Phase204.5 FWパニック・CONCLUSION-Another side-
彷徨う魂の悪夢 〜神と人と〜
魔空監獄―――。
夢世界と亜空間の狭間に位置し、希望と夢を失った者たちが捕らえられると言われる、亜空軍管轄の“魂の留置所”。
また、ここは監獄そのものが巨大な迷宮要塞となっているため、一度そこに捕らえられれば、たとえ脱獄しても外へ抜け出すことは容易ではないのである。
「…ここか。」
そんな危険度の高いこと極まりない場所に現れた一つの影。
夢世界の住人・ナイツである。
彼はグレゴリーと会話を交わした後、ルーテシアと別れ、単独で調査に乗り込むことにしたのである。
魔空監獄は雰囲気が違えど、実質的な“悪夢の世界”。
“ナイトメアン=悪夢の住人”の血脈である彼にとっては、庭を飛び回るようなものだった。
…とはいえ、亜空軍管轄と言うこともあり、そう簡単に中に入ることは出来なかった。
「…チッ、さすがに相当な警備が付いているようだな…。」
斜め上の空から確認しただけでもかなり厳重だ。
入り口や通用口にはメタルプリムやゼクトプリム、迎撃・防衛システムにはザンギャックのゴーミンやスゴーミン、さらにはヴァグラスの戦闘兵・バグラーの姿も見られる。
易々と切り抜けるというわけにはいかなそうだ。
何とか隙のありそうな場所を見つけて、何か手がかりを持ち帰りたいところだ…。
「…?」
…ふと、視線を逸らした先に、奇妙な場所を見つけた。
墓場のようだ。
悪夢の世界で墓場…、恐怖感を掻き立てる組み合わせだ。
しかし、どういうわけかあの場所だけ警備している面々が一切いないのだ。
休憩中なのか、それとも別の何かか…。
いずれにせよ、何か手がかりがつかめるかもしれない。
「…よし。」
意を決したナイツはそこに降りてみることにした。
「……!?」
だが、着地直前で彼は思いも寄らないものを目の当たりにする。
墓標であろう大きな石碑と思われたそこには―――。
「お、女の子、だと!!??」
一人の女の子が封印されていたのだ!!
思わず空中で急ブレーキをかけるナイツ。
だが、驚くのはまだ早かった。
「………ッ…!!!???」
とてつもない寒さを感じ、背筋を凍らせたナイツが周りを見渡すと…!!
「なっ!!!!????」
同様に数多くの少女たちが墓石の中に閉じ込められているのだ!!!!!
その数、100人は軽く超えるほどの大人数だ。
いずれの面々も、希望を失ったかのような悲しい表情のまま、光のベールを体にまとった状態で眠っている様子で、さらにはその体を束縛するかのように赤い光が数本走っている。
「……なんなんだよ、これ…!悪趣味にもほどがあるぜ…。」
言い方が悪いが、見ようによっては18禁規制すらもかけられそうな雰囲気だ。
「確かに。結構ひどいことをしてくれるわね、亜空軍も。」
「!!??」
人の気配!?
いつの間にと思ったナイツが振り返ると、一人の女性の姿が。
紺色が映える黒の衣服に、手足に青色の拳銃が4丁、ショートカットの黒髪にメガネをかけた、20代位の女性だ。
その存在を、ナイツは知っていた。
「おめぇ、確か……ベヨネッタ!?」
「しばらくだったわね、ナイツの坊や☆」
ベヨネッタ――。
“アンブラの魔女”と呼ばれた一族の数少ない生き残りで、4丁の拳銃を駆使した特殊格闘術・バレットアーツを習得している。
また、一部の悪魔や魔獣とも契約を交わしており、特殊な方法でその力を行使することが出来る。
その類稀なる力をマスターハンドに見込まれ、スマブラ陣営の候補にも選ばれているが、一方でその力を使った“天使狩り”を生業としていることもあり、ピットやパルテナたちとは相対する立場にあるという微妙な関係も持ち合わせている。
それゆえに、普段はスマッシュブラザーズの神殿にはおらず、自由気ままにあらゆる世界を渡り歩いているのである。
「ここは別名“プリキュア墓場”。異次元世界の美少女戦士“プリキュア”を封印・束縛し、閉じ込める目的で作られた、魔空監獄の施設の一つだそうよ。」
自分たちの現在地を歩きながら、ナイツにこの場所についての説明を始めるベヨネッタ。
どうやらこの場所に関するあらかたの情報を手に入れているようだ。
「そのプリキュアって連中を毎回ここにおびき出して閉じ込めるって寸法か。」
「そう、彼女たちを封印しているコレは、“エターナルケージ”と呼んでいたわ。」
何者かがプリキュアたちを封印できるほどの強大な力を有しており、この“エターナルケージ”と呼ばれる墓標の中にプリキュアを閉じ込めるそうだ。
「ベヨネッタ、そのプリキュアたちを封印した奴って、何者なんだ?」
「さぁ?あたしもそこまでは知らないわ。」
だが、それだけの強大な魔力を有している存在だ。
亜空軍の行動隊長か、幹部クラスの誰か…と言う推測は出来るかも知れない…。
―――ビュワワアァァンッ!!!
「「!?」」
亜空間のゲートが開いた!?
その内部から、以下の面々が姿を見せた。
・褐色肌と白髪の青年
・右手に金色の篭手を装備し、タバコを加えた20代くらいの男性
・赤帽子と赤スカートに、服からはみ出しそうな豊満な胸を持った若い女性
・左右に結った銀色の髪とグレーの瞳の少女
・猫耳が生えたような黒髪と、露出度の高い衣服を纏った少女
・茶色い髪に紺色の長袖ジャケットとグレーの短パンを身に着けた、ボーイッシュな女の子
前者3人は、狼のシンボルマークが入った白いジャケットを身に着けており、一方で全員が右腕に腕輪を、そしてその手には身の丈以上の巨大な武器を携えていた。
亜空間から彷徨い出たことから考えて、異次元世界の住人たちのようだが…?
「どうやら脱出できたようですね。」
「それはいいんだけど…、ここドコ?」
「ちょっと待って!一瞬、墓場かと思ったんだけど…、普通の墓場じゃないわ!」
後者の少女3人、周りを見渡してここが普通の場所ではないことに気づいた。
「おいおい、なんでこうも若い女の子たちばかりがこんなトコに閉じ込められてんだ!?」
「誰の趣味か知りませんけど、ドン引きにもほどがあります…。」
明らかに尋常ではない雰囲気に他の面々も背筋が凍る。
「それはそうと…、お前らは何者なんだ?」
ふと、白髪の青年がナイツとベヨネッタに気づき、鋭い視線を向ける。
彼の言葉に気づいた一同も、怪しげな雰囲気の二人に身構える。
「待て待て待てって。俺たちを怪しむのも分かるけど、俺らもついさっきここに来たばっかりなんだ…。」
「そうよ。それに、あなたたちもどうやら異世界の人間たちのようだけど?」
『!!』
“異世界の人間”―――。
そのキーワードを聞いて相手方は脳裏で一つの可能性が過ぎった。
「……おい、これってまさか…。」
「あ〜…、あのパターンか…。」
「また、ですか…。」
「そのようですね…。」
「ありゃりゃ〜。」
相手方一同、どうやら“似通った経験”があるようだ…。
約一名を除いて。
「…え?…え?…どういうこと……?」
一方、こちらは次元空間の某所。
ブライトルーパーズ連合の“シードピア先遣隊”として急速航行中の一行である。
その移動の最中で話題に上がったのは、シードピアでの戦いでスーパー戦隊たちの実質的な中心を担っている、“あの男”についてであった。
「そうか…、アキッキーがスーパー戦隊の一人として戦っているんだ…!」
「アカレッドって言ってたわよね?ますます楽しみ!」
通信越しでその話を聞いていた、ファイアーエンとサンダーライの適合者・五反田兄妹、久々に会えるアキッキーの活躍にわくわくしているようだ。
「あの〜…。」
ここで遠慮がちに手を上げた者たちがいる。
セシリア、シャルロット、ラウラ、更識姉妹と言った面々だ。
「私たち、そのアキッキーさんと言う方のこと、全く知らないのですけれど…。」
「ボクたちにも、出来るだけわかりやすく説明してくれない…?」
……言われてみればそうだ。
この面々でアキッキーの存在を知っているのは、彼と共闘している正夫、知り合いの一夏、箒、鈴音、五反田兄妹、そして同級生の千冬、束くらいなのだ。
「あ、そういえば、そうだったね…。」
一同は掻い摘んで彼との記憶を語った。
これは俺の仲間から聞いた話だが…。
アキッキーは元々、君たちの故郷・ルヴェラで生まれ育った男で、幼い頃からスーパー戦隊に強い憧れを抱く存在だったんだが、“レンジャーズラグナロク”の一件を境に、いつの日か自分がルヴェラを守るヒーローになりたいと願うようになったそうだ。
俺と千冬姉が彼と出会ったのは、そのアキッキーが高校生の頃だった。
あの人はその時期から、千冬姉と一緒に箒の実家の剣道場に何度も通って、ひたすら鍛錬をしていたんだ。
俺は二人の鍛錬を何度も見ていたから分かるけど、“もっと強くなりたい”って言う想いがこもっている感じだった……。
それもそうだろうな。
そのときの彼は、次元治安組織“ディスタンス・フォース”に入局すると言う目標を持っていたんだ。
あれだけ強い意志と明確な夢を持っていれば、尚更だな。
思えば、あのときの修行が彼の剣術の礎を築いていたのかも知れないな。
あたしと鈴がアキ兄さんと会ったのは丁度そのとき。
もちろん、千冬さんとの試合も見たことがあったが…、二人とも互角の腕前を持っていたな。
あたしも一度見たことある。
二人の戦い、見応えがあったな〜☆
剣道場においてはあの二人、お互いに認め合っているライバル同士だったもんね。
俺は一夏とは中学時代からのクラスメートって間柄だったから、その縁もあってアキッキーさんと知り合ったんだけど、時折うちの店にも来た事があったな。
実家の食堂だよね。
うちの常連さんだったよね。
あの頃が懐かしいなあ。
正夫を皮切りに、織斑姉弟、箒、鈴音、五反田兄妹が彼にまつわる様々な話を切り出す。
その最後に、今までずっと口を閉ざしていた束もその中に加わった。
あたしは最初っから自分以外のことにはほとんど興味なかったし、ましてや男なんてどーでもいいって思ってたわ。
でも、あのアキッキーだけはなぜか興味があったのよねぇ。
ヒーローを夢見る純粋で強い眼差しに、強くなりたいと切望するまっすぐな心、世界を守りたいと言う使命感に燃える意志。
スーパー戦隊に勝るとも劣らない何かを感じていたわ。
そのときに思ったの。
「あの男、後々の未来で何がすごいことが起こるかもしれない」って。
ぶっきらぼうに見える彼女、アキッキーがスーパー戦隊の継承者となることを予見していたのかもしれない…。
「正直言って、家族や千冬以外で大きな興味を持った存在なんて、あのアキッキーくらいしかいなかったわ。」
彼女がアキッキーに特別な何かを感じ取っていたのが、その証とも言えた……。
<♪〜>
『お知らせ致しま〜す!』
『間もなく、第45管理外世界シードピアの衛星軌道エリア・メディアステーションに到着いたしま〜す!』
『連合軍一同の皆さまは、敵軍の攻撃に備え、警戒態勢をお願いいたしま〜す!』
トッキュウレッシャーとディーゼルレッシャーに配置している、トッキュウジャーのサポーター、チケット、ワゴン、車掌のアナウンスが響いた。
いよいよ、シードピアに到着だ…!!
---to be continued---
☆あとがき
久しぶりのサイドエピソードですが、ここでまたまた新キャラが登場した模様です…!
ベヨネッタと遭遇した謎の6人組、果たして何者なのでしょうか…って言うか、予告上でもうモロバレですけどね(苦笑)
一方で、シードピア先遣隊もいよいよ目的地に到着、史上最大の激戦、間もなく開戦です!!!