Phase9 シードピアの楽園


シードピアの世界は、テレヴィアとは違い、太陽が動いている世界。

そのため、昼と夜が常にある。

テレヴィアでは滅多に見ることの出来ない、満天の星空。

その星空の帳が来ると、シードピアの世界で一際目立つ灯りがともる。

今宵もまた、シードピアの住人たちを夢の世界へ連れて行く………。


ここは、ニュートラルヴィアの大地から遥か南、シードピアの中心に位置する島々“アストレイバー・アイランド”。

この島々は、『スピリード島』を初めとするこの島々は、この世界の永世中立地帯と定められており、住人たちはここで日ごろの疲れを癒している。

甜歌と愛実は、その島々において大人気を誇る劇団“スピリード・オペラッタカンパニー”の劇を見るために、シードピアの定期船でその島へと向かっていた。

そもそものきっかけは、今から数時間前R.G.F.の面々がG.L.B.に訪れた時のこと……。



ある程度の挨拶を終え、そろそろ自分たちの母艦に帰ろうとしたその時。

「テンカちゃん!」

突然背後から名前を呼ばれ、振り返るとそこにはキラとラクスがいた。

「これ、今日助けてもらった御礼!」

そう言ってキラが差し出したのは、何かのペアチケットだった。

甜歌はおもむろにそれを受け取ると、そのチケットには次の文章が記されていた。


―――シードピア・シアターハウス レビューショウチケット


「…?何ですか、これ?」

「レビューショウのチケット。このシードピアの中心に、“アストレイバー・アイランド”って言う島々があるんだ。」

「その中心地にある“スピリード島”と言う島にある、シードピアの劇場で行われているチケットなんです。」

シードピアの劇場―――それはチケットに書いてある“シードピア・シアターハウス”のことだと、甜歌はすぐさま理解した。

「いいんですか?もらっちゃって…。」

甜歌は一瞬もらうのを躊躇ったが、キラとラクスは『遠慮はしないで』と言うような笑顔を甜歌に向けた。

「お友達の誰かと一緒に、楽しんでいってください。」

ラクスの温かい言葉を受け取った甜歌は、そのチケットを受け取ることにした。


その後、リーフに戻った甜歌は、丁度ゴルゴ伯爵たちと戻ってきた愛実と鉢合わせをし、彼女を誘った。

最初は愛実は若干の抵抗を感じたのだが、ゴルゴ伯爵がこう言った。

「愛実くん、少しは休みも必要だろう。久しぶりに友達と行ってきなさい。」

そしてレッド隊長もまた、彼女たちを気遣った。

「船の守りは俺たちにまかせておけ!」

「…ありがとう!」



「それにしても、このチケットをくれたって言う人たち、とても優しかったのね。」

「うんっ!」

幼なじみ同士でお出かけをすると言うのは、本当に久しぶりのことだった。

「でも、あんなに優しい人も居るのに、どうしてここの人たちは、戦いをやめないのかな……。」

「…そうね、甜歌…。あたしもちょっと、気になっていたところよ……。」

コーディネイターとナチュラルと言う二つの種族の争いが続くこの世界に、甜歌と愛実はどこかしらの不快感を覚えていた……。

ふとその時、背後からなにやら声が。

「…あれ?テンカちゃん?」

子供のような愛らしい声に反応した甜歌は、まさかと思い、振り返った。

そこには、薄緑の髪を持った少年が居た。

「あ、あなたは確か…、ニコルさん!?」

「やっぱり!」

思わぬ偶然に、ニコルは声を上げてしまった。

ニコルは周囲を見渡したが、幸いにも全員自分たちに気付いてなかったようだ。

今度は声を若干抑えて、彼女たちと会話をした。

「テンカちゃん、君の隣にいる女の子って、友達?」

「うん!甜歌の幼なじみの愛実!」

紹介された愛実は、ニコルと握手を交わした。

「ニコル・アマルフィです。初めまして!」

「あたしは愛実。よろしくね!」


3人はお互いに挨拶した後、話の場所を移すべく、船の中のカフェに立ち寄った。

甜歌と愛実は自分たちのこれまでの経緯を彼らに簡単に話した。

自分たちがどういう存在なのかも………。

「なるほど…、コスチュームが違うから違うチームかと思っていたのですが、君たち自体が元々一つの組織だったのですか。」

「ちょっと紛らわしかったかな?」

甜歌は思わず苦笑いを浮かべてしまった。

するとここで、愛実が話を始めた。

「ところで甜歌、この世界にはナチュラルとコーディネイターという種族がいるって話は聞いたけど…。そもそも、その二つの種族が争いを始めたのはいつ頃なの?」

「ニコルさんたち、ライガーシールズの話によるとね、今から2〜3年前に“ゾロアシア・ワールド”と言う城塞都市で起こった、コーディネイターの反逆テロ、通称“血のバレンタイン”がきっかけらしいよ。」

しかし、未だにその理由はつかめていない……。

なぜ彼らは唐突にナチュラルを滅ぼそうと考えているのだろうか………。

それは彼らライガーシールズでも全然知る由もなかった……。

「ところでさ、話は変わるけど…。」

切り出した愛実は、懐から一枚の写真を取り出した。

その写真には、象形文字が書かれた一枚の石盤だった。

「…!愛実、何これ!?」

「あたしたちU.W.B.はね、『クリスティア島』と言う島に訪れたの。そこで、マルキオ導師と言う人にあったの。」

マルキオ導師―――その名を聞いたニコルは目を見開いた。

「あの人にあったんですか!?」

「あんたもさすがに名前は聞いたことがあるとは思っていたけどね……。」

シードピアの世界において知らぬものはいない盲目の伝道師・マルキオ。

彼が唱えた説は、シードピアの世界に知れ渡っているが、大半が夢物語じゃないのかと言う話が多い。

だが、この後発せられた愛実の言葉で、それが事実だと言う手がかりがつかめることになる。

「この写真に載っている石版は、その島にある“カオティクスルーイン”という巨大遺跡の入り口にあったらしいよ。その文字を簡単に訳すると、『この世界が破滅に導かれるとき、“SEEDを持つもの”がこの扉を開くだろう』って書いてあるらしいのよ……。」

「SEEDを持つもの?」

「何か、ナチュラルやコーディネイターに関わらず、特別な存在であることは確かだって。でもそれ以上はマルキオさまでも分からないみたいよ……。」

まさに、シードピアの秘められし謎である………。

「ツグミさん、もしこれが本当だとしたら……、そのSEEDを持つものがこの世界のどこかにいるということですよね……?」

「おそらくね…。でも、案外近くにあるものかもしれないわよ。」



愛実の言葉は間違いではなかった。

実際、SEEDを持つものが本当にいるとしても、ほとんど自覚がないものだ。

大半の人間は、“そんなのは夢物語さ”などと言って一笑しているが、マルキオの言葉は、どこかに真実を含んでいるもの。

いや、その言葉自体が事実なのかもしれない…………。

そんな多種折々な不安と期待を抱え、船はまもなく“スピリード島”に到着しようとしている…。

今宵もまた、夢の世界の入り口が開かれる……………。



---to be continued---


あとがき:
今回は久しぶりの更新です。しかもいきなり船の上!
何だかまともに更新できなくて申し訳ございません(汗)。

さて、これから3人が向かうスピリード島、そこに秘密組織が居ることは、
甜歌と愛実は当然知りません。これから知ることになるでしょうね。
今後の彼らが一体どうなることか!?ご期待ください!








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