Phase167 フュージョンワールド・パニック 〜Research No.12:こんなに痛いデビューってアリ!!??〜
「さあ、ショータイムだ!!」 ウィザードと言う未知の存在を含めた仮面ライダーたちと、異次元世界から迷い込んだコミカルなロボットたち、それに加え“アキバレンジャー”なる全く知らないスーパー戦隊の介入によって、混乱の極みに入りつつあった通信施設の戦い。 今、その戦いが斬って落とされた! <コネクト・フリーズ> ウィザードは再びバックルの向きを戻して別の指輪を使い、魔法陣から掌に似たパーツがついた銃を取り出す。 「ケケケ、誰ダカ知ラナイガ叩キ潰シテクレル!!」 ケンゾールの号令を受けゴキブリ怪人軍団とビックパックン&樹木コワイナーが動き出す。 「ぽよっ!!!」 ―――バキャッ!!! 『え!?』 …と思ったら、ヒーローたちを差し置いて先陣を切ったのはなんと、“スマッシュボール”を使ったカービィ。 いきなりコック帽をかぶったかと思ったら――――! ――――ズドンッ! 巨大な鍋がどこからともなく出現し、さらに―――。 ―――カンカンカン………!!!! おたまとフライパンを叩く往年のシーンを髣髴とさせる合図で、ダークローチたちを全員鍋の中へ吸い込ませたではないか! ―――グツグツグツグツ……。 ―――サッサッ…。 そして、そのダークローチたちをじっくりとグツグツ煮込んで塩コショウで味付けし……。 ―――ポンポンポンポン……。 “見た目だけは”おいしそうな料理が何十個も現れ―――。 ―――スイ〜ッ、パクンッ! ……一気にペロリと平らげてしまった。 「ぽぉよっ☆(ごちそうさま☆)」 『……………………;;;;;』 スマッシュブラザーズ最強の胃袋の持ち主のカービィ。 その食欲も然ることながら、敵キャラ…しかもゴキブリを料理して躊躇いもなく平らげてしまうと言う尋常ならざる胃袋の強さに、こればかりは敵味方を問わず、全員が唖然としてしまったのは、言うまでも無い。 『うっ…、オエ〜ッ!!!!!』 しかも、女性陣全員が思いっきり気持ち悪い状況になってしまった……。 「えっと、これって……。」 「あぁ、分かってる。速攻で片付けるぞ!!!」 これ以上長引いたら女性陣の戦意も喪失してしまう。 そうなるまえに決着をつけなくては…! 「アキバレンジャーたちは女性陣全員と一緒に植物モンスターの強制排除!残りは怪人たちの相手だ〜!!!」 『オッケエェ!!!』 ウィザードの判断を了承した連合軍は、空元気とも取れるかもしれない勢い任せの返事と共にそれぞれの相手に向かっていった!!! 「戦えない人たちはこっち!安全なところへ!」 一方で、ウィザードの相棒の少女が、非戦闘員の少女たちを自分たちのところへと招き、安全を確保した。 ナンバーズ一同とアキバレンジャー、そしてその他の女性陣たちは指示通り植物モンスターの排除に乗り出した。 ツタや幹を伸ばして攻撃を仕掛けてくる2大巨大怪人。 そのスピードは意外と速く、攻撃のタイミングが取りづらい。 「ラグーズ・ウォータル・デル・ウィンデ(アイスストーム)!」 「ウル・カーノ・ジエーラ・ティール・ギョーフ(フレイムスネーク)!」 そこに割り込んできたのは、大型の杖を持ったメガネの女の子と、全身褐色の豊満な胸が魅力的な赤毛の女の子の魔法攻撃。 氷の吹雪がモンスターを凍えさせ、炎の蛇が植物を焼き尽くす。 「ディープダイバー!」 そこにISを使って植物の裏に回りこんだセインが、2体の蔦を絡め取って縛り上げ、怪物たちの動きを封じた。 「今よ!一斉攻撃!!!」 ―――ズドドドドドドッ!!!! そして、両足に浮遊ユニットを取り付けた少女たちの一斉射撃で追い討ちがかけられ―――。 「ライドインパルス!!!」 「ランブルデトネイターッ!!!」 「スローターアームズ!」 「レイストーム!」 「ブレイクライナアアァッ!!!」 「“へビィバレル”、発射!!」 「ツインブレイズ!!!」 さらにナンバーズ一同の特殊能力を使った一斉攻撃が放たれて追加ダメージ。 そして最後の締めは、この怒涛の攻撃の水面下でエネルギーを溜めてその時を待っていたアキバレンジャーの3人。 「今だ!!!」 「「「“萌えマグナム”・トリプルシュート!!!」」」 『行くぜっ!!!』 ―――ドキュウウゥゥンッ!!! その攻撃によって植物怪人たちは沈黙し、その場に倒れて爆散した。 “ワンダーロボ”と呼称するべきかもしれない謎のロボットたちは、残り2体のゴキブリ怪人を相手にしていた。 ――――べチャッ! 「あぶねぇっ!」 粘々した粘着液の攻撃を交わす。 あんなのをまともに受けたら、移動することすらままならない! ―――ヌチャッ! 再び粘着液の攻撃―――! 「ホークシールド!」 しかし、タッカードが盾を使ってその攻撃を受け止める。 「ジャクシーボンバー!」 「ダンゴソーサー!」 「カメラズーカ!」 ―――ドゴゴゴゴゴゴゴ! そこに、ゲロタン、ダンゴロン、カメロックがそれぞれの武器で反撃に転じる。 その怯んだスキに―――。 「ハサミックカッター!」 「ラッキードリル!」 ―――ズバッ、ズドッ! クワジーロとモグラッキーの攻撃が炸裂し、2体のゴキブリは排除された。 「ケンゾール!こやつら相手に何を手こずっておる!!!」 『!?』 連合軍優勢で進んでいった戦いだったが、新たな介入者が…! それは、3体の蛇怪人を引き連れたファラオ風の男だった。 「!!…大ショッカー幹部・地獄大使…!!」 その姿は、海東にとって意外な存在だった。 「フン、ディエンドか。我が同志・海東純一の弟でありながら、ディケイドと共に楯突くもの!この私が引導を渡してくれよう!!」 そう言った地獄大使はどこからかコップを取り出して、水を含んだと思いきや……。 「ガラガラガラガラ……、そ〜れっ!!」 ―――ガラガランダァ!!!! うがいの終わりと共に地獄大使が蛇の怪人に変貌した! 「ちょっと!ゴキブリの化け物が出たと思ったら、今度は蛇の化け物!!??」 「蛇、きらい!!!」 非戦闘員一同、新たに介入してきた蛇軍団にまたしても引いてしまう。 「一気に片付けてやる!!!ドーララドゥーン!ロー・オ・ザー・リ!コブライマジン!かかれ!!!」 ガラガランダの一言で一気に襲い掛かった蛇軍団―――。 ――Hyper Clock UP!!! ――ズドドドドドッ!!! 「ヌオッ!!!??」 …の出鼻を挫いたのはコーカサスの超高速攻撃。 さらに、その両側から―――。 「ビートリボルバーナックル!!!」 「アバランチスラッシュ!!」 「ブロウクンファング!!」 ヘラクス、ケタロス、イクサの同時攻撃が炸裂した。 「ウェイクアップ!」 そこに、ウェイクアップフエッスルを発動させエクスキュージョンクローを展開させたレイが迫る。 蛇怪人たちがこれに怯んでなるものかと一気に詰め寄るが―――。 ―――ズガッ、ズバッ、ズバッ! 返り討ち。 あっという間に追い詰められた地獄大使。 ―――ズドドドォォンッ!! その地獄大使にさらなる追い討ちをかけたのは―――。 「連合軍諸君、今回も援護に来たよ!」 閃光の聖職者だった。 「君は、確か…、ライジングイクサ!?」 以前に、自分と同じイクサが居ると言う情報を共有していた名護、その姿を見るのは今回が初めてだ。 ライジングイクサはイクサカリバーを抜刀すると―――。 「僕が時間を稼ぐ。最後の決め手の準備をしたまえ。」 …と、自らおとりとなって地獄大使に向かっていった。 「…ならば、お言葉に甘えさせてもらおう!」 <BLEST CANNON> バースはいつの間にか、自分の胸より大き目の大型キャノンを装備し、砲撃体制を整えていた。 ―――チャリンチャリン、パカッ! そして、メダルを2枚装填してはベルトのバックルを開き、またメダルを装填しては…と言う作業を繰り返し、その時を待つ。 <FINAL ATTACK RIDE、DI DI DI DIEND!!> ディエンドもファイナルアタックライドを準備、照準を合わせる。 「……!」 タイミングが来たと判断したライジングイクサはすぐにその場を離れる。 「ブレストキャノン・シュート!!」 「ディメンション・シュート!!!」 ―――ズドオォンッ!!!! 「ぐおおおぉぉぉっ!!??」 同時に放たれた大砲撃をまともに受けた地獄大使、一気に体力を根こそぎ奪われた。 「い、偉大なるタブーさま……、ばんざ〜い!!!」 最後はタブーをたたえる断末魔と共に倒れ、怪人たちもろとも爆散した。 残るは行動隊長・ケンゾール。 「ケケケケ!ソオラ!」 ―――ズガッ! 素早い突き攻撃を放ってくるケンゾールに対し、カブタックとロボタックが連携攻撃で対応する。 「ビリットショック!」 「RKバーアタック!」 ―――バコッ、ビリビリビリビリビリ! 「ウゲエェッ、シ、シビレル〜!?」 そこにスマッシュブラザーズたちが連続攻撃を仕掛けてくる! ―――ズゴッ、ドゴッ! ―――ドスンッ!!! ヨッシーの“ごろごろたまご”の体当たり、カービィのストーン能力に始まり―――。 「ィヤッ!」 ―――ドゴッ! ピーチ姫の強烈なヒップアタック“ピーチボンバー”。 「ファルコン、パンチ!!」 ―――ズドンッ! 炎を纏ったC.ファルコンの必殺パンチ。 「「ハアァァァッ!!!!」」 ―――ズババババババッ リンクとメタナイトの前後からの百裂突きと、スマッシュブラザーズ一同の連続攻撃が炸裂する。 「P.K.、スターストオオオォォォムッ!!!!」 「Mario FINAL!!」 ――――グアアアァァッ!!!! ――――ズドドドドドドドド!!!!! 極めつけは、スマッシュボールを発動させたネスとマリオが、流れ星の雨と強力な炎攻撃で大ダメージを与える。 思ってもいなかった連合軍の助太刀の反撃に、疲労困憊となったケンゾール。 その目の前に、ウィザードが立ちはだかる。 彼は手に持つ大型拳銃でさらに追い討ち、ダメージを与えていく。 ―――ガシャンッ …と思ったらその銃を剣に変形させて一気に詰め寄り、今度は剣戟でさらなるダメージを与えた。 最早、立っているのがやっとと言うほどにダメージを受けすぎたケンゾール、視界もまばらになってきた。 「フィナーレだ、ケンゾール!」 右手に別の指輪をはめたウィザードは、ベルトのバックルの手形を回転させ、右手の形に合わせた。 [ルパッチ・マジック・タッチ・ゴー!ルパッチ・マジック・タッチ・ゴー!] <チョーイイネ!“キックストライク”!サイコー!> 指輪の力でエネルギーを大幅に増強させたウィザードは、体操選手のような回転技で勢いをつけて宙に飛び上がり―――。 「フレイムストライクウィザード!!!!」 仮面ライダーの“お約束”の必殺技・ライダーキックを炸裂させた。 ―――ズドオォォォンッ!!! 「グアアアァァッ!!!??」 この致命傷では、さすがのケンゾールも耐えられるはずがなく……。 「ケケケ、俺様ガ死ンデモ、カジオー軍団ハ健在ダ!カジオー様ニ栄光アレエエェェ!!!―――グゲッ!?」 ―――ドカアアァァンッ!!! 捨て台詞を残して爆死した。 ―――ピピピピッ、ピピピピッ! 『!』 植物モンスターを排除した直後、ナンバーズたちの元へ入った通信。 『ご苦労様、あなたたち。通信機能は回復したわ。』 その相手はクアットロ。 この瞬間をもって、全ての通信機能の完全回復が確認された。 「…フィー…。」 一息ついたウィザード、戦いが終わったことを感じ取り、変身を解除。 そのまま、相棒と思しき女の子のところへと向かっていく。 「ちょっと待って!」 「…?」 ふと、先ほどの褐色の肌の魔法使いが彼を呼び止めた。 その隣には、メガネをかけた少女も…。 「あの…いきなりで悪いけれど……、あんたたち、どこかで会ったことが無かった?」 「あなたたちの顔つきと声、覚えがある、気がする…。」 その二人―――キュルケとタバサの言葉に、ウィザードの青年と相棒の少女は……。 「さて、どうだろうね?」 「何かの勘違いでしょ?」 ……とはぐらかした一方で―――。 ――俺はラティオ。“ラティオ=G=アクシアス(RATHIO=G=AXIAS)”。 ――あたしは“ラミィ=U=サイオス(LAMIE=U=XIOS)”よ。 ……自分たちの名前を名乗り、そのまま去っていった……。 一方、状況整理に追われていたレンジャーズストライクの母艦“スピリット・オブ・レンジャー”。 そこでは、初音ミク以外の面々も、状況整理や新規覚醒メンバーの確認などできりきりまい状態になっていた。 「えっと、こっちはジュウレンジャーであっちはゴウライジャー…、でもってこれはカーレンジャーでしょ、ターボレンジャーに、ゴーオンジャー…。」 特に、“思いやり”を司るアーカイブ管理者の一人・巡音ルカは、メディアステーション内で続々と覚醒しているスーパー戦隊の存在と把握に手を焼いており、一人だけでは手が付けられない状況になっていた。 「これは、ゴーゴーファイブ!!??それにこっちは…、ゲキレンジャーとマスクマン!!??」 「おい!こっちはゴセイジャーが覚醒したようだぞ!」 「ちょっと待った!ファイブマンとダイナマンまでいるぞ!!??」 サツキ、能瀬師匠、井上さんも、ルカの手伝いとしてデータ確認に協力しているが、いかんせん異なる箇所でほぼ同時に覚醒した面々が多数存在したこともあり、まるで大量の書類が一気にバラバラになって地面に散乱したかのような大混乱になっていた。 「う〜ん、シードピアに来てからと言うもの、新しい戦隊のメンバーが一気に現れて過ぎて困ったねぇ…。」 「ただでさえ、こないだ一気に20人も見つかったってのに、“サンバルカン”や“ゴーオンレッド”に“デカブレイク”までもが今日の戦いの先陣を切って覚醒したからな…。」 彼らの手伝いに回されたグラッチとデルモナも、ここまでの事態は全く考えていなかったのか、呆然とするしかなかった。 「ほら!あんたたち!ボーっとしてないでこっちも手伝う!」 「あ、ごめん!」 「すぐに行く!」 ゾンネットにしかられた二人はすぐに作業に戻る。 しかしそんな彼女も、今回の戦いで覚醒した新世代のレッドレーサーの出現に戸惑いを隠せなかったのは、別の話…。 一方、そんな彼女たちとは対照的に、比較的楽な雰囲気のブリッジ。 「…一体、こいつはどういうことだ…!?」 …いや、前言撤回。 混沌とした状況のメディアステーションのリサーチ結果を見て、何ともいえない複雑な面持ちを抱いていたようだ。 呆然としている、光のアーカイブの一人・KAITOの重い口調がその証である。 「見間違いじゃ、ないわよね…!!??」 彼の相棒・MEIKOも目を疑っていた。 「「嘘でしょ…!?」」 アーカイブの双子の姉妹・リンとレンも目を見開いている…。 実は、“フュージョンワールド・パニック”と名付けられることとなるこの大混乱の始まりの直後、彼ら4人はメディアステーションの現状を徹底分析していた。 その結果、彼らも“ミッドチルダ以外の世界も融合の対象となっていた”と言う事実にたどり着いていた。 しかし、彼らが驚いたのはそのことではない…。 そのデータ解析の際に見つかった反応の中に、この艦のデータライブラリに該当するもの存在したのだ。 ―――“パラディオン” ―――“エクセリード” ―――“メルクリウス” ―――“クルマルス” これら4種類のキーワードを目の当たりにした4人は、彼らの記憶の中で一つの結論にたどり着いた。 「この4つのキーワード…!」 「これって…!!!」 ―フロニャルドの宝剣じゃないか!!!!! ―――ザザアァァッ スマッシュブラザーズの神殿の近くで、銀色のオーロラが揺らめいた。 そこから現れたのは、意外な顔ぶれだった。 「ケケケッ、やっと着いた!」 亜空軍の状況のリサーチをやっていたスタルキッドたちだった。 「ここが…君たちの世界…!?」 「これはまた…随分と独特なところですね…。」 初めて足を踏み入れた小早川秀秋と天海は、その異様とも言うべき世界の雰囲気に戸惑いを隠せなかった。 「まあ、言ってみれば今の場所そのものが独特じゃからのぉ。」 「なんにせよ、まずは我々の拠点に行かねばならぬからな。」 「では、急ぎましょうか。闇の輩がここまで来ないうちに…。」 ツインローバとお面屋も、“長居は無用”と言わんばかりに急かす。 亜空軍がいつ襲ってくるとも分からない状況ゆえだ。 まずは自分たちの安全を確保せねば…。 「ところで、スタルキッド。その腰に下げている“トランペット”みたいなもの、どうしたのじゃ?」 「…?あぁ、これ?」 火の魔法使い・コタケがスタルキッドの持っている道具について聞いた。 実は彼らと合流する前まではそのトランペットは持っていなかったのだ。 「神殿に墜落した“赤い帆船”の中に落っこちてたから、面白そうだと思って拾ったの☆」 「全く、あなたは…。」 悪戯好きのスタルキッドは他人の持ち物を勝手に盗むのも好き。 手に入れたものを上機嫌に振り回し、時折それを吹いてテンションを挙げるところは、まさに子供だ。 しかし、よく見るとそのトランペット、音階調節の役割を果たす“ピストン”に相当する場所が5箇所あるではないか。 ……いや、それ以前にこれはトランペットではない…。 ―――“五つのシリンダー”がついた小型ラッパだ……! 一方、その“ラッパ型アイテム”が見つかったゴーカイガレオン内部…。 その居住区に、一人の女性の影が…。 「こんなところにあったなんてね…。」 黒味がかった青色の髪に、露出度が比較的高い黒の衣服を身に付けた、見た目からして20代半ばとも取れる外見の女性。 彼女は、“久しぶり”に訪れた船の中の変わり果てた姿を見て、懐かしくもどこか切ない空気を感じていた。 『お前に借りが出来てしまったな…。』 彼女の脳裏に、かつて“彼ら”を解放したときの記憶が蘇る…。 『何言ってんのよ。海賊も空賊も、同じ仲間じゃない。』 『へっ…、違いないな…。』 自分たちを“海賊戦隊”と名乗り、次元世界最大の独裁国家・ザンギャックに反旗を翻した6色の勇姿。 この僅かな戦力で立ち向かうのは、勇敢であると同時に無謀だった。 『さて、傷が癒えたらまた奴らに殴り込みだ…!』 『どうしてそんな無謀なことが出来るの?あんたたち、下手すれば死ぬわよ。』 同じ賊として、彼らの豪快な挑戦が危険であることに、彼女は少なからず心配だった。 『いらないお世話よ、バァカ!』 しかし、海賊たちはその恐怖も無かったのか、清清しいくらいな笑顔で彼女の心配を払いのける。 『俺たちはこの時のためにここまで戦ってきたんだ。』 『あなたの気持ちは受け取りました。しかし、あなたの心配には及びません。』 『僕たちの追い求めてきた夢だからね。』 『ザンギャックを倒して、宇宙全体を平和にする!その夢をあきらめたりしません!』 船長の仲間たちも、揺るがぬ決意をその眼差しに秘めていた。 『そうだ。俺たちが気に食わない奴は全てぶっ潰す!そして、命を懸けて世界を守る!それが俺たちゴーカイジャー、“夢を掴む力”を持った、海賊と言う名のスーパー戦隊だ!!!』 ザンギャックに立ち向かうことは死ぬことと同じこと。 生きて帰る保障はどこにもない。 それでも尚戦い続ける彼ら…。 彼女は、ゴーカイジャーたちの心の中に光るものを感じていた。 それが彼らの言う、“夢を掴む力”なのだろうか…? 『だが…、万が一と言うこともあるしな。』 そう言って船長は、宝箱から何かを取り出し、それを彼女に差し出した。 これをお前に託す。 俺たちがあらゆる世界を旅して手に入れた、“レンジャーキー”に関するデータファイルだ。 もしも俺たちが二度と戻ってこなかったときには……、それを元の持ち主に渡してくれ。 ルヴェラって言う世界の住人たちにな…。 そして現在―――。 「あいつらもバカよね。こんな重大な機密をあっさりあたしに渡すなんて…。」 その手には、船長から託された“レンジャーキー・データファイル”と言うタイトルの本がある。 そして、その首下には、別れ際に“餞別”として受け取った、“鍵”を模った虹色のペンダントが…。 「もしもあたしが悪者だったらどうするのよ。こんなの渡されて、あたしたちがいいように使わないわけないじゃない…。なのに、そんな簡単なことが、出来なかったのよね…。」 自問自答…いや、自嘲するかのような彼女の言葉。 しかし、よく聞けば少し声が……震えてる……? 「あたしね…、あんたたちに死んで欲しくなかったのよ…?なのに、そんな気持ちすらも知らずに、勝手に死んでいって…。これじゃ、“二度と忘れるな”って言って託す“忘れ形見”じゃないの…!」 ふと、彼女の頬に何かが伝っているのに気付いた。 「…あれ?何であたし、涙なんか流してんの…?こんなの、とっくに捨てたはずだったのに…。」 拭っても、拭っても、止まらない涙。 普段共にしている“一家”のみんなにも見せたことの無い姿だった。 『お前だけは、俺たちを忘れるなよ…、カレン・フッケバイン…。』 次の瞬間に過ぎったのは、“お調子者”と言う言葉が似合うほどにかっこよかった、“彼”の悪戯な笑顔だった。 耐え切れなくなったカレンは膝を付いて、その本を抱いた……。 「忘れたくても、忘れられるわけ、ないじゃないの…っ…!!!」 ――キャプテン・マーベラス……!!!!!!
---to be continued---