Phase27 思いがけない再会


突然の戦闘介入者。

エターナル・フェイスの面々は、BCFの仲間かと思っていたが、それは大きく覆された。

全集音スピーカーから聞こえた、相手の言葉。

―――『お前たちは、テレヴィア公安組織・ティアーズ!!』

テレヴィア公安組織“ティアーズ”。

かつてシンたちが報告していた、謎の組織。

まさかそのメンバーがあんな子供たちだったとは……!

しかもよくよく見たら、彼らはかつてのリゾートホテルでの事件に関与していた少年たちだった。

『お前ら…立て続けに邪魔立てしてくれるな!』

『ニュートラルヴィアでも、このゾロアシアでも邪魔ばかりして!!絶対許さないわ!覚悟なさい!!』

距離をとったBCFが、ティアーズのメンバーの少女に切りかかろうとしたが、ここで予想もつかない行動に出た。

『ラクスさん、伏せて!レインボーアタック、“スロー”!!』

ティアーズの持っている小型機械から虹色の光が放たれ、それがBCFの仲間に直撃した。

一見は何も変わらないように見えるが、なんと―――――。

『し、し〜ま〜っ〜た〜!』

『ぜ〜ん〜ぜ〜ん〜す〜す〜ま〜な〜い〜!!』

敵の全ての速度が遅くなっていたのだ。

この隙を突いて、ラクスは救助された。

ティアーズの女の子が、こっちに向かって手を振っているのが見えた。

アスランは機体を跪かせ、腹部コックピットのハッチを開放し、そのまま降りた。

「ラクスさんを、よろしくお願いします。」

少女は、笑顔で彼女をアスランに託した。

「一度ならず二度までも君たちに助けられるとはな、ティアーズとやら…。」

今の会話を聞いていたのだろうか、組織の名を言われて、少女は複雑な表情をした。

「この借りは、この戦いで返す!」

互いに敬意を表し、各々の敬礼を交わした。

「甜歌〜!」

すると、他のメンバーであろう3人の少年少女が合流してきた。

「大丈夫?」

「うん、そっちは?」

一人の少女が大きな杖で別方向を指した。

「わらわたちにかかれば、この程度は楽じゃな。」

「骨がないって感じだったわね。」

その方向を見ると、BCFのメンバーと思しき少年少女たちが全員倒れていた。

気絶しているように見えるとはいえ、このティアーズの戦闘能力は予想以上だった。

――――ザクッ!

刃物が地面に突き刺さるような音が聞こえ、振り返ると、そこにはBCFの二人が、怒りの形相をあらわにしながら、サーベルを杖代わりにして体を支えていた。

「…あんたたち……!よくもあたしたちを怒らせたわね………!!」

「この代償は高くつくからな!!フレスベルグ、俺たちの“ナイトメア”を送ってくれ!それと、ブルーコスモス・ファミリーを全軍出撃させろ!!!」

アウルの怒号が、通信機を通じてフレスベルグに届けられた。

ティアーズとアスランたちの背筋が一気に凍りついた。


フレスベルグ・メインブリッジ。

そのキャプテンシートに座る一人の少女。

肘を立て、退屈そうに座っていると、突如動きが……。

「ミューディー、アウルから通信。“全軍出撃”、だそうだ。」

青年、シャムス・コーザからの報告を受け、笑みを浮かべた。

「痺れを切らしたみたいね、フレイちゃん…。」

一拍間をおき、全軍に通達した。

「コンディション・レッド発令。フレスベルグ、発進する。メンバーを搭乗機で待機させて。それと、フレイとアウルの“ナイトメア”は二つともオートマティックコントロールで、ネオにそれらの誘導を任せるわ。」

手際よく指示を送る、フレスベルグの切り込み隊長、ミューディー・ホルクロフト。

強化人間ではないが、ずば抜けた指揮能力を持っており、自らもMSに搭乗することもある。

「それにしても…、ティアーズって連中ごときは、身の程を知らないのね……。しつこくってヤんなっちゃう」

「みんな、俺たちとよろしくやりてぇんじゃねぇの?」

「…かもね。」

二人が喋っている間にも、反撃の準備が整っていった。

そして、操舵手のサイが叫んだ。

「準備が整ったよ!発進命令を!」

瞬間、ミューディーの目つきが一変した。

「フレスベルグ離水!全速前進!!」

メインエンジンが一気に点火。

蒼白の戦艦が、今、飛び立った。

「さてと、“シャドーアンカー”、“ファントムシーガル”、及び“ナイトメア”全機、準備が完了次第、随時発進!エターナル・フェイスを殲滅せよ。」

――――全ては、蒼き清浄なる世界のために!!



中立国・ニュートラルヴィア。

アプリリウス銀座から離れた小さな村“ボイラーヴィレッジ”。

その村は、今の時代では珍しく、“蒸気”の力を使った伝統と歴史、そして文化を守り通している。

そんな村の片隅で、一人の女性がパソコンとにらめっこしていた。

「はぁ……、エクステンデッドの研究も疲れるわね…。資料も足りないとなるとますます……。」

彼女―――セレーネ・マクグリフ―――は、“コペルニクス研究所”の主任研究員。

最近彼女はエクステンデッドに関する新たな研究調査を進めている。

しかし、なかなか思うように事が運ばなかった。

「セレーネ、コーヒーを煎れて来たよ。」

「あら、ありがと、スウェン。」

一人の青年がコーヒーカップを持って部屋に入ってきた。

セレーネはカップを受け取り、しばしの休息に入った。

ふと、スウェンが切り出した。

「ブルーコスモス・ファミリーが、また現れた。今度はゾロアシアだ。」

セレーネの顔も、一層強張る。

「最近、向こうの動きも活発化してきたわね。」

コロコロと標的を変更していく、最近のブルーコスモス・ファミリー。

その意図は、用途として知れなかった。

「ねぇ、どうしてBCFを抜けたの……?」

ふと口にした、セレーネの疑問。

スウェンは、数分間をおくことになった。

彼、スウェン・カル・バヤンは元はブルーコスモス・ファミリーの副隊長として活動していた。

しかし、突如として彼は組織を抜け、ニュートラルヴィアに亡命。

あてもなくボイラーヴィレッジで彷徨っていたところをセレーネに助けられた。

彼女がコーディネイターだと知ったのは、それからしばらくしてのことだった。

だが、彼女の優しさに触れたおかげで、彼のコーディネイターに対する“毛嫌い”は少しずつ消えつつある。

以来、セレーネはスウェンにとって、唯一心を許す存在となった。

「捨て駒にされるのが、嫌だったから…かな。」

「……捨て駒…?」

スウェンは、BCFのエクステンデッドの悲しき運命を打ち明けた。

「BCFの拠点であるコロニー・レクイエムには、強化人間たちを養成する研究所や軍施設が多く存在する。強化人間たちは言わば、上層部にとっての“捨て駒”、MSのパーツ扱いぐらいにしか見ていないんだ。」

強化人間のみならず、自分たち以外の人間をまるで玩具のように弄ぶ。

総帥を初めとするBCFの幹部たちは、そう考えている。

「その事実を知ったのは、組織を抜ける2〜3日前だ。俺はいつしか、それが怖くなった。だから、BCFを抜ける決意をしたんだ。」

言葉も出ないとはこのことだろう。

その事実はセレーネにとっても衝撃的なものであった。

コーディネイターを抹殺しようと言う目的で“エクステンデッド”が養成された話は、彼女も聞いているが、スウェンの話を聞いていると、ますます彼女は恐怖を覚えた。


――――ピンポーン。


ふと、家のインターホンが鳴り響いた。

「セレーネ、いるか?ブレッドだ。」

「あら?珍しいわね……。」

彼女は冷めかけたコーヒーを飲み干し、玄関へと向かった。

その後を、スウェンが付いて行く。

―――ガチャ。

「珍しいわね、あなたがここに尋ねてくるなんて。」

「あぁ、ちょっと用があってな。」

よく見ると、彼の後ろにもう一人いた。

ふわふわとした金髪に、ワインレッドの瞳。

そして、小さい子供のような表情。

「お前、確かエクステンデッドの研究をしているって言ってたよな。だったら、彼女も役に立つんじゃないのか?」

そのとき、スウェンはその少女の顔を見て眼を見開いた。

まさか、なぜ彼女がここに……!?

そして、少女もまたスウェンの姿を見て驚きの顔を見せた。


「まさか…っ…ステラ・ルーシェ!?」

「スウェンなの!?」


互いの名を呼び合った二人に、ブレッドもセレーネも驚いた。

「えっ?!もしかして……!!」

「お前たち、知り合いか!?」

それは、まさに意外な形での再会だった……。



---to be continued---


あとがき:
またまた中途半端なところで区切ってます(苦笑)

今回からOVA『STARGAZER』からスウェン、セレーネ、ミューディー、シャムスの4人が参戦しました!
しかし、今回のお話を読めば判るとおり、所属陣営は二つに分かれております。
彼らが今後、てれび戦士やキラたちとどう関わっていくか、その辺も注目してもらいたいと思います☆

さて、次回のスポットはまたまたゾロアシア一本で行きたいと思います。








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