Phase69 決意 立ち上がる戦士


国全土に響き渡りかねない悲鳴の数々。

爆音と共に奪われていく命。

その根源は、上空から飛来した、神の番人を携えた一体の禍神(まががみ)だった。



















ブルーコスモス・ファミリーの新たなる襲撃。

それは、一体の大型モビルアーマーの奇襲攻撃から始まった。

たった一度の砲撃。

それだけにも関わらず、全体のおよそ8%が焼失するという大打撃。

その爆音と黒煙を狼煙に、新たに量産された神の番人・ヤフキエルが次々と降下。

さらにモビルスーツ・ナイトメアも多数出現。

未曾有の大襲撃戦が始まった。









『Emergency!! Emergency!! Emergency!! Emergency!!』

ジェネシス・フォートレス全域に響き渡る警報音。

『上空より、超大型モビルアーマーが出現!エターナル・フェイス全軍に、出動要請を発令します!』

オペレーター、アビー・ウィンザーの緊急アナウンスが本部全体に響き、メンバーたちが慌しい雰囲気に包まれる。

知らず知らずのうちに、ゾロアシアが混乱の中心になっているのではないか?

そんな認識すらも生まれ始めていた。







「総司令、エターナル・フェイス“ミネルバチーム”、全員集合しました!」

「“ファントムレイダーズ”も集合完了です!」

本部の作戦司令室、そこには主力部隊・ミネルバチームと、隠密行動部隊・ファントムレイダーズの面々が集まっていた。

ただし、アスランを除けばの話だが……。

『諸君、よく集まってくれた!早速だが、これを見てくれ!』

モニターが写し出される。

そこに現れたのは、想像を遥かに超える大きさの、超大型モビルアーマーだった。

「Unbelievable!!! 何なんだあれは!!??」

「モビルアーマーじゃなくて、もう立派な要塞だろ!!??」

ブライアンとシンが驚くのも無理はない。

『この大型兵器がこれ以上攻撃を続けたら、ゾロアシアは完全に終わりだ!大至急“ワルキューレ”に乗り込んで、事態に当たってくれ!』







――――ワルキューレ?









新人クルーにとっては聞きなれない名だ。

イザークとディアッカが、詳細を簡単に説明する。

「俺たちエターナル・フェイスの誇る万能空中要塞だ。すでにオペレーターのメイリンや整備スタッフを始め、大勢のクルーと多数のモビルスーツ、モビルアーマーを載せてある!」

「グラディス司令も、ブリッジのキャプテンシートに待機している。あとは俺たちが乗り込めばすぐに出撃できる!」

エターナル・フェイスの代名詞とも言うべき戦闘要塞と言うことのようだ。

それほどに強力なものが備わっていようとは……。

「俺たちもアレクサンダーを使って海上から援護する!」

「巨大モビルアーマーは、そっちに任せるよ!」

ファントムレイダーズも全面バックアップに回ってくれるそうだ。

『…よし、準備はいいか。エターナル・フェイス、全軍出撃!!!

『Yes sir!!!!』













































『ニュートラルヴィアにおいてネオとステラらしき人影を見つけた。』





突如、フレイたちに届けられた情報。

それを耳にした瞬間、フレイ、スティング、アウルは驚愕した。





“二人が生きている”





期待と不安を胸に抱き、3人は即座にニュートラルヴィアへと急行したのだが………















「…!アウルとスティングか!?」

「…フレイも…!!」

ニュートラルヴィアにて、ミーアの身柄を引き取った矢先、ネオとステラにとっても、フレイたちにとっても予想外な再会が待ち構えていた。

「ネオ…ステラ…生きてたのね…!!」

「久しぶりだな…と言いたいところだったが…。」

「まさか天道たちも居たとはね、裏切り者!

アウルの“裏切り者”と言う言葉に、天道総司は笑みを浮かべた。

「…俺はお前たちの仲間になった覚えはない。それに、俺は誰からの指図も受けない。俺の通るべき道は、俺が決めるからな。」

天道の名の通り、自らが貫く“天の道”を歩むこの男には、協調性というものがないのだろうか……。

「…でも、裏切り者がいるとなれば、こちらにとっては好都合ね…、探す手間が省けたわ。」

フレイはそう言うや否や、懐から“ヴァジュラウェポン”を取り出した。

既に形態は“ハイマットモード”だ。

「天道、裏切り者として、あんたにはこの場で死んでもらうわ!どうせこの後、あの岬で待機しているてれび戦士たちも、戦艦もろとも殺してやるつもりだったからね。」

その言葉を聴き、ステラの眼が見開かれた。

















てれび戦士が殺される――――。





自分たちに優しく接してくれた人たちが、死んでしまう――――。





フレイたちはステラの仲間、だから裏切りたくはない。





でも、じっとしてたら、何も出来ない。











『ステラちゃん、一緒に遊ぼうよ!何して遊ぶ?』











『踊りが好きなの?だったらさ、あたしたちと一緒に踊らない?』











そのとき、脳裏に過ったのは、自分に接してくれたてれび戦士、甜歌と愛実の笑顔。





組織が違うのに、友達のように最初に接してくれたのは、彼女たちだった。





そのときから少しずつ心を開き、次第に仲間以上の感情が彼女の心に芽生えていった。























“友達”――――――?



















……あぁ、そうだ。











自分はB.C.F.として活動してから、そんな単純な言葉すらも忘れていた。















仲間を大事にするのは当たり前だけど……でも………………。

















友達を守るのは、それと同じ、いや、もしかしたらそれ以上に大事なこと!



















『大丈夫だ。ステラは必ず、俺が守るから……!!!』



















脳裏に蘇った、愛する義兄の言葉。





















それを、今度は自分が果たす番だ!



















――――ステラ……、大事な友達……守る……!!!!!



















気が付けば、ステラはネオたちの前に立ちはだかり、フレイたちから彼らを守るように両手を広げた。













「ス、ステラ!!??」















フレイにとっても、彼女の行動は極めて予想外だった。

「どういうつもり!?まさかアンタ、天道たちを庇おうって言うの!?馬鹿げた真似はやめにして、とっととこっちに来なさい!」

「イヤ!ステラ、みんなを守る!てれび戦士も、友達だから、ステラが守る!」

ステラらしからぬその言動に、今度こそ全員が度肝を抜かれた。

何よりも、ステラがてれび戦士を“友達”と呼ぶことに、一途の困惑を隠せなかった。

「…アンタ…、どうして、そんな言葉を……!」

ステラは一度、両手を下ろして、自分の手を胸に当てつつ、ゆっくりと言葉を紡いだ。

性格が幼い故に、知っている言葉はほんの僅かでしかないが、それでも自分の考えを伝えようと、必死に言葉にする。





















ステラ、この島で一人きりになって、死にそうだった……。





とても寂しくて、苦しかった……。





でも、この島に住んでいる人たちに助けられて……、スウェンもステラを助けてくれたから……、てれび戦士に会えた。





てれび戦士のみんなは、一人ぼっちだったステラに、何度も会って、話をしてくれて……、友達になりたいって言ってくれた…。





だから、ステラは守る!





てれび戦士たちを……ステラの大事な友達を……絶対守る!















絶対に、死なせないっ!!!!





















再びステラは両手を広げ、フレイたち3人を睨みつけた。

ステラがここまで自分の意見をしっかりと言えるのは見たことがなかった。

さすがのフレイたちも、呆気にとられる以外なかった。

「……参ったわね、まさかアンタにそんな言葉を言わせることになるなんて…。」

自分たちはステラに何をしてやっただろうかと、考えさせられてしまう言葉だった。

「でも、あたしだって譲れないことだってあるのよ。」

フレイはヴァジュラウェポンを再び構え、銃口をステラに向けた。

「っ!!!!」

「これが最後よ、無駄なことをやめてとっととどきなさい!でなきゃ……殺すわ!

威圧感漂う状況になったにも関わらず、ステラは一歩も引かなかった。



















「絶対に、ここをどかない……!!!」

















ステラ……みんなを守るっ!!!!!!!!





















――――――ビュワワアアアン!!!



















『!!!???』

空間に穴が作られ、そこから何かが出てきた。

「ま、また機械昆虫か!?」

「今度は、蜂ですか!?」

プレシアとリニスの言葉に、B.C.F.関係者の全員が驚愕した。

「ま、まさか、ザビーゼクター!!??

すると、ザビーゼクターと呼ばれた銀色の機械バチは、黄色い羽を羽ばたかせ高速で飛び、フレイたちを威嚇するように飛び回り、一緒に引っ張ってきたあるアイテムをステラの真上で落とした。

それは、ザビーゼクターとほぼ同じ大きさのブレスレットだった。

思わずステラはそれを両手で受け取る。

先端には蜂の巣を模した発光部分があり、ザビーゼクターをセットするために使われるであろう台座部分が設けられている。

このブレスレットを取り付けろ、と言うことか。

それを決定付けるのは、ステラの周りを縦横無尽に飛び続けるザビーゼクターの存在。

もはや、ザビーの資格者は決まったも同然だった。

それを察してか、天道、加賀美、ひよりの3人がステラの両隣に並んだ。

いつの間にか、3人の腹部には特殊ベルトが装備されていた。

「ステラ、ライダーに選ばれた以上、中途半端な気持ちじゃ戦えないよ。」

「死ぬ気でやらなきゃ、ここは乗り越えられないぞ!」

「……覚悟はいいか。」

ステラは瞳を閉じて間を置き、はっきりと告げた。









「……ステラ、もう死ぬことを恐れない!」







決意を固め、強い眼差しを手にした少女は、ブレスレットを装着し、相棒の名を叫んだ。









「ザビーゼクターッ!!!!!」













少女の叫びに答え、ザビーゼクターはステラの手中に収まった。

さらに――――――。







「来い!ガタックゼクター!!」

ホッパーゼクター、おいで!」

カブトゼクター、行くぞ!」










加賀美の手には青いクワガタ・ガタックゼクターが、ひよりの手には表裏一体のバッタ・ホッパーゼクター、そして天道の手には赤いカブトムシ・カブトゼクターが握られた。

戦闘態勢が整ってしまった目の前の4人に、フレイ、スティング、アウルの3人は複雑な表情を浮かべた。

まさかステラにあそこまで言われた上、自分たちB.C.F.の切り札の一つがあっちに渡るとは思いもしなかったのだから…。

「…で、どうすんの二人とも。状況的に、やるしかないんじゃない?」

「…そんなこと、お前に――――。」

「言われるまでもないわよ!!」


それと同時に、3人がついに動いた。

フレイのジャケットの下には、天道や加賀美の物に酷似したベルトが、アウルの手には特殊グリップパーツ、スティングの手には紫色の刀状のアイテムが握られていた。

それが露になったのを合図に、3つの穴から、漆黒のダークカブトゼクター、銀と紫のサソリ・サソードゼクター、黒と青のトンボ・ドレイクゼクターが現れた。

それらがそれぞれ、フレイ、スティング、アウルのところに来たのを合図に、全員が叫んだ。





















『変身ッ!!!!!』





――――――ジャキイィィンッ!!!





――――――HENSHIN!!





セットアップされた全てのゼクターの電子音声と共に、7人の体が特殊強化スーツに覆われた。

[Change! Kick Hopper!!]

ひよりのみはライダースーツと呼ばれるものが装着されたが、天道たち6人の場合、“ヒヒイロカネ”と呼ばれるレアメタルを使った特殊装甲“マスクドアーマー”が上に取り付けられている。

それを取り外すには、特定の動作がいる。





カブト、ダークカブト、ガタックの3体は“ゼクターホーン”を起こすことで―――。





ザビーは“ゼクターウイング”を起こし、“バインドリング”を回転させることで―――。





ドレイクは“ヒッチコックスロットル”を引くことで―――。





サソードは、ゼクターニードルに手を添えることで―――。









それぞれのゼクターから電流が発せられ、アーマーが浮き上がる。











『キャストオフ!!!!!』





―――――ガシャンッ!!!





―――――CAST OFF!!!







瞬間、6人のマスクドアーマーが縦横無尽に弾き飛ばされた。









[[Change! Beetle!!]]



[Change! Stag Beetle!!]



[Change! Wasp!!]



[Change! Dragonfly!!]



[Change! Scorpion!!]



アーマーが弾けとんだ後の彼らの姿。

甲虫の力を纏った異色の戦士。

それが、現場から少し距離を置き、彼らを心配するプレシアたちの第一印象だった………。















































灯の消えたように、シーンと静まっているカイザーホエールの病棟エリア。

その一角では、未だに一人の少女が眠っていた。

傷口はどうにか塞がったが、意識が未だに戻っていなかったのである。















その病室の扉が、突然開かれた。

現れたのは、なのはよりも年下と思われる一人の少女。

緑と赤のオッドアイ、オレンジ系統のロングヘア、そしてあどけない無邪気な表情と、現代の子供にぴったりな明るい服装。

どこからどう見ても普通の女の子である。

しかし、それは世を忍ぶための仮の姿。

彼女の体の中には、想像も付かないほどの驚異的な魔力が秘められているのである。

「…………。」

何も言わず、眠り続けるなのはをみつめる少女。

ふと、少女は瞳を閉じ、自らの魔力を放出した。

彼女の精神にアクセスし、語りかけていくのである。

「小さな命の灯火を持つものよ、我が声に応えよ……。」

すると、お互いの体の輪郭が白く輝き、そこから白い靄のようなものが出てきた。

その靄は、次第にお互いの本来の姿と衣服を象ったもの、いわゆる精神体のような姿となった。

精神体となったなのはは、異変に気付き、ゆっくりと瞳を開き、目の前の少女の存在を確認した。

“……あなたは……?”

“…今、わたしは君の心に語りかけてる。”

“…心に……?”


そう言われたなのはは、自分のみに何が起こったのかを思い出した。

“…そうだ…、あたしはあのとき……、ヤフキエルに撃墜されて、気を失ったんだ……。”

なのはは自分の胸に手を当てた。

丁度、その辺りにヤフキエルの攻撃をまともに受けたのだった。

“…あたしは…死んじゃったの…?”

その悲しそうな言葉に対し、少女はゆっくりと首を横に振った

“大丈夫、意識を失っているだけ。命に別状はないよ。”

少女の優しい温かみのある言葉に、なのはは安堵した。

“…ところで……君は、誰なの…?”

なのはの質問に対し、現れた少女は、ゆっくりと答えた。



















“わたしは、ヴィヴィオ。このシードピアを構築した、虹の聖王……。”



---to be continued---


☆あとがき
さて、予告どおり“ステラ主役”のエピソードと相成った第69話。
いきなり『カブト』のTVシリーズに登場したゼクター7機、総登場いたしました!
そのゼクターと有資格者の組み合わせ、少々予想外だったのではないでしょうか?

さて、ゾロアシアのモビルスーツ戦の前哨戦的扱いとなった、SEEDPIAライダーバトル!
次回も大きく取り上げる予定ですので、ぜひともご期待ください。

そして、ついに名前つきで登場した“虹の聖王”ヴィヴィオ!

果たして、なのはとの邂逅がいかなる展開を生むのでしょうか!!??










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