Phase22 炎の中の救出劇


ホテルの最上階エリア。

白煙がわずかながら、でも確実に濃くなってきている周囲、ブルーコスモスファミリーが仕掛けた時限爆弾のタイムリミットが迫る極限のプレッシャー、そして、ラクス(に酷似した少女)が逃げ遅れたと言う最悪のシナリオ。

有沙女王は、その危機迫る最上階・15階に来ていた。

「時間がない…早くせねば…!」

時間が迫るたびに焦りが募る。

「女王様!」

「!?」

背後からの声を聞き、目を見開いた有沙は振り向いた。

そこに居たのは愛実の幼馴染だった。

「甜歌!?いつのまに…!」

「話している時間はありません!早く、ラクスさんを!」

「そ、そうじゃな。」

二人は早歩きで通路を突き進み、ラクスを探した。

だが、煙が濃くなる一方で視界が悪化し、甜歌と有沙も立っているのがやっとと言う状況になってきた。


「げほっ、げほっ…!だれか…誰か助けてぇぇっ!!!」


――――――!!!

この声は!!

聞き覚えのある少女の叫びを聞き取った二人は、その方向に向かった。

やがて、『1569』のナンバーが書かれた扉にたどり着いた。

「たすけて、だれかっ!」

少女の叫びはこの扉の向こうから聞こえた。

「ここですよ!」

「甜歌、下がれ!」

有沙は、どこからか取り出した愛用のステッキを取り出した。

「プラズマ魔導術・“エレクトリック・ブラスター”!!」

強力な電撃エネルギー波が杖の先端から放たれ、いとも簡単に扉を引き裂いた。

その扉の向こうには、うつ伏せ状態になって倒れている少女が居た。

「大丈夫ですか!?」

甜歌が真っ先に少女の下へ向かい、体を揺すった。

「う…うぅ……っ………?」

少女の瞳は、一人の女の子を写した。

「もしかして…、私を、助けに来たの……?」

「いかにも。わらわたちが来たからには、もう大丈夫じゃ。」

有沙の言葉に安堵したのか、少女の目に涙が。

孤独と言う恐怖があったのだろうか…。

それは堰を切ったように止まらなかった。

だが、絶望はすでにそこまで迫っていた。

突如RGリモコンから、警告を知らせるブザーが鳴り響いた。

甜歌はすぐにそれを起動させた。

『危険!危険!時限爆弾爆発マデ、アト1分!時限爆弾爆発マデ、アト1分!』

「やっばい!!もう間に合わない!」

甜歌とラクスは、自分たちの危機に動揺する一方だった。

だが、有沙は全く動じず、杖を使って部屋の奥にある窓ガラスを破壊した。

「二人とも、こちらへ参れ!」

彼女の声を聞いた二人は、足早に彼女の傍に寄った。

破壊された窓の下を見下ろした。

予想以上の高さに、甜歌とラクスは絶句した。

ふと、ラクスはこの状況からする今後の展開を予測して、眼を見開いた。

「あの…、もしかして…。」

「時間がない。このまま飛び降りるぞ!」


ちょうどその頃、メイリンたちを連れてホテルから一足先に避難した卓也と愛実は、外からホテルを見上げた。

そのとき、メイリンの眼に信じられない光景が飛び込んだ。

「ああ〜っ!!!あれってもしかして…!!」

彼女の声を聞き、ただならぬ不安を察知した3人は、上を見上げた。

すると、卓也たちの眼にも仲間の姿が映った。

「ゲッ!甜歌と有沙女王さま!?」

「ラクスさまも一緒だわ!」

「あの様子、もしかして……飛び降りるつもり!?」

階段で駆け下りる時間が無いとすれば、もはやそれしか方法が無かった。

しかし、これは自殺行為だ。

確実に助からない!

現場を見つめていた全員が絶望していたそのときだった。

卓也と愛実はアイコンタクトを交わし、甜歌たちが降りてくるであろう地点を確保した。

その瞬間、最上階15階の一室から3人の人影が飛び降りた。

周囲から悲鳴が飛び交う中、二人は急速落下してくる3人の人影をみつめ、距離を測った。



「今だっ!」

「「ダブルリモコンアタック・“ハイパー・スロー”!!!」」

――――ビビビビビ……!!



――――おお〜っ!?

周辺の反応が一変したのに気付いたのか、メイリンとその姉は視線を戻した。

「あれっ!?お姉ちゃん、あれ!!」

メイリンが指をさした先は、先ほどの急速落下とは打って変わったゆるやかなスピードで落ちてくる人影があった。

「ど、どうなってるのよ?!」

「とにかく、行ってみよう!!」

落下ポイントと思われる場所に向かうと、そこには卓也たちがいた。

すると、愛実が懐から小さなカプセルを取り出した。

「ノーション・カプセル、“衝撃吸収マット”!」

―――カチッ!

カプセルの先端にあるスイッチを押してそれを投げると、目の前に中くらいのマットが現れた。

それと同時に上から落ちてきた3人が、運良くそのマットの上に落ちてきた。

その速度はパラシュートで落下する速度とさほど変わらなかった。

「ふぅ…、たすかった〜。」

甜歌は自分たちが助かったことを知り、ほっと胸をなでおろした。

「もう!甜歌ったら、あたしたちが気付かなかったらあんたたちは死んでいたわよ!」

「愛実、文句だったら有沙女王さまに言ってよ。『飛び降りるぞ』って言ったのはこの人なんだからぁ。」

愚痴を漏らしていた甜歌に対し、指摘された有沙も少々ご機嫌ななめだった。

「仕方がなかろうて。最上階の時限爆弾のタイムリミットが迫っていたのだから、背に腹は替えられん。」

「まぁまぁまぁ、とにかく無事でよかったじゃん。」

卓也が宥めていたそのとき、RGリモコンのブザーが再び鳴り響いた。

『危険!危険!時限爆弾爆発マデ、残リ15秒!!爆発マデ残リ15秒!!直チニ、現場カラ離レテクダサイ!』

警報を聞いた全員の背筋が一瞬凍りついた。

そして、その現場に居合わせた二人の姉妹も、現場周辺の市民たちもまた……。

「お姉ちゃん…、これって…!!」

「やっばい!!」

――――逃げろ〜〜っ!!!!

弾かれたように住人たちは一目散に現場から離れた。

そして運命のときはやってきた。


『時限爆弾爆発、5秒前、4、3、2、1!』


ドッカ――――ン!!!!!


大爆発とともにホテルは崩れ去った。

しかし、これは後に知ることになるのだが、今回の事件においてけが人は出たものの、幸い死者は一人も出ることは無かった。

てれび戦士たちの活躍の甲斐あってかもしれない。

あとかたもなく崩壊したホテルを見守っていたてれび戦士たち。

すると、背後から声が。

「みんな…。」

声をかけられた卓也たちは、声をかけたメイリンたちに眼を向けた。

「お姉ちゃんと、ラクスさまを助けてくれて……ホントにありがとう。」

あふれんばかりの感謝の気持ちに、メイリンは深々と頭を下げた。

だが、4人は笑みを浮かべた。

「礼には及ばぬ。おぬしたちの愛する存在が生きているのであれば、それだけで十分だ。そうであろう、皆のもの。」

「そうそう、そんなに頭を下げなくていいですよ。」

彼女らの声を聞き、メイリンはどこかで聞き覚えがあるような感じがした。

すると、今度はどこからか別の人の声が聞こえた。

「お―――い!」

「ルナマリア!メイリン!」

名を呼ばれた二人の姉妹は振り向くと、二人の男の子がこちらへ走ってくるのが眼に飛び込んだ。

「シン!」

「アスランさんも!」

様子からして、どうやら彼女らの仲間のようだ。

だが、シンと言う名の赤い瞳の少年は、彼女らの後ろにいる子供たちを見て、頭の中で疑問符を浮かべた。

「ルナ、あのガキどもは?」

「あたしたちとラクスさまを助けてくれたのよ。」

それを聞き、シンはもちろん、アスランと言う名の蒼い髪の少年もまた驚いた。

様子を見ていたてれび戦士たちも困惑した。

自分たちはもともとこの世界の人間ではない。

余計なことをしたかもと、今頃になって後悔した。

しかし、二人の少年は笑みを浮かべた。

「君たち、ルナマリアたちを助けてくれたそうだな。感謝するぞ。」

「俺たちより年齢が低いように見えるってのに、大したもんだぜ!」

「いやいや…、それほどでも…☆」

すると、アスランはこんな言葉を口にした。

「もしよかったら、君たちの名前を聞かせてはくれないか?」

だが、それに応じるてれび戦士ではなかった。

「いや、わらわたちはそう名乗り出るほどのものではない。今はな…。」

「でも、近いうちわたしたちのことを知るときがくるはずだよ。」

「ひとまず、あたしたちはこれで失礼するわ。」

「また、ゾロアシアのどこかであおうぜ!」

4人は、この日最後のリモコン機能を作動させた。


「プラズマリモコンアタック!“早送り”!!」

――――ピッ!!


――――ヒュンッ!!

「うわっ!?」

「おっと!?」

「「キャッ!」」

一瞬で彼らの走る速さが上がったと言う目の前の出来事に、シンたちはしばし唖然としていた。

「忽然と現れて、嵐のように去っていった…。」

「あのガキども…、只者じゃなさそうですよ…。」

彼らが子供たちを見つめている中で、メイリンだけはどこか気にかけていた。

―――やっぱりどこかで聞いたのよね…。どこで聞いたのかしら……?


一方、その様子を建物の影から見ていた一つの影。

「……ちっ!作戦失敗か…。ティアーズの連中がこんなところにまで来ていたとは…!」

だが、お前たちの目的が何であれ、僕たちブルーコスモス・ファミリーを怒らせた代償は、高くつくからな!

せいぜい、つかの間の平和を楽しんでおくんだな……。



---to be continued---


あとがき:
何だか、一気に書き上げてしまったような感じですな……。
少々判りづらい内容となったかと思いますが、それでも楽しんでくれた方がいらっしゃるのならば幸いです。

今回はてれび戦士たちは意外なところで活躍してくれました!
でも、あのビルから飛び降りると言うシーンは、書いていた自分でもドキッとしましたね……。(^^;)

さて、次回は再びニュートラルヴィアに舞台が移ります。
ラクスの過去の記憶にスポットをあててみましょう!








inserted by FC2 system