司令室に響き渡る警告音。
周囲が慌しい雰囲気に包まれた。
「一体どうした!?」
「大型の飛行物体が、ゾロアシアに接近中!」
「光学映像、表示します!」
オペレーターの一人、アビー・ウィンザーがモニターを表示した。
目の前に現れたのは、蒼白の大型戦艦だった。
「デュランダル司令!これは…!!」
「まさか、ブルーコスモス・ファミリーの旗艦か!?」
これまで幾度なく戦線を布告されたゾロアシアの精鋭たち。
しかし、BCFの活動拠点なる大型旗艦が現れることなど、これまで一度たりともなかった。
「BCF旗艦より、戦闘機及びMS部隊多数発進!!」
彼らがこれ以上攻撃してきたら、こちらとて収拾がつかなくなる可能性が高い。
タリア・グラディス司令は、手際よく指示を送った。
「アスランはティアーズとラクス・クラインの保護を優先!他はその場で敵の排除を要請させて!」
「了解!」
本部からの伝令が届くと、すぐにメンバーの一人がパーソナルアイテム・カレイドスコープを使ってにアスランに通信をつなげた。
『アスラン隊長!』
名を呼ばれたアスランは、カレイドスコープを起動させ、通信に出た。
「シン、どうした?」
『司令部から入電で、隊長は彼らの保護を優先して、残りはBCFを排除しろですって!』
ややあって、アスランは全軍に指示を送った。
「よし!シンたちは司令部の指示に従い、敵を排除せよ!」
『了解!』
さらにアスランはコードを入力し、戦友でもある彼と通信をつなげた。
「イザーク、悪いがここから先の指揮はお前に任せる。シンたちを頼むぞ。」
『言われずともだ!お前は自分の任務を優先しろ!』
通信を切ったと同時に、エターナル・フェイス全軍が出撃した。
「さてと、目の前の連中がMSを受け取る前に、どうにかしないとな…。」
アスランは、懐にしまってある護身用ナイフ“ミスリルレイザー”を取り出した。
目の前の敵であるBCFは、モビルスーツに乗り込んだら真っ先にこちらに襲い掛かってくるに違いない。
それだけはなんとしても避けなければならない。
すると、ティアーズの女の子二人も武器を取り出した。
「あたしたちも手伝いましょうか?」
「援軍は一人でも多いほうが、いいんじゃないですか?」
アスランは驚いたが、援護は心強い。
そう考えた彼は、黙認代わりに話しかけた。
「名前を、聞かせてもらおうか……?」
二人の少女は頷いた。
「特捜遊撃部隊レインボー・ガーディアンフォース、橋本甜歌!」
「陽動工作部隊アンダーワールド・バスターズ、篠原愛実!」
「テンカとツグミか、覚えておこう。」
アスランはミスリルレイザーのエネルギーを全開させた。
「俺は、エターナル・フェイス“ミネルバチーム”リーダー、アスラン・ザラだ!」
名を聞いた甜歌と愛実は、それぞれの武器を起動させた。
相手側も武器を起動させ、臨戦態勢を整えた。
「卓也、有沙女王、ラクスさんの保護をお願い!」
「オッケー!」
「わらわたちに任せておけ!」
愛実は最悪の状況を避けるべく、後ろの二人に、歌姫の保護を頼んだ。
これで準備は整った。
「テンカ、ツグミ、後方支援を頼むぞ!」
「了解!!」
「アイアイサー!!」
フレイとアウルの怒りは、もはや留まるところを知らないところまで燃え上がっていた。
「どこまであたしたちをコケにするつもりなのよ…!」
「おしおきされるのはどちらか、たっぷり教えてやろうじゃん!!」
二人は、ヴァジュラウェポンを究極形態に変形させた。
「「ヴァジュラウェポン・ハイマットモード!!」」
ビームガンと剣の両方を併せ持つ万能形態が、この姿である。
互いににらみ合う、緊迫した状況が続いた。
そして、ミサイルが近辺に落下し爆発した音を合図に、それは幕を上げた。
アスラン、甜歌、愛実の3人が一気に突撃してきた。
フレイとアウルはそれをいとも簡単に大ジャンプでかわした。
二人は一気に3人を挟み撃ちに、突撃してきたが、アスランたちは散開し、逆の立場に追いやった。
ここで甜歌、ひらめいた。
「愛実、アスランさん、ここはあたしに任せて!」
「どうするの?」
甜歌は、首に下げてある“RGリモコン”を起動させ、さらに“レインボーサーベル”をスピアーモードに変形させた。
「レインボーアタック、“早送り”!!」
―――早送り!?
甜歌のもつ小型機械から虹色の光線が自分に向かって放たれた。
さらに、甜歌はその機能を生かした翻弄作戦に躍り出た。
「いっくぞ〜っ、“レインボー・ライト・ヴェロシティ”!」
レインボースピアーを回転させながら、自分もまた敵の周りをグルグルと回り始め、それはやがて大きな虹の輪を描いた。
その速度はまさに、並の高速の域を超えていた。
RGリモコンの早送り機能は、常人の数倍以上のスピードで移動することができる特殊機能。
それをうまく使った頭脳作戦となった。
何度も何度もグルグルと回り続ける相手に、フレイとアウルはだんだん目を回しはじめた。
その隙を突いたアスランと愛実は、自慢の運動神経で大きくジャンプし、ターゲットを定めた。
アスランの手には、レーザーガンモードに変形させた“カレイドスコープ”があった。
「「ダブル・スナイパーアタック!!」」
ドド―――ン!!
「「わああぁぁっ!!」」
爆発と衝撃波で、フレイとアウルは大きく吹き飛ばされた。
キキ―――ッ!
車の急ブレーキのような音を立てて、甜歌がようやく止まった。
その足ですぐに、アスランと愛実のもとへ合流した。
「テンカ、ナイスサポート!」
アスランが親指を立てて健闘をたたえると、甜歌もブイサインで返した。
「さて、一気に決めますか。」
愛実がリロードグリップを引き、エネルギーを充電させると、それを即座に構えた。
「よし、このまま突撃―――。」
ドッカ――――ン!!
「「「うわああぁぁっ!!?」」」
言いかけた瞬間、目の前で何かが爆発した。
上空を見上げると、そこには3体のMSが。
『お〜いお前たち、大丈夫か!?』
そのうちの一機から聞こえた声。
その主は、彼らのリーダーだった。
「ネオ!遅ぇよ!」
『まぁまぁ、お前たちの“ナイトメア”を持ってきた!これで反撃しろ!』
すると、後ろの2機のコックピットハッチがオープンした。
「えっ?!もしかしてあれって、誰も乗ってないの!?」
甜歌は驚きを隠せない言葉を口にした瞬間、アスランが叫んだ。
「まさか…!遠隔自動操縦か!?」
その間にフレイとアウルは、ヴァジュラウェポンを使ってMSに向かった。
「「ヴァジュラ・ビームワイヤー!!」」
レーザーガンから光の帯が放たれ、それがコックピットハッチに引っかかった。
「とおっ!」
「はっ!」
ワイヤーに手繰られ、二人はスムーズにコックピットに搭乗した。
「最悪の展開だ……!」
---to be continued---
あとがき:
久々にシードピア、更新できました……。今回は地上での戦い中心となりました。
それにしても、甜歌って意外に頭の回転が早いところがありますね……。
戦闘中のときだけだと思いますが。(苦笑)
さて、次回は『ASTRAYシリーズ』から新キャラが登場です!またまた物語が大きく動きます!