――――ええぇ〜〜っ!!!
基地全体が大激震するほどの衝撃が起こった。
「ラ、ラクスさんの命が狙われたですって!?」
「どういうことだ、レッド隊長!」
スピリチュアル・キャリバー(SC)のさくらと密会をした後、レッドは早急にこのことを伝えようと判断し、大急ぎでライガーシールズの総本部・GLBに駆け込んだのだ。
運良くそこには、キラ、ラクス、カナードを初めとする“アークエンジェルチーム”主力メンバーが集結していた。
「俺もさっきSCのさくらさんから聞いたばかりやから、詳しいことはよく判らないんですけど……とにかく、これ見てください!」
レッドから受け取った手紙に眼を通したマリューは、眼を見開いた。
ラクス・クラインを暗殺しろ。それなりの報酬は約束する
パトリック・ザラ
差出人の名を聞いたニコルが話しに割り込んできた。
「ちょっと待ってくださいよ!パトリック・ザラって言ったら、ゾロアシアワールド最高評議会の議長じゃないですか!?」
だがしかし、冷静に考えてみれば、今ゾロアシアにはラクスの替え玉が存在する。
こっちにいる本物を消して、向こうこそが本物だと言うことを証明しようとしている計画が、薄々感づける。
「レッド隊長、この手紙をどうやって…?」
「実は、つい数分ほど前の話なんやけど……。」
それは、レッドが喫茶店にてさくらとダンディ・団耕介の二人と合流したときのことだった………。
「暗殺者の顔を持つ少女??」
レッドは二人が言った言葉を復唱した。
「スピリチュアル・キャリバーにそんな危険な子が居たんですか?」
「ああ。君たちティアーズが、まだこのシードピアにくる前の話だ…。」
ベルナデッド・シモンズ―――。
“黒きフランス人形”の名に相応しき風貌を持つ、若干13歳の少女。
丁度、てれび戦士たちとほぼ同年代の女の子だ。
組織に所属していた頃は性格がもとから暗かったが故、多くのメンバーから避けられることも少なくなかった。
しかし、有事の際の戦闘では驚異的な能力を発揮。
メンバーたちの切り込み隊長的存在とも言われた。
ところが、そんな彼女にも気になることがあった。
太陽が沈むと、夜な夜な外に飛び出し、どこかで何かしらの活動を起こしていると言う。
そんな日々が続き、メンバーたちは彼女の深夜の行動を監視することにした。
そのときに、彼らは知ったのだ……。
彼女の裏の顔・“シードピアの黒き悪魔”の素顔を………。
「彼女のことに関してさらに詳しく調べた結果、彼女は組織に所属してから1年もの間、暗殺の依頼を受け続け、その報酬を裏金として受け取っていたのです。」
衝撃的事実が次々と明るみにされ、スピリチュアル・キャリバーとしての不祥事が発覚された。
その後、司令部は彼女に対して、組織追放処分が下された。
それ以後、スピリチュアル・キャリバーのメンバーたちは彼女について一切知ることはなかったのだが…………。
「今頃になって、その子が今までの罪の償いをしようと、教会に足を運んだ…という事ですな?」
「ええ。先ほどレッドさんにお渡しした手紙は、ベルナデッドさんに届けられた依頼主からの手紙だそうです。」
「このことは、お前さんの知り合い以外の連中には漏らすなよ。」
もしこの情報が漏れてしまったら、とんでもないことになるからな……。
GLB司令室全体に沈黙と言う名の空気が流れた。
「でも、僕たち知らないよ、彼女たちにそんなメンバーが居たなんて……。」
ベルナデッドに関することは、どうやらSC内部での秘密事項だったようだ。
キラたちも、ベルナデッドに対して面識はなかったらしい………。
「それで、レッド隊長、そのベルナデッドとやらは…?」
「スピリード島の“W.シンフォニー教会”で保護されているそうや。ただ、今までの罪の重さが相当来たらしくてな……。」
立ち直るのは暫く先。
それは大方予測できたこと。
再び降りる、沈黙と言う名の空気。
問題が複雑に絡み合い、彼らはさらに唸った………。
「What!!??」
空いた口が塞がらないとはこのことを言うのかもしれない。
エターナル・フェイスの特殊部隊“ファントム・レイダーズ”でも、大困惑が発生していた。
遼希と梨生奈はライガーシールズのGLB近くにて、再び隠密行動を起こし彼らの会話を盗聴していたのだが、そこで彼らの話を聞き、衝撃的な情報が耳に飛び込んできたが故、二人は早急に“アレクサンダー”に帰還したのだ。
まさか、ラクス・クラインが暗殺者に命を狙われていることはまだしも、その依頼をザラ議長が直々に………!!
理解しきれない情報が二人の頭の中で大きく渦巻き、何が何だかわからなくなった。
「ありえません!そんなの絶対にないですよ!!」
真っ向から否定したのは謙二郎。
彼はメンバーの中で人一倍ザラ議長に対する信頼が厚い存在である。
「ザラ議長はあれほどラクスさまとともにメディアに立っているんですよ!そんな人がいきなり彼女を殺すなど……!」
「でも、実際に向こうは証拠としてその依頼の手紙を受け取っているんだよ!」
「しかも、単なる新聞の文字の切り張りじゃなくて、ちゃんとしたペンで書いてあるみたいよ!」
「そんなのは誰かが強引に書かせたに決まっているじゃないか!!」
メンバーたちによる討論会が始まった。
あちらこちらで子供たちが言葉をぶつけ合う。
その収集は小百合でも手が付けられなかったのだが―――――。
「Everybody Give it a rest!!!(全員静かに!!!)」
リーダーのブライアンの叱責により、全員が静まり返った。
全員の視線が自分に向けられたことを確認したブライアンは、口を開いた。
「みんな静かに!少し落ち着け。……いいか?お前たちがそうやって言い争っていても何の解決にもならない。それに、ティアーズが入手したと言うその手紙が、ホントにザラ議長が書いたものか、はたまた誰かが書かせたのか、その証拠すらも見つかっていない。」
「むやみにこっちが衝動で動いたら、泥沼の争いは避けられないわよ。」
小百合も一言付け加えたことにより、全員が否応なしにしっくりきた。
こればかりは謙二郎も反省した。
ここはもうしばらく、様子を見たほうがよさそうだ。
だが、この前代未聞の衝撃的な情報が極秘裏にもたらされたのは、ファントム・レイダーズだけではなかった……。
「……何ですって!?」
「…間違いないのですか?」
「はい。ニュートラルヴィアに偵察に向かった部下からの報告です。確証はありませんが、おそらくは……。」
仮面の指揮官ネオ・ロアノークは、自分の目の前に居る上司に対して頭を垂れ、定期報告を行った。
ここは、過激派組織“ブルーコスモス・ファミリー”の総本部・ドミニオンベースの最深部。
この場所に集まっていたのは、BCFの重役的存在の三人。
一人は、組織の最高司令官であり総帥の立場にもある、ロード・ジブリール。
一人は、三大重役の紅一点であり、ジブリールの片腕、組織の副司令をも勤めるキャリアウーマン・マティス。
そして、その二人の間に居る一人の老体。
彼こそ、ブルーコスモス・ファミリー創設のきっかけを築き上げた存在と言っても過言ではない男である。
「天海僧正、興味深い報告が届けられましたね…。」
笑みを浮かべたマティスが彼の名を呼んだとき、老体の顔の眼が開かれた。
その眼球は真っ白に覆われているものの、決して眼が見えないわけではなかった。
『ゾロアシアとニュートラルヴィアで二人のラクス・クラインの存在が感じられる。おそらくは、どちらかが偽者を本物に仕立て上げようと言う魂胆であろう。コーディネイターと言う存在が、どれだけ愚かな人類だと言うことか…。はっきりするときが、もうすぐ来るやも知れぬ。』
そのときこそ、我らブルーコスモス・ファミリーの反撃の狼煙になる。
今度こそ自分たちのかつての大地たる、ゾロアシアワールドを取り戻すために。
『だが、急いては事を仕損じるぞ、ジブリール、マティス。ここはもう少し、様子を伺うこととしよう。』
―――……御意。
天海は返事を受け取ると、瞳を閉じ、沈黙した。
「ロアノークよ、もうすぐゾロアシアに住む全てのコーディネイターに、最後の審判を下すときがくるでしょう。」
「こんな絶好の機会は滅多にないわ。今度こそ私たちの戦いに終止符を打ち、ゾロアシアの大地をこの手に取り戻すのよ!」
「承知いたしております。全ては、蒼き清浄なる世界のために……!」
パトリック・ザラの陰謀が全て明らかになったときこそ、BCFが付け入る隙が出来るはず。
我らの理想世界の再生は…………もうすぐだ……!!
---to be continued---
あとがき:
“連鎖反応”。
今回のタイトルはそんな意味がありますが……ホントにその通りっぽくなってしまいましたね…(苦笑)
さらに今回はまたしてもBCFサイドに新参者登場!どれもホントに悪役に相応しい風貌です(笑)。
さて、次回はまたまたてれび戦士サイドです。
しかも、ついにマユに大きな異変が……………!?