Phase82 正義


立ち込める烈火の炎によって、船内全体の温度が急速上昇し、酸素も薄くなってきている。

この状況ではクルー全滅も免れない!

そんな中、ドルフィンナイツたちは機能停止となり撃沈された、E.F.の旗艦・ワルキューレの船内に突入していた。

外では、ロウが“アブソリュート・トータス”を使って消火活動に勤しんでいるものの、火の回りが少々早い。

急がねば……!!

「おいおいおい…、こうも暑くちゃ、かなりまずいんじゃねぇか!?」

また、電王たち“デンライナーポリス”も救援に参加していたものの、その活動はかなり難航していた。

『それに、船の中も想像以上に広すぎる……!』

意識の中にいる良太郎も、こればかりはさすがにあせる。





「良太郎さ〜ん!!」





『?』

「お?」

背後から駆け寄ってきたのは、ドルフィンナイツの切りこみ隊長格のスバルとギンガだ。

「鉄拳姉妹か。どうだ、状況は!?」

「ティアたちがすでに、数名の救助者を確保しています。」

「その途中で、聖夜(のえる)さんらと合流しまして、彼らと共に今、格納庫に向かっております。」

どうやら、M-istの仲間たちも合流に成功したようだ。

ウラタロスらがうまくサポートしてくれればいいが…。

「あたしたちはこれから、ブリッジに向かうところです。良太郎さんも協力してくれますか?」

「ブリッジ?」

『船の艦橋、つまり、この船の全てを操作する場所だよ。人間で言うなら“脳”と同じような場所って所かな?』

良太郎のわかりやすい解説を聞き、モモタロスは状況を察した。

「…なるほど、そこにキャプテンたちが取り残されてるってわけだな?」

「おそらくは。」

「…よし、とっとと助けに行こうぜ!」





「……ま、待ってください!!」





「「「『!?』」」」






背後から女の子の声。

振り向くと………。

「いいっ!?あの赤毛女は確か…!」

『ルナマリア、さん…?!』

ドルフィンナイツの面々と共に待機しているはずのルナマリア・ホークだった。

酸素がただでさえ少ない場所を走ってきたのか…!?

「お願い、あたしも連れてって!ブリッジの場所まで案内するから…!」

「おいおい……!」

「道を教えてくれるだけでも助かるのですが、あなたを連れて行くわけには……!」

思わず3人は彼女の申し出を断ろうとしたのだが、次の彼女の一言に驚きを隠せなかった。











「ブリッジには、あたしの妹もいるの!!!」







―――――!!!!






「足手まといになることくらい解ってる。でも、妹を失うのだけは絶対いやなの!だから……っ!!」

姉妹愛、とでも言うべき表現だろうか…。

彼女が妹をここまで大事に思っているとは思いもしなかった。

だが、この状況では………。







「……ルナマリアさん。」







ふと、スバルが真剣な面持ちと真剣な声色で、ルナマリアに話しかけてきた。

「妹さんを助けたい気持ちはわかる。あたしとギン姉が同じ立場だったら、多分ギン姉も同じ方法をとったと思う。でも、もしあなたが助けに入ったとして、帰り道がふさがれてお互いに助からない状況になっちゃったら、それこそ無意味になるよ。」

「っ…!」

ルナマリアは言葉に詰まった。

妹を早く助けたいという一心で突っ込んできたがゆえに、“見つけた後のこと”を全く考えていなかった。

それに今の自分の装備は、最低限のものしかそろっていない……。

「だから、ここはあたしたちに任せて。妹さんは、必ずあたしたちが助けるから……!!」

ルナマリアは、彼女のその言葉に、ついに折れた。

「……ブリッジは、この階層のさらに上の階にあります。だから、仲間を…妹を……お願いします…っ…!」

スバルは、彼女の願いを聞き入れた。

「ギン姉、ルナマリアさんをお願い!!」

「わかったわ!良太郎さん!!」

「おう!任せときな!!行くぞ!」

「はい!!」

ブリッジのクルーたちの命の全てを背負った蒼き星は、紅き閃光と共に炎の中へと飛び込んでいった………。



























「……どうやら、この先が格納庫のようだね。」

聖夜(のえる)=ウラタロス(ロッドフォーム)が、目の前に現れた扉を目撃するなり確信を得たようにそう言った。

「……でも、どないすんや…?」

「瓦礫が多すぎて、通れないんだけど……。」


しかし、目の前の状況に理来(りく)=キンタロス(アックスフォーム)と翼=リュウタロス(ガンフォーム)は、少々呻いた。

そう、彼らの視線の先には格納庫へと続くであろうドアが“わずかに”見えているのだが、その道を阻む瓦礫の数が予想以上に多すぎたのである。

一々除去するにも一苦労かかりそうだ…。

「心配要りませんよ、ミゲルさん、お願いします!」

「おし、アレの出番だな?」

ティアナの指名を受け、自信満々にミゲルが前に出た。

すると、彼が右腕を掲げるや否や、右の二の腕全体ほどの長さに相当する、謎のツールが姿を見せた。

「“ハイドロディバイダー”!!」

先端が回転ノコギリ、反対側にはドリルが取り付けられた特殊ツール・“ハイドロディバイダー”。

元々この装備は、レスキュー用に開発されていたが故に、今回は久々にその効果を発揮できそうだ。

ミゲルは、ツールに取り付けられている“赤”、“緑”、“青”、のボタンのうち、青のボタンを押し込んだ。

“Aqua Power”

すると、回転ノコギリの刃全体が高速回転しながら青く染まり始めた。

ミゲルはその状態で、まるで鉄拳を繰り出しそうな勢いの構えを取った。









「“アクアディバイダー・シュート”!!!」





――――はああああぁぁぁぁ!!!!










掛け声と共に、ディバイダーが装備されている拳を突き出すと、青く光った回転ノコギリの光の刃が放たれ、炎と共に瓦礫を一気に除去してしまった。

さらに、ソレと同時に奥の電子ロック式の自動ドアすらも両断してしまった。

「ほおぉぉ。」

「すごいすご〜い☆」

「中々の威力やないか。」


「さあ、急ぎましょう!!」

ダイダルストライカーズの“Dトルーパーユニット”のツールの底力に感心しつつ、全員は格納庫へと入っていった。

しかし――――。





「うわわわ、あちちちちっ!!!」





突然、戦闘で突っ込んでいったリュウタロスがまたまた呻いた。

何事かと思い、視線を向けた矢先――――。













「危ないっ!!!」















突然扉の向こうが炎を吹いた。

咄嗟にその場から離れ、どうにか難を逃れたが、格納庫の中は既に爆炎の大洪水と化していた。

「ちょ……何なのよ、これ……!!!???」

先が全然見えない。

非常にヤバイ。

全員がさすがに焦りの色が隠せない。

「皆さ〜ん!」

背後から幼い少年の声が響いた。

振り向いた先には、紅いツンツンヘアの少年が。

しかも、両手には紅くて大きなトランク型のアイテムを抱えている。

「はぁ…はぁ…、よかった、間に合った…。」

「エリオ、どうしたのよ?遅かったじゃない。」

様子からして彼も救助活動に加わる予定だったようだが、別件があったらしい…。

「トーヤさんから、試作品のアイテムを預かってきたんです。ティアさん、これを…!」

そう言って、エリオはたった今持ってきた、トランク型のアイテムを手渡した。

「多目的救助ツール“アビスクラッシャー”です!」



























―――ピピッ、ピピピピッ……。

―――ピコン。

「電子ロック解除!」

スバルが“ポセイドンアームズ”を使って電子ドアのロックを解除、ブリッジ内部に乗り込んだ。

幸い、ここは船の最上層に位置するためか、炎の熱や炎そのものはまだそんなに届いていないようだ。

…とは言え、撃墜されたときの衝撃が、色んな意味で大きいことは事実、クルー全員が損傷している上、ほぼ全員が気絶しているのが何よりの証拠である。

ふと、モモタロスの視線に紅い髪のツインテールの女の子の姿が映った。

彼はその少女の傍らによる。

「こいつがあの赤毛女の妹か……。」

『どうやら、無事みたいだね。』

まずは一安心と言うところか。

「おい、鉄拳女、そっちはどうだ?」

「艦長さんを初め、ここのクルーの方々の命に別状は無いようです。」

そうと解れば、あとはこの場から脱出するだけだ。

「でも、どうします?これだけの人数、外に出すだけでもかなり大変ですよ……。」

「あ……、そういや、そうだな…。」

ふと、その不安に良太郎が釘を刺した。

『でも待って、モモタロス。アレがあれば何とかなるんじゃない?』

「…?」

その指摘を受け、モモタロスはしばし考えた後、自分たちが今持っている“あるアイテムの特殊能力”を思い出した。





もしかしたら……、うまく行くぞ…!!!!





「……やってみる価値はあるな…。」





モモタロスは、仮面の奥で笑みを浮かべ、行動に移すことにした……。



















































見渡す限り、漆黒の世界……。

自分がどこにいるのかも、なぜ自分がここにいるのかも解らない……。

天国か地獄かもわからない状況…。

だけど、もう、どうでもよかった……。

自分はもう疲れた。

だから――――――。





















『あきらめちゃダメよ!!!』





















……誰かの声が自分の眠りを遮った。

彼はその瞳をこじ開けた。

その視線の先には、声の主である、真紅のツインテールの少女の姿があった。

「…おまえは……?」

『あなたはこんなところであきらめるの!?あなたはそんなに根性が無かったの!!??』

彼に浴びせかける彼女の言葉。

確かにその通りなのだが、自分にはもはや戦う力もない。

理由すらも……。





『っ…バカッ!!あなたはそんな男だったの!?こんなところで終わりなの!!??』

それでもあきらめず、声をかけ続ける少女。

だが、自分と彼女は無関係。

自分の心なんて、理解してくれるはずが……。























あなたの“正義”の心なんて、そんなにちっぽけなものだったの!!??

















「!?」



















『あなたは、今まで自分の正義を貫いて、その思いを力にして、仲間たちを導いてきたんじゃないの!?』

……自分の今までのことを知っているかのような、その言葉。

見ず知らずの存在のはずなのに、なぜ彼女はそんな言葉を……。

『悔しかったら、立ち上がってみせなさいよ!倒れても、倒れても、何度も立ち上がって、あなただけが持っている正義の心を証明してみせなさいよ!』





















――――この、根性なしの偽善者!!!!!!






















――――!!!!!!!!!!





















喧嘩を仕掛けるような“売り言葉”同然の罵声を耳にし、彼の目がカッと開かれた。



そして、ソレと同時に、自分が捨て駒同然の操り人形にされたことを、全て思い出した。





















……そうだ。

俺は……、今までライガーシールズとエターナル・フェイス、二つの部隊を渡り歩いてきた中で、俺の中での本当の正義を手にしていた。

……俺たちは…“戦士”でもなければ、言うとおりに動く“駒”でもない…!

俺の正義は、“己の信じる道を歩むこと”。

決して、誰かに言われたから決めるんじゃない。

自分の思いを貫くことで、その正義を、その絆を信じることが出来る。

そして、たとえ選び取った道がどんなものであろうとも、その信じる心を忘れない限り、俺の正義は負けることはない……!!




















正義とは俺自身……俺が正義だ!!!!!









――――カアアァァァァァァッ!!!!


















天道総司の言葉を髣髴とさせるその言葉に、彼女と彼の間に、緑色の強い輝きが生まれた。

















それは、シンやキラたちが持っているものと同じ、緑色の種の形の宝石。

















『それでこそ、正義の剣“JUSTICE”の適合者。さあ、今こそそのシードクリスタルを手に、目覚めるのよ!』













―――――アスラン・ザラ!!!!!!




















































「もぐもぐもぐ……。」

シードピアの軌道上に駐在する、超大型人工衛星・メディアステーション。

その通路内で2人の少女がのんびりと歩いていた。

そのうちの片方の、薄紫のツインテールの少女はなぜか焼き芋を片手に食べていた。

「やっぱり焼き芋って美味しいわよねぇ。」

しかし、隣の青いロングヘアの少女は、少々苦笑い。

「あ〜、えっと、かがみ…?」

「…わかってる。わかってるから言うな…。少し食べる?」

「ありがと☆でも太るよ。」

「結局言うし…;」

柊かがみ、SOSフォースの切りこみ隊長格の一人。

年頃ゆえか、体重の増減には一際敏感である。

「うるさいわよ、ナレーション兼作者(タツノコースケ)!!」

そして、ご覧の通りの突っ込み担当でもある。

「あ、一つ言い忘れてるよ。」

……何か?

「かがみんは極端にツンデレだってこと☆」

なるほど、そりゃそうだ。

「こなた!余計なこと言うな!それと、作者もそこは否定するんじゃないの!?」

でも実際そうなんじゃないですか?

「う゛……。」













「あの〜……。」













「…?」

遠慮しがちな声が聴こえたかと思い、視線を逸らすと、そこには桃色のセミロングをツインテールにまとめている少女がいた。

「おぉ、ゆーちゃん☆」

“ゆーちゃん”こと、小早川ゆたか。

SOSフォースのメンバーで、こなたの義理の妹でもある。

「どったの?」

「あの〜、お姉ちゃん。実は今さっき報告が……。」

こなたに近寄り、耳打ちするゆたか。

その内容を耳にした瞬間、こなたの表情も驚きに変わった。

「ぇ…?…ぉ゛!!??……ゆーちゃん、それ、マジ!?」

「う、うん……。」

「…?どうしたの?」

首をかしげるかがみに対し、こなたはゆたかの報告事項を復唱した。







「…最後のGUNDAMが目覚めたって…“ブレイカーソウル開放”のオマケ付で……。」









「…はぁ!!!???」




















































「…If I think whether I woke up after an interval of 1000 years…。」
(…1000年ぶりに眼が覚めたかと思ったら…。)

“彼”は今、ゾロアシアワールドの崩れかけたビルの上に居た。

その視線の先には、禍々しい姿で戦士たちを見下ろすヤフキエル。

――――ピピピピピ……。

「?」

ふと、彼は“彼女”から手渡された万能ツールの一つ・“エクシアストリガー”の着信音が響いた。

―――チャッ

『どう?あたしの言ったとおりの状況でしょ?』

「It is so. But what would you do? I help you and should do it?」
(そうだな。でも、どうする?手助け、するべきかい?)

『そうね、状況を見て援護したほうがいいわ。“スマッシュブラザーズ”リーダーの力、見せてもらうわよ、マリオ!』

「All right, Haruhi。」
(わかったよ、ハルヒ。)



1000年前の“シードピア・クライシス”の知られざる英雄、マリオ。





彼の介入が、戦士たちにどんな影響を及ぼすのか………。



---to be continued---


☆あとがき
大幅な予定変更が施された今回の第82話、なんとピットに続くスマブラ先行出演キャラとして、マリオにご登場いただきました!!!!
しかも、今後の展開次第では、いきなり最後の切り札を使っちゃうかも?
マリオのシードピアデビュー戦、いつぞやのなのはの時と同等の衝撃的なデビュー戦を飾っちゃうかもしれません!
どこで介入するか、ぜひともご期待くださいませ☆
<おまけ>

 こなた:ねぇ、コースケ。
コースケ:ん?
 こなた:前から思ってたんだけど……、どうしてこの話を書こうって思ったの?
コースケ:え…?
 こなた:だって、この小説「天てれ」とか「サクラ」とかがコラボしてるんでしょ?
     普通じゃ考えられないよ。
コースケ:…まぁ、こなたの考えもわからなくもないけどな……。
    (う〜ん……近いうち、話そうと思ってたけど……そろそろいいかな?)
近日、番外編として『SEEDPIA執筆秘話』を公開予定。
尚、80〜90%の割合で、自分の実話が入っております。










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