Phase31 闇の魔人と謎の組織


「お、重いなぁ、この石……。」

大きな石盤を抱えて、フワニータは劇場の廊下を歩いていた。

彼女が、スピリード島の墓場の近くで発見した謎の石盤。

そして、その傍にあった石碑と謎の文字。

少女の頭の中は混乱する一方だった。

「あ!フワちゃん!」

突然後ろから聞こえた幼い声。

振り返るとそこには、ふわっとした金髪の女の子と、ボーイッシュな外見が特徴的な女の子の仲良しコンビが居た。

「アイリス!レニも!丁度良かった〜。」

運良く、レニは丁度定期的な休暇をもらったところだったのだ。

「どうしたの、その石。」

「ここの近くにある墓場で見つけたんだ。ちょっと大神さんに見てもらおうと思って…。」

「じゃあ、持つの手伝ってあげる。」

そう言ってレニはフワニータの反対側に立ち、石盤を持ってあげた。

「アイリス、支配人を呼んできて。」

「うん、わかった。……おにいちゃ〜ん!」




シードピアの市街地“アプリリウス銀座”。

ここの一角に、シードピアのあらゆる歴史を記した場所があるという。

それが、この“エヴィデンス歴史館”。

古代シードピア時代における様々な歴史が書類やデータファイルとして保管されている。

ティアーズのご意見番・杏奈は、歴史学者という職業を活かしシードピアの歴史を調べてみようと、ここに単独で乗り出した。

「……何これ…?」

自由閲覧が可能な書物スペースに足を運んだ杏奈は、気になる文献を発見した。

タイトルは『闇の魔人と謎の組織』

手に取った杏奈はひとまず、それをテーブルに運び、ページを開いた。

そこには、かつてシードピアを恐怖のどん底に陥れたとされる、魔人が存在したと言われている。

「なになに…?『古代シードピア時代に、世界を恐怖に陥れた魔人、“パトリック・ハミルトン”…。』」

おそらくそれは、先ほどゴルゴが言っていた情報に合致すると言うことで間違いないだろう。

「『その目的は、一説によれば“究極の力・GUNDAM”を手に入れて世界を征服することであるとされている』…。うんうん、なるほど……。」

さらに、詳細としてこのようなことが書かれている。


古き時代、突如としてその魔人・パトリックは姿を見せた。

その禍々しき力を持ってして、闇の騎士たちを呼び出し、シードピア全てを暗黒に染めようとした。

その時、未知の鎧を身に纏いし5人の戦士たちがどこからともなく現れた。

その未知の鎧こそ、魔人・パトリックが追い求めていた究極の力・“GUNDAM”である。

だが、この鎧の力を身にすることが出来るのは、純粋な心を持ち、SEEDの力を持つものだけ。

力を欲しようとした魔人は、欲望に身を任せ、戦士たちに襲い掛かっていったが、それは裏目に出た。

各々の鎧が持つ秘められし力によって、魔人の姿は消え、シードピアは平穏を取り戻した。

しかし、魔人が消滅したと同時に、“GUNDAM”も戦士たちも姿を消し、その存在は言の葉で語り継がれ伝説となる。

一説では、“GUNDAM”は何処かの地に封印され、再び世界に危機が訪れるそのときまで、眠り続けているのではないかと言う話がある。

そして、その戦士たちの魂もまた、時を越えその代が変わっても、受け継がれているのでは…。

かの危機を救ってくれた戦士たちのように、勇気を知り、力を知り、愛を知る戦士となれ。

そんな願いが込められているかのように…………。


歴史学者として、興味がそそる内容ばかりが綴られていた。

さらに杏奈は、これらに関わる詳細がないか、詳しく調べることにした。




「なるほどな……。」

大神は、フワニータが持ってきた石盤に眼を通しながら頷いた。

大神はアイリスからの知らせと、フワニータの報告を受け、さくら、ジェミニ、レニ、エリカらも連れて、墓場の外れに来ていた。

スピリード島の外れの墓場近くに、こんなものがあろうとはだれも思っていなかった。

見立てからして、石盤の大きさは大体片腕一本分足らずほど。

中心部と円の周囲には、それまで見たことのない文字が。

さらに、中心部の文字の周りには、赤、緑、水色、黄色、紫の色が飾られていた。

そして、どういうわけかこの石盤の文字は、この石碑の近くに綴られてある文字と同じものがあったのだ。

「これらの文字、何か意味があるのですか?エリカ、さっぱりなんですけど……。」

「……まかせて。」

名乗りを上げたのはレニ。

彼女はメンバーの参謀的存在。

戦闘に関する知識はもちろんのこと、こうした状況打破にも一役買ってくれる頼もしい存在なのだ。

レニは大神から石盤を取り上げると、それと石碑の文字を交互に見た。

「こう言った暗号系は、数字が一番肝心なんだ。」

そういうとレニは、石盤の文字を数え始めた。

「これらの文字は全部で26個。26個の文字で思い浮かぶのと言ったら………。」

「アルファベット、じゃないですか?」

不意に聞こえた少年のような声。

振り向くと、そこには彼らの隊長が居た。

「新次郎!?どうしてここに!?」

「フワちゃんが重そうなものを抱えているのを見かけてさ、心配になって後を付けてみたんだ。でも………。」

一区切りおいて、新次郎は目の前の石碑に眼をやった。

「こんな場所、初めてだよ……。」

さすがに新次郎も知らなかったらしい…。

「さてと、大河隊長の予測が正しければ、この赤い文字を『A』に置き換えてみると………。」

レニを中心に、大神たちは古代文字の解読を進めた………。




テレヴィアとはまた違う、シードピアの太陽。

それが沈み始め、町全体が夕焼け色に包まれた。

いつの間にか眠ってしまった杏奈は、夕焼けの太陽の光で目が覚めた。

「あら、もうこんな時間!早く戻らないと……。」

いそいそと資料を元の場所に戻す杏奈。

全部を戻したところで、彼女の視線にあるものが写った。

「………?あれは…?」

杏奈の瞳に写ったのはふわふわとした金色の髪。

どこかで見たような……―――――。

ふと少女は、こちらの視線に気付いたのか、そこから逃れるように逃げ出した。

何か怪しい。

そう感じた杏奈は即座に少女の後を追いかけ始めた。


博物館から少女の後を追いかけて数分、ティアーズの拠点・リーフが目の前に見えてきたその時、追われていた少女が足を滑らし、その場に転んだ。

「…大丈夫?」

思わず手を差し伸べる杏奈。

しかし、少女がこっちに視線を向けたと同時に、杏奈の表情と目つきが一変した。

向けてきた顔は、ワインレッドの瞳を持った童顔の少女。

服装は以前とはまるっきり違い、いかにも町の少女らしい風貌をしているが………、間違いない。

「あんた……ブルーコスモス・ファミリーの!!!」

思わずティアーズに連絡を取ろうとしたその時。


「ちょっと待てえっ!!」


別方向から聞こえた男性の声。

杏奈は懐に隠し持っていた武器を構える。

出てきたのは、今の時期には風変わりなカウボーイスタイルの男だった。

「…誰?…ブルーコスモス・ファミリーの仲間……?」

警戒心を強める杏奈に対し、男は至って温和だった。

「そんなに硬くなるなよ。それに、俺はあいつらの仲間じゃねぇよ。」

“それを証拠に”と言うように、彼は懐から小さなピンバッヂを取り出した。

大鷲を象り、イニシャルとして刻まれてある『S.C.』の文字。

「それ…!スピリチュアル・キャリバーのエンブレム!?」

様子からして、彼は以前ジェミニが口にしていた“特殊派遣隊員”のようだ。

「そうだ。ジェミニから色々と聞いたが、お前が“ティアーズ”のメンバーか。」

男はピンバッヂを懐にしまい、改めて自己紹介した。

「俺はブレッド・バシレウス。ジェミニと同じ、特殊派遣隊員の一人だ。よろしくな。」

すると、彼の背後から見知らぬ人物が二人も現れた。

「どうした?」

「何かあったの?」

ブレッドと名乗った青年の知り合いだろうか、彼らはしばし密談した。

1分ほど間がおかれた後、銀髪の青年が杏奈に眼を向けた。

「君がティアーズのメンバーか。」

「え…、どうしてそれを?」

見ず知らずの相手が“ティアーズ”のことを知っている。

意表をつかれた杏奈は眼が点になった。

今度は、長い深緑の髪の女性が切り出した。

「ブレッドたちから、あなたたちのことは聞いているわ。あたしはセレーネ・マクグリフ。よろしく。」

「俺は、元ブルーコスモス・ファミリー副隊長、スウェン・カル・バヤンだ。」

異例の人物との巡り合わせだった。

かつてのBCF副隊長と言う存在の登場は、今後のてれび戦士とライガーシールズにとっての強力な助っ人になる。

杏奈の脳裏に、そんな予感が過っていた。



---to be continued---


あとがき:
またしてもかなり間が空いてしまいました…。
第27話で登場したブレッド、スウェン、セレーネ、ステラが久しぶりに再登場しました☆

予告どおり今回は前回に登場した石盤に関するスペシャルヒントが文章中に出てきます。
…と言っても、すぐに判りますよね?
さて次回のストーリーはゾロアシア中心で参ります。
しかも、サクラ大戦シリーズからまたしても新参者登場でございます!








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