Phase13 三つ巴の大激戦


得体の知れない、突然の戦闘介入者。

その存在は、ニュートラルヴィア全土に衝撃と波紋を広げた。

ブルーコスモス・ファミリーの大型戦闘要塞フレスベルグのメインブリッジ内部は、あわただしい雰囲気に包まれていた。

キャプテンシートに座っていたフレイもまた、驚きを隠せずにいた。

「……何なのよ…あいつら…!?」

―――まさか……ライガーシールズの仲間だって言うの!?

彼女の頭の中は混乱しきっていた。

そのとき、操縦桿を握っていた、サイ・アーガイルの声で彼女は正気を取り戻した。

「フレイ!!何やってんだ!!混乱している場合じゃないぞ!!!」

その時、モニターの通信回線が開き、一人の男の画像が飛び出した。

銀髪とエメラルドの瞳を持ったその男こそ、彼女たちの最高司令官だった。

「っ!!…ロード・ジブリール総帥……!!」

『本部のモニターで私もそちらの状況を拝見させていただいておりますが……、どうやらとんだ邪魔者が入ってきたようですね…。』

冷静沈着かついやみ的な言葉は、フレイたちをイラつかせた。

『まぁ、奴等がどういう存在であれ、我が計画を邪魔するものは敵……。わかってますね……?』

「……ええ、もちろんですとも!誰であろうとも許しません!必ずや、排除してご覧に入れましょう!!」

『期待していますよ…我がブルーコスモスの一族よ……。』

すべては、このシードピアの“蒼き清浄なる世界のために”………。

そういい残して、ジブリールは通信を遮断した。

「……こうなったら奴等にも容赦しないわ!!あたしたちも応戦するわよ!!ブリッジ遮蔽!対艦・対MS戦闘用意!フレスベルグ、発進する!!」

突然の戦闘介入者の登場によって、ブルーコスモス・ファミリーの怒りが火をつけた。


同じころ、ライガーシールズの活動拠点であるG.L.B.のミッション・オペレートルームにおいても、同様の言い知れぬ雰囲気に包まれていた。

司令室に駆けつけた彼らの情報屋、ジェス・リブルも正体不明の戦闘介入者に、驚きを隠せなかった。

「なんだ、あいつら!?ブルーコスモス・ファミリーの新参者か!?」

すると、その予想とは裏腹に、マリューにとって聞き覚えのある声が通信回線を通して聞こえてきた。

『ちょっとちょっと、勝手にそう決め付けてもらっちゃ、こっちが困るよ!!』

「!?ひょっとして、リュウイチさん!?」

『ええ!ラミアス司令、援護に駆けつけましたよ!!』

思ってもいなかった支援部隊。

彼らさえいれば、百軍を得たも同然である。

「じゃあ、今回はレインボー・ガーディアンズ以外の援軍も連れてきたのですか!?」

『ああ。…とは言うものの、その援軍も、元は俺たちと同じ組織の特殊部隊だがな。』

意味深な少年の言葉に、オペレートルームにいた全員が首をかしげた。

「どういうこと?」

『特装遊撃部隊レインボー・ガーディアンフォースと、陽動工作部隊アンダーワールド・バスターズ。この二つのグループを中心に活動する、テレヴィア公安組織!それが我ら、『テレヴィア・インターアクティブ・セイバーズ(Terevia InterActive Saviours)』!通称『ティアーズ』なのさ!』

創造だにしなかった事実、レインボー・ガーディアンズそのものが公安組織の一部隊であったとは思ってもいなかった。

そして気がつけば、通信モニターの中の竜一の隣に一人の少女が入り込んでいた。

『改めて自己紹介するぜ。俺はティアーズの総司令官を務める、山元竜一だ。』

『そして、わらわがティアーズを統べる総帥であり、テレヴィアの裏世界・アンダーワールドの女王、有沙じゃ。よろしくな。』

するとそこに、ゴルゴ伯爵からの緊急通信が飛び込んできた。

『有沙女王様!大変です!敵軍と思しき大型戦艦が、こちらに接近中でございます!!』

その割り込み通信の言葉を受け、ライガーシールズオペレーターのミリアリアがすぐさま確認した。

「熱紋ライブラリー照合……該当艦なし!光学映像、でます!!」

そこに映し出されたのは、ティアーズの戦艦と大きさもほぼ変わらないほどの大型戦艦だった。

「どうやらティアーズの戦闘介入の影響で相手の痺れを切らしてしまったみたいですね…。」

ナタルの静かな叱責に、マリューも表情を歪ませた。

「あれがブルーコスモス・ファミリーのものだとしたら…厄介になるわ!」

するとすぐさま、竜一の意気のいい声が飛び交った。

『だったら、あの戦艦の遊び相手も俺たちが引き受けましょうか?』

「何ですって!?」

『大丈夫ですよ!ここは俺たちに任せてください!』

そう言って竜一は一方的に通信を遮断した。


そして、ティアーズの大型旗艦・リーフのメインブリッジ。

通信が遮断されたと同時に、オペレーターのユリアが敵艦の動きをキャッチした。

「敵艦より戦闘機の発進を確認!数10!」

竜一はすぐさま、ティアーズ全軍に指示を出した。

「こちらもいくぞ!R.G.フォースは敵戦艦の戦闘機部隊の迎撃!U.W.バスターズはその場で散開し、ライガーシールズの後方支援に当たれ!!」

『了解!』 『アイアイサー!』

しかし、すぐさま艦内に別警報が響いた。

「敵艦よりミサイル発射確認!!」

「迎撃する!!“ガトリングブラスター”、“ヴァルキリオン”、撃ぇー!!」

艦の至る所に配備された迎撃砲台“ガトリングブラスター”と、艦首下部に設けられた迎撃ミサイル“ヴァルキリオン”が一斉に火を噴いた。

高速で火を噴いた弾幕によって、敵からの攻撃を辛うじてかわした瞬間、反撃に出た。

「さてと、今度はこちらの番だ。“バハムート”照準、撃ぇー!!」

合計4門装備されたリーフの主砲・“バハムート”が火を噴き、敵艦の船体を掠めた。

しかし、テレヴィアの科学力を侮るなかれ、その威力は掠っただけでも相当なダメージだった。

「攻撃の手を緩めるな!どんどんぶち込め!!」


強力な友を得たライガーシールズは、この勢いに乗り一気に攻めに転じた。

「よし!ここから一気に反撃するぞ!!」

『了解!』

すると、U.W.バスターズから通信が入ってきた。

『あなたがキラ・ヤマト隊長ですね?我が名はゴルゴ伯爵、アンダーワールド・バスターズのリーダーだ。山元竜一総司令の命を受け、君たちの後方支援に当たらせてもらう。』

敬意を表したような言葉を受け、キラも思わず笑みを浮かべ、指示を送った。

「なら、ブルーコスモス・ファミリーへの威嚇と誘導を、お願いします!」

『承知した!』

すぐさまゴルゴは、メンバー全員に指示を送った。

『U.W.バスターズ全機、これより陽動作戦に移る!ブルーコスモス・ファミリーを威嚇・誘導せよ!』

『アイアイサー!!』


指示を受け取ったU.W.バスターズの愛実はファイヤーガゼルを操り、敵モビルスーツの背後をつき、頭部のパーツのすれすれのところを狙って、レーザーキャノンを放った。

敵は攻撃に気づいたのか、こちら側を向いた。

「来たわね!ついていらっしゃい!!」

愛実はすぐさまファイヤーガゼルを旋回させ、もと来た道を全速力で退避し始めた。

しかし、大きさの差なのか、見る見るうちに敵が近づいてきた。

それでも愛実は、ファイヤーガゼルのブースターを限界までふかした。

『所詮は戦車!踏み潰してくれる……!?』

言いかけたところで、敵機の回線が途絶えた。

―――ドッカーン!

爆発音の音に気づき車体ごと振り向くと、そこにいたのはライガーシールズのモビルスーツだった。

回線を通して話しかけてきたのは、金髪の女の子だった。

『……お前、やるな。助かったぞ。』

「お礼なら、この戦いが終わった後にしてよね☆」

少々冷やかしが入ったかもしれないその言葉に、カガリは苦笑した。

『へっ…違いないな!』


一方、レインボー・ガーディアンフォースはブルーコスモス・ファミリーの大型戦艦の周囲を迂回しながら、敵戦闘機部隊の遊び相手をしていた。

レッドたちは、敵艦の大きさに関心を抱いていた。

『さすがにリーフとほぼ同等のスケールがあるな!』

『レッド隊長、どう攻める?』

すると、プラズマファルコン全機に警報が響いた。

「あっ!!あたしたちが狙われてます!!」

『まずい!退避や!!』

敵艦の主砲が火を噴いた直後、R.G.フォースは散開し、最悪の事態は免れた。

『相手はかなりのやり手や……付け入る隙がないで!』

レッドがそんな愚痴をこぼしているとき、ちひろが叫んだ。

『レッド隊長!!敵機が隊長の後ろについているぞ!!』

その忠告に、レッドの顔が一気に青ざめた。

『げげぇっ!!??やばい!』

『レッド隊長!!』

しかし、機転を利かせた卓也がすぐさま、レッドの後ろの敵機を撃ち落した。

まさに危機一髪である。

『すまん卓也。足を引っ張ってしまったな。』

『しっかりしてくださいよ〜、レッド隊長。』

すると、敵を着実に落としながら単独行動を起こし、敵艦をくまなく調べていた甜歌が、レッドたちに提案を出した。

「ねえ、みなさん、あの戦艦のカタパルトを攻めませんか?」

その提案を聞いたレッドたちは、カタパルト部分を見た。

確かにそこを落とせば、当分の間は敵艦から増援が来る事はない。

おまけにうまくいけば、敵戦力を半減することも出来るかもしれない。

場合によれは一石二鳥になるアイデアだ。

『甜歌、ナイスアイデア!!そうと決まれば、早速集中攻撃を浴びせましょう!』

『よ〜し、R.G.フォース全機、プラズマチャージショット・スタンバイ!照準・敵艦カタパルト!』

『了解!!』

プラズマファルコンが散開し、敵艦周辺を飛び交いながら、各機のレーザー発射口に、プラズマ追尾型エネルギー弾が形成されてきた。

『ちひろ機、準備完了だ。』

『卓也機、準備OK!』

「こちら甜歌、こっちもいいよ!」

各機のエネルギー充填率は250%まで上がり、レッドも準備が整った。

『よぉし、プラズマチャージボール・一斉射撃!!撃てぇ!!』

―――ズドーン!!

4機同時に、ばらばらの位置からチャージ弾が放たれた。


フレスベルグ内部に警報が鳴り響いた。

「敵戦闘機より、大型チャージ弾発射確認!高速で接近中です!!」

オペレーターの言葉にあわてたフレイは、声が裏返るくらいに叫んだ。

「機関最大!!回避〜っ!!!」

だが、フレイの指示も間に合わず、チャージ弾はフレスベルグに直撃した。

ブリッジ内部が小刻みに揺れた。

キャプテンシートに座っていた彼女も思わず、振り落とされそうになった。

「2番カタパルト被弾!!左舷格納庫、被害面積・約83%!!」

「っ!!何ですって!?」

裏をかかれた。

カタパルトをひとつ落とされたとあっては、増援を送る時間も余計にかかる。

「さらに今の攻撃によって、左舷格納庫で待機中のモビルスーツ及び戦闘機が損失!動けるのは右舷格納庫の機体だけです!」

「……してやられたわね…!!」

敵の総攻撃によって機体を半分も奪われてしまったとあっては、こちらもどうすることも出来ない。

フレイは怒りを抑えて、全軍に指示を出した。

「もう片方のカタパルトを落とされてしまったら、元も子もないわ!仕方ない、信号弾を打ち上げて!ここは撤退するわよ!!」


――――バチーン!!

ビームサーベル同士が刃を交え、火花を散らす。

「……っ!こいつ、なぜおちない!?」

ステラが一人愚痴をこぼしている間にも、自分の仲間たちが次々と落とされていく。

「こんどこそ!!」

ステラはそう言い聞かせると、アルティマバスターを振りかざし、目の前の機体に襲い掛かった。

しかし、寸でのところでかわされ、さらに相手のビームライフルに撃たれ、片腕を破壊された。

「ぐうっ!!」

爆発音の衝撃でよろめくも、何とか体制を立て直した。

しかし、次の瞬間。

―――ドーン!!

フレスベルグから3色の花火のようなものが上がった。

『……帰還信号?!何でだ。』

『おい、お前たち。さっきの得体の知れない連中が、俺たちの船のカタパルトを破壊したってよ。フレイからの電鈴だ。』

『はぁっ!?何だよそれ!?』

アウルたちの声を尻目に、ステラはどこか開放感に浸るような表情を浮かべていた。

その笑顔は、太陽よりも明るかった。

『とにかく、帰還信号とあれば仕方がない。全軍退却だ!』

『ちぇっ!』

『ステラ、お帰りの時間だ。いくぞ。』

「うん…☆」


リーフのメインブリッジ内部でも、敵の帰還信号は確認していた。

「総司令、ブルーコスモス・ファミリー、撤退しました。」

ユリアの言葉を聴いて、事の事態を知った。

「なるほど…帰還信号という訳か……。そういうことなら話は別だ!ティアーズ全軍、リーフに帰還せよ!敵全軍撤退ならば、こちらも追撃はしない!!」

『了解!!』 『アイアイサー!』

竜一の指示により、R.G.フォースとU.W.バスターズが戻ってきた。

ニュートラルヴィアを舞台にした、ティアーズの初陣はこうして、幕を閉じた………。


そのころ、アプリリウス銀座から程遠く離れた場所で、ひとつの動きが。

「シン!お姉ちゃん!」

メイリン・ホークが偵察から戻ってきた。

「ご苦労様、メイリン!」

「で、どうだった?向こうの戦闘の記録は取れたか?」

すると、その質問に対してとんでもない答えが返ってきた。

「どうもこうもないわ!実は、ライガーシールズとブルーコスモス・ファミリー以外の戦闘介入者が現れたみたいなの!!」

その返答に、シンとルナマリアは目を見開いた。

「な、なんだって!?」

「何なのよ、そいつら!」

「集音機と通信傍受機を使って聞いたんだけど、そのチームは確か『ティアーズ』って名乗っていたわ。」

ティアーズ――――無論、彼らエターナル・フェイスにとっても聞き慣れない名前であった。

さらに、メイリンがこんなことを口にした。

「ライガーシールズと通信をとってたみたいだけど、彼らは“テレヴィア”って言う世界からきたらしいよ……。」

「……外国人…ってことか?」

多分、そういうことだと思う………。

メイリンはそういいながら、今回の戦闘のすべてのあらかたの全容を思い出していた。

実はあの時、シンは“ミネルバチーム”の同僚である、ルナマリアとメイリンの姉妹を連れて、ニュートラルヴィアに来ていた。

その際、メイリンに戦場に偵察に向かわせたのだ。

その任務の最中に手に入れた異例の情報……。

彼らにとって、ティアーズの存在は大きな運命の歯車になるやも知れない。

3人の脳裏に、そんな予感がよぎった。

「……とにかく、多少予定は狂ったかもしれないが、いい土産が出来たな。」

「早速、ゾロアシア・ワールドに戻って、隊長に報告しましょう!」

その言葉を合図に彼らはそれぞれ、戦闘機メテオクラッシャーに乗り込み、ライガーシールズたちに気付かれることなく、ニュートラルヴィアを後にした。

「それにしてもさ…とんだ連中が現れたもんだな!異国からの精鋭部隊なんてよ!」

『あたしも信じられないわ…今までこのプラズマ界には、シードピアしか存在しないって思ってたのに……。』

本部へと向かう帰り道、通信越しに会話をするシンとルナマリア。

その会話をメイリンも耳を傾けていた。

「こんなときに言うのも難だけど……もしホントに、その“テレヴィア”って世界があるなら……一度だけでも、行ってみたいな…。」

―――みんなで、一緒に……。

先ほどの口調とは打って変わった話し方に、二人の姉妹は目をぱちくりさせた。

「…へへっ、なんてな。そんな暇、今となっちゃ全然ないし…。行けるはずがないよな。たとえあったとしても……。」

苦笑交じりの彼の表情に、二人の緊張感も一気にほぐれた。

そして、二人はタイミングがいいように、言葉を口にした。

『シン……戦いが終わったら、一緒に行こう。』

『そのテレヴィアに…、みんなで一緒に!』

笑顔を浮かべた二人に、シンは笑みを浮かべた。

「……ああ!」

そんな、些細で小さな夢を抱きつつ、彼らの戦闘機はまもなくゾロアシア・ワールドに到着する…。

それぞれ、複雑な思いを抱きながら………。



---to be continued---


あとがき:
2006年度最初の長編更新となりました!
今回は、ティアーズVSライガーシールズVSブルーコスモス・ファミリーの構図となりました!
それにしても、自分で書いていててれび戦士たちの戦闘能力に驚いております(汗)
しかし、まさかその様子をシンたちに見られていたとは思いませんでした!
次回は久しぶりにエターナル・フェイスサイドを描きたいと思います☆








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