ゴルゴ伯爵たちがもたらした“クリスティア島”での調査報告は、ティアーズ内部でも波紋を呼んでいた。
「このシードピアに知られざる闇が存在するかもしれないって!?」
「間違いないのか、ゴルゴ!」
「確証があるわけじゃないがな。それに関わる物品も入手しておいた。ドクターレイシー、チアキ、あれを持ってきてくれ!」
呼ばれて出てきた二人は、なにやら大きめの石盤を抱えていた。
二人はそれを壊さないよう身長に取り扱い、テーブルの上に置いた。
「この石盤には、シードピアにおける古代世界と思える様子が描かれてあるのだが、実はここに文字が書いてあるんだ。」
ゴルゴが指差した先を見ると、確かにそこに文字が刻まれていた。
それも二箇所に…………。
一つは聞き慣れない言葉であったが、もう一つの言葉に全員が眼を見開いた。
そこには紅い文字で『SEED』と書かれてあったのだ。
ゴルゴは、さらに報告を続けた。
「……つまり、カオティクス・ルーインには“GUNDAM”なるものが封印されており、それを解くには“シードクリスタル”が必要。」
「さらに、それを手にすることが出来るのは“SEEDを持つもの”だけと言うことだな。」
だが、マルキオ導師の解釈が正しければ、さらなる疑問が浮かぶ。
第1に、“GUNDAM”と呼ばれるものが一体何なのか。
その大きさやパワーによっては、このシードピアの行く末を左右するものになり兼ねないからだ。
第2に、“シードクリスタル”とはいかなる宝石なのか。
この世界にとって重大なものであることは間違いなさそうだ。
だが、それがどこにあるのかも問題の一つだ。
「でも、それらが判っても“暗号”が判らなきゃなぁ……。」
意味深なチアキの言葉に、全員が眼を向けた。
「チアキ、暗号ってどういうことや……?」
「レッド隊長、実はですね…。その“GUNDAM”と呼ばれるもの、パスワードでロックがかかっているらしいんですよ…。」
話だと、石盤の中にメッセージデータを封印した少女・セトナによってパスワードの暗号がもたらされたようなのだ。
「しかも、それはシードピアの古代文字のようなのですが、何のことやら私たちにもさっぱり………。」
シードピアに関するさらなる謎が、知らず知らずのうちに広がってきているようだった……。
「…訳のわかんねぇことばっかだな…。それに、ゴルゴが言う“闇の魔人”ってやつが実際に出てきているかも判らないし…。」
竜一を含め、ブリッジに集まったメンバーたちはそろって唸っていた。
頭がこんがらがりそうだ…………。
周囲に散らばるロボットの残骸、無残に破壊されたライブステージの会場。
まさに、戦いの爪あととでも表現すべき光景であった。
ゾロアシアで隠密行動を行っていた卓也たちは、またしてもブルーコスモス・ファミリーの襲撃に巻き込まれた。
そして、成り行き上この国の親衛騎団である特殊部隊“エターナル・フェイス”の後方支援を賄った。
幾分か時間が過ぎた後、ブルーコスモス・ファミリーは撤退を開始した。
卓也たちはどうにか、ここでの戦線も切り抜けることに成功したのである。
「どうにかひと段落ついたわね…。」
「しかし、しばらくは彼らとの奇妙な縁は続きそうじゃな…。」
「会って嬉しい相手じゃねぇけどな…。」
すると、背後からエンジンの轟音が響いた。
ふり向くと、エターナル・フェイスのロボットの軍団がゆっくりと降り立っていくのが見えた。
それを確認したアスランは、ラクスを連れて彼らの傍へ。
コックピットから降り立ったのは、自分たちてれび戦士とほぼ同年代、いや、やや年上の少年少女たちだった。
「全員、ティアーズに対し、敬礼っ!!」
アスランの指示により、全員が敬礼をした。
改まったような彼らの敬意に戸惑いつつも、卓也たちはアスランたちを真似るかのように敬礼で返した。
すると、別方向から拍手が。
ふり向くと、長い黒髪の男が居た。
「やあ。キミたちが“ティアーズ”だね。私はギルバート・デュランダル。エターナル・フェイスの総司令官だ。」
アスランたちの最高責任者が直々に足を運んでくるとは思わなかった。
だが、微笑をみせ穏やかな口調で話すその雰囲気に、卓也たちもどこか安心感を覚えた。
「直接着てもらった上、ご丁寧な挨拶、こちらも痛み入るくらいだ。私は有沙。ティアーズの最高責任者だ。」
年齢とは不釣合いな彼女の身分に、全員が眼を丸くした。
「これはこれは、随分幼い指揮官殿ですな…。」
そこに、愛実が釘をさした。
「お言葉ですが、有沙さまは我らが故郷・テレヴィアの国の一つである“アンダーワールド”の女王様でもあるのです。軽はずみな発言はどうかお控えいただきたいものです。」
「おぉ、それはそれは。ご無礼をして申し訳ない。」
「よいよい。お気になさるな。」
すると、どこからかまたさりげない拍手が響いた。
振り向くと、いかにも威圧感が漂う、黒と薄紫の服を着た男が立っていた。
「これはこれは……ザラ議長どの。」
するとデュランダルを初めとするメンバーたちがそろって跪いた。
卓也たちは何が起こっているかわからなかった。
男は、卓也たちの目の前に立ち、挨拶を交わした。
「諸君、我がエターナル・フェイスを助けてくれて感謝する。私は、ゾロアシア・ワールド最高評議会議長、パトリック・ザラだ。以後お見知りおきを。」
「は、はい…はじめ、まして。」
最高評議会の議長。
即ち、この国の実質的リーダーとも取れる存在だ。
鋭い眼差しに、てれび戦士たちはわずかながら恐怖感を感じていた。
「…本来ならば、君らのような者たちがこの軍施設に立ち入ることは許されないのだが、君たちはエターナル・フェイスを支援しただけでなく、ラクス・クラインすらも救出してくれた。その功績に免じて、見逃してやろう。」
「あ、ありがとうございます…。」
厚意に感謝しつつも、しばらく彼には慣れそうにもなさそうだ。
「デュランダル、後で彼らに“特別通行証”を発行してやりなさい。せめてもの感謝の印として。」
「はっ。」
ここで、アスランが前に出てきた。
「議長閣下、ラクス・クラインは今回の一件でお疲れかと思われます。一度、彼女だけでもご帰宅させたほうがよろしいかと…。」
「うむ、そうだな……。」
少し考えたパトリックは、部下に車の手配を命じた。
「アスラン、ラクスの見送りは私がやっておこう。お前は彼らを頼むぞ。」
「はっ。」
指示を送ると、彼はラクスを連れてその場を去った。
二人の姿が見えなくなると、甜歌が疑問に思ったことをアスランに尋ねた。
「アスランさん、あのパトリックさんって人、アスランさんと同じ“ザラ”の名前だったような……。」
彼女の言葉に、卓也たち3人がハッとした。
アスランは、重そうな口を開いた。
「あぁ…、あの人は俺の父親だ。」
“やっぱり”と思う気持ちと“ええっ?”と思う気持ちが半々だった。
「じゃあ、何で“お父さん”って言わなかったんですか?」
「そうやって呼べるのは家の中だけ。ここのような公の場所ではそんな間柄は関係ないんだ…。色々と、複雑なんだ、こっちも…。」
アスランの家のプライベートは、うかつに追求しないほうがよさそうだ。
シードピアの永世中立地帯、アストレイバー・アイランド。
その中心部である“スピリード島”の片隅には、歴代のシードピアの戦士たちの魂が眠る墓地があった。
ジェミニと共に久しぶりの休暇をもらったフワニータは、この墓地に訪れていた。
以前ジェミニから、この場所を教えてもらったことがあり、お墓参りのついでにその一帯を散策してみようと考えていたからだ。
「海が見えるお墓、か……。魂のみんなが安らぎそうな場所ね…。」
墓場の先の丘は、海が見える絶景の場所。
静かに眠るには打ってつけの場所だった。
ふと、フワニータが何かを感じた。
得体の知れない邪悪な波動がわずかながら放たれていた。
「……!?この波動、どこから…?」
彼女は、波動の出所を探し出した。
探すうちに、彼女は少し墓場から離れた森の中に入っていった。
すると――――――――。
「………何、コレ……!?」
彼女の眼に飛び込んできたのは、バラバラに破壊された巨大な墓石、いや、石碑と呼ぶべきものの残骸だった。
「“スピリード島”にこんな場所、あったの?」
おもむろに近づいてみると、足元に何かが書かれてあるのに気付いた。
φ л λ ι θ ι λ ж ψ э σ л σ ф г ж λ ι ч э ю ι ξ ж ю э б ι ξ ю л ы э ю л φ л λ э ι θ ж σ ж п ф
「文字…なのかな……?」
どうやら古い時代の文字のようだが、フワニータにとってはチンプンカンプンだった。
ふと、目線をそらすと、壊れた石碑の中に大きな石の円盤が埋もれていたのが眼に留まった。
フワニータはその重そうな石盤を取り出した。
「………何だろう、この石…?」
後に、この石盤が今後の彼女ら“スピリチュアル・キャリバー”を始め、シードピア全土に大きな影響をもたらすことになろうとは、誰も知るはずもなかった……………!
---to be continued---
あとがき:
謎の石盤登場しました!“天才ビットくん(現:ビットワールド)”へのオマージュで、ペイントを使って自作してみました☆
解読方法は非常に単純でございます。“謎の文字”をコピペして“メモ帳”などに貼り付けて
石盤と照らし合わせてみればわかるかと思います☆
次回には、物語の中に解読方法のスペシャルヒントもさりげなく載ってますので、お見逃しなく☆
さて、次回は久しぶりにスピリチュアルキャリバーの主力メンバーが再登場です☆
あ、そろそろあの人たちにも久々に出てもらわないとまずいな……。