ゾロアシアワールドからの定期船。
そこからもまた、コーディネイターたちが彼らの歌声を聞くべく、足を運ぶ。
それは、彼らとて同じこと。
「わ〜、素敵☆」
ルナマリアが感激の声を漏らす。
いつもの軍服ではなく、今日だけは少しおめかしをしていて、とても綺麗だった。
その綺麗さと、無邪気さに、思わずアスランは笑みをこぼした。
「ところで、隊長。ここはどこなんですか?」
「そう言えば、シンたちはココに来るのは初めてだったよな。」
アスランが説明した。
「ここは、永世中立地帯『アストレイバー・アイランド』の中心地『スピリード島』。ここにある大劇場『シードピア・シアターハウス』は、このシードピアの住人たちにとっては夢の世界同然の場所なんだ。」
「確かそこって、この世界でナンバーワンの実力と謳われている大劇団が居るんですよね!」
「実は、遅れてしまったのだが、新人たちの配属記念も兼ねて君たちにその舞台を見せてあげたいなと思って……。」
その言葉に一同仰天の目をそろえた。
しかし、それに真っ先に喜んだのはルナマリアの方だった。
「うれしい!!!隊長、だ〜いすき!!」
勢いに乗ってルナマリアはアスランの首に抱きついた。
「あ〜!お姉ちゃんずるい!!」
「いいじゃないの!」
「良くない〜!!」
メイリンが怒り出し、あっという間に姉妹ゲンカが始まってしまった。
その様子を見ていたシンとレイは呆れ顔になった。
「やれやれ、また始まっちまった。」
「フフッ、まあ喧嘩ばかりしていても何も始まりはしないからな。」
「ま、確かにそうだけど。」
そう言ってシンとレイは一足先に劇場へといってしまった。
それを見たアスランたちは、大慌てしながら彼らの後を追った。
「ちょ、ちょっとまて、勝手に行くなよ!!」
「さ、着いたぞ、お前たち。」
仮面の指揮官、ネオの声でメンバーたちが目を覚ました。
ステラの目には、すぐにあざやかな劇場が目に飛び込んできた。
「わ〜、きれい〜!!」
その華やかさにステラはしばし言葉を忘れた。
「でも、いいのか?俺たちが休暇をもらってしまって……。」
「日ごろのストレス発散にはもってこいだろ?他の奴らのことにはかまうな。」
リーダーの厚意を受け、久しぶりに休みをもらうことにした。
「でもさ、気になることがあんだけどさ。」
「なんだ、アウル。」
「フレイのやつが言っていた、あのガキども。」
その言葉に、全員が目を細めた。
「あのガキ、俺たちとさほど年齢は変わんねぇはずなのに、俺たちと対等に渡り歩いていたみたいだったぞ!?」
「うん…。それに…変わった武器…持ってた……。」
「確かに……、あいつら、一体何者なんだ………?」
そんな時、兄貴分のスティングが彼らを促した。
「おい、そんなことを悩んでいても仕方がねぇだろ。今は、このときを楽しもうぜ。」
兄弟分であるアウルとステラだけでなく、上官のネオを気遣うその言葉に、メンバーも微笑を取り戻した。
「うわ〜、広い!!」
シアターハウスに到着していた甜歌と愛実は、この建物の広さに驚いていた。
と、その時、突然耳元で物音が響いた。
―――パァ〜ン!!
「うひゃっ!!?」
突然の不意打ちに、甜歌は思わずその場に倒れた。
彼女の後ろには、ツインポニーテールで髪を束ねた少女が居た。
その服装は、まさに小さな手品師だった。
彼女の片手には小さなステッキが、もう片方の手にはピンクのシルクハット。
その中からは色とりどりの花束が飛び出ていた。
「えへへ、ビックリした?」
無邪気なその笑顔に、甜歌は思わず苦笑いした。
「心臓がとまりそうだったよ……。」
「ゴメン。あまり見慣れない顔だったから、ちょっと脅かそうと思って……。」
「ちょっとあんた、だからってそんなことをしたら誰でも驚くでしょうが!」
愛実の逆ギレに、大騒ぎになりそうかと思ったら、そのなかにニコルが入ってきた。
「まぁまぁ、ツグミさん。コクリコさんも悪戯はその辺にして下さい。」
「「コクリコ?!」」
すると、少女はシルクハットの花束を取り去りそれをかぶりなおすと、こう言った。
「初めまして。ボクはこの劇場の劇団、スピリード・オペラッタカンパニーの劇団員、“マジカルエンジェル”コクリコ!よろしく!」
自己紹介を終えると、即座に再びシルクハットを手にとり、杖でシルクハットを軽くたたいた。
「“ココを見て”ってこと?」
甜歌がそう推測すると、愛実も一緒になってシルクハットを覗いた。
すると、コクリコが突然呪文を唱えた。
「いくよ〜☆……アン、ドゥ…トロワ!!」
―――ポンッ!!
すると中から小鳥やウサギがわんさか飛び出した。
「わぁ〜〜、すごいすごい!!!」
「驚いたわね!」
「へへっ、ありがとう!」
思わず笑顔が綻んでいた時、今度は愛実の背後からなにやら鳴き声が………。
「にゃ〜お。」
「うわっ!!」
愛実は驚き、飛び跳ねた。
後ろを向くと、全身黒タイツで頭には猫耳の飾り、さらには尻尾までついていたスーツを着た女性があらわれた。
男性の方にとっては、若干刺激的な衣装かもしれない………。
「シードピア・シアターハウスへ、ようこそ!」
「びっくりした〜。今度は、黒猫のおねえさん?」
「スピリード・オペラッタカンパニーの、エリカ・フォンティーヌです。よろしくお願いしま〜す☆」
いかにも陽気そうな声で、お客様を楽しませそうな雰囲気をもっていた。
エリカの可愛らしい衣装に、甜歌も思わず釘付けになってしまった。
「あ〜〜…◇可愛すぎます〜〜……☆」
「ありがとうございま〜す!そういうあなたの衣装も、カラフルで可愛らしくて、結構いいですよ!」
「もう、そんなにほめないで下さいよ〜、照れちゃうじゃないですか〜。」
「「アハハハハハハ!!」」
ロビー内に二人の笑い声が響き始めていた。
二人のやり取りを見ていた3人は、思わず笑みをこぼした。
「何かあの二人、いい雰囲気みたいね…。」
「気が合ってますね。」
「うんっ!エリカも何だか嬉しそうだし!」
その後、戦士たちはそれぞれの目的でこの夢世界に訪れ、各々の日ごろの疲れを癒していた。
一方その頃、てれび戦士の活動拠点リーフでは、卓也たちが偶発的に発見した謎の少女が、目を覚ましていた。
「…う…ん………。」
彼女が目を覚ますと同時に、リカバーポッドのカバーが開いた。
重たい体を起こすと、目の前には見たこともない光景が広がっていた。
「……ここ…どこなの………?」
少女はポッドから降りて、部屋を出た。
「やっと、目が覚めたんだね。」
「っ?!」
不意に聞こえた声。
ビクッとした少女は、壊れた人形のごとくゆっくりと体ごと後ろを振り向いた。
そこに居たのは、一人の少年だった。
年齢も、少女と大して変わらないくらいだった。
「君、近くの公園で倒れていたんだよ。覚えてる?」
「…………?」
少なからず言葉の意味を理解したが、彼女はそれを覚えていなかった。
「……覚えてないんだね。」
その言葉に、数秒の沈黙のあと少女は首を縦に振った。
「君、名前は?」
「……マユ…。」
その名を聞き届けたあと、少年はゆっくりと歩み寄り、手を差し伸べた。
「僕は、卓也。よろしく。」
笑顔で差し伸べられたその腕を、マユはゆっくりと握った。
その温かさに、マユは微笑を浮かべた。
これが、謎の少女・マユとRGのリーダー格卓也の出会いだった………。
---to be continued---
あとがき:
ちなみに、このスピリード島に全ての組織の一部が来たことは、全然知りません。
運良くそれぞれ、別席だったとか。(笑)
さて、このSEEDPIAの第1部はまだまだ続きます。
次回はこの翌日の出来事をUPする予定です。
そろそろ本格的なMS戦もUPしてみたいなと思います。それでは!!