Phase18 意外な救援者


ブルーコスモス・ファミリーとテレヴィア公安組織『ティアーズ』。

彼らのぶつかり合いは、実質上の第3ラウンドに突入していた。

ライガーシールズの面々は、しばらくその中に入ることが出来なかった。

両チームとも、とてもナチュラルとは、また自分とほぼ同年代に思えないほどの驚異的な戦闘能力を発揮していたからだ。

圧倒的な気迫に、思わず彼らは押されそうになった。

「キラ……あのティアーズ…、ブルーコスモス・ファミリーとほぼ互角じゃないか!?」

「いや、わずかにリュウイチさんたちが押しているかもしれない…。」

「いずれにせよ、何だか僕たちの出る幕がなさそうですね…。」

ニコルが苦笑い交じりにそう言った。

「帰ったらミーティングと、トレーニングメニューの組み直しだな。」

「はぁっ!?冗談じゃないよ!」

「仕方ないでしょ、カガリ。僕たちが彼らばかりに頼っていたら、『ライガーシールズ』にとっての恥にもなりかねないよ。」

なんともいえない雰囲気が、チームを包んでいた。


そんな彼らをよそに、戦いはますますヒートアップしていた。

「何だかキリがないわね。」

「こいつらも燃えていることだし、もっと熱くさせる?」

「OK、それじゃ、UWFブラスターアタックコード、『818』っと。」

愛実、望、幸生の3人は、ブラスターの攻撃暗証を入力したあと、『INPUT』のボタンを押した。

「インプット完了!行くわよ!」

「「アイアイサー!」」

敵が8人がかりで襲い掛かったとき、合図をした3人はばらばらの位置に散らばった。

突然消えた相手に、困惑するブルーコスモス・ファミリーの手下たち。

愛実たちは隙をつき、ブラスターを構えた。

「今よ!」

「「「“業火の鉄槌”・ファイヤートルネード!!!」」」

その言葉と同時に3人のブラスターの銃口から、炎のエネルギーボールが放たれた。

それがターゲットに命中したと同時に、一気に天にまで届かんばかりの巨大な炎の竜巻に早変わりした。

しかもそれは10秒もしないうちに大爆発した。

圧倒的なエネルギーの質量に、ライガーシールズも唖然とした。

「素晴らしい攻撃ですわね。」

「ラクスさん、感心している場合ですか!?」


―――キャアアア!!


「むっ!?今のは!!??」

カナードはどこからか聞こえた悲鳴に気付いた。

「ゲゲッ!あれを見ろ!!」

カガリが指差した先には、なんと逃げ遅れた二人の親子が。

しかし、時、既に遅し。

ステラとフレイが反射神経で動き、その親子に武器を突きつけた。

「そこまでよ!!!」

不意をつかれたてれび戦士も、ようやく逃げ遅れた住人に気付いた。

「ああっ!!もしかして…逃げ遅れ!?」

「うそでしょ〜!?」

これにはさすがのティアーズも、成す術なしの状況に追い込まれた。

「武器…床において。じゃないと……。」

言いながら、人質に刃を向けるステラ。

“殺すぞ”と言わんばかりの雰囲気だった。

「ちきしょう…、どこまで卑怯なやつらだ!」

もはや万事休す。

敗北感を覚えたてれび戦士たちは、言われたとおりにしようとした。

ところが、どこからか馬の走る音のようなものが聞こえた。

辺りが静まり返っているせいか、はっきりと聞こえていた。

しかもその足音は、徐々に大きくなりつつあった。

「いいかげんにしろ!ブルーコスモス・ファミリー!!」

「こっ、この声は!?」

キラには聞き覚えのあるこの声。

―――もしかして、彼女が?!

その予感は的中した。

それを裏付けるがごとく、崩れかけていた建物の裏から、馬に乗った二人組みの少女が現れた。

運悪くその場所に居た卓也と望はびっくりした。

「うわああぁぁっ!?」

「な、な、何だ!?」

何がどうなっているか判らないてれび戦士たちは、困惑していた。

だが、自分たちの同志であるということに、このあと気付くことになる。

馬に乗った二人のうち、背中に刀を携えている赤い長髪の少女が颯爽と降り立った。

年齢は、自分たちよりやや年上と見た。

「好き勝手にやってくれるじゃない。おまけに人質をとるなんて、非道にもほどがあるよ。」

「えらそうな口をたたいて……!あんた…一体何者!?名乗りなさい!!」

フレイの質問に答えるのか、背中の日本刀を引き抜いた。

「ボクの名前は、ジェミニ・サンライズ。またの名を、“荒野のサムライカウガール”!!」

その名を聞いたフレイは目を見開いた。

「ま、まさか、“スピリチュアル・キャリバー”!?」

「そういう事。さてと、人質をとったらどういう目にあうか、思い知らせてあげるよ。」

その言葉と同時に、馬に乗っていたもう一人の少女はそのままライガーシールズの下へ合流した。

すると、ジェミニの体から不可思議なオレンジ色の輝きが放たれていた。

「この雰囲気じゃあたしたちを攻撃するつもりみたいだけど、人質も巻き込んじゃっていいのかな〜?」

「余裕に乗っている暇はないよ。自分たちの傍をよく見てごらん?」

意味深な言葉に、フレイはきょとんとした。

だが、ステラの幼い言葉を聴いた瞬間、彼女の顔は青ざめた。

「あれ?……人質…いない…?」

「………えええぇぇっ!!??」

よくよくみると、自分の傍でひざを突いているはずの人質が居なかった。

「こっちでっすよ〜☆」

声のした方向を向くと、そこに居たのは甜歌、愛実、卓也の3人。

その傍にはとらわれていた家族の姿があった。

「ちょっ……!?どうなってるの!?」

彼らは特殊武器を持ちながら種明かしをした。

「あたしたちの武器である“UWFブラスター”と“RGリモコン”の特殊機能を使ったのよ。」

「これについている特殊機能“早送りボタン”を人や物に向けて使えば、速さが2倍にも3倍にもあがるんで〜す☆」

―――ビデオのリモコンかよ!!

ブルーコスモス・ファミリーは心の中で突っ込んだ。

「どうだお前たち、もう遊びの時間はおしまいさ!!」

「「おしまいさ!!」」

「さて、人質も安全になったことだし…こっちもそろそろ本気を出すよ。」

すると、彼女の刀から炎が上がった。

そしてそれを構えた瞬間、一気にそれを振り下ろし、炎のエネルギーリングを放った。


「ミフネ流剣法……イッツ・ヒッサツケン!“ランブリング・ホイール”!!!」


―――ドッカ〜ン!!!


「きゃああああぁぁぁぁ!!!」


エネルギーの大爆発の爆風に巻き込まれ、ステラとフレイは吹き飛ばされた。

とてつもない攻撃力に、その場にいた全員が息を呑んだ。

特に一番驚いたのは、ライガーシールズだった。

「す、すごい…!」

「あのような方は決して敵には回したくありませんわね。ただでさえあの方たちと私たちは、“同盟”の存在ですからね。」

「全くだ。」

吹き飛ばされたフレイとステラは体勢を立て直そうとした。

だが、ここでフレイが思わぬ失態を見せた。

「も〜ぅ、危なかったわ…。あんな技まともにくらったらあたしたちだって死んじゃうわよ。」

「っ!!!????」

瞬間、ステラの体の中で何かが反応した。

その異変はスティングとアウルも瞬時に理解した。

「おいフレイ!!」

「お前、今“ブロックワード”を言っちまったな!?」

「えっ!?」

フレイは自分の過ちを理解していなかったのか、目が点となっていた。

首をステラのほうへふり向くと、そこには自分をかき抱いて震える少女の姿が。

「いや…ぁ…、…死ぬの…いや…っ………!」

その瞬間思わず口にした自分の言葉を思い出した。

―――あんな技まともに食らったらあたしたちだって“死んじゃう”わよ。

「ま、まさか……しまった!!」

後悔先に立たず。

次の瞬間ステラは、絶叫しながら暴走を始め、その場から走り去ってしまった。

「いやあああぁぁ〜〜〜〜!!!!!」

「お、おい、ステラ!!」

「あ〜あ、全く!!」

スティングたちはステラの相変わらずの暴走状態に、あきれてしまった。

てれび戦士とキラたちはしばし呆然。

何が一体どうなっているのか、全く判らなかった。

だが、その時フレイたちは今、自分らが最悪の局面に居ることを忘れていた。

不意にフレイは、誰かに肩をたたかれていることに気付いた。

ギクッとした彼女は、壊れた人形のごとく首を後ろに振り向かせた。

そこには既に、怒りの炎を燃やしているちひろと竜一の姿があった。

「いっ!?いつのまに!?」

フレイの声を聞き、アウルたちも振り返った。

現状を見た瞬間、彼らは何やらただならぬ雰囲気を覚えた。

「なあスティング……、これってもしかして……!?」

最悪の予感は的中した。

「私のこの手が、真っ赤に燃える〜っ!!」

ちひろの右腕から真紅の炎があがれば。

「勝利をつかめと轟き叫ぶ〜っ!!」

竜一の左腕から蒼白の炎が燃え上がる。

「「爆裂!プラズマフィンガァァァァッ!!」」

二人は拳の構えに入ったと同時に、双方の腕から驚異的なエネルギーが宿られた。

フレイはこの時点でようやく自分の悲劇を悟った。

だが、もはや手遅れだった。

「ま、ま、待って待って、ちょっと待って〜!!!」

フレイの叫びもむなしく、ちひろと竜一は最後の仕上げに入った。


「テレヴィア真拳究極奥儀!!」

「「シャイニング・ダブルドラゴンアッパーーッ!!!!!」」


―――ズドーーーン!!!


「キャアアアアアアァァァァァァ………!!!」


―――キラーン。


てれび戦士の怒りの鉄拳をまともに受けたフレイは、天高く吹き飛ばされてしまった。

想像をはるかに絶する破壊力に、全員唖然とした。

特に一番驚いていたのは、他ならぬアウルたちだった。

「あわわわわ……フレイがお星様になっちまったよ〜!!!」

「やってらんねぇぜ!全員退却だ〜〜!!!」

てれび戦士の底力を見せ付けられたアウルたちは、スティングの合図と共に一目散に退散した。

その後、一部始終を見ていたライガーシールズはティアーズの下へと合流した。

「そ、それにしても、あの二人の力は圧倒的だな。」

「カガリさん。そこがちひろさんと竜一さんの凄いところなんですよ。」

甜歌がそう促す。

ただでさえあの二人はテレヴィア最強の武術家であり、戦友でもある最強コンビなのだ。

「何度も思うけど、あの二人は絶対に敵に回したくないわね。」

愛実の言葉に全員が声をそろえた。

「全くもって。」、と。



一方、ブルーコスモス・ファミリーの活動拠点である大型旗艦『フレスベルグ』。

そのブリッジでは、一部のメンバーたちが待機命令を受けていた。

ジュブナイル小説を読んでいるオルガ・サブナック。

携帯ゲームに夢中のクロト・ブエル。

常にイヤホンを耳に付けているシャニ・アンドラス。

彼らは常に3人一組で行動しており、戦闘経験豊富なベテラン戦士。

いわば、ブルーコスモス・ファミリー結成当初から行動している存在といっても過言ではないのである。

「それにしてもさ、ニュートラルヴィアに攻め込んでから随分経つけど、フレイたち、うまくやっているのかね?」

「クロト、そこまで心配は必要ねぇんじゃないのか?まぁ、俺としてはいつぞやのあのガキどもにボコボコされずに帰ってきてほしいがね。」

「いくらなんでも、それはねぇんじゃないか?」

「だな☆」

――――あははははは!!

何気ない雑談が、最悪の形で的中したのは、その直後だった。

不意に、何かがスピードに乗って落ちてくるような音が響いてきた。

しかもそれは徐々に大きくなっていった。

「!?おい、なんだこの音は!?」

ただならぬ雰囲気に、ブリッジ全体がどよめいた。

すると、何やら女の悲鳴のような叫び声が聞こえた。

「「「えっ!?……ま、まさか…!!」」」

オルガたちは首をそろえて真上を向いた。

すると、外装を突き破ってフレイが真上から落ちてきた。

「「「どわああぁぁぁぁ〜〜!!!!」」」

―――ドッカーーーーーン!!!

船体が激しく揺れるほどの衝撃と共に、フレイが空から落っこちてきた。

しかも彼女はボコボコにされてしまったせいか、顔面傷だらけに加え、体の腹部に拳のあとのようなものも見向けられた。

おまけに彼女は若干白目をむいていた。

クロトは蒼白の表情になりながらも、ひとまずフレイを抱きかかえる。

「な、何だよこの大怪我は!おい、フレイ!しっかりしろ!!」

「こりゃただ事じゃねぇぞ!大丈夫か!?」

虫の息になっていたフレイの声は、完全にかすれていた。

「だ……大丈…夫、なわけ…ない……で…しょ…ガクッ。」

ついには気絶してしまったようだ。

そこへシャニが冷静に彼女を抱えた。

「医務室、連れて行く。」

「あ、ああ。頼んだぞ。」

シャニがそのまま彼女を抱えて去ろうとした、そのときだった。

スティングたちが息を切らせてブリッジに上がってきた。

「はぁ、はぁ……。今戻ったぞ。」

「そっちにフレイは着いたか?」

オルガがあきれたように話し出した。

「ド派手に、フレスベルグの外装を突き破って、急転直下してきやがった。おまけにダメージがかなりひどすぎたせいか、このありさまでぇ。」

「あっちゃ〜。」

ふとここで、フレイが何か思い出したかのように覚醒した。

「ああ〜っ!!!」

「ど、どした?」

フレイは目を限界まで見開かせて、スティングとアウルに怒鳴った。

「二人とも、ステラは!?」

その言葉を聞き固まってしまった二人。

次の瞬間、信じられない言葉を口にした。

「逃げることに夢中になってて………。」

「ステラのことをすっかり忘れてた。」


――――な、な、な、なんだとぉぉぉ〜〜〜〜〜!!!!????


フレイたちの怒声が船内に響き渡った。



---to be continued---


あとがき:
更新が滞ってました、ごめんなさい!!(滝汗)

さて、今回はティアーズ対BCFの第3ラウンドと言うことでお送りしましたが、
ここにきてジェミニが緊急参戦!しかもいきなりド派手に必殺技まで繰り出しちゃいました!
おまけにとどめはてれび戦士のあの強烈な一撃!!これでさすがに彼らもこりたでしょう。

さて、次回は一人行方不明となったステラの視点でお送りしたいと思います。
果たして彼女の運命は!?








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