Phase71 闇を砕く牙の王


人々の悲鳴と、炎上する街。

その炎の中にそびえる一基の要塞。

この世の地獄とも言うべき、すさまじい光景であった。





















プァ――――――ン!









ポォ――――――ッ!
















汽笛、警笛とともに、異次元空間から再び紅い電車―――デンライナーと、黒い機関車―――ゼロライナーが現れ、そこから6人の男女が降り立った。

「……!!…そんな…!!」

「こいつぁ、ひでぇな…。」

『街が、見る影もないです…。』

「これ、ホントにB.C.F.が…!?」

彼らが驚くのも無理はない。

降り立った場所、ゾロアシアワールドの市街地・ヤヌアリウスタウンは、文字通りの炎の海と化していたのだから。

「侑斗、人が生きている気配すら感じられないぞ…!」

「あぁ…ひどいもんだ。」

全員が感傷に浸っている最中、良太郎の目にとんでもないものが飛び込んできた。

「…!!みんな、あれ!!」



「「「「「……あぁ〜〜っ!!!!!」」」」」



良太郎の視線の先に、“元凶”とも言うべきものが目に映った。

それは、並みのモビルスーツが人形に見えるほど馬鹿でかい、巨大モビルアーマーの姿だった。

その姿が他の5人の目にも留まり、驚愕した。

『……!ハナさん、皆さん、前方200mより敵の反応を感知!これは……、ヤフキエルです!』

青白い髪の少女の言葉どおり、前方からヤフキエルの大群が現れた。

今回も大掛かりな一戦となりそうだ。



「モモタロス、行くよ!」

「おう!」



「デネブ、いきなり全力で行くぞ!」

「よぅし!」




良太郎がデンオウベルトを装着し黒いパスを用意、侑斗はゼロノスベルトを装着し、赤い面のカードを取り出した。







そして―――。









「リインフォース、力を貸して!」



『はいです、ハナさん!』








ハナ(コハナ)と呼ばれた少女も、雪の結晶を模した特殊デンオウベルトを召喚し、ライダーパスを取り出した。

ミュージックホーンが軽快に流れ、全員が発した。



















『変身っ!』







“Sword form” “Charge and up” “Snow form”
















3人が各々のオーラアーマーを身に纏い、それぞれ固有の電仮面が装着された。

良太郎は、いつもどおりの赤い戦士・ソードフォームだが、今回のゼロノスは最強形態のゼロフォームへと変貌していた。

その手には、デネブ自身が変化した特殊武装・デネビックバスターが握られていた。

そして、ハナは変身によってチャクラと呼ばれる力が全身にまとわり、良太郎たちとほぼ同等の大きさとなり、白銀のオーラアーマーが装着され、顔面には十字架を模した電仮面が装着された。









「俺、参上!」







「最初に言っておく、俺たちは錆びてても強い!」







「全ての人々に、祝福の風を…!」








3人それぞれの口上と共に、戦闘が開始された。





















『フフフッ、いい調子よ!』

『そのまま破壊しつくせ!』

巨大兵器・DOOMと共にゾロアシアに襲撃を仕掛けてきた、ブルーコスモス・ファミリーの一同。

先導するのはミューディーとシャムスだ。

ふと、コクピットの警告音が響いた。

『飛行物体接近?!』

『どうやらエターナル・フェイスの連中のお出ましのようだな。』

『でも、そう簡単に近づかせないわ!アスラン・ザラ、やっちゃいなさい!』

「……了解した。」

虚ろな表情でコクピットの光学映像を見つめる。

後方視点のカメラを見ると、確かに高速で接近する機体が。

「…イレギュラーの、排除を開始する。」















ワルキューレと共に本部を発進し、出撃したミネルバチームは、目の前に現れた大型モビルアーマーの想像以上の大きさに絶句していた。

『しっかしこいつは……まるで鋼鉄の山だな。』

感慨深く呟くディアッカの言葉に、全員も納得した。

頭部は大型のドーム上、その下に翼を持った胴体が設置されていた。

「…で、イザーク先輩、これ、どう叩きます?」

『近づいて斬れば楽なんだが、向こうはビーム兵器の塊だ。うかつには近づけない。こうなったら、一気呵成狙い撃ち――――。』







『いや、待て!』







途端にレイが割り込み通信を入れ、シンとイザークの会話を断ち切った。

「ど、どうした、レイ!?」

『敵モビルアーマーの様子がおかしいぞ!』



『!?』





全員の視線がモビルアーマーに向けられた。

すると――――――――。













『うそ……、ひょっとして……!!!』













『変形、してる……!!??』














ルナマリアとシホの愕然とした声に、全員が眼と耳を疑った。















目の前の要塞の大型ドームパーツが背面に移動し、そこから“本当の頭部”が露になった。

腕の翼も巨大な腕へと変貌し、さらには下半身もロボットの脚部へと変形された。















巨大な……可変式モビルスーツ…ってことかよ……!!!!」















ミネルバチームに、絶望と言う名の空気が漂った………。















































「……うまく潜り込めたな…。」

レクイエムコロニーに設置された、謎の軍事工廠。

その内部に、一人の青年が忍び込んでいた。



名は、明智小次郎―――シードピアでも名うての探偵であり、ダイダルストライカーズ・ドルフィンナイツの諜報員でもある。







今から3週間ほど前、カイザーホエールから新たな情報が届けられた。



先日起こった、通称“ヤフキエル事件”と呼ばれた事件において採取した、謎の黒い液体。

その調査結果が届けられたのだ。

しかし、その結果は彼の予測を大きく裏切るものだった。





トーヤが調べた結果、ヤフキエルから漏れていた謎の液体は、機械のオイルではなく、何かの生命体の体液だと言うのだ。

しかも、このシードピアにおいて未確認の生命体の可能性高し……とのことだそうだ。









レクイエム内部の工廠に何かある――――――。



彼はその予測を頼りに、コロニー内部の工廠に潜入したのだ。



ちなみに、工廠の警備員は既に気絶させてある。







「……それにしても、こりゃ想像以上だな…。」

彼の潜入した、ヤフキエル専用の工廠内部には、およそ500機はあるであろうヤフキエルの機体が、所狭しと並んでいた。

しかし、一つだけ気にかかることがあった。

それは、彼の見ているものは“外部の構造”だけだと言うこと。

「…しかし、これらはほぼ完成状態と言ってもいいくらいだな…。でも…、中身とかはどうなってんだ…?」

奥へと進むに連れ、彼の目の前に大型の扉が現れた。

扉にはセキュリティロックがかかっている。

ポセイドンアームズを使ってパスワードを看破し、ロックを解除した。















―――!!!















扉を開けた先、そこには――――。















「な…なんだよ、これ……!!!」

















上部には幾つかのチューブが伸びており、その下には、黒っぽい紫色と表現すべきだろうか、謎の物体が蠢いていた。







「……おい、ここ、軍事工廠なんだよな…、何でこんな不気味なモンが…!!」























「お前、見てはいけないものを見てしまったわね…。」























「!!!!」























背後から聞こえた女性の声。

振り返ると、そこには真っ赤な服を身に纏った、薄桃色の髪の女性が。

「し、しまった…B.C.F.につけられてたか…!」

「B.C.F.?……フフフ…あたしをそんな連中と一緒にしないでほしいわ。」

B.C.F.じゃない?

じゃあ、一体……。

小次郎の脳裏に、嫌な予感が過った。

「自己紹介させていただくわ…。私はシンクレア・ガードナー。闇の魔人・パトリックさまの忠実なるしもべである、魔導騎士の一人よ!」

「なっ!?なんだと!?」

よりにもよって魔導騎士がこの場に現れるとは思いもしなかった。

さらに、シンクレアと名乗った女騎士は、淡々と言葉を綴った。

「冥土の土産に教えてあげる。お前が見たそれは、“魔導生物培養装置”。このシードピアに存在し得ない黒き悪魔・降魔を培養量産するために、我々を目覚めさせたブレントさまが開発された究極の装置なのよ!」

「降魔!?……まさかそれが!!!」

「そう、ヤフキエルの全ての動力源。さらに言えば、ヤフキエルの装甲は降魔専用の大型装甲と言っても、差し支えないと言うことよ…!」

結論付けると、ヤフキエルとは降魔を改造した魔導生体兵器と言うことになる。

自分たちは知らず知らずのうちに未知の脅威と対峙していたとは、衝撃的以外何も思い浮かばない事態だ。

それと同時に自分がかなり不利な状況に立たされていた。

そう、自分には“逃げ場がない”のだ。

この部屋には扉が一つしかない。

逃げようにも正面にはシンクレアが立ちはだかり、さらに後ろは行き止まり。

「さて、そろそろ終わりにしましょ。」

そういうと、ベルトに装着していたレイピア型の拳銃を取り出し、その切っ先を小次郎の首筋に当てた。

















「じゃ、死になさい!」

















シンクレアはレイピアを大きく振りかぶり――――――。

















――――ドキュン!ドキュン!















「ぐっ?!」















「!!」
















銃声が響き、シンクレアの脇腹に銃弾が打たれた。

「……っ!何者!?」

振り返り、唯一の入り口を見つめる。

そこから現れたのは――――。



















「静寂を彩り、闇を打ち抜く、黒銀のスナイパー、マリア・タチバナ!」



















「金の銃と、銀の銃、どっちに撃たれたい?バウンティ・ハンター、リカリッタ・アリエス!」



















「気高きプライドを持って、正義を示す、孤高の戦士、グリシーヌ・ブルーメール!」



















「琉球の風を身に纏う、荒波の武術家、桐島カンナ!」



















「そしてどん尻に控えしは、全てを喰らい尽くす、欲望の牙・牙王!」



















「ドルフィンナイツ・特殊分隊!」









ルミナス・ファング、参上!』

















小次郎にとっては思わぬ援軍の到着だった。













「ルミナス・ファング…、か………。ドルフィンナイツの番犬的存在、と受け止めたほうがよさそうね。」

だが、さすがにシンクレアも、この状況に対して動揺は見せなかった。

むしろ、余裕がある。

「……番犬、か…。あながち間違いじゃないかもな…。だが、単なる番犬じゃないって事、今に見せてやるぜ。」

牙王はそう言うと、自分の腰にベルトを召喚させ、装着。

同時に、パイプオルガンによる力強い音楽が鳴り響く。

そして、懐から電王の物と同じパスを取り出した。

「…変身。」







牙王の握られたパスが炎に包まれ、ベルトのバックルの高さまで浮遊すると、パスがバックルに触れた。















『GAOH form』













フリーエネルギーが牙王の体に纏われ、茶色の厳ついアーマーが装着された。

そして、頭部のレールに沿って、その名の通り牙を象った大型の電仮面が装着された。

「見てろよ…、オレの牙が貴様を、食い尽くすからな。」

「…やれるものなら、やってみなさい!」

そう言ってシンクレアは、周囲に緑色の謎のモンスターを出現させた。















































ダイダルストライカーズの病棟エリア――――――。

そこで眠りに付く少女―――なのはの前に突如現れた、ヴィヴィオと名乗る“虹の聖王”。

外見からして、自分と然程変わらないくらい、強いて言えば、自分の妹と思えるくらいの身長だ。

だが、彼女の体の中には、その小さな外見からは想像も付かないほどの大きな魔力が感じられる。

ふと、彼女が口を開いた。

“あなたの心に声をかけたとき、私は、あなたの心の中が見えた。”

――――?

“偶然プラズマ界に迷い込んで、魔法の力を手にし、数々の出会いや別れ、戦いを繰り返してきた日々が、私には見えた…。”

“……!”


言葉が出なかった。

そう、彼女は元々プラズマ界の人間ではない。

ほんの些細な偶然でプラズマ界に迷い込み、シードピアともテレヴィアとも違う別世界で、魔法の力を手に、数々の出会いや別れを経験してきた。

同時に、いつ命を落としかねないかとも言える、極限状態の戦闘をも、経験してきた。

“あなたはいつでも、誰かのために尽くしたかったんだね。”

“…うん……。”

“でも……。”


すると、ヴィヴィオはなのはの心の傷に触れることを承知であることを察する言葉を発した。













“なぜ、あなたは全てのことを自分で抱え込もうとしているの?”















“っ!”















“あなたの心の闇は、誰よりも大きく感じられる……、どうして…?”


聖王と呼ばれるだけの事はあって、人の心を読むことはたやすいことだったようだ。

瞳を伏せたなのはは、ゆっくりと言葉を紡いだ。

“……あたしは、元から独りで居ることが多かったから…。”

彼女は語った。

幼少の頃から家庭における事情が大きく、たった一人で家に居ることが多かった過去のことを…。

……その全てを聞き届け、ヴィヴィオはあることに至った。





“もしかして、あなたは何か辛いことがあっても、『大丈夫』とか『心配しないで』とか言って、その場を切り抜けてきたんじゃない?”





“!!”






眼を見開き、動揺するなのは。

“あ、あたしは、そんな……。”



“ほら、そうやってすぐに慌てて否定しようとしている。何かを抱え込んでそれを全部言わない人には、よくあることだよ。”




……結局、図星だった。

自分にとって手痛いことをヴィヴィオに言われて、なのはは言葉が出なかった。

……しかし。







“……仕方ないじゃない…。”







懺悔にも似たなのはの独白が、紡がれた。















いつでも地球に帰れるからって、あたしが魔法使いになったって話、誰も信じられるはずがないじゃない……!

まして、その魔法の力が原因で起こった大きなトラブルなんて、家族や友達に相談できるはずがないよ……!

だったら、そのことは何が何でも秘密にして、何も言わないようにする以外、方法がないよ……!





結局あたしは、全部秘密にして背負っていくしか出来ないんだよ!!!
















大粒の涙を流し、自らの苦悩を告白したなのは。

小学生相当の年齢の少女が背負っていくには、あまりにも大きすぎる。

ヴィヴィオは彼女の言葉を聴き、胸が痛む感じがした。









――――――ガタンッ!!!





「なのはっ!!!いいかげんにしろっ!!!!!!」





“!!!!!!!!”





扉の開放と共に聞こえた、聞き覚えのある一際大きな怒声。

視線を向けた先には、彼女にとってありえない人物だった。







“お、お兄ちゃん!?お姉ちゃんも!!??”



---to be continued---


☆あとがき
予告どおり登場いたしました、時を喰らう牙・牙王!
アキッキーさんが送ってくれた設定の上に、僕ことタツノコースケの独自の設定を付け加えようと考えた結果、予想外にもドルフィンナイツ第2分隊の誕生と相成りました。
これから、ゲスト登場となったキャラたちとどんな活躍を繰り広げることになるのか、楽しみにしていてください!

さてさて、次回は中盤パートにて“高町兄妹・本当の再会”を取り入れさせていただこうと思います!
果たしてどうなる!?


○おまけと言う名の展開予告(第4章設定関連{暫定情報})

<某キャラクター視点(CV:杉田智和)>

俺たちのご先祖は、世界の崩壊を予見して、宇宙へと飛び立ち、彼らは世界を遠くから見守るべく、衛星軌道上に巨大な人工衛星を造り上げた。
それ以来数千年、何世代にもわたって、その人工衛星の守護の使命は受け継がれていき、現在に至る。
俺自身も、その守護の命を受けてこの人工衛星で暮らしている存在だ。

しかし……ここ最近のシードピアの様子は、どう考えてもおかしい…。

ありえないことばかりだ。

まるで、最初からそう言うシナリオが創られているかのようである。




そう―――――。




俺の隣にいる、非日常を好む、彼女の意志によって、シナリオが組まれているかのように……





SEEDPIA CRISIS第4章、新規参戦作品検討中!!??



続報を待て!!!!!!










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