SEEDを持つものよ、“流星の切り札”が目覚めた。
それを欲するのであれば、GUNDAMを身に纏った状態で、ビルドマイザーでコード“3110”を入力しろ。
――――by PB-01
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突如として、キラ、ラクス、カガリの3人のビルドマイザーに送信された謎のメール。
これが何を意味するのかは定かではない。
唯一つ言えること、それは、“GUNDAMの最強の切り札が目覚めた”と言うことである。
と、そのとき、オペレートルームで作業していたミリアリアから、予想もしえない連絡が入った。
『マリューさん、ゾロアシアから救援信号が発令されています!』
「何ですって!!!??」
ゾロアシア―――、つまり“エターナル・フェイス”からの救援要請。
おそらく、シードピアの歴史の中でも、この事態は極めて異例と言ってもいいだろう。
数刻の間をおき悩んだ末、マリューは決断を下した。
「キラさん、ラクスさん、カガリさん、あなたたちは先行して下さい。私たちは後ほど、“タイタニア・イージス”で合流いたします。」
キラは悩んでいる暇などないと判断し、命令を静かに受託、ラクスとカガリを連れて司令室から去った。
G.L.B.ヘリポート、そこに3人が立っていた。
それぞれの手には、適合者の証・ビルドマイザーが。
「……カガリ、怖い?」
「…少しな……。」
カガリにとっては、GUNDAMアーマーでの初陣だ。
生身で超巨大モビルスーツに立ち向かうなど、前代未聞。
下手をすれば、一瞬で命を落としかねない。
モビルスーツに乗るときの戦闘とは、まるで違いすぎる次元の戦いが、彼女を待っているのだ。
「大丈夫ですわ。」
そんな彼女の肩に、ラクスの手が添えられた。
「私とキラも、その極限の状況を体験しているのですから。」
「僕たちがついてる。だから、一緒に戦おう。」
この二人の優しさは、どこまで大きいのだろうか。
彼らと一緒なら、全ての人間たちの心を救えるかもしれない。
「…あぁ!」
意を決したカガリと共に、キラとラクスも前に出た。
――――チャッ
“2・0・5+ENTER”
“9・0・1+ENTER”
“Activation”
「ガンダム・アーマー、」
「ビルドアップ!」
――――ジャキン!
“Build up!!”
ビルドマイザーがGドライバーに装填されたと同時に、Gストリームが二人の体を駆け巡り、瞬時に二人の体にアーマーが取り付けられた。
初めて目の当たりにする変身メカニズムに、カガリも驚く。
「それが、お前らのアーマーか。」
「さぁ、カガリさんも…。」
ラクスに促され、カガリも頷き、自らのビルドマイザーを開く。
液晶画面でコードを確認し、ゆっくりと、そのキーを押す。
“3・2・9+ENTER”
“Activation”
「ガンダム・アーマー、ビルドアップ!!」
――――ジャキンッ!
“Stand by Ready,Build up!!”
Gストリームが彼女の体を包み、オレンジ色のスキンスーツが纏われたのを合図に、着装が開始された。
ボディ全体を包むのは、太陽のように輝く金色のアーマー。
さらに、足全体、腕全体を包む装甲も、金色を中心に装飾された豪華なもの。
その上、頭部に取り付けられるヘルメット型防護パーツも、金色に染められている。
また、背中にも金色の彩色を中心に彩られた、ジェットバックパックも取り付けられた。
最後に、腰部には接近戦用のビームサーベルが一本、両手にはシールドとビームライフルがそれぞれ握られ、着装が完了した。
「す、すごい…!!」
「眩い輝きですわ、カガリさん…!!」
感慨無量と言わんばかりのキラとラクスの言葉に、ハッとしたカガリは、改めて自分のアーマーを見てみた。
「お、驚いたな……。」
装着した自分でも言葉を失うほどの、豪華さだ。
“アカツキ”。
それがカガリの受け継いだガンダム・アーマーである。
全身を覆う、眩い太陽のような輝きを放つそのアーマーは、全体に対ビームコーティングが施されている。
そのため、タイミングを見計らうことで、あらゆるビーム光線を跳ね返すことが出来ると言う特性を持っている。
さらに、背中のバックパックは、通称“オオワシ・ストライカーユニット”と呼ばれており、背中に装備することで、機動性と砲撃能力が飛躍的に上昇する。
また、自立飛行能力も備えられているため、単機での支援も可能とする。
「よし、行こう!」
「はい!」
「お、おう!」
だが、感激に浸っている暇はない。
自分らは先行してエターナル・フェイスを援護しなければならない。
3人は早速、マイザーを開いて、コードを入力した。
“3・1・1・0+ENTER”
“METEOR SLIGER Come Closer”
「うおおおおぉぉぉぉぉ!!!!」
「はぁっ!!!」
「たぁっ!!!」
振動拳が唸りを上げ、イクサカリバーが闇を裂き、冷機を纏った戦士が奮闘する。
救援活動を行っていたドルフィンナイツの前線も、ヤフキエルのあまりの数の多さに、後手後手に回りつつあった。
「…数が、かなり多いですねぇ…。」
「確かに、これはキツイぞ!」
「このままじゃ、すぐに破られちゃう!」
ヤフキエルのさらなる増援がジリジリとスバルたちにせまってくる。
プァ――――――ン!
『!?』
電車の警笛。
上空から?!
上を見上げると、真っ赤なボディと蒼いラインが入った、謎の電車。
新幹線にも似たそのフォルム。
その電車がドルフィンナイツのいる現場に近づいてくると、中から射撃武装が4両連続で出現、反時計周りに迂回しながら攻撃を仕掛けていた。
「うわっ!」
「「くっ!?」」
咄嗟にスバル、イクサ、レイの3人はその場に伏せ、攻撃をやり過ごした。
その怒涛の攻撃で、一気に50機以上のヤフキエルを粉砕した。
「す、すごい……!」
と、そこに全周波回線による通信が繋げられた。
『相当苦戦しているようだな、ドルフィンナイツ!』
『そ、その声……、ネガタロスか!?』
どうやらあの新幹線は、ネガタロスが個人で所有するものらしい。
すると、走る新幹線の先頭車両のドアが開かれると同時に、思いもよらない言葉が投げかけられた。
『強力な助っ人を届けに来た!ゼスト!クイント!メガーヌ!後は任せたぞ!』
『おう!』
『オッケー!』
『了解!』
『えっ!!!???』
瞬時にドルフィンナイツのメンバー全員が耳を疑った。
そのとき、上空の電車から3人の人影が降下、問題なく着地した。
その3人は、ネガタロスの言ったとおりの3人だった。
意外な援軍の顔ぶれに、一番仰天したのは、スバルだった。
「か、母さん!?」
驚きに眼を見開く娘の表情を見届けたクイントは、“心配しないで”と言うような微笑を浮かべた。
そして、振り返り、未だに進軍するヤフキエルを見据えた。
「ナカジマ、アルピーノ、行くぞ!」
「はい!」
「了解!」
第1期ドルフィンナイツ隊長陣、久々の戦闘。
その3人の右腕には、それぞれ特殊なブレスレットが装着されていた。
「来い!カブティックゼクター!!」
ゼストのその言葉を合図に、空間に開いた穴から、3機の小型機械が召喚された。
金、銀、銅の3つのカブトムシ。
かつてB.C.F.が計画の一端として開発した、カブティックゼクターシリーズである。
しかし、今やドルフィンナイツの最大の切り札として確立しつつあった。
召喚されたと同時に、黄金のカブトムシ・コーカサスがゼストの、白銀のカブトムシ・ヘラクスがクイントの、銅(あかがね)のカブトムシ・ケタロスがメガーヌの、それぞれのライダーブレスに自発的に装着した。
「「「変身ッ!!!!」」」
――――ガチャッ!
[[[HENSHIN!!!]]]
電子音声と共に、3人の体全体にライダースーツが纏われていった。
[[[Change!! Beetle!!!]]]
カブティックゼクターを用いた変身(ライダースーツ装着シークエンス)は、正式タイプのゼクターとは大きく異なる。
正式タイプのほとんどが、ライダースーツの上にマスクドアーマーを取り付けるのが標準だが、カブティックゼクターの場合は、直接ライダースーツを身に纏う形態を採用している。
ただし、ライダースーツのみの状態では防御力がかなり低い。
そこで、防御力向上のため、上半身の胸部にヒヒイロカネで造られた簡易型ブレストアーマーが追加されている。
また、トーヤの改良により、それぞれのオリジナルの装備を装着することも可能。
それを証拠に、ゼスト=コーカサスの手には大型の槍が、クイント=ヘラクスの両手にはリボルバーナックルが展開されていた。
「アルピーノ、お前はランスターたちと共に後方支援に当たれ!ナカジマは俺と一緒にスバルたちの援護だ!」
「「了解!」」
歴戦の勇士の貫禄を持つ、3人の騎士が、神の番人に立ち向かっていった。
そして、その遺志を受け継ぐ者たちも――――――。
「名護さん、白峰さん、あたしたちも!」
「無論です!」
「一気に決めるぞ!」
「「クロックアップ!」」
[[CLOCK UP!!]]
「シューティング・アーツ、キャリバーショット!」
―――ジャキイィンッ!!
[IXA Calibur Rise up!!]
「イクサ・ジャッジメント!」
『ウェイクアップ!』
「ブリザードクロー・エクスキュージョン!!!」
援軍を送り届けたネガタロスは、ゾロアシアの上空に居た。
「さて、これでドルフィンナイツのほうは問題ないだろう。……よし!」
彼の視線の先には、破壊活動を続ける大型モビルスーツの姿があった。
「オルカファイターズ全軍、こちらネガタロスだ。これよりこちらもお前たちの援護に移るぞ!」
飛び交う銃声と、バケモノの断末魔が繰り返される、レクイエムコロニー内部の死闘。
牙王率いる特殊分隊、ルミナス・ファングの参戦と、魔導騎士の一人・シンクレアの登場により、その戦いはますますヒートアップしていった。
しかし、戦局はルミナス・ファングに大きく傾いていた。
リーダーである牙王の戦闘能力が非常に高い影響か、一気にシンクレアが繰り出したモンスターたちが一掃されていった。
その彼の後に続くように、マリアとリカリッタの射撃が正確に敵を狙い撃ち、カンナの鉄拳が炸裂すれば、グリシーヌ愛用の戦斧が唸る。
そして、戦闘開始から数分と経たずに、モンスターが全滅した。
「予想以上の実力のようね。」
シンクレアは、ルミナス・ファングたちの戦闘能力を甘く見ていたようだ。
この戦闘、残るは彼女を討つのみ。
そろそろ自分も本気を出すべきか。
シンクレアが気を引き締め始めた、次の瞬間。
ド――――――ン!!!
『!?』
爆発音と同時に、新たな介入者の声が。
「シンクレア、少々苦戦しているようだな。」
「こっちは首尾が片付いたよ。」
「レオニダスとチェサナ。ご苦労だったわ。」
シンクレアの顔見知り…………と言うことは……!!!!
「お前たち二人…、パトリックの魔導騎士だな!?」
牙王の質疑に対し、白髪の少年が黒い笑みを浮かべて、その質問を肯定した。
「ピンポーン!大当たり!ボクはチェサナ・サイクルズ。人呼んで、“大翼の白騎士”!」
「同じく、レオニダス・ヴァンドーン。二つ名は、“巨岩の黒騎士”!」
そして、その名乗り口上に、シンクレアも加わった。
「改めて自己紹介するわ。シンクレア・ガードナー、またの名を、“血塗られた赤騎士”!」
「我ら、パトリック・ハミルトンに仕えるしもべ、“黙示録の三騎士”!」
いつぞやの殺女や叉丹などとは、比べ物にならない雰囲気が窺える。
想像以上の戦いになりそうだ。
「お前たち、自己紹介はそのくらいにしておけ。」
「!これは……ブレントさま。」
爆発のときに崩れた壁の向こうから、一人の若い男性が現れた。
このとき小次郎は、シンクレアが“ブレントさま”と彼のことを呼んだのを、聞き逃さなかった。
「ブレント……、ハッ!……もしや、お前が魔導騎士を目覚めさせた張本人か!!?」
小次郎の言葉に、男性は笑みを浮かべた。
「……その通り、私はブレント・ファーロング。ヤフキエルと降魔を生み出したのも、他ならぬこの私だ…。」
「てめぇがヤフキエル軍団の親玉か!!」
血の気が多いカンナは既に構えを取って臨戦態勢。
マリア、グリシーヌ、リカリッタも武器を手に構えた。
「君ら、ダイダルストライカーズやシードピアの精鋭たち、そして、てれび戦士の活躍は目覚しい…、賞賛に値してもいいくらいだ。」
「…どうやら少しは評価はしてくれるらしいな。だが、親玉が自ら出てくるとあれば丁度いい!この場でB.C.F.の幹部と一緒に貴様をとっ捕まえてくれる!」
「残念だが、それは無理だ。」
――――!?
レオニダスが牙王の考えを否定した。
それを引き継ぐように、チェサナが衝撃的言葉をたたきつけた。
「B.C.F.の幹部たちだったら、今さっきボクらが皆殺しにしちゃったもんね〜。」
――――!!!!
B.C.F.の幹部が全滅!?
いつの間に!!!???
「それに、私を捕まえるなど、愚かなことだ。」
その言葉と同時に、背後から巨大な人型駆動兵器が壁を突き破って現れた。
「なっ!?」
それと同時に、黙示録の三騎士たちもその崩れた壁の向こうへ飛び立った。
さらに、駆動兵器の腕が伸び、ブレントを守るように包んだ。
「逃がさん!」
「待て待て〜っ!!!」
マリアとリカリッタが咄嗟に“オーシャニックシューター”でブレントを狙い打つも、一発も彼に当たることはなかった。
ブレントを保護した駆動兵器は、黙示録の三騎士と共に上空へと飛び立った。
その後を小次郎と牙王が追いかける。
だが、駆動兵器は遥か上空まで浮いていた。
『そこで大人しく見届けるがいい……、お前たちの大地・シードピアが崩れ去るサマをな!!!』
勝利を確信したブレントが捨てゼリフを残し、いずこかに飛び去った。
「食い損ねてなるものか…、ガオウライナーで追うぞ!」
駆動兵器の手の上で、魔性の笑みを浮かべるブレント。
その手の中には、濁るように黒く染まりつつある、緑色の宝石・シードクリスタル。
「さぁ……、シードピア・終焉の幕開けだ……!!」
そういうや否や、なんと彼はシードクリスタルを一気に飲み込んだ。
「おおおぉぉぉぉ……!!!!!!」
飲み込んで間もなく、ブレントの体から闇のオーラが所狭しと溢れてきた。
『我が主・ブレント…シードクリスタルを体内に納めたか…!』
「パトリックか。いよいよ最終段階だ。私が自ら出陣する。闇に染まったクリスタルの力で、ゾロアシアを無に帰してくれるわ!」
『頼んだぞ!』
闇の力をその身に取り込んだ自分に敵などなし!
ブレントは、その矛先をゾロアシアに向けた。
ニュートラルヴィア・アプリリウス銀座の中にある、“電脳商店街”の異名を持つ商業区。
その名も、“メガロニアタウン”。
ありとあらゆる電化製品を取り扱う大型デパートが軒を連ねており、ニュートラルヴィア最大の商業戦争地帯とも言われている。
また、ここは所謂“リアルワールドの秋葉原”に極めて酷似しているような場所でもあり、その意味でも、この商店街は非常に人気を博しているのである……。
「いや〜、さすがはメガロニアタウン、相も変わらずの人気だねぇ。」
そんな街の中をのんびりと歩く一人の女の子。
サファイヤを彷彿とする鮮やかな青いロングヘアのその子は、姿形からして、高校生のように見える。
そんな彼女の片手には、荷物がどっさりと詰め込まれた紙袋が握られていた。
そして、もう片手で大好物のチョココロネを食べる。
――――ピリリリリ………。
「お?はいはい。」
携帯電話が鳴り、紙袋をそこら辺に置き、すぐに通話に出る。
「はい、もしもし〜?」
『おいオタク少女、あんた今どこにおるんじゃい!?』
「え?メガロニアタウンだけど?」
電話の相手はそれを聞くや否や、ため息交じりのあきれ口調になった。
『はぁ…、まぁ〜た何かアニソンでも買い捲ったんじゃないでしょうね。』
「いやいや、ちゃ〜んとお土産も買ってあるわよ。」
『しょーもないものならいらないわ。』
「“フルメタ(フルメタル・パニック!)”のDVDだけど、“ふもっふ”の。」
『¥7,000で譲って!』
[ドンガラガッシャ〜ン!!]
『お姉ちゃん、即答!!!???』
珍しくボケとツッコミが反転してしまった状況に、彼女は大笑いをこらえつつ、上空を適当に眺めた。
すると――――――――。
ある光景が眼に入ると、目つきが一転した。
「あ〜……。」
『……どうしたの?』
「上空に謎の巨大兵器確認。ゾロアシアに向かって急行しているみたい。」
――――――!!!
「一応、シードピアの避難民たちの受け入れの準備をしたほうがいいんじゃない?」
『言われなくてもやるから、あんたも大至急戻ってきなさい!!!』
「はいよ〜、いつもの場所に転送ポートの準備をよろしくね〜☆」
連絡を済ませ、電話を切る少女。
そして、目立つことなく、そそくさとメガロニアタウンから立ち去ったのであった……。
---to be continued---
☆あとがき
ようやく第3章も終盤に差し掛かってきたと言ったところでしょうか……。
……おそらく見た感じではそんな風には見えないと思いますが………(苦笑)
最後のあのやり取り、おそらく想像する限りでは、大体見当がつきますよね。
そう、実は第4章で“あの作品”が電撃参戦の予定です!!
さて、SEEDPIA CRISIS第3章、まもなく佳境に入るところではありますが、今回の更新を持って2008年内のSEEDPIA CRISISの更新を終了させていただこうと思います。
現行の執筆や第4章の準備なども兼ねた充填を経て、年明け、連載を再開させていただこうと思います。
それでは、良いお年を☆