Phase34 強化人間 〜EXTENDED〜


ティアーズこと、てれび戦士たちの活動拠点“リーフ”。

その内部にある科学者兄弟・レイシー兄弟の研究室兼医療スペース“メディカルラボルーム”。

そこでは、異様な空気に包まれていた。

「…兄さん、どう…?」

「今のところ、問題はない。…それにしても…。」

二人の目の前の医療ポッド。

その中には、ティアーズにとっての因縁の宿敵“ブルーコスモス・ファミリー”のメンバーである、金髪の少女が眠っていた。

ドクターレイシーの目の前のモニターには、少女―――ステラ・ルーシェのあらゆる情報が表示されていた。

特に、彼が注目したのはその遺伝子構造だった。

「シードピアの科学力には色んな意味で驚かされるばかりだ…、こんなのは初めて見たよ。」

彼の脳裏に、ある出来事が過った。



二週間ほど前、外出していた杏奈が戻ってきたときのこと。

彼女と一緒に見慣れない人物の一団が入ってきたかと思いきや、出迎えたレッドたちと竜一は突然目を見開いた。

そのなかに、見覚えのある金髪の少女が。

見間違いではない。

まぎれもなく、あのブルーコスモス・ファミリーのメンバーだ。

思わずその場に居た全員が武器を手に身構えたが、カウボーイスタイルの男性が懐から“スピリチュアル・キャリバー”のピンバッヂを取り出した。

てれび戦士たちは意表をつかれ、驚きの顔を見せた。


「……と言うわけさ。」

ひとまず彼らを通したてれび戦士たちは、ブレッドと名乗る男から事の次第を聞いた。

少女・ステラがあの戦闘のとき、突然暴走してどこかに消えたのは知っていたが、まさかそれ以後“戦う意志”を無くしていたとは思いもしなかった。

次に、セレーネとスウェンが話しに入ってきた。

「あの後ブレッドは、私たちの住む家に訪ねてきたのよ。ステラを連れて。」

「セレーネが研究していた、“エクステンデッド”に関する新たなデータに役立てそうじゃないかって言ってな。」

聴きなれぬ言葉に、ちひろは眼を丸くした。

「ちょっといいか?“エクステンデッド”とは、何なのだ?」

「主にBCFに配備されている、強化人間たちのことだ。ここにいるステラも、その一例だ。」

「最大の特徴は、“そのほとんどがあなたたちとほとんど同年代の子供たちである”と言うことよ。」

“自分たちと同年代”。

その言葉を聴いた全員が、『あれ?』と思った。

「それじゃ、まさか…。」

「我々に今まで襲ってきたBCFの子供たちも…。」

「その、“エクステンデッド”って言うのに分類されるっつーことか?」

しかし、望の脳裏に気になる節が。

「でも、単に強化人間って呼ばれているだけじゃ、モチベーションが沸かないな……。」

すると、セレーネが懐からある資料を取り出した。

「コレを見て。」

ドクターレイシーがそれを手にし、眼を通した。

「これは…ステラさんのデータですか……。」

彼女が取り出したのは、ステラの身体能力をまとめたデータだった。

すると、ドクターレイシーが気になるところを見つけた。

「おやぁ?」

「…?どうした、ドクターレイシー?」

「この遺伝子構造……、人工的に組み替えられた形跡がありますよ。」

予想だにもしない彼の言葉に、てれび戦士全員の目が、彼に向けられた。

「しかもこのデータ…、ナチュラルでありながらコーディネイター並……いや、それ以上のものですよ!」

「なにぃっ!?」

「そ、それって、どういうことや?」

今までの話をまとめた竜一は、一つの結論に達した。

「つまり、エクステンデッドって言うのは、俺たちのような子供たちが無理矢理に遺伝子構造を改造され、否応なしに戦闘に出される、チェスの駒みてぇなものってことじゃないのか!?」

―――ええぇ〜〜っ!!!

人を人として扱わないBCFにとっては、都合のいい存在。

それしか言いようがなかった。

「それ以上にさらに酷いことがある。」

スウェンが重い口調で、付け加えた。

「エクステンデッドは言わば“戦闘兵器”の扱い。それゆえに、戦闘以外のプライベートの記憶は、特殊な装置によって完全に消されてしまうんだ。」

机上の冷たい計算。

その言葉を飾るに相応しい、非情なる扱いだった。

「俺もその事実を知ったときは、背筋すらも凍った。俺とて、このステラのような存在になっていたら、どうなっていたかは判らない……。」

場にそぐわぬ不協和音が奏でられるばかりであった。

BCFの非道振りには、てれび戦士全員が怒りに震えた。

「そこでなんだが、お前たちに頼みがある。」


―――彼女、ステラのような連中にも未来を与えるために、この子を保護してはくれないか……?



エクステンデッドという戦闘兵器とは言え、命あるものであり、心あるものならば見過ごすわけにも行かない。

悩んだ末てれび戦士たちは、ステラを極秘裏で引き取ることになった。

その際、定期的に彼女を休ませつつ、彼女の遺伝子構造を元の状態に戻せるかどうかの課題も問われることとなった。

科学者であるレイシー兄弟にとっては、難題も同然であった………。

「今まで遺伝子構造なんて、調べたことはおろか、それ自体に触れることすら一度もなかったよね。」

「あぁ。何か手がかりがあれば、ことはスムーズに進むであろうが、我々にとっては未知の領域だ……。」

「杏奈先生が言っていた歴史館にでも行って見る、兄さん?」

「…そうだな。」

ひとまず、糸口になりそうなものはないか、歴史館に出向くことにし、二人はひとまず研究室を後にした。


人気の居なくなった研究室。

レイシー兄弟がここを後にしてから10分後、ドアが開いた。

入ってきたのは、ステラと同じく、一時的にてれび戦士に引き取られている少女・マユだった。

「…この人…どこかで…。」

眠っている金髪の少女の顔を見た途端に呟いた彼女の言葉。

それと同時に、断片ながらも脳裏に過ぎるある映像。

それはマユに何かしらの痛みを与えた。

「…!?…なに……何なの……!!」

何か大切なことを忘れている気がする。

そう思うたびに頭の痛みが激しさを増した。

「…いたい…っ…!…頭が…われ……る…っ!……ああぁっ!!!」

―――ドサッ!

頭にくる強烈な苦痛に耐え切れず、声を上げたマユはその場で倒れて気絶した。

彼女の意識は、それと同時に一瞬で遠のいた………。




アプリリウス銀座の片隅にある喫茶店。

そこでケーキを頂きながら紅茶を飲む一人の和服の少女。

スピリチュアル・キャリバーの主力メンバーであるサムライ戦士・真宮寺さくらだ。

「それにしても、向こうも思い切ったことをしますね…。」

彼女は一枚の紙に眼を通し、愚痴を呟いた。

そんな彼女の目の前にいる、一人のギャング。

さくらにとっては、顔見知りも同然の存在である。

「エリカさんの話では、幻夜斎が根来衆をゾロアシアに向かわせて、さらなる情報を集めているそうだ。」

「あの人も本格的に動き出したのですね……。」

ふと、喫茶店の扉が開いたと同時に、さくらにとって見覚えのある顔が眼に映った。

「あ、レッドさん、こっちです!」

さくらが手招きしているのに気付いたレッドはすぐさま、彼女の下へ向かった。

実は十数分前、突然ティアーズたちの下へ通信が入ってきたのだ。

その通信相手が他ならぬさくらだった。

ティアーズの中で誰か一人連れてきてほしいとの要望のため、急遽レッド隊長が向かうことになったのである。

しかし、突然喫茶店で待ち合わせと言うのも、妙な話である。

「さくらさん、どういう風の吹き回しですか?こんなところで待ち合わせって…。」

「いえ、こういうところなら、密談が出来ると思いまして。」

「密談……?」

「ええ。あなた方やライガーシールズにも関わりがあるんです。」

それなら俺たちの船でやればいいとも思うが……。

「ところで、こちらのかたは?」

「あ、そういえば初対面でしたね。」

さくらの目の前に居る男は、“ダンディ”の愛称で親しまれている団耕介。

彼をリーダーとするギャング・ダンディ団は、表向きは劇場の常連客でもあるお得意様だが、裏社会のあらゆる情報にも通じており、また、彼らは一般客の中で“スピリチュアル・キャリバー”の存在を知る、数少ない存在でもある。

「実は彼を通じて、わたしたちの本部からこんな情報が届けられたんです。」

手渡された一枚の紙。

そこに記述されてある内容を見た途端、レッドの目つきが一変、驚きで見開かれた。

「な…何やこれ!?」

「驚くのも無理はない。俺とてこの事実を知ったのは、今さっきなんだからなぁ……。」

ここでレッドは、手紙の中で気になるところを発見した。

………と言っても、差出人のところなのだが……。

「ところで、この手紙の差出人って、どんな人なんですか……?」

「ん?あぁ、それか。実はな………。」

ダンディは周囲に聞こえないように、ひっそりとレッドに耳打ちした。

「……ええぇ〜〜っ!!!」

「声がデカイッ!」

「あ……。」

思わず大声を上げてしまったレッドは、周囲に会釈をして謝罪した。

しかし、この情報の影響力は想像以上に大きすぎるものであることは、レッドも実感した。



---to be continued---



☆あとがき兼ミニドラマ??(???1(CV:水樹奈々)、???2(CV:五十嵐麗))
???1:第34話、またまた新しいキャラクターが出てきたね☆    それにしても、マユちゃんが気絶してしまったけど、どうなるのかな…? ???2:その続きは、まだもう少し先らしいわよ。ゆっくり待ちましょうね。 ???1:ところでさ、わたしたちももうすぐこの物語に出演するって、ホント? ???2:ええ。どうもここの管理人が、わたしたちの出ているアニメを気に入ってくれたそうよ。    しかも、わたしたちの役割もとても重大なものになるらしいわ。 ???1:わたしたちもSEEDPIAに出るって事は………あの人たちも…? ???2:当然でしょ?どんな風に関わることになるのかしら…フフフ、今から楽しみだわ☆ ???1:と言うわけで、管理人さんがテスト期間に突入したので……。    今回のあとがきのコメントは、わたしたちが担当しました☆ ???2:わたしたちの正体が一体誰なのか、しばらくは皆の想像に任せることにするわ。 ???1:それじゃ、この辺で失礼しまーす。    あ、そうそう忘れてた。“リリカルマジカル”、みんながこのお話を楽しんでくれますよーに☆☆





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