Phase83 覚醒


「はぁ……とりあえず、格納庫の人間はこれで全員、かな?」

「だね。」


E.F.ワルキューレ機能停止、さらには船内外で大規模火災という非常事態に、救助活動に赴いていた電王たちとドルフィンナイツ。

その中で、ウラタロスたちは格納庫へと赴き、そこに取り残されていた整備クルーたちを救助した。

「それにしても、エリオ…だっけか?お前の持ってきた道具、スゴイ役立ったやないか。」

「あ、いや…って言うか、褒めるのとお礼はトーヤさんに言ってください、あの人がこの道具を作ってくれなかったら、どうなってたことか……。」

エリオの手には、トーヤが開発した救助ツール・“アビスクラッシャー”が。

実は、エリオの持ってきたこのアイテムを使って、格納庫内部の大火災を完全沈下させたのだ。













遡ること十数分前。













エリオが持ってきた、トーヤの試作品救助ツール“アビスクラッシャー”を受け取ったティアナは、早速試してみようと想い、アイテムを展開させた。

―――ガチャッ

[Wheel mode]

先端のパーツが水流を噴出すパーツなのだろうか。

「クラッシャーの窪みに、“ポセイドンアームズ”を装着してください!」

エリオの言葉を聴き、ティアナは、トランク部分に窪みがあることに気付いた。

「オッケー!」

即座にティアナは、自分のポセイドンアームズを装着させた。

―――ガシャッ

[Special mode, Stand by.]

―――チャキッ

クラッシャーからの電子音声と共に、トランク部のカードホルダーがオープンした。

ティアナはすぐさまこの様子を理解し、エリオに確認をとった。

「このカードね!?」

「はい!それを使えば、スペシャルモードが発動できます!!」

ティアナは迷わず、ホルダーに収められた3枚のカードのうち、“Wheel Impact”と書かれたスペシャルカードを引き出した。

「みんな、下がって!!」

どんな衝撃がくるかは予測できないゆえに、ティアナは全員を少し下がらせた。











「行くわよ〜っ!スペシャルモード“ホエールインパクト”発動!!!!!」





――――ピコォンッ!!!





[Wheel Impact.]






カードをポセイドンアームズで読み取ったと同時に、内部に圧縮、蓄積された膨大な量の冷却水が、次の瞬間に開放され、巨大な水の弾丸を作り出した。





「爆炎鎮圧・ホエールインパクト、発射アアアァァァァッ!!!!!!!」



――――ガチッ!!!






トリガーが引かれたと同時に―――――。

――――ズドオオォォォォン!!!!



「キャアァァッ!!!」






巨大な水の弾丸が一直線に、高速で、炎渦巻く格納庫へと発射された。

また、その衝撃が予想以上に大きかった成果、勢いあまって後ろに倒れてしまった。

――――バッシャアアァァァン!!!!

格納庫の炎へと見事命中。

膨大な水が格納庫の周囲に降り注いだ。

「ティ、ティアさん、大丈夫ですか!?」

「な、なんとかね……。」

ティアナにとって、ちょっとカッコ悪い姿を見られてしまったかもしれない。

「でも、すご〜い!!!」

「炎が一気に収まったやんか!!!」

「ティアナちゃん、グッジョブ!」


「!?」

電王たち3人からの賞賛の声。

すると、あれだけ勢いが強かった炎の渦が、さっきのホエールインパクトで一気に爆鎮されたのだ。

「す、すごい……!!!」











こうして、格納庫の安全もオールグリーンが確認され、取り残されていた格納庫のクルーたちを、助けることに成功したのだ。

幸いにも、全員、命に別状は無いそうだ。











また、外部における火災も、ロウの“アブソリュート・トータス”でまもなく、沈下が完了するところだ。



「…ところで、ブリッジに向かったスバルたちは大丈夫かしら?」

「良太郎と、先輩(モモタロス)が一緒だけど、さすがに一人ずつ運ぶのは大変そうだからねぇ……。」











プァ――――ン!!











『!?』

空間に響いた電車の警笛。

直後に鳴り響いた、聞き覚えのミュージックホーン。



『『『…えっ!?』』』



「「「!!?」」」




ミストとウラタロスらは、この後の展開をいち早く察知し、一斉に上空に眼を向けた。

すると案の定、空間に次元の穴が開いた。

「みんな、道を空けてええぇぇぇっ!!!!!」

『え!!??』


リュウタロスが叫んだと同時に、次元の穴から線路が一直線に敷き詰められてきていた。

しかも、自分たちの現在地のほぼ近くに。

―――――!!!

ティアナたちはこの瞬間に危険を察知し、すぐに道を空けた。

そして、その空いた道を、デンライナー・ゴウカが高速で通り過ぎていった。













「おう、おめえら!」

「「お待たせ〜っ!」」







『え!!?』








聞き覚えのある声を耳にし、全員がその方向に視線を向けた。

すると、デンライナーが通り過ぎた後の場所に、良太郎、モモタロス、スバル、ギンガが。

さらにその傍らには、ブリッジのクルー全員が気絶した状態で横たわっていた。

「スバル!!!ギンガさん!!!」

「先輩!!!」

「良太郎!!!」


ティアナたちは、仲間たちの無事の帰還を喜び、すぐに駆け寄っていった。

ウラタロスたちも、変身を解除し、すぐにモモタロスらのもとへと寄っていった。

「モモの字、デンライナーを使って脱出とは、よう考えたな。」

「おい熊、褒めるんだったら良太郎にしな!こんな豪快な考えしたのはこいつなんだからな!」


「いや……、ライダーパスの特性を思い出しただけで…。」

そう、“ぞろ目の時間のときにライダーパスを持って扉を開けると、デンライナーのある『時間の狭間』に入れる”と言う特性を使い、その限られた時間の中でブリッジの人間たち全員を即座にデンライナーへと避難させたのだ。

普段の良太郎の性格では考えられない、頭の回転を働かせた、中々の手段であった。

「でも、とにかく、これでブリッジのクルーは全員助け出したよ。」

「おっと、そうだ。」

ふと、モモタロスが何かを思い出すと―――。

「おい、ルナマリアって言ったな、あいつはどこだ?」

名を呼ばれたルナマリアは、すぐに良太郎たちのところへ駆け寄った。

すると、モモタロスは一人の少女を抱えてきた。

「お前の言っていた妹って、こいつのことだろ?ほら、確かに助けたぜ。」

その表情を確認すると、ルナマリアは彼女を抱え、一礼をし、背を向けた。





「…っ…メイリン…、良かった……!」











――――カアアァァァァァッ!!!!!







『!!!!???』
















突如、強烈な緑色の輝きが放たれた。

しかもその出所は……!!!

「ア、アスランさん!!??」

その瞬間、アスラン・ザラはその輝きに包まれ光の玉となり、ヤフキエルのところへ飛んでいった。



















































「降魔撃墜率・100%、増援なし!ミッション完了です!」

リオの報告が、出撃していたオーシャンガーディアンズ全員に伝わり、任務の完了を告げた。

「ふぅ……やれやれだな。」

「そうね…。」

ゲンヤとかえでも、ようやくひと段落つける状況となり、胸をなでおろす。

ふと、かえでも受話器を手に取り、全員に労いの言葉を送る。

「オーシャンガーディアンズ、お疲れ様。でも、まだまだ油断は出来ないわ。さっき、恭也さんたちもディスタンスフォースと合流して、戦闘を開始したそうよ。彼らが戻ってくるまで、現状は“警戒レベルB”にまで下げ、総員待機を命じるわ。」

『了か―――。』









『ちょっと待てぇっ!!!!』







『!!??』










突然入ってきたトロヤの叫びに、全員がドキッとした。

「どうしたトロヤ、また降魔が現れたのか?」

『いえ、そうじゃなくて……。』

なぜかそれ以上の言葉が続かず、ただ単に上空を見上げるトロヤのモビルスーツ。

その視線の方角は、レクイエム方面か?

徐に、その場に居たオーシャンガーディアンズ全軍が視線を向けると――――。







『…な…!…なんだあれは!!??』











レナだけでなく、全員が絶句したその状況。

カイザーホエールのメンバーたちも、その視線の方角にモニターを向ける。

すると――――。











「あれは!!!」





「なんだありゃぁ…!!!」














彼らが上空で見たもの――――。









それは、巨大な漆黒の闇の球体に覆われた“レクイエム”の姿だった……!!!



















































(ナ、ナニガオコッタ………!!??)

シードピアのほぼ全勢力がゾロアシアに集結し、これから反撃に移ろうとした矢先、突然ヤフキエルに異変が起こった。

(私ノ体内ニ吸収シタ、“シードクリスタル”ノ反応ガ…消エタ…!!??)

ブレントの脳裏に過った謎の少女の姿、まさか、彼女が……!?

しかし、もはやシードクリスタルそのものがなくとも、力はこの体に十分に染み渡っている。

この力で踏み潰してくれる!

体勢を立て直し、再び立ち上がるヤフキエル。

その間にも間髪居れず、攻撃を仕掛けてくる戦士たち。

地上から射撃攻撃を仕掛ける、赤と黒のカブト。

上空には、てれび戦士、オルカファイターズ、ライガーシールズのMS、さらには魔導師たちに加えて、謎の武装電車も周囲を走り回っている。

海上の向こうでは、てれび戦士とライガーシールズの戦艦が控えている。

(…?待テヨ…。)

と、ここでブレントはあることを思い出していた。

(……フフフフフフフ………、試シテミルカ……。)

ヤフキエルが徐に2本の巨大な腕を上げていき、それらを垂直に構えた。

(練成・“ローエングリン・アーム”……!!)

脳裏で唱えたその言葉と同時に、ヤフキエルの腕がそれぞれ、大砲のような形になっていった。

その形はまさに、B.C.F.で使われている、戦艦の陽電子砲・ローエングリンに極めて酷似していた。

『!!??』

戦闘エリアに点在している戦士たちは、ヤフキエルの腕の変貌に、全員が絶句した。

この雰囲気はまさか……!!!















『コレデ一気ニ片付ケテクレル!!!』















二つのローエングリン・アームから、大出力の陽電子ビームがチャージされていった。







「まさか!?」







「あれを撃たせないで!!!」








それぞれの船のブリッジで戦況を見ていた竜一とマリューは、今後の最悪の展開を察知、総員に対し、総攻撃を命じるも―――。







『モウ遅イ!死ネ!!!!』







次の瞬間、両腕から大出力の陽電子ビームが、カブトたちに向けて放たれ――――――。



























―――――ズバッ!!!!



























ビームが真っ二つに引き裂かれた。

























『何ッ!!!???』

























九死に一生を得たシンたちは、何が起こったのか理解できなかった。

「た、助かった!?」

「何だったんだ!?」

しかし、カブトは上空へと視線を集中していた。

「…?天道、どうした…?」





「どうやら、未来を手にしたものが、目覚めたらしいな。」





『……!?』





言葉の真意を確かめるべく、その場にいたもの全員が視線を向けた。





すると、そこには―――――。





「……!!!!!!」








――――アスラン隊長!!!!????




















シンの驚愕する声が響いた。

そう、緑色の輝きに包まれて宙に浮き、ヤフキエルと対峙しているのは、気絶していたはずのアスラン・ザラだったのだ。

「…!?」

ふと、傍にいたステラが何かに気付いた。

「シン、あの人が持ってるケータイ、シンのと、同じ……!!??」

「何だって!?」

視線を動かすと、確かにアスランの右手にはシンのと同じ携帯電話、左腕にも、シンのそれと同じブレスレットが備わっていた。







――――まさか…!?





















暗い闇の中で眠り続け、このまま目が覚めずにいてもいいと思ってた。

だが、それは己の正義の否定にも繋がってしまう。

それを肯定として示すには、戦うことでそれを証明する以外ない……!!!

『…力を貸してくれ…、ライカ!!!』

“もちろん!!さあ、今こそ、JUSTICEを身に纏うのよ!!!”

彼女の後押しの言葉を受け取ると共に、輝きを取り戻した瞳を開かせた。

「ビルドマイザー!!!」

掛け声と共に携帯電話・ビルドマイザーを開き、変身コードを入力した。













“3・4・0+ENTER”











“Activation!!”












――――ガンダム・アーマー、ビルドアップ!!!!





“Stand by ready, Build up!!”












緑色のGストリームラインが、アスランの全身を駆け巡り、灰色のスキンスーツが纏われ、アーマーの構築が開始された。

胸部を漆黒のアーマーが覆い、両腕と腰部から下の部分にかけては、赤系統の装甲が装着されていった。

さらに、左腕にはビームブーメランが取り付けられた特殊装備・“ビームキャリーシールド”がマウントされ、右手にはビームライフルが握られた。

また、背中には紫色の支援機型装備・“ファトゥムブースター”が装備された。

この装備は、ほぼ全身がビームサーベルの塊といっていいほどの攻撃力を持つ、特攻ミサイル的役割も持つ代物だ。

そして、最後に頭部を保護するヘルメット型パーツが構築され、装備された。











「GUNDAMアーマー・JUSTICE、構築完了!!」



















































スピリード島とカイザーホエールの中間に位置する、ネビュラオーシャンの海底奥深くの謎の空間。

そこには、km単位の大きさと言う、想像を遥かに超越した特大戦艦が極秘裏で建造されていた。

「いかがですか、クアットロ?状況は。」

建造責任者である、元S.C.メンバーの神崎すみれが、声をかける。

クアットロと呼ばれた伊達めがねの女性が、魔性の笑みを浮かべ、その質問に答える。

「そーねぇ〜……、最初はこんなに大きなの造れるはずがないって考えてたんだけど、トーヤちゃんが改良してくれた“ガジェット”のおかげで、作業も予想以上に捗ってるし、中身のプログラムも出来上がってるし。」

二人の目の前には、既に形となっている要塞型巨大戦艦“ユグドラシオン”が出来上がりつつあった。

その周りには、トーヤが“戦闘機人事件”の際に保護し、メガーヌによる更正教義を受けた、通称“ナンバーズ”の面々、さらには、彼が作りあげた多目的自立駆動機械・ガジェットドローンが何百機と浮かんでいた。

「ま、状況としては9割ほど完成しているってところかしらね。」

「あなたがたのご協力、感謝しますわ。」





「失礼します、すみれさま、クアットロ。」





「?」

二人の下へ現れたのは、戦闘機人の一人。

「あ〜ら、何か用かしら?セッテちゃん?」

「スピリチュアル・キャリバー全軍が、ワイルドホエールにてたった今こちらに合流、報告に参りました。」

セッテと呼ばれた、機械的な言動が特徴的な戦闘機人の言葉を受け、すみれが動いた。

「そうですか、あの方たち、無事に着きましたのね。ではセッテ、彼らをこちらにお通しなさい。」

「はい、直ちに。」

指示を受け取ったセッテは、一礼をし、その場から席をはずした。

「では、クアットロ、彼らをご案内いたしましょう。」

「そーねぇ〜、あたしたちの最後の砦となる、あの船―――――。」

























――――――“ユグドルシオン”へ。



















































スピリード島、“シードピア・シアターハウス”。

そこはすでに、謎の軍団によって襲撃されていた。

紫色がかった謎の黒い虫の侵攻、その虫によって生み出された謎の兵隊たち。

いくら倒しても、いくら吹き飛ばしてもキリがない、謎の蟲の大群。

業を煮やした大神は、本部の放棄を決意、全メンバーたちをワイルドホエールに避難させ、島を脱出したのである。







そして現在――――。







シードピア・シアターハウスは、謎の兵隊たちによって、内外全てにおいて破壊の爪痕を残していた。







「……フッ、この島も、今となっては我々のものだな…。」

仮面の奥から笑みを見せる、闇の魔人・パトリック。

「亜空次元神・タブーの“影蟲”と“プリム”の総攻撃、案外役に立つものだな……。」

そう、パトリック自身も既にタブーと会い見え、彼から力を授かっていたのである。







「さて、仕上げにかかるか…。」













―――亜空間爆弾、用意!!













パトリックの指示と共に、漆黒の亜空間から、巨大な兵器が送られてきた。

大きく、紅い×印が書かれた謎の球体。

その背後から、謎のロボットが2体現れると、その球体の両サイドに構え、両腕を球体の“鍵穴”にセットされると、球体が二つに割れ、中からタイマー付きの装置が現れた。

その中央には、小型の亜空間のようなものが……。





“起動”が確認されると、パトリックはためらいなく、その場を去った。





やがて、タイマーがゼロになった瞬間――――。



















スピリード島は漆黒の闇に包まれた……。



---to be continued---


☆あとがき
ついにJUSTICE復活!!!と言ったわけで、とうとうGUNDAM全5種類が出揃いました!
しかし、その一方で色々と動きが出てきているようですね。
注目は、すみれ&ナンバーズの顔見せのシーンのときに出てきた、“シードピア最後の砦”ユグドルシオン!
ちなみに、そのイメージは……。

[ 聖王のゆりかご(リリなのStS)+ゴンドワナ(種シリーズ)+エッグキャリア(ソニックアドベンチャー) ]

と言う、シードピア史上かつてない壮大な大きさのオリジナル母艦となっております!!!(苦笑)
近日の展開で、残存勢力を載せて、シードピアを緊急脱出する予定です!

さて、次回はとうとうヤフキエル戦完全決着!!!
シンを初めとする精鋭たちが、想像を絶する大規模砲撃を披露します!!!!










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