Phase28 燃え盛る蒼き炎


司令室に響き渡る警告音。

周囲が慌しい雰囲気に包まれた。

「一体どうした!?」

「大型の飛行物体が、ゾロアシアに接近中!」

「光学映像、表示します!」

オペレーターの一人、アビー・ウィンザーがモニターを表示した。

目の前に現れたのは、蒼白の大型戦艦だった。

「デュランダル司令!これは…!!」

「まさか、ブルーコスモス・ファミリーの旗艦か!?」

これまで幾度なく戦線を布告されたゾロアシアの精鋭たち。

しかし、BCFの活動拠点なる大型旗艦が現れることなど、これまで一度たりともなかった。

「BCF旗艦より、戦闘機及びMS部隊多数発進!!」

彼らがこれ以上攻撃してきたら、こちらとて収拾がつかなくなる可能性が高い。

タリア・グラディス司令は、手際よく指示を送った。

「アスランはティアーズとラクス・クラインの保護を優先!他はその場で敵の排除を要請させて!」

「了解!」


本部からの伝令が届くと、すぐにメンバーの一人がパーソナルアイテム・カレイドスコープを使ってにアスランに通信をつなげた。

『アスラン隊長!』

名を呼ばれたアスランは、カレイドスコープを起動させ、通信に出た。

「シン、どうした?」

『司令部から入電で、隊長は彼らの保護を優先して、残りはBCFを排除しろですって!』

ややあって、アスランは全軍に指示を送った。

「よし!シンたちは司令部の指示に従い、敵を排除せよ!」

『了解!』

さらにアスランはコードを入力し、戦友でもある彼と通信をつなげた。

「イザーク、悪いがここから先の指揮はお前に任せる。シンたちを頼むぞ。」

『言われずともだ!お前は自分の任務を優先しろ!』

通信を切ったと同時に、エターナル・フェイス全軍が出撃した。

「さてと、目の前の連中がMSを受け取る前に、どうにかしないとな…。」

アスランは、懐にしまってある護身用ナイフ“ミスリルレイザー”を取り出した。

目の前の敵であるBCFは、モビルスーツに乗り込んだら真っ先にこちらに襲い掛かってくるに違いない。

それだけはなんとしても避けなければならない。

すると、ティアーズの女の子二人も武器を取り出した。

「あたしたちも手伝いましょうか?」

「援軍は一人でも多いほうが、いいんじゃないですか?」

アスランは驚いたが、援護は心強い。

そう考えた彼は、黙認代わりに話しかけた。

「名前を、聞かせてもらおうか……?」

二人の少女は頷いた。

「特捜遊撃部隊レインボー・ガーディアンフォース、橋本甜歌!」

「陽動工作部隊アンダーワールド・バスターズ、篠原愛実!」

「テンカとツグミか、覚えておこう。」

アスランはミスリルレイザーのエネルギーを全開させた。

「俺は、エターナル・フェイス“ミネルバチーム”リーダー、アスラン・ザラだ!」

名を聞いた甜歌と愛実は、それぞれの武器を起動させた。

相手側も武器を起動させ、臨戦態勢を整えた。

「卓也、有沙女王、ラクスさんの保護をお願い!」

「オッケー!」

「わらわたちに任せておけ!」

愛実は最悪の状況を避けるべく、後ろの二人に、歌姫の保護を頼んだ。

これで準備は整った。


「テンカ、ツグミ、後方支援を頼むぞ!」

「了解!!」

「アイアイサー!!」


フレイとアウルの怒りは、もはや留まるところを知らないところまで燃え上がっていた。

「どこまであたしたちをコケにするつもりなのよ…!」

「おしおきされるのはどちらか、たっぷり教えてやろうじゃん!!」

二人は、ヴァジュラウェポンを究極形態に変形させた。

「「ヴァジュラウェポン・ハイマットモード!!」」

ビームガンと剣の両方を併せ持つ万能形態が、この姿である。


互いににらみ合う、緊迫した状況が続いた。

そして、ミサイルが近辺に落下し爆発した音を合図に、それは幕を上げた。

アスラン、甜歌、愛実の3人が一気に突撃してきた。

フレイとアウルはそれをいとも簡単に大ジャンプでかわした。

二人は一気に3人を挟み撃ちに、突撃してきたが、アスランたちは散開し、逆の立場に追いやった。

ここで甜歌、ひらめいた。

「愛実、アスランさん、ここはあたしに任せて!」

「どうするの?」

甜歌は、首に下げてある“RGリモコン”を起動させ、さらに“レインボーサーベル”をスピアーモードに変形させた。

「レインボーアタック、“早送り”!!」

―――早送り!?

甜歌のもつ小型機械から虹色の光線が自分に向かって放たれた。

さらに、甜歌はその機能を生かした翻弄作戦に躍り出た。

「いっくぞ〜っ、“レインボー・ライト・ヴェロシティ”!」

レインボースピアーを回転させながら、自分もまた敵の周りをグルグルと回り始め、それはやがて大きな虹の輪を描いた。

その速度はまさに、並の高速の域を超えていた。

RGリモコンの早送り機能は、常人の数倍以上のスピードで移動することができる特殊機能。

それをうまく使った頭脳作戦となった。

何度も何度もグルグルと回り続ける相手に、フレイとアウルはだんだん目を回しはじめた。

その隙を突いたアスランと愛実は、自慢の運動神経で大きくジャンプし、ターゲットを定めた。

アスランの手には、レーザーガンモードに変形させた“カレイドスコープ”があった。

「「ダブル・スナイパーアタック!!」」

ドド―――ン!!

「「わああぁぁっ!!」」

爆発と衝撃波で、フレイとアウルは大きく吹き飛ばされた。

キキ―――ッ!

車の急ブレーキのような音を立てて、甜歌がようやく止まった。

その足ですぐに、アスランと愛実のもとへ合流した。

「テンカ、ナイスサポート!」

アスランが親指を立てて健闘をたたえると、甜歌もブイサインで返した。

「さて、一気に決めますか。」

愛実がリロードグリップを引き、エネルギーを充電させると、それを即座に構えた。

「よし、このまま突撃―――。」

ドッカ――――ン!!

「「「うわああぁぁっ!!?」」」

言いかけた瞬間、目の前で何かが爆発した。

上空を見上げると、そこには3体のMSが。

『お〜いお前たち、大丈夫か!?』

そのうちの一機から聞こえた声。

その主は、彼らのリーダーだった。

「ネオ!遅ぇよ!」

『まぁまぁ、お前たちの“ナイトメア”を持ってきた!これで反撃しろ!』

すると、後ろの2機のコックピットハッチがオープンした。

「えっ?!もしかしてあれって、誰も乗ってないの!?」

甜歌は驚きを隠せない言葉を口にした瞬間、アスランが叫んだ。

「まさか…!遠隔自動操縦か!?」

その間にフレイとアウルは、ヴァジュラウェポンを使ってMSに向かった。

「「ヴァジュラ・ビームワイヤー!!」」

レーザーガンから光の帯が放たれ、それがコックピットハッチに引っかかった。

「とおっ!」

「はっ!」

ワイヤーに手繰られ、二人はスムーズにコックピットに搭乗した。

「最悪の展開だ……!」



---to be continued---


あとがき:
久々にシードピア、更新できました……。今回は地上での戦い中心となりました。
それにしても、甜歌って意外に頭の回転が早いところがありますね……。
戦闘中のときだけだと思いますが。(苦笑)
さて、次回は『ASTRAYシリーズ』から新キャラが登場です!またまた物語が大きく動きます!








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