンたちディプレッションメンバーたちもこの数には驚かされる。 「プリキュアがコレだけ存在するとなると、めがっさ心強いさね。」 鶴屋さんも目をキラキラと光らせて期待に胸を膨らませる。 「…あれ?でも、何か足りないような…。」 ふとキュアマリンことえりかが、メンバーたちを見渡して言いようのない物足りなさを感じていた。 「はっ!」すると、キュアメロディこと響が何かを思い出した。 「そう言えば…。最近出来たばかりの、後輩の“スマイルプリキュア”のみんなが、いない、よね…?」 『………あああぁぁぁっ!!!!!』 「ちょちょちょ、ちょっと待って!プリキュアってまだいるの!!??」 響の予想もしなかった発言にハルヒも突っ込みを入れざるを得ない。 尚、これはアキッキーですら知る由もなかった事実だが、彼女たちには“スマイルプリキュア!”と呼ばれる、最近プリキュアオールスターチームに選ばれた新鋭の6人組が存在し、亜空軍のミキシングローバルの影響を受ける直前まで、彼女らとともに戦っていたのだ。 「おいおい、どんだけ多いんだよ、プリキュアって…。」 「そのうちスーパー戦隊並に多くなっちゃうんじゃないの?」 どんだけ大所帯になるんだ、このシードピア連合軍…。 「桃華お姉ちゃん!」「姉上!」「愛紗ちゃんも鈴々ちゃんも、みんなも無事でよかったわ。」 こちらは、ほぼ全勢力が集結しつつあったラブプリア連合軍。 義理の姉妹の契りを結んだ3人を中心に、再会を喜び合う。ふと、曹操が話を切り出す。 「ところで、劉備、“天の御使い”はどうしたの?」 「そういえばそうね…。一刀はあなたたちと一緒に行動していたんじゃないの?」 孫策も思い出した素振りを見せ、劉備に問いかける。 「それが…、あの亜空軍とかいう敵の数が多すぎて、途中ではぐれてしまいまして…。」 大方予想はしていた答えだったが、彼女の言葉を聴き、肩を落とす一同…。 「…そう…、まあ、あれだけの軍勢が一気に押し寄せれば、そうなるのも仕方ないわね…。」 「ご主人様だけじゃない。紫苑や董卓軍の一行も行方が知れていないしな…。」 関羽のその言葉に、一行の表情もさらに曇る。 「敵に捕まっていないことを祈るしかありませんね…。」 諸葛亮の言葉に一同も頷き、仲間たちの無事を心の中で祈った。 「えぇっ!?一美がいないの!?」「クリアリアたちは無事だといいが…。」 「総監たちもそろそろこちらについてもいい頃だと思いますが…」 他にも、シャナの仲間の吉田一美や、クライドの仲間のクリアリアたちサイブラリオン連合、そしてミライたちの仲間であるW.M.G.連合軍など、ちらほらと仲間の安否を気遣う声が…。 「5pbちゃん!」「ネプネプ!みんな!」 こちらは“ゲイムダストリーα”と言う異次元世界から迷い込んだ謎の少女たち。 どうやら5pbと言う名前の歌姫と知り合いということから察して、彼女もこの世界の出身で間違いなさそうだ。 「みんなもこっちに来てたんだね!」 「うん!見たこともない敵に襲われてどうなるかと思ったんだけど、なんとかね。」 お互いの無事をようやく確認できて良かったのだが、気になっていたことが…。 「でも、みんなだったら“女神化”して戦えたはずだよね?どうして変身しなかったの?」 すると、黒服の女の子が意外な発言をした。 「しなかったんじゃなくて…、“出来なかったのよ”。力を封じられて。」「え?!」 その言葉を後に続き、真っ白な服の双子が、服の袖をめくって何かを見せる。 「へんなばけものに…。」「へんなおふだをはられたの…。」 そこには確かに、見たこともない文字が綴られたお札が貼られている。 他の一同も、足だったり首筋だったりと、それぞれ一箇所ずつお札が貼られていた。 「このお札のせいで私たちは、本来の力をなくしてしまっているの…。」 「変身すら出来ないのはそのせいなんです…。」明らかに別世界の妖術の可能性が見受けられる…。 「ちょっと待って!」 そこに割り込んだのは、意外にもレジーナたちだった。 「その腕のお札、よく見せて!」―――グイッ!「ねぷぅっ!?イタタタ…。」 いきなり紫色の少女の腕を引っ張り、張られているお札をマジマジと見つめる。「これって…!!!」 その視線に、シャルルたち4人も加わる。すると…! 「ああ〜っ!このお札って…!」 するとラケルが何かを思い出し、自分の服の右腕をまくる。そこには…! 「あれ!?それ、私たちに張られているのと同じもの!!??」「うそ…!あなたたちも!?」 意外な境遇の面々に出くわしたと全員が思ったのは言うまでもないが、まさかお互いに“チュウボウズに襲われた面々だった”とは思いも寄らなかった…! 「こいつはImpossibleだね…。」 その会話に加わったのは、レンジャーズストライクのメンバー・シュリケンジャーだった。 「Youたちがチュウボウズに力を奪われている相手なら、解除するための方法があるよ。」 『本当に!!??』 札を取る方法がある。一同はシュリケンジャーの話に真っ先に喰らい付いた。 シュリケンジャーは、先代のガオレンジャー、ハリケンジャー、ゴウライジャーと共闘したときの記憶を語りだした。 以前、ガオレンジャーの力がそのチュウボウズの作戦によって悪用されたときがあってね、そのときにガオレンジャーたちはYouたちに張られたものと全く同じ札を貼られて力を封じられていたんだ。 そのチュウボウズと戦った際、彼のベルトのバックルの力がお札とリンクしていることに気付き、隙を付いてそこに集中攻撃を加えたら、お札の効力が解除されたんだ。 でも、まだガオレンジャーの力を取り戻すとまでは行かず、ミーたちはそこまでに至るまでかなりの苦戦を強いられることになったんだけどね…。 歴戦の戦士といえど、彼もこのときは想像以上に苦戦を強いられていたようだ…。 「もし、チュウボウズが今回も同じ作戦で君たちの力を封じているとしたら、まずはお札の力がどこからコントロールされているかを確認しなければならない。そこが分かれば、ミーたちもYouたちの手助けが出来るはずだ。」 一筋の光明が見えてきた。力を取り戻すまで、しばらくの我慢だ…! 『アキッキーさんの義妹(いもうと)!!??』 こちらは広報課一同中心に、アキッキーの身内で固まっている面々だが、合流したメンバーの一人である、イエローマスクことイクスヴェリアがアキッキーの義理の妹だということが明かされ、案の定一同も驚きの声を上げる。 その後の流れについては、アキエとコースケと空課長がそれぞれ事情を代弁したため省略させてもらうが、彼女の出自についてはアキッキーを知るシードピア連合軍にとってこの話は全く予想していなかった…。 「…そういえば、アキッキーはどうしたの?」「…え?…やっぱりそっちにも来ていないんですか!?」 『……は!!??』 雷電のその発言に、コースケはもちろん、シードピア連合軍全員が耳を疑った。そこにトーマが会話に加わる。 「実は、いつの間にかアキッキーさんの反応がメディアステーション内から消えてしまっていたんです。多分、メディアステーションの融合後の時点から…。」 「なんだって!!??」「道理でアキッキーからの連絡がないわけだよな…。」 全員がアキッキーの心配をしかけていた、そのとき―――。 「大丈夫ですよ。」 ナナミという名の少女がその不安を取り除いた。 そして、シンクやアデルたち、なぜかダイスケも“心配無用”といわんばかりの笑みを浮かべている。 「アカレッドだったら無事ですよ。」「私たち、先ほど彼と通信をしていたのですから。」 「俺もその通信のやり取りを通じて、アキッキーさんの安否を確認しました。間違いありません☆」 ―――マジで!!!!???? 私たちの世界の“バサラワールド”も、亜空軍の攻撃に見舞われて壊滅状態になって真っ暗な亜空間を彷徨っていたときに、偶然このシードピアの月面にたどり着いたんです。 アキッキーさんと合流したのは、そのときなんです。 その月面にも、多数の亜空軍戦力が展開されていて、私たちは彼の助太刀に回ったんです。 戦闘がどうにか終了して、私たちもシードピアの皆さんの援護に向かおうとしたんです。 ナナミの掻い摘んだ証言を引き継ぐ形で、アデルが加わる。 「私たちがアカレッドの無事を知ったのはその後なのです。ブレイブコネクトと言うネットワーク機能を使ってナナミと通信を試みたときに、そのモニターの中に彼の姿があったのです。」 アキッキーの安否が確認できた。一同はようやく自分たちの中心的存在の彼の無事を知り、やっと胸をなでおろせた。 「あ〜、ちょっといいか?」 …と、ここで遠慮がちに孝(ゴッドリュウケンドー)と麗(マグナリュウガンオー)が会話に入ってきた。 「お前、さっきまで月面での戦闘に参加していたんだよな?」 「その上で聞きたいんだけど…。その月面の“あの惨状”って、どういうこと…?」 『…………………………え!?』 そう言って指さした先。一同もその先に合わせて視線を斜め上に動かす。 読者諸君の中ですっかり忘れている方もいると思われるので、今一度言っておこう。 実は今、その月は――――。 “そこで発生した戦闘の終盤のある事情”のせいで、真っ二つに割れているのである。 ――な゛、なんじゃありゃああぁぁ!!!??? 「あ、えっと、そのぉ……。」 これにはナナミも言葉につまり、どこからどう説明すればいいか判らなかった。 (言えるわけないもん…。“異次元世界の魔法少女がとんでもない攻撃で敵もろとも月を砕いた”なんて…。) 「…は、ハックションッ!!!!!」 エリアルベースにいる“その張本人”、自分がとんでもないことの噂になっているなど、知るはずもなかった…。 「………?????」くしゃみの原因など気にせずに、業務に戻ろうとした矢先―――。 「………あれ?この反応…。」エリアルベース・訓練区画エリアで新たな転移反応が確認された……!!! 一方、こちらはシードピア衛星軌道上に近づきつつある鮫型の宇宙戦艦。 戦艦に記された骸骨のマークから察するに、宇宙海賊だろうか…? その内部のコントロールブリッジには、艦の中で生活をしているであろう船長とその仲間たちが集まっていた。 「マーベラスさんからの遺言…。」「それが、おぼっちゃまのもとに現れたと…。」 “婚約者”と“執事”の言葉に、船長は小さく頷いた。 「ゴーカイジャーたちはザンギャックと痛み分けた…。あのメッセージから、その無念さが伝わった…。私たちは新たなゴーカイジャーの誕生を見届ける責務がある。」 彼の静かな決意、その視線の先には、もうすぐ自分たちが足を踏み入れる世界がモニター越しに映っていた。 「その新たな海賊戦隊が、あの世界にいる…。そういうんだね、兄さん。」 「そうだ…。希望の種の集まる世界“シードピア”…。プラズマ界の混乱の中心となっている場所だ…。」 その手に、虹色の鍵を持つ“船長の弟”も、真剣な眼差しでその世界を見つめる。 『ん!?船長、ワープ反応だ。“炎の海賊団”のお出ましだぜ!』「来たか!」 すると、電子音声の言葉どおり、自分たちの戦艦の背後から続々と赤いタンカーのような戦艦が続々と合流してきた! 『キャプテン・イーザック!しばらくだったな!』『元気にしてたか!?』『また一緒だとは思わなかったな!』 通信回線に入り込んだのは、“炎の海賊団”の中心である3兄弟だった。 「フッ。ガル、ギル、グル、相変わらずだな!」同業者との再会は、海賊にとって非常に心地いいみたいだ。 「お前たち、マーベラスから預かった“例のモノ”、持ってるか?」 『あたぼうよ、シリアスのガキ!こいつだろ!?』 そう言って、見せた虹色の鍵。それはイーザックのもつ鍵と全く同じものだった。 ――ポオオォォ〜ッ!!!!「『!』」 汽笛が聞こえた。同時に開いた時空トンネルのゲート。 そこから現れたのは、黒いボディの大型機関車だった。「ようやく来たか!黄金勇者の主たち!」 それはイーザック……いや、ワルター・ワルザックにとっての因縁深い存在でもある少年たちである。 『よう!ワルターにシリアス!久しぶり!』「カズキくん!」 黄金勇者連合軍“ゴルド・レジェンディオンズ”、ここに全員集合となった…!!! シードピアで激闘が続く中、ここは時の砂漠に存在する時間警察の本部。 かつて闇の書事件において鳴海探偵事務所の面々に情報を提供した黒崎レイジは今まで以上に焦っていた。 「くっ、亜空軍の起こした次元世界融合が原因で助けにいけないなんて・・・・。」 現在、ぐちゃぐちゃになった時の路線の修復のため、本部は上へ下へ、右往左往の大騒ぎとなっており、増援をシードピアに送ることが到底無理な状況だったのだ。 鳴海探偵事務所の一同やデンライナーポリスの安否が気にかかる。 「レイジ捜査官!例の面々、招集完了しました!!」 「!…わかった、すぐに向かう!」 そんななか、一人の部下から報告を受け、足早にその人物たちのいる場所へ向かうレイジ。 そこには、どことなく、アキッキーやコースケなど“L.S.広報課一同”に似ていそうな顔つきの一同や、特殊な変身アイテムらしきものを携えた4人の少女、さらには番場と顔つきが瓜二つの男や、ミッドチルダのとある高校の制服を着た少年、そして誰よりも戦う決意に満ちた強い眼を持つ男が待機していた。 「レイジさん、こちらも召集完了です。」「リング・スノーストームか。ご苦労。」 リングと言う名の女性捜査官に連れられてやってきたのは、いずれも10代くらいの年齢を思わせる身長の3人の男女だった。 「黒崎さん、レインボーレッシャーの出動準備も完了していますよ!」 「各種装備も準備完了済みです!」「いつでもOKですよ!」 さらに、言葉をしゃべるパペットをはめた車掌と、そのアシスタントと思しきロボットも、反撃の準備完了といわんばかりの雰囲気で合流してきた。 「早速だが、君たちに一つ話をしておきたい。」 レイジは、現在の状況の報告を兼ねて、集まった一同に話を始めた…。 ―――ズバッ!!!!こちらはメディアステーション内部某所。 ここにもまた新たな放浪者が合流していた。 身の丈以上の大型の剣を携えた、黄色いツンツン髪の毛の青年―――。 片腕が特殊アタッチメントになっているゴツイイメージの中年男性。 格闘術でモンスターたちを圧倒する女性。そして、“セブンスヘブン”と言う見慣れない店。 明らかにこのシードピアの人間ではないのは確かだ…。 「クラウド、バレット、そっちはどう?」「あぁ、ティファ。問題ない。」 「しっかし、どういうことだぁ?いきなりこんな変てこな場所にワープするなんざ…。」 案の定彼らもいきなりこの世界に飛ばされたらしく、まだ現状がつかめていない…。 「よぉ、お前らもしぶといなぁ。」『!』 ぶっきらぼうな声が聞こえ、視線を向くと、黒スーツを着崩した赤髪の男と、スーツとサングラスを身に着けた大柄のスキンヘッドの男が現れていた。 「タークス!?」「お前らも来ていたのか!?」 「生憎、好きで来ているわけじゃないんだぞ、と…。」「…俺たちも偶然巻き込まれた。」 その傍には、車椅子に乗って白い布で姿を隠している一人の男性の姿もあった。 「…ルーファウスか。」「クラウド・ストライフ…、どうやら再びお前の力を借りるときが来たようだ…。」 一方、こちらは襲撃戦のさらなる一手を考え中のアドラメレク……の片隅に収監スペース。 ここには、亜空軍に刃向かった戦士たちはもちろん、先日、人質を取られて亜空軍に屈した黄忠たちの姿もあった。 ちなみに、その収監スペースはなぜか一つ一つの部屋の感覚が大きく開いた作りになっている。 タブー曰く、壁越しの会話で良からぬ考えを起こさぬようにするためだそうだ。「………。」 愛娘を人質に捕られ、望まぬ同盟を結ばれた黄忠。その心に思うは、仲間たちの安否だった…。 ―――ヒタッ、ヒタッ、ヒタッ…… ふと、足音が近づいてきた。黄忠はその気配には気付いているが、あえて顔を上げずにそのまま静かに待つ…。 やがてその足音は、自分の前に止まったことに気付く。「…随分とおとなしいものだな、女。」 話しかけてきたのは、この収監エリアの見張り役と思しき怪人。 左半分が青色、右半分が赤色の体と言う、見ようによっては“仮面ライダーW”の怪人版ともとれそうな雰囲気の怪人だった。 「てっきり、他の連中みたいにわめいて大騒ぎしているかと思ってたんだが?」「……。」 黄忠はその怪人を数秒にらみつけると、そのまま視線を元に戻す。 「…ふん、“化け物と話す筋合いはない”ってところか…。まぁ、大方そんな雰囲気はしてたけどな。」 怪人はそのまま背を向けて、鉄格子にもたれるようにして佇む。 「……ガジャドクロから聞いたんだが、あの向かいの独房に貼り付けられているガキ、あんたの娘だってな…。」 通路越しの向かいの房、その奥の壁には、人質として捕らわれた黄忠の娘・璃々がいる。 しかし、闇の力で今は深い眠りについており、目を覚ます気配はない…。 「随分、安らかに眠っているモンだよなぁ…。母親がお前のために手を汚すことになるってのにな…。」 人事みたいな口調で皮肉めいた発言をする怪人に、黄忠も恨みのこもった低い声で返す。 「…元はといえばあなたたちのせいよ…!」「…?」 「罪もなければ戦う力すらもない、無力な人たちを人質にとって!それを道具みたいにして!あなたたち亜空軍はそんなやり方が本当に楽しいの!!??」 怒りと悲しみが入り混じったその声に対し、怪人はこう答えた…。 「自分以外の命を何とも思っていない愉快犯みたいな奴だったら、確実にそういうだろうが…、俺だったらこんなやり方はしたくないな。」 「…!?」それは黄忠にとって予想しなかった発言だった。 「…そんなの絶対に嘘よ!あんたみたいな怪人が何も考えずにそんなこと言えるはずがないわ!どうせあたしに変な同情をしているだけだわ!」 あまりにも信じられず、黄忠は怪人の言葉を全面否定するが―――。 ―――ガシャンッ!!!!!!「っ!!??」 怪人が鉄格子を強く叩く。『黙れ!』といわんばかりの剣幕が感じ取られる…。 「何も考えてねぇのはてめぇのほうだぜ…!俺はあんな上層部の連中の考えを快く思っているほど、非情な奴じゃねぇんだよ!」 「……!!?」思いもしなかった怒りと答えに、黄忠はまたしても驚いた。 亜空軍の中にこれほどまで人間らしい心を持った怪人がいたなど、考えたこともなかったからである…。 「あれれぇ?どうしたの、クラスター。」そこに、円月刀を携えた魔性の女性戦士・ティラが現れた。 その背後には、亜空軍の科学者カゲロウとマドゥがいる。 「…何でもない。この女が生意気な口を叩いただけだ…。」「ふぅん…、ま、それならいいんだけど。」 「それより、マッドサイエンティストの二人が直々に来るなんざ、珍しいな。何か用か?」 本題に戻した怪人の言葉に、カゲロウとマドゥが話を切り出した。 「おぉ、そうじゃった。実は、兼ねてから開発中の新兵器“アグルウィルス”を、今回の戦闘で実験的に使ってみることにしたのじゃ。」 「その実験台として、この黄忠を連れて行くことにしたナリよ。」「…!」 新兵器の実験台――。何をされるのかと黄忠は内心で恐怖を感じていた。 「タブーさまも、幹部たちも、この話は許可を取っているんですって。だ・か・ら、さっさとこの女を出しちゃって!」 そう言って渡したもの、それは黄忠の独房の鍵を開けるマスターカードキーだった。 「………わかった。」 少しだけ間を置いたものの、怪人はその頼みを了承し、カードを受け取って、独房のロックを解除した。 そして、手錠に繋がれた鎖を引いて黄忠を外に出し、その鎖をカゲロウに渡す。 「あんたは引き続き、このエリアの監視よ。しっかりね、クラスター・ジャドウ。」 そう言って、ティラはカードキーを取り上げ、カゲロウたちとともに黄忠を連れてその場を後にした。 (……やっぱり、あいつらのやり方には疑問が付き纏う…。) クラスター・ジャドウは内心で、そう感じざるを得なかった…。
---to be continued---