Phase70 怒れる閃光


オルカファイターズの船・キングロブスターと共に現場へと急行する、ドルフィンナイツの母艦・ナイトスピアフィッシュの一角に設けられた研究室。

その部屋の主は、わずか14〜15歳の少年科学者だった。

驚くべきことに、オルカファイターズとして活動する高町恭也・美由希らと同じく、彼もまたリアルワールド出身と言う経歴を持つ。

一時期はブルーコスモス・ファミリーの科学者として、あらゆる兵器開発に携わったこともあり、今はそれをフルに活用すべく、ダイダルストライカーズに協力している。

「……よし、出来た!!!」

感慨無量の表情で、達成感を味わう少年の目の前には、自らの経験と知識をフルに活用して創り上げた、ドルフィンナイツオリジナルライダーシステムのアイテムがあった。

「トーヤ、ここにおったん…。」

すると、ドルフィンナイツのリーダー・ダンチョ団長が割り込んできた。

そして彼の眼にも、ライダーシステムのアイテムが写った。

おぉっ!ライダーシステムが出来上がったんか!」

「はい!たった今ですけど。」

「ははぁ……、片方はベルト式で、もう片方は……メカコウモリ?」

トーヤことハタコフスキー・トーヤが創りだしたオリジナルライダーシステムは2種類。





一方は、通称“イクサシステム”

聖職者をイメージして構築されたライダーシステム。

装着者への負担を少しでも軽減するため、通常は全体出力の60%で運用する“セーブモード”で活動するが、イザと言うときは出力を100%に上げて活動するバーストモードを任意で発動できる。

ただし、バーストモードの活動時間は僅か30分しかない。

バーストモードは一度使うと、しばらくの間は使うことが出来ないため、どのタイミングで投入するかが肝心である。

尚、オプションとして、移動用の武装バイク・イクサリオンと、大型支援メカ・パワードイクサーも開発されている。



もう片方のメカコウモリは、“レイキバット”と呼ばれる、ライダーシステムのコアを担う存在。

シードピアの闇の一族“ファンガイア”の王・キバの存在を知ったトーヤが、その文献を参考に創り上げたメカニカルモンスター。

人工知能を持ち、会話をすることも可能な上、適合者の戦闘の意志を感知し、適合者の下まで飛んでくることも可能。

レイキバットをベルトの中央に装着すると、“冷気”を纏ったライダースーツが装着される。

その攻撃力は、キバと同等、あるいはそれ以上になるのではないかと、トーヤは推測している。



「それと、これら二つのシステムには、“フエッスル”と呼ばれる特殊アイテムを使うシステムを導入しています。」

「フエッスル?」

「これのことです。」

トーヤが取り出したフエッスルというアイテム、その名の通り、笛の形を象っていた。

“笛型戦闘用電子キー・フエッスル”は、イクサベルト、レイキバットにセットすることで、様々な効果を発揮する役割を担っている必須ツールなんです。現状では、イクサベルト専用が3つ、レイキバット専用が一つ、出来上がっています。」

これらを使うタイミングを見極めれば、優位に立てるかもしれない。

ダイダルストライカーズの新たなる切り札がここに誕生した。

「ところで、トーヤ。これを使うメンバーは誰にするか、考えてあるんか?」

「あ……、実は、まだ……。」

「そういうかと思うてな、実は連れて来てんねや。啓介、天斗、入ってくれ!!」

団長の合図と共に研究室に入ってきたのは二人の青年。

「名護啓介(なご・けいすけ)と、白峰天斗(しらみね・たかと)や。二人に、このライダーシステムのテストをしてもらおうと思うねんけど、どや?」















































リュミエール岬近郊において、火花を散らせる戦闘模様、もう5分は経過しただろうか……。

白兵戦の次元の違いをまざまざと見せ付けられているようだった。

一進一退の互角の戦いを続ける、赤と黒のカブト。

刃を交え、華麗な剣の舞を見せる、クワガタとサソリ。

青きトンボの銃弾を、ハチとバッタがかわし、即座に反撃する。

どちらのチームも一歩も譲らない。









「やっぱり……アウル……強い……!」

「ステラも少しはやるじゃんか。」

ザビーに選ばれ、変身したステラだったが、ライダーシステムに慣れてないこともあるのか、息を切らしてきた。

「じゃ、ステラ、この動きはついてこれるか!?」

ドレイク=アウルは、ベルトのバックル近くにある“窪み”に指を添えた。

すると――――。





「クロックアップ!」




―――CLOCK UP!!








窪みを撫でるように滑らせると、電子音声と共にドレイクの姿が消えた。

「え?」

突発的な状況に、思考回路がついていけないステラ。

その瞬間を狙われた。

「そらよ!」



――――バシュン!バシュン!



――――ドカン!



「キャアァッ!?」



攻撃をまともに受けたステラは、大ダメージを受けた。

「ステラ!?…くっ!」

キックホッパー=ひよりも、反撃態勢に出た。



「クロックアップ!」



―――CLOCK UP!!





キックホッパーも高速状態となり、ドレイクに応戦する。

ステラは目の前の高速状態に、困惑していた。

自分も彼らのような状態になれるのか?

アウルの行動を思い出し、視線を自分のベルトに向けると――――。

「…これ?」

自分のベルトバックルにも、人差し指が入るほどの窪みがあることに気付いた。

徐にそこに指を添え、なぞる様に滑らせる――――。





――――CLOCK UP!!



電子音声と共に、ステラの周りの世界が一変した。

周囲の風が鳴り止み、全ての音が止まったかのような雰囲気。

「…これが……クロックアップ……。」









「そらよ!」





「うあぁぁっ!!!」





「!!!」








アウルの声とひよりの声が連続で聞こえた。

視線を向けると、そこにはドレイクに狙撃されたキックホッパーの姿が。

「っ!!!お姉ちゃん!!!」

すぐにステラがひよりのところへ駆け寄る。

「…っ、ステラ…。」

どうやら高速移動中に自分以上の大ダメージを受けてしまったようだ。

「へぇ…意外に早く追いついたね……。」

気が付くと、自分の目の前にドレイクの姿が。

ドレイクは、ゼクターの羽をたたみ、垂直に倒した。

さながら、狙撃用拳銃とでも言うべきスタイルに変貌した、ドレイクゼクター・シューティングモード。

「でも、ちょっと追いつくのが遅かったかもね。」

おそらく、ドレイクの仮面の奥ではアウルが勝ち誇ったような笑みを浮かべているかもしれなかった。

ドレイクは、さらにコッキングレバーを引き、エネルギーを充填させた。





「ライダー…シューティングッ!!!」



[Rider Shooting!!]










トリガーが引かれたと同時に、青白いエネルギー光球が放たれ、高速で二人へと接近した。

ステラがひよりを庇おうと、身を挺したそのとき。

















[One,Two,Three!!]









―――ガシャン!









「ライダー、キック!」









―――ジャキイィンッ!









[Rider Kick!!]
















カブト=天道がクロックアップで乱入し、ライダーキックを発動し――――。















「はああぁぁっ!!!」





―――バチィィィィン!!!












ライダーシューティングを蹴り返した。









「ゲゲッ!!??」











居をつかれたような展開に、ドレイクが対応しきれるはずがなく、まともに自分の弾丸を食らってしまった。

「うあああぁぁっ!」

ダメージの衝撃で、ドレイクゼクターを手から落としてしまった。

[[[[CLOCK OVER!!]]]]

同時に、4人にかかっていたクロックアップも解かれた。

「いたたたた………いって〜…。」

異変に感づいたガタック=加賀美、サソード=スティングも合流する。

「アウル、大丈夫か!?」

「てて……、何とか…。まさかライダーシューティングを蹴り返されるとは思わなかったよ……。」

「天道、よくやった。」

「あぁ。」

カブトの咄嗟の機転で、どうにかステラはこの場の危機を脱した。



















――――ザシュッ!





――――ぐっ!?





「「「「「!!!!」」」」」





「油断しすぎよ、このシスコン!アバランチ・ブレイク!!!







――――ズガッ!!!







「ぐあああぁぁぁっ!!!!」




















音もなく姿を見せたダークカブト=フレイの持つ“ダークカブトクナイガン”の一撃で、カブトは後方に吹き飛ばされた。



「っ!!!」



「天道!!!」



「お兄ちゃん!!!」



「スキあり!アバランチ・シュート!!!



―――――ドキュン!ドキュン!ドキュン!



「「「うああああぁぁぁぁぁぁっ!!!!」」」





間髪入れないダークカブトの至近距離での射撃に、ガタック、ザビー、キックホッパーも吹き飛ばされた。

「フレイ、ナイスだ!」

「サンキュー、おかげで助かったぜ!」

「全く…手こずらせてくれたわね……。」

形勢再逆転。

遠くで見守っているプレシアたちも、悲痛な面持ちを浮かべる。



「もうやめて〜っ!!!!!」



「あ、マユ、危ない!!!」






耐え切れなくなったのか、マユとアリシアが飛び出してきた。

「邪魔よ!!!!」



――――ドキュン!





「「キャアアアァァァ!!!!!」」










情け容赦ないダークカブトの攻撃は、二人の少女にまともに当たった。

「ッ!マユ!アリシア!」

リニスが駆け寄り、プレシアが後を追う。

「う…ぅ…っ……、痛い、よぉ…っ…!」

「母、さん…っ…。」

アバランチシュートを生身で受けたときのダメージは、ライダースーツ状態のそれを遥かに超える。

最悪の場合、自らの命すらも危機に陥りかねない。

二人の痛々しいそのキズが、それを強く物語っている。

「心配しないで、すぐにあんたたちも地獄に送ってあげるから。」

3人は再び視線をカブトたちに向けた。

「さあ、今度こそ裏切り者を始末してくれるわ!」

歩み寄りつつ、クナイガンの銃口を向けた。

チェックメイト















―――――と思ったら。















「あれ?おいフレイ、ステラ(ザビー)の姿が見えないんだけど……。」

















「えっ!!!??」












――――――ガシッ!














クナイガンのガンノズル(もう一つのグリップ部)が、黄色い手に掴まれた





















「「「えっ!!!??」」」



















視線を逸らすとそこには――――――――。



















「…フレイ……傷つけた…!」

















仮面の奥で大粒の涙を湛えつつ、怒りの形相を差し向けた、ザビーがいた。

















「マユと、アリシア……傷つけた……!!」







「「「!?」」」







「ステラにとっての、大事な義妹(いもうと)と、大事な友達を……フレイが、傷つけた……!!!」




















滅多に触れたことのないステラの逆鱗に触れてしまった。



















「だから……もう……許さない…っ…!!!!」



















3人が気付いたときには、もう遅かった。



















「絶対に許さない!!!!!!!」



















声が裏返るかのような叫びで、クナイガンから短剣を引っ張り出すと―――――、







「アバランチスラアアアァァァッシュッ!!!!!」







使い方を判ってたかのように次々に切り刻み、大ダメージを与えた。







「「「ぐあああぁぁぁっ!!!!」」」









不意打ちも同然のこの攻撃で、サソードはゼクターを取りこぼし、ダークカブトも、ガングリップだけとなったクナイガンを落としてしまった。

ザビーは攻撃を終えると、クナイガンをどこかに放り投げ、視線を再びダークカブトたちに向ける。

ダークカブトたちはもはや満身創痍寸前。

ダークカブトは、再び立ち上がり、最後の手段に出る。

「こうなったら、ザビーもろとも破壊してやる!!!」





[One,Two,Three!!]



―――――ガシャン!



“3カウントフルスロットル”を入力し、エネルギーをチャージ。



「ライダー、キック!」



―――ジャキイィンッ!



[Rider Kick!!]




電子音声と共にエネルギーがカブトホーンを経由し、右足へと流れていく。

その間に全速力でザビーに向かって猛突進。

そしてほぼ至近距離になったところで――――。









「やあああぁぁぁぁぁっ!!!!!!」









ハイキックが放たれ、ザビーに命中したと思われたそのときに、衝撃波と砂煙が巻き上がった。



















………手ごたえ十分。







勝利を確信したと思って、砂煙が晴れると――――――。

















――――――!!!!!!

















なんと、ありえないことに、ザビーはダークカブトのライダーキックを、左腕だけで受け止めていた。

しかも、左腕にはザビーゼクターが備わってたあげく、キックの当たった場所は不覚にも――――――。











ザビーゼクターのフルスロットルボタンと同じ位置。













「ボタン、押す……手間、はぶけた……。」



















――――ガゴン!







[Rider Sting!!]












エネルギーがゼクターそのものにチャージされ、ザビーが左手で足を払った瞬間――――。





















「ライダー、スティィィィィングッ!!!!!!!!」





















ザビーのニードルがダークカブトの腹部にクリーンヒット。





















「ごふっ!!!??」



















吐血したダークカブトは勢い良く吹き飛ばされ、転がるように倒れた。

多大なダメージに、とうとう耐え切れなくなったのか、自発的にダークカブトゼクターがベルトから脱出。

変身を強制解除させた。

後に残ったのは、口から血を流し、気を失ったフレイの姿だった。



「あ、ああぁぁ…!フレイッ!」



「フレイ!」




いつの間にか変身を解除したアウルとスティングがフレイの傍に駆け寄る。

さらに、カブト、ガタック、キックホッパーも変身を解除し、プレシアたちと共にザビーのところへ合流する。

遅れて、ザビーもゼクターを元の形に戻し、ブレスから外して、変身を解除した。

しかし、その表情は怒りと悲しみが入り混じり、自分でも今の自分がどんな気持ちになっているか、判らなかった。

耐え切れなくなったのか、ステラはその場から走り出した。

アウルたちの所を通り過ぎたところで、アウルが叫んだ。

「待てステラ!」

叫び声に反応し、ステラは立ち止まる。

だが、振り返ることはしない。

「…そりゃ、ボクたちだってさ、お前を独りにさせたことは悪いって思っているよ。でも………、だからってここまですることないだろ!!??」

スティングもアウルに便乗するのか、言葉を引き継ぐ。

「ステラ、今からでもいいから、俺たちのところに帰って来い!またもう一度、仲間として。まだやり直しは効くはずだ!」

二人の言葉に対し、ステラは――――――。



















――――――首を横に振った。





















「…アウルも…、スティングも、フレイも……、仲間だけど……。でも………でも……だからって…………!!!!」





















人の友達や兄弟を平気で殺した人は仲間って言えるの!!!!!?????







―――――――――!!!!!!!






















涙で顔が濡れてしまったステラの魂からの訴えに、とうとう二人は言葉を失ってしまった。















「3人とも、何も考えないで、ステラの大切な人、殺そうとした………!てれび戦士も、殺そうとした………!!」



















もはや彼女の怒りは手が付けられない。



















それは、比較的接していた機会が多かったネオが、一番よく判っていた。

















「だから、ステラ、アウルを信じない!スティングも、フレイの言うことも、みんなみんな信じないっ!!!」





































ブルーコスモス・ファミリーなんか、
大っ嫌い!!!!!!!!






































その言葉を最後に、ステラはとうとうリーフに向かって走り去った。

アウルとスティングは、ステラの彼女らしからぬ言葉の数々に、とうとう大ショックを受け、眼を伏せてしまった。

死に間際と言う恐怖を体験したマユとアリシアに至っては本格的な涙目だ。

耐え切れなくなった二人はリニスにすがりつき、泣きじゃくった。











その様子を静かに見据える、天道たち。

「……“『友の心が青臭い』と書いて、『友情』と読む”…。お前の祖母の言葉どおりだな、天道……。」

「…あぁ。……とは言え、その情景の一つがここに当てはまるとは、皮肉なものだな……。」

その中、居たたまれず戻ってきたのか、自分の左手に乗ったザビーゼクターの頭を、ひよりが右手の指で優しく撫でる。

「ザビーゼクター、お前もステラが心配か?……よかったら、あの子の傍に、居てあげて。」

その言葉を受け止めたのかは定かではないが、ザビーゼクターはステラのいるリーフへと飛んでいった…………。



---to be continued---


☆あとがき
別名「ステラ、B.C.F.との完全決別」のエピソードと相成りました。
文章作品と言う形であるにもかかわらず、まさか天道語録の一つをここで再現することになろうとは予想だにもしませんでしたね……(苦笑)
…何にせよ、今回をもって完全にB.C.F.と決別したステラ。
早いところ、フレイたちとの和解をかければいいなと思っておりますが…、どうなることやら……。

さて、次回以降からゾロアシアの戦闘パートが少しずつ増えていく予定となっておりますが、次回第71話、ハナ×リインUのオリジナル電王お披露目&新規キャラ多数参戦でございます!
ちなみに、またまた調子に乗って、“牙王”も初登場いたします!!!!!










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