Phase7 古代遺跡の島


竜一とR.G.F.がニュートラルヴィアの市街地“アプリリウス銀座”に向かっていた、その頃。

ゴルゴ伯爵率いるアンダーワールド・バスターズ、通称U.W.B.はニュートラルヴィア周辺の島国の調査のため、特殊潜水艇『サンダーハンマーヘッド』を駆り、リーフを出発していた。

「いやはや、こんなこともあろうかと用意して正解でした。」

この潜水艇は、ドクターレイシーが造り出した小型マシン。

いざと言う時は、低温魚雷を発射することも可能だ。

「あんたって、ホントに用意周到ね。こんな物を造るなんて…。」

レイシー一族の科学力の大きさに、愛実もあぜんとしていた。

「“備えあれば憂いなし!”とはよく言うけどね……。」

その時、リーフで他のメンバーたちと待機している有沙女王から、通信が入った。

「皆の者、お前たちの潜水艇はこのまま進むと、一つの島にたどり着く。何が待っているか判らぬ。気をつけるのじゃ!」

『アイアイサー!』

彼らの特有の敬礼をした後、通信が切れた。

「でも、どうやって外の状況を確認できるんだ?」

ゴルゴがそんなことを心配していた時、ドクターレイシーが説明した。

「ご心配なく。操縦桿に赤ボタンがついているはずです。それを使えば潜望鏡システムが作動して、外の状況が確認できます。それと同時に、光学映像システムが作動して、その映像が我々にも確認できる仕組みになっています。」

「なるほど…。じゃあ早速。」

その操縦桿を握っていた望は、ドクターレイシーの説明に納得し、早速、潜望鏡システムを使った。

同時に望の真上に光学映像のモニターが出てきた。

そのモニターには、大きな遺跡がそびえる一つの島が映っていた。

「…?何だろう、あの島。おっきな遺跡だな……、それに何か薄気味悪い…。」

幸生は若干怖気づいてしまった。

「でも……気になるわね。ゴルゴ伯爵、あの島へ降りてみましょう!」

「よし。望、そのまま前進してくれ!」

「アイアイサー!」

彼らの潜水艇は全速力で島へと向かった……。


シードピアの世界には、一風変わった島が数々点在している……。

この島、『クリスティア島』もその中の一つ。

そこは、未だ解明されていない古代遺跡“カオティクス・ルーイン”がそびえ立っている。

その内部には、現代の超科学を駆使してでもその謎は解き明かされていない……。

そんな遺跡のふもとに、一軒の小屋があった。

その傍では、子供たちが元気よく遊んでいた。

ふと、不意に一人の青年が立ち上がり、呟くような小さい声で言った。

「昴は感じた……………、何かがこの島に近づいていることを……。」

昴の言葉を聞き取った金髪の少年と、その隣に居た女の子は、周辺を見渡してみた。

しかし、砂浜で遊んでいる子供たち以外には、何も変化は見られなかった。

すると、彼らの目の前に一隻の潜水艇が現われ、そのまま近づいてきた。

そしてそのまま砂浜にあと数メートルと言うところで、停止した。

今の光景を見ていたのか、さっきまで遊んでいた子供たちがそのそばまで集まってきた。

しばらくして、その潜水艇のドアが開き、中から人が出てきた。

「ふぅ〜…、ようやく着いたか……。」

ゴルゴが安堵の言葉を紡いだのも束の間。

幸生がなぜか固まっていた。

愛実は彼の異変にいち早く気付いた。

「……あんた、どうしたの…?」

「ねえみんな、前見て……。」

――――え、前!?

おもむろにその方向を向いてみると、そこにはこの島の住人であろう子供たちが、目を点にしてこちらを見ていた。

「え……っと、何だか雰囲気が良くないですね……。」

ドクターレイシーがそう呟いた、その時。

子供たちの背後から、傍若無人な雰囲気をもつ一人の青年がゴルゴたちに歩み寄り、口を開いた。

「昴は聞く……君たちは何者だ、と……。」

真剣な目つきでこちらを見据え、低い口調で言ったのか、ゴルゴは怖気づいてしまった。

自分たちが怪しまれていることもあり、どう言ったらいいのか全然分からなかった……。

しかし、U.W.B.の姉御でもある愛実は、そのプレッシャーはもろともしなかった。

彼女は、昴と呼ばれた人物の目の前まで歩み寄った。

「あたしたちは、テレヴィアからやってきた『アンダーワールド・バスターズ』よ。あたしは切り込み隊長の篠原愛実。宜しく。」

彼女はそう言いながら笑顔で、手を差し出した。

その表情から悪意はないと感じた昴は、彼女の手を優しく握り返した。

「旅の者だったんだね。僕は昴、九条昴。よろしくね。」

二人の様子を見て安心したのか、周りには子供たちが続々と集まった。


その光景を見ていたゴルゴたちは、しばし唖然とした。

「…すごい。さすが愛実くんだ……。」

「僕たちの出る幕は、ないかも知れませんね……。」

幸生も、大好物のドーナツを片手に固まったまましばらく動くことはなかった……。



---to be continued---


あとがき:
ようやく第7話、U.W.B.が登場です。さらに今回は昴も初登場しました。
次回は、あの“伝道師”が登場します。
この遺跡島で解明されていない謎が、語られます!!








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