Phase10 影


「うわ〜、凄い人の数!」

甜歌は目的地に到着するなり、目の前の光景に唖然としていた。

そこに居たのは、溢れんばかりの人の波だった。

「この先が、この世界の一番人気の娯楽施設『シードピア・シアターハウス』です。連日、大勢のお客様でにぎわっているんです。」

「あの大きな建物がそうね。」

ニコルの説明を理解した愛実は、階段を上った先にある劇場のような建物を見つけた。

「早く行こう、愛実!」

「ちょっ…、甜歌!待ちなさいよ!」

「あ、テンカさんにツグミさん、危ないですよ〜!」

早く舞台を見てみたいのか、甜歌たちは大はしゃぎで劇場へと向かった。


「愛実さんと甜歌ちゃん、今頃どうしているでしょうね…。」

「今頃は、そのシアターハウスにたどり着いている頃かしら。」

ティアーズ結成以前から友好関係にあった幸生と杏奈は、リーフの守りの当番に付いていた。

「杏奈先生、相変わらずの仲の良さだな。」

「羨ましすぎるよ!ヒューヒュー!」

その様子を見ていたのか、ちひろと望が二人をからかった。

突然の仕打ちに、二人は揃って顔を真っ赤にした。

「あれ?ところでちひろ、卓也は?」

「有沙女王様と一緒に外出中だ。まぁ、卓也が着いているからとりあえずは安心だが……。」

「女王様もこの街に色々と興味があるみたいだけど、何だかちょっと不安だな……。」

卓也と有沙の突然の不在に、杏奈も若干の不安を覚えた。

―――いくらなんでも、大トラブルには巻き込まれることはないと思うけど……。


その頃、一通りの街を見て回っていった有沙女王と卓也は、「ハイペリオンパーク」の中枢部にきていた。

「この島の市街地も、わらわたちの住むテレヴィア銀座やダークタウンに負けないくらいの規模だのう。」

気に入ってくれたみたいだ。

確かにここはテレヴィアには負けないくらいの大型規模の世界。

彼女が興奮するのも無理はないかもしれない。

その時、有沙女王の目の前になにやら人影を感じた。

目を凝らしてよく見ると、そこにはベンチに座っている一人の少女が居た。

髪は茶色で長髪、肌色のジャケットと赤色のセミロングスカートを穿いていた。

そして肩には、ピンク色のポシェットがかかっていた。

「む?あの子もこの島の住人か?」

二人はその少女の下へと駆け寄った。

「君、どうしたの?」

卓也が声をかけたが、反応がなかった。

見た目からして、眠っているだけのようだったが、どうも様子が違った。

「こんなところで寝ていたら風邪引くよ。ほら、起きて……!?」

卓也は何とか女の子を起こそうと肩を押したが、彼女はそのまま倒れてしまった。

「ちょ…!?君、しっかりして!!」

「ただごとではないぞ!卓也、この子をリーフへ!」

「OK!」

突然のことで一時は困惑したが、とりあえず彼女を連れて行くことにした。



「容態はどうなんじゃ、ドクターレイシー。」

「幸い、目立った外傷はありませんね。数日ほどすれば目が覚めるでしょう。」

レイシーの言葉に、ひとまず安堵した有沙女王。

リーフの医療室には、テレヴィアの科学技術が結集している最新の医療設備が整っていた。

卓也と有沙女王が偶然見つけた少女は、「リカバーポッド」で治療を受けている。

このポッドの中に入っているだけで、傷が見る見るうちに回復するのだ。

もちろんこれは、テレヴィアきっての大科学者、レイシー一族だからできることなのだ。

「卓也、しばらくこの子の面倒を見てやってくれ。」

「任せてくれ。」

有沙女王はそう言って、その場を後にした。

「それにしてもあの子、どこの子供だろう……?」


突如てれび戦士たちの前に現われたこの少女……。

しかし、彼女の秘められし力が、後の彼らを導くことになることは、だれも知る由もなかった………。



---to be continued---


あとがき:
2週間ぶりの更新となってしまいました(滝汗)。
おまけにやたらと短いし!!
ホントにすみません!(ペコリ)

さて、てれび戦士たちの前に現われた謎の少女。
彼女はこれからティアーズと行動を共にし、この戦乱の世界を彷徨うことになるんですが……、
その子には、秘められし力があると同時に今後のシードピアの運命を握っているんです!
果たして彼女の正体とは………!?








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