Phase14 幽霊部隊、現る!


ゾロアシア・ワールドの大型基地、“ジェネシス・フォートレス”の中枢部に位置する、司令室。

その一番奥に座っている、長い黒髪の男は、これから入ってくる人物の存在に気付いたのか、ゆっくりと扉のほうへ向いた。

「…ギルバート?」

「…すまないな、タリア。どうやら、彼らが来たようだ。」

彼の隣にいた女性は、その言葉を聴き、扉に目を向けた。

すると、扉の奥から声が響いた。

「ミネルバチーム隊長、アスラン・ザラです。偵察任務を行っていたシン・アスカたち3名がただいま帰還しましたので、報告に参りました。」

「……よろしい、入りなさい。」

独特の音をたてドアが開き、彼らが入ってきた。

「失礼します、総司令。」

「…ここが、司令室……。」

シンが呟いて、部屋の周囲を見渡していた、そのときだった。

「隊長……、私たちの目の前にいる…あちらの人物は……?」

ルナマリアが、自分たちの目の前にいる存在に気付き、アスランに声をかけた。

「ああ。あの人たちは、我々の上司だ。」

――――上司!?

シンたちはその言葉に驚き、思わず声をそろえた。

黒髪の男は、彼らの反応に笑みを浮かべ、ゆっくりと立ち上がった。

「そうか…アスランくん、君の後ろにいる3人は、ルーキーかな?」

「はい。今期に加わった、新たな精鋭たちです!」

「なら、自己紹介せねばならんな。私はギルバート・デュランダル。エターナル・フェイスの総司令官だ。そして、私の隣にいる彼女が、君たち“ミネルバチーム”の司令官を務める、タリア・グラディスだ。」

今まで一度も目にしたことのなかった、自分たちの司令官と言う存在に、シンたちは思わずあわてて敬礼した。

特に、シンは制服の襟のボタンを外していたので、それをいそいそと直した。

「す、すみません!お見苦しいところを……。」

「フフフ、そうあせらずともよい。服装や姿勢を正すのも良いが、そんな風に慌ててしまうというのも、良くないぞ。」

もう少し、落ち着きたまえ。

自分を気遣う彼の言葉に、シンはどこか安心感を覚えた。

「さて……、それでは早速、報告してもらうとしようか。」

「はい。じゃあ、シン、頼んだよ。」

「了解。」



シンたち3人が、ニュートラルヴィアでの偵察任務でもたらされた情報は、組織全体に波紋を呼ぶくらいの衝撃を与えた。

「…と言うわけで、ティアーズと呼ばれる組織によって、ライガーシールズはブルーコスモス・ファミリーを追い払うことに成功したようです。」

シードピアとは異なる世界からの特殊部隊。

それは、このプラズマ界にシードピア以外の世界が存在することを告げていた。

その上その特殊部隊は、いずれは自分たちにとっての脅威になるやも知れない。

言い知れぬ不安が漂っていた。

しかしデュランダルはその雰囲気とは逆に、かすかな期待に胸を膨らませていた。

「テレヴィアからやってきた公安組織・ティアーズか……。フフ…。ブルーコスモス・ファミリーを撤退させたことから、相当な戦闘技術を持っていると見える……。なかなか彼らは見込みがありそうだ……。どちらが強いのか…一度手合わせしたいものだな…。」

「しかし総司令、ティアーズの戦闘能力はもちろんのこと、彼らがどのような戦力を持っているのかと言うのも気にかかります。」

敵に回せば、こちらが不利になることも考えられますが………。

「言わずとも判っているさ、アスランくん。実は私も、それが気になっていたところだ。」

彼らに関する今後の動きを、これからも探る必要がある。

だが、ブルーコスモス・ファミリーの動向も気にかかる。

むやみに君たちを動かすわけにはいかない。

君たち“ミネルバ”は、我がエターナル・フェイスの主軸とも言うべき重要な存在だからな。

「さて、どうしたものか………。」

デュランダルがイスに深く腰掛け、悩んでいたそのときだった。

「話は聞かせて頂きましたよ!Marshal(司令)!!」

ドアが開いた音と同時に聞こえた声。

アスランもその声にギクッとした。

デュランダルとアスランは、ドアの方向に目を向けた。

そこに立っていたのは、シンたちルーキーよりもわずかに年下と思われる少年たちだった。

その存在を確認したアスランの目は、さらに見開かれた。

「そ、そんなバカな……!君たちはまさか、“ファントム・レイダーズ”!」

組織の名を口にした瞬間、リーダーの表情が笑顔に変わった。

「久しぶりですな、Captain Zara(ザラ隊長)。」

クールな外見を持つ彼の表情に、思わずルナマリアは釘付けになった。

「わぁ〜……☆かっこいい!」

「君たち3人が、Ruukie(新人)だね。My name is Brian Walters(僕の名はブライアン・ウォルターズ)!よろしくな☆」

自己紹介交じりにウインクをした瞬間、彼女はハートが打ち抜かれてしまうほどに、腰砕けしてしまい、その場に座り込んでしまった。

どうやらすっかりほれ込んでしまったみたいだ。

「お、おいルナ!」

緊迫ムードぶち壊し級の調子はずれの挨拶にシンも思わずあきれ、メイリンもただ呆然としていた。

「隊長…彼は一体…。」

「ブライアン・ウォルターズ―――。エターナル・フェイスの特殊部隊である極秘組織、ファントムレイダーズのリーダーだ。」

ファントムレイダーズ――――。

それは、エターナル・フェイスの影の軍団であり、情報収集と偵察、白兵戦、暗殺を専門に扱うスペシャリスト集団。

また彼らは、“エターナル・フェイスのゴーストスクワッド(幽霊部隊)”とも呼ばれているため、実質的に彼らは“存在しないチーム”とされており、その存在を見たものはエターナル・フェイスの中でも数えるくらいしかいないと言う、秘密部隊なのだ。

尚、未確認情報ではあるが、彼らはかつて“ブルーコスモス・ファミリー”に属していたと言う経歴を持っているらしい……。

「Marshal、そのティアーズという組織の偵察、我々にお任せいただけないでしょうか……?それに、いざと言うときには……彼らの暗殺も、賄いますが………。」

先ほどの口調とは打って変わった真剣な雰囲気に、デュランダルも思わず目を丸くしたものの、直後に僅かながら笑みを見せた。

「……フフッ、相変わらずだな。」

ややあって、デュランダルが口を開き、決断を下した。

「いいだろう……。ティアーズに関する今後の偵察任務は、ファントムレイダーズにすべて任せるとしよう。何か彼らに関する動きがあり次第、随時報告するように。ミネルバチームは、待機だ。」

その決定を受けたブライアンの表情は、笑顔そのものだった。

「ファントムレイダーズよ。準備が整い次第、早速任務についてくれ。」

「Roger(了解)!」

ブライアンたちはエターナル・フェイス特有の敬礼をし、その場から立ち去る瞬間。

再び彼の目がアスランたちに向けられた。

「ミーたちが居ない間にも、しっかりと腕を磨いておくれ。Marshalをがっかりさせないようにな。I'll see you real soon(また会おうぜ),baby!」

人並みはずれた調子いい発言に、シンも怒りを覚えた。

「なんか感じ悪いですね〜!」

「腹が立つのは判るが、仕方あるまい。ここは彼らに任せるしかなかろう。」

怒りを覚えつつブライアンたちを見送った、その時だった。

「彼らを怒る前に、自分たちの足元で気絶してしまっている彼女が優先ではないかな?」

微笑みを浮かべるデュランダルに言われ、アスランたちは視線を落とすと、
ルナマリアが未だに腰砕けしてその場に座っている姿が目に入った。

「あ〜〜……ブライアンさまぁ〜……☆」

完全に彼女はブライアンにメロメロにされてしまったようだ。

「ちょっとお姉ちゃん!もしも〜し??」

妹であるメイリンの呼びかけにも、しばらく反応する様子はなかった。

―――前途多難だぜ、こりゃ。

シンは上の空になっているルナマリアを見ながら、頭を抱えてそう思った。



---to be continued---


あとがき:
いよいよ進展が入りました!
ここでまたしても新しいグループが参入してきました!
詳細は、エターナル・フェイスの紹介ページにて。
それにしても、今回は珍しく若干ギャグ風味が加えられていたみたいです。
書いている自分でもちょっと驚きです(苦笑)
さて、次回もエターナル・フェイスサイドをUPしたいと思います☆








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