Phase74 闇の粛清


ドルフィンナイツは現在ヤヌアリウスタウンで、エターナル・フェイスの後方支援の傍ら、救助活動を行っていた。

ファイナルウェポン“パワードダイダロス”のビークルモードで消火活動をし、生き残っている住人たちの避難に当たっているのである。

しかし、巨大モビルスーツの大猛攻は凄まじく、エターナル・フェイスや、自軍のオルカファイターズでも歯が立たないほどの苦戦に、ドルフィンナイツの面々も不安を隠せなかった。





――――ズドーン!







「!!」








『皆さん、気をつけてください!ヤフキエルの大群がこちらに接近してきます!』

“パワードダイダロス”・ビークルモードの操縦を行っていたトーヤの報告により、全員に緊張感が走った。

と、そのとき、ロウによってもたらされた最新鋭・“ナンダーマックスU”に搭乗していたダンチョ団長が指示を送った。

『丁度ええ機会や!名護、白峰!トーヤからもらった“ライダーシステム”のデビュー戦や!いっちょ、かましたれ!』

「「了解!」」

『スバル、ティアナ、ミゲル!お前たちも二人の後方支援を頼む!』

「「「了解!!」」」

指示を受けた5人が即座に前線ラインに立ち、そして、スバルたち3人の前に立つ二人の青年が、ゆっくりと身構えた。

『クールに行くぜ!』

白峰の意志に呼応し、レイキバットがその手中に納まり――――。

「ヤフキエル……、その命、神に返しなさい!

名護の手には、変身アイテム“イクサナックル”が握られ、それを手に当てた。

[Ready!]

レイキバットとイクサナックルから大ボリュームのサウンドが響き、準備完了が告げられた。

そして―――。











「「変身!」」





―――ジャキイィンッ





『変身!』



[Fist on!!]


















ベルトへの装着が認識され、名護は金の十字架の仮面を付けた白い戦士のスーツ、白峰は凍える吹雪を身に纏う魔性のスーツを身に纏った。

「さぁ、行きますよ!」

「おう!」

二人のライダーは、ヤフキエルの大群に飛び込んでいった。

「こっちもやるわよ、スバル!」

「俺たちが後方射撃でヤフキエルをけん制する!」

「了解!任せて!」

ミゲルは今回、D.S.の白兵戦用装備・Dトルーパーユニットを装備しているが、その専用武器の威力は十分大きい。

「行くぞ、“アクアブラスター”!!」

手持ち式ガトリングガン・アクアブラスターはその中の一つであり、Dトルーパーユニット最強の装備。

その威力は、並みのモビルスーツの機関銃に相当する。

「クロスファイヤー・シュート!」

ティアナも、“クロスミラージュ”のクロスファイヤー・シュートでけん制を仕掛け、スバルたちをサポートする。

「うおおおおぉぉぉぉぉ!!!」

そして、スバルもまた、自らの能力を駆使し、ヤフキエルに立ち向かう。

「一撃爆砕!」





―――振動拳!!!






彼女の“戦闘機人”としての固有能力を駆使して出来上がったオリジナル技・振動拳。

その名の通り、振動によるエネルギー波を拳(リボルバーナックル)全体に圧縮し、それを相手に叩きつける大技。

――――バギャッ!!!

それをまともに受ければ、今のヤフキエルのように体の内部からバラバラにされ、粉々になってしまう。

これを生身の人間に例えると、考えるだけでも背筋が凍るのは、言うまでもないかもしれない。

かつてスバルは、この自分の能力を恐れ、誰かが傷つくのを恐れていた。

だが、姉と共にドルフィンナイツとして戦ううちに、自分のこの力を、誰かを助けるために使おうと決心を固め、こうして前線で戦っている。

だから、もう恐れない!

その一心で、彼女は目の前で何十体も立ちはだかるヤフキエルに、突撃していった。















































パスワードロックを解除した先にあった、究極の装備・ミーティアスライガー(以下、ミーティアと表記する)。

その格納庫で眠りについていた謎の自立携帯電話・フォンブレイバー01(以下、ゼロワン)と出会った、セトナ、渡、キバットらは、彼からこの最強装備に関する事項を耳にすることになった。









ミーティアは元々、GUNDAMの非有資格者でも操縦が出来る最強装備を目指して、GUNDAMアーマーシステムとは別に開発が進められていたものだ。

しかし、GUNDAMアーマーを有する者ならともかく、非有資格者がこれを装備すると、想像を絶する大きな負担が重くのしかかる事実が、新たなる問題点として浮上した。

機体を見れば解るだろうが、ミーティアには大型ジェットエンジンが数基取り付けられており、最高速度でマッハレベルに到達するほどの驚異的な速さを誇っている。

そんな機体を生身の状態で装備してみたらどうなるか。

驚異的なGの衝撃で、下手をすれば人体そのものが押し潰されてしまうため、命そのものが危ない。









渡とキバットは、そのときの状態を自分たちに当てはめて想像してみたが……。

あまりにもひどすぎる状況になりそうなので、途中で思考を遮った。







『そこで、当時のGUNDAMの有資格者のデータを元に、その人間がGUNDAMを装備した状態の上でミーティアを装備したらどうなるか、シミュレーションを行ってみることにした。』

「…結果は、どうなりましたか?」

『……ミーティアとの相性の良さが、意外すぎるほど高かったそうだ…。』

どうやらGUNDAMアーマーは、Gの衝撃すらも軽減してくれるように設計がされていたらしい。

余談だが、セトナもかつてはGUNDAMの設計に関わっていた存在であるが、彼女の場合は外面的な部分しか関わっていないため、中身までは詳しいことは知らないらしい……。

ゼロワンは話を続けた。









その結果を受けて、ミーティアの開発に携わった研究者たちは、プランを変更すべきか否かで議論が持ち上がった。

開発を中断にしてまで議論を積み重ね、3ヶ月にも及んだ結果、プランの変更は承諾されることとなった。









「なるほど…、そこからシミュレーションのデータを元に、失敗を繰り返し―――。」

「ミーティアはようやく完成に至った、と言うことだね……。」

『その通りだ。だが……。』

「………だが?」





完成して間もない頃に凍結封印が言い渡された、と言うのが、彼ら―――科学者にとっての唯一の心残りとなったがな………。







どうやら、その時期からゼロワンが、長い時の間、孤独なときを過ごしてきたらしい。











『だが、長き時を経て、このミーティアが目覚めたと言うことは、GUNDAMが再び覚醒し、パトリックが目覚めたと言うことか。』

「あぁ。もしかしたら、これが必要とされるのも、もうすぐかも知れねぇ!」

科学者たちの長きに渡る無念が、もうすぐ、晴らされる。

数刻の間をおき、ゼロワンが重い口を開いた。





『…よかろう……。SEEDを持つものの事は、俺に任せておくがいい。』







「「「え?」」」









『これでも、携帯電話だ。メールや通話などの最低限の動作は、俺一人だけでもたやすいことだ。』

SEEDを持つものたちへの連絡は自分が引き受ける。

ゼロワンはそう言いたいとでも言うのだろうか……?

「…信用しても、いいのですか…?」

セトナの質問に対し、ゼロワンは返信した。

『…俺の使命は、ミーティアを守り、ミーティアに相応しいか否かを見定めること…。必ずしも、5基全てが一人一人に装備できるとは限らないが、悪いようにはしない。』

文字通りの小さな番人、と言うことか。

『だが、もしこいつを悪用するような奴らが居たら……。』

「「「…居たら?」」」











『そいつら全員、圏外だ。















































「…まさか、こんな形でこいつを使うことになろうとはな…。」

時の列車・ネガデンライナー。

そのコントロールルームでネガデンバードを操り、電車をコントロールするネガタロスは、戦火渦巻くゾロアシアワールドに急行していた。

……と言うのも実は……。



















遡ること僅か数分前。





なのはの一件も落ち着き、ゾロアシアへの救援をどうするか悩んでいたときのこと。

突如、その場に3人の男女が現れたのだ。

「ありゃ!?グランガイツ隊長!?

ナカジマ副隊長に、アルピーノ隊員も!?」







ゼスト・グランガイツ―――。







クイント・ナカジマ―――。







メガーヌ・アルピーノ―――。







3人とも、第1期ドルフィンナイツ隊長陣として名を馳せ、ダンチョ団長たち第2期メンバーたちに戦いの全てを教えた大先輩格だ。







「あなたたちもゾロアシアに向かうと言うの!?」

意外な顔ぶれがゾロアシア出撃に名乗りを上げたことに、かえでは少なからず困惑した。

「それは、あたしとしてもあなたたちが名乗り出てくれるのは、嬉しいけれど…でも……。」

彼らの身を案じるかえでに、メガーヌはその心配を和らげる微笑を見せた。

「ご心配は要りません、私たちは大丈夫です。それに、私たちも何か役に立ちたいのです。」

「向こうの現場にはあたしたちの娘だっているのよ!娘のピンチに黙っていられるはずがないわ!」

「それに、俺たちだけでなく、こいつ等も触発されたらしくてな。」

その言葉と同時に、部屋の中に3機の小型機械が現れた。

それぞれが、金、銀、銅の輝く角を持った、カブトムシ型の機械昆虫だった。

「ウオッ!?カ、カブティックゼクターだピョン!」

B.C.F.の白兵戦特化型の特殊機構として作り出された、マスクドライダーシステム。

そのプロトタイプとして開発されたのが、カブティックゼクターシリーズだ。

シゾーは、かつて組織を脱走する際、これらをこっそりと盗み出し、改良を頼み込んでいた。

そのシステム解析のデータを元に、イクサとレイキバットが作られたのだが、カブティック自体はまだ調整が進んでいなかった。

そこで、その開発要員及びサポートメンバーとして、ゼストたち3人が任命されたのである。

「どうやら、調整が完了しているようだピョンね☆」

「で、でも、準備が出来ているとしても、どうやってゾロアシアに送っていけばいいの?」









「任せろ。」









名乗り出たのは、オルカファイターズの用心棒・ネガタロスだ。

「丁度いい乗り物がある。オレがこいつらを乗せて、ゾロアシアへと送ってやろう。」

ネガタロスがそんな都合のいい乗り物を持っているとは――――――!

「そのついでに、オルカファイターズの手助けでもしてやる。」

















こうして、ネガタロス所有の大型列車・ネガデンライナーの力で、ゼストたち3人を送っていくことが決まったのである。



















――――――ウイーン。

コントロールルームの扉が開き、ゼストたち3人が現れた。

「どうだ、ネガタロス。」

「問題はない。もうすぐゾロアシアにつく。」

ネビュラオーシャンの海の上を疾走する、ネガデンライナー。

その目の前には、各所で火柱を上げる、城塞都市があった。















































「フッフッフッフッフッフッフ………。」

不気味な笑い声を響かせ、基地の通路を歩くブレント・ファーロング。

「まさか、シードクリスタルを手に入れるのがこうも容易いことだったとはな……。」

彼の手の中には、黒く染まりつつある緑色の宝石が。

「まぁいい。GUNDAMは手に入れ損ねることになりそうだが、その源たるものが手に入れば十分だ……。それに…。」

視線を向けた先には、B.C.F.の幹部たちがいる、基地最深部の謁見の間。









「…あの連中ももはや、用済みだ。」















『グハッ!!』











その言葉と同時に聞こえたうめき声。

開いた扉から出てきたのは、重傷を負ったロンド・ギナだった。

「ブ、ブレント……、貴様…ぁ…、裏切りおるとは……!!!!」

息も絶え絶えにブレントを睨みつけるロンド・ギナの背後から出てきたのは、屈強の大男と白髪の少年。

レオニダスチェサナ、片は付いたか。」

「大したことではなかったな。」

「弱っちくって、面白くもない。」

レオニダスと呼ばれた大男と、チェサナと呼ばれた少年の背後には、二人の手によって粛清された、3大幹部の成れの果てが転がっていた。

「き、貴様ら……一体…!?」

二人はブレントの傍までより、冷たい眼でロンド・ギナを見つめた。

背筋が凍ったギナは、これ以上やられてはまずいと判断し―――。











「逃がさないよ。」











「!!!」














新たに背後から聞こえた声。

現れたのは、さわやかなシャツとラフなズボンを身に付けた一人の青年。

両手には黒い皮手袋が付けられている。

「闇に逆らう愚かな人類よ……。」

ふと、徐に右手の手袋を脱ぎ捨てると――――。

「我が一族の判決を下す…………。」

その右手に掘られた謎の紋章を見せられた。















「…………死だ。」















「!!!!」


















その言葉を聞いたときが最後。

自らの滅亡が決まった瞬間でもある。



















「サガーク!」



















言葉と共に謎の円盤型生物が何処からともなく現れたかと思ったら、それが青年の腰に巻きつき、しっかりと自らを固定し、一本のベルトと化した。

今の生物は、ベルトのバックルと例えればいいのだろうか。

いつの間にか、青年の手には一つの白い笛状のアイテムが握られていた。

そして、それを円盤型生物に差し込み、即座に引き抜くと――――――。











『ヘン・シン!』











その言葉どおり、円盤部分が高速回転すると同時に、青年の体が“変身”した。

真っ黒な手足と腕、そして上半身の装飾と、頭部の青い瞳。

この世のものとは思えない姿だった。

すると、直後のどこからか一本の笛を取り出した。

それを円盤型生物に差し込むように銜えさせると――――。















『ウェイクアップ!』















魔性の笛の音が鳴り響き、同時に彼は手に握るアイテムを再び差し込み、引き抜いた。

バックルから赤い電流が流れ、エネルギーが解き放たれていく。

「………!!!!」 よく見れば、彼の手に持っている武器がフェンシングのような形をしている。

それでいてエネルギーが増幅されていくと言うことは………!!









「気付いたようだが、もう遅い。ハァッ!!!」











「ぐはあぁっ!!!!」













鞭のように撓った赤いエネルギーの刃がギナの体を貫いた。

だが、これだけでは終わらない。

刺し貫いた状態で青年は高くジャンプして距離を保つと、そのままギナの体を宙吊りにした。







「あ゛あ゛あぁぁぁぁぁ!!!!」









経験以上の苦しみに耐え切れるはずがなく、ギナは無我夢中でもがくも、一度捕らえたものを離すはずがなく、さらに青年は、エネルギーの鞭を指でなぞり、そして――――。















――――ピンッ!











「があ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
















エネルギーの鞭を二本の指で弾いたと同時に、ギナは断末魔を上げ、ステンドグラスが砕けたかのように、粉砕された。











後に残ったのは、周囲に飛び散るステンドグラスのかけらと、3幹部の末路が横たわる部屋だけだった。



---to be continued---


☆あとがき
今まで以上にシリアス度が異常に高すぎたかもしれない今回、いきなりレオニダス、チェサナ、サガの登場&B.C.F.幹部全滅!!
しかもブレントの手にはシードクリスタルが!!!
どうやら徐々に暗雲立ち込める展開となってきているようです……!!!
これから先の展開………ホントにどうしよ!?










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