ブルーコスモス・ファミリーが誇る戦闘モビルスーツ・ナイトメア。
その特殊機能の一つが、遠隔コントロール機能であった。
非常時の際には、フレスベルグからの無線通信によってMSを遠隔操縦し、安全にパイロットの下へと送ることが可能なのだ。
「ロボットの遠隔操縦って……!そんなのアリ〜!?」
予想を覆す展開に、てれび戦士、アスラン、ラクスは眼を疑った。
これでまたしても形勢が逆転されてしまった。
通信機越しにフレイが話しかけてきた。
『さっきはよくもあたしたちをコケにしてくれたわね。でも、これでようやく鬱憤晴らしが出来るわ。』
そう言って、フレイのMSがサブウェポンのビームライフルを取り出し、標準を自分たちの方角に定めた。
『消えなさいっ!!!』
銃口からレーザーが放たれた。
しかし、てれび戦士が機転を利かせた。
「鉄壁の防御!」
「「テレハルコンシールド・機動!!」」
瞬時に、彼らのリストバンドが各々で大型の円形シールドを造りだし、ビームを跳ね返した。
目の前で起こった出来事に、アスランとラクスはまたしても眼を見開いた。
高出力のビームは、下手をすれば一撃で命を落とす。
それを跳ね返すことなど、考えられなかった。
無論、攻撃を仕掛けたフレイたちもまた、例外ではなかった。
『うそ……!ビームが弾かれた…!?』
『そんなバカな!!』
ひとまず危機を脱したてれび戦士たちは、ホッと胸をなでおろした。
「これは一体…!」
「どういう事!?」
有沙女王から順番に、てれび戦士が説明した。
「わらわたちティアーズの特殊アイテム・“シールド・ブレスレット”を使ったのじゃ。」
「私たちの間で最強の金属とされている、“テレハルコン”と呼ばれる金属を使ったシールドに変形するのが、このブレスレットよ。」
「これは、あらゆる攻撃を跳ね返すことが出来る特殊装備になっているから、決して破壊されることはないんだ。」
「しかも、これを壊せるのはテレハルコンの武器だけって言うから、凄いでしょ!?」
テレヴィアの先端技術の高度さに、二人は唖然とするしかなかった。
すると、天空から一筋の光線が。
見上げると、3機で編隊を組むMSが。
アスランのカレイドスコープに通信が入ってきた。
『アスラン隊長!無事ですか!?』
「お前たちか!そっちはどうだ!?」
レイが冷静な対処で報告を行った。
『ある程度、敵数も減りました。敵戦艦はイザーク先輩たちが対処しています!』
「よし!一気にカタをつけるぞ!全機、攻撃開始だ!!」
『『『了解!!』』』
3機が散開し、相手に向かって攻撃を開始した。
フレイたちも、MSを巧みに操って対抗した。
飛び交うレーザー光線、火花を散らすビームサーベル。
てれび戦士たちは真上で起こっている戦いを呆然と見つめた。
次元の違いを感じながら……。
ニュートラルヴィア近海の遺跡島・クリスティア島。
その島の遺跡・“カオティクス・ルーイン”に比較的近い場所に存在する小さな伝道所。
久しぶりの休暇をもらっていたキラは、このときをゆっくりすごしたいと考え、この島に足を運んでいた。
無邪気な子供たちの声を聞き、心からの安らぎを楽しんでいたキラは笑みを浮かべた。
すると、不意に後ろからトロピカルドリンクを差し出された。
振り返ると、マルキオ導師の付き人的存在である金髪の少年、プレア・レヴェリーがいた。
「…ありがとう。」
プレアは、キラが飲み物を受け取るのを確認すると、彼の傍らに座った。
「こんな穏やかな時を過ごすのって、久しぶりですよね…。」
「…そうだね。」
このまま時が流れてくれればいいと考えていた、そのときだった。
「とととと……ドクターレイシー、ちゃんと持てよ!」
「ゴルゴ伯爵こそ、もう少しゆっくり歩いてくださいよ!」
何やら愚痴を言い合っている声が聞こえ、キラとプレアは立ち上がり、声の聞こえたほうへ振り向いた。
そこにいたのは―――。
「あれ!?ゴルゴ伯爵じゃないですか!」
ゴルゴ伯爵たちが何やら大きな石盤を持ってこちらに歩いてきたのだ。
声を聞いたことで気付いたのか、ゴルゴは辛うじて後ろを見た。
「おお!ヤマト隊長!丁度良かった!」
彼らが持っている石盤は大きさからして、相当重いものに見える。
傍らに居る二人の少年も運ぶのを手伝っているようだが、そろそろ限界が近づいているように見えた。
「遺跡の近くで見つけたこの石盤に凄いことが書いてあるから、マルキオ導師に見てもらおうと思ってたところなんですよ。」
そのとき、ゴルゴの足元が狂った。
「「どわああぁぁっと!!!」」
「「「うわっ!!」」」
ドシーーーン!!!
キラたちが目を瞑ったと同時に勢いよく砂煙が舞い上がった。
恐る恐る眼を開けると、そこには石版に押しつぶされていたゴルゴの姿があった。
「「あ〜あ…。」」
キラとプレアはあきれるしかなかった。
「俺って毎回、こんな役なのね…ガクッ。」
ゴルゴは気絶してしまった。
しかし、石盤が壊れていないことがせめてもの救いだったかもしれない……。
ゴルゴが気絶から回復したのは10分後のことだった。
それまでのうちにキラたちは、ゴルゴたちが手に入れた石盤をマルキオ導師の伝道所の中に運び込んだ。
「あ〜いたたた…。」
「ゴルゴ伯爵、大丈夫ですか?」
「何とかな…。」
花火がゴルゴの怪我の治療にあたっている間、マルキオはプレアと共に石盤に眼を通していた。
キラも彼らの傍らにつき、ゴルゴたちが持ってきた石盤をまじまじとみつめていた。
「マルキオ導師、何か判ったことは……。」
ドクターレイシーの質疑の後、数刻の間を置き、マルキオが口を開いた。
「これはおそらく、この世界に迫り来る災厄に立ち向かう勇者を表しているのではないでしょうか?」
意外な言葉が返ってきた。
「“災厄に立ち向かう勇者”と言いますと、これは人間だと言うことでしょうか…?」
「…それはまだ判りません……。」
さらに、マルキオは続けた。
「ここに書かれてある“GUNDAM”の総称でもある“GUardian of Nexus-mankind Defend Awakening Maximum”と言う言葉は、直訳すると“人類の絆を守るために覚醒した最大のガーディアン”と言う意味になります。」
マルキオの解釈だと、『SEEDを持つものはこの“GUNDAM”と言う力を手にする権利がある』と言うことになるらしい…。
謎が謎を呼ぶ展開になった、そのときだった。
「……あれ?絵の真ん中に切込みみたいなのが…。」
チアキは石盤に描かれた絵のほぼ中心部に、切込みが入れられているのに気付いた。
よく見るとそこは、巨大な敵に立ち向かう“勇者”のうちの一体の顔の部分だった。
チアキはおもむろにそれに触れてみると―――――。
――――カチッ、ピピピ!
ウイイィィィィン
「「「「!!!」」」」
突如石盤の中から機械音が響き、その場に居た全員が驚きの声を上げた。
「え!?何!?どうなってんの!??」
石盤の内部から機械の一部と思しき物体が姿を見せ、そこに立体映像が表示された。
出てきたのは、ふわっとしたピンク色の髪を持ち、頭にリボンを着け、首飾りを身に着けた一人の少女だった。
『こんにちわ。私はセトナ・ウィンタース。未来の世界で復活するかもしれない一つの災厄を防ぐために、この石盤の中にメッセージを残します。』
セトナと名乗る少女は、その表情を変えずに淡々と話し出した。
『近いうち、闇の魔人パトリック・ハミルトンが復活するかもしれません。そこで、万が一に備えて、私のこの身をコールドスリープモードにすると同時に、このカオティクス・ルーインに“GUNDAM”を封印します。』
ゴルゴたちはもちろん、キラたちにとっても何のことやらさっぱり判らなかった。
『もしも、再び“GUNDAM”の力を欲するときが来たならば、その封印を解いてください。尚、封印を解くには、ユーザーコードとパスワードの入力が必要です。それらを暗号化したのが、こちらの文字です。』
すると、目の前になにやら文字が出てきた。
ユーザーコード:ξ э φ г ж л
パスワード:л г й э щ
さらに、彼女は意味深な言葉を最後に残した。
『この暗号がわかったならば、“シードクリスタル”と共に、遺跡最深部へ。この世を救う扉が開かれる日が来ることを信じて…。』
その言葉を最後に、セトナの立体映像は消えて、石盤に収められてしまった。
唐突な出来事に、全員がしばし呆然とした。
「今のは、一体なんだったんだ…!?“GUNDAM”が遺跡に封印されているって…!」
「ちょっと、大変なことになってきましたね…!」
謎の遺跡“カオティクス・ルーイン”に封印されてある、謎の力“GUNDAM”。
先ほどの暗号は、その封印を解くカギとなるだろう。
しかし、それを解くために必要とされる“シード・クリスタル”とは……?
謎の魔人“パトリック・ハミルトン”とは、何者なのだろうか……?
そして、謎の少女セトナのメッセージと暗号の意味とは……?
---to be continued---
あとがき:
久しぶりの長編更新でしたが、またもや中途半端なところで区切ってしまったようです…。(苦笑)
今回は新キャラとして「ASTRAYシリーズ」のセトナが登場しました!
しかも現時点ではかなり重要なポジションについているようです。
これから先で、てれび戦士やキラたちと大きく関わっていくことになるかもしれませんね☆
さて、物語はまたしても急展開してまいりました!
果たしてあの暗号はどんな意味を持つのか、ぜひ皆さんにも考えていただきたいと思います☆