『ヴィーッ! ヴィーッ! ヴィーッ! ヴィーッ!』
てれび戦士たちの拠点・リーフにおいて、またしても非常警報が発令された。
『たたたたた、大変ッス〜!!!特A級非常警報発令の緊急事態発生ッス〜!!!』
特A級非常警報――――――。
それは、国全土を巻き込む大災害事件の予兆でもあった。
『ブルーコスモス・ファミリーのレクイエム・コロニーから、超巨大モビルアーマーが降下中ッス!!!総員、配置に付くッス〜ッ!!!』
ラビからの緊急報告を受け取り、すぐさまブリッジへと集合したてれび戦士たち。
有沙女王がすぐに専用のシートに腰掛、竜一と七世もそれぞれのシートに着席した。
「上空に出現した巨大モビルアーマーの詳細を確認、光学映像に出します!」
ユリアのオペレートにより、巨大モビルアーマーの映像が出された。
『なんじゃありゃ〜!!!???』
「あれってモビルアーマーって言うよりはむしろ、巨大な要塞や!これはなめたらあかんわ!」
あれだけ巨大なモビルアーマーを造り上げてしまうという彼らの底力に、レッドは若干引き気味になった。
「あれ!?有沙女王さま、レーダーを見る限りでは、あいつらニュートラルヴィアを通り過ぎていくようですよ?」
「…何?」
ゴルゴの言葉に、有沙女王とてれび戦士は耳を疑った。
レーダーを確認し、その位置を確認する。
「…確かに、ニュートラルヴィアからは外れているようじゃが…。」
ふと、ここでまたしても“悪魔の電卓”愛美が現状を電卓で分析した。
すると、予想を覆す展開が明らかになる……!
「方角が南西の確率……100%…即ち、ゾロアシアワールドが狙われた確率……200%!!??」
『………え゛!!??』
出撃すべきか否かの複雑な状況。
今のてれび戦士たちの立場は、まさにそれが当てはまっていた。
同じ頃、こちらはリーフが停泊しているリュミエール岬。
「わぁ〜☆うみ〜☆フフフッ☆☆」
「待って〜、ステラお姉ちゃ〜ん。」
「アリシアも遊ぶ〜☆」
ブルーコスモス・ファミリーが再び動き出したことなど露知らず、ステラ、マユ、アリシアの3人は浜辺で無邪気に遊んでいた。
その背後には、ネオとプレシア、リニスの姿が。
「…懐かしいわね、アリシアの元気な姿…。」
「そうですね……。」
一度、プレシアは愛娘を失い、自らの魔力で新たな命と力を吹き込んだ。
それゆえか、彼女にとって、アリシアの心からの笑顔と無邪気に遊ぶ姿は、心の奥に懐かしさを感じた。
一方、ネオにとってはいつものパターンと言うような光景だった。
「そう言えばステラ、とことん海が大好きだって言ってたっけ…。」
しかし、B.C.F.に入ってからはそういう機会がほとんどなかった。
あんな少女の顔を見たら、なぜか自分も心が和む……。
もしかしたら、自分はこんな安らぎが欲しかったのかもしれない……。
――――――ブルルルルルル……
「「「?」」」
不意に変な音が響いた。
虫の羽の羽ばたきにも似た、変な音………。
「あ!赤いカブトムシ!」
「青いクワガタムシもいる!」
マユとアリシアの言葉を聴き、元B.C.F.の二人は耳を疑った。
“赤いカブトムシ!?”
“青いクワガタムシ!!??”
視線を上に向けると、二人の少女の言葉どおり、2対のメカ昆虫が円を描くように飛びまわっていた。
「まっ、まさかっ!?」
「“カブトゼクター”と“ガタックゼクター”!!??」
B.C.F.で極秘裏に進められていたと言う、白兵戦特化型強化兵士計画・通称『マスクドライダーシステム(M.R.S.)プロジェクト』。
その中枢を担っている、“コア・インゼクター”シリーズ。
中でも指折りの強さを誇る、“太陽の戦士・カブト”と“月光の勇士・ガタック”。
それが今、なぜここに……!!??
突如現れた2体のゼクターに驚くネオは、近くで眼を見開くステラたちのもとへと駆け寄った。
その後を、プレシアとリニスが続く。
6人が集合すると、カブトゼクターは彼らの目の前に降下し、角を上に動かした。
何か伝えようとしているようだが……。
先に様子を察したのは、マユだった。
「…もしかして…、“こっちに来て”って言いたいんじゃない?」
すると、カブトゼクターが踵を返し、そのまま一直線に飛んでいった。
その後をガタックゼクターが追いかける。
…どうやらマユの考えは正解らしい。
「ネオ、追いかけよう!」
「よし!」
6人は導かれるままに、カブトとガタックの後を追いかけていった……。
『Warning!!! Warning!!! Warning!!! Warning!!!』
アストレイバーアイランド郊外・ダイダルストライカーズ拠点・カイザーホエール内部でも、緊急警報が鳴り響いた。
「ブルーコスモス・ファミリー出現!オルカファイターズ及びドルフィンナイツに、緊急出動要請!!」
カイザーホエールの中枢・ミッションルームでは、指揮官を務める藤枝かえでが、施設全体に指示を仰ぐ。
「特A級非常警報発令、超大規模攻撃の可能性あり!“エンド・オブ・バミューダ”、“ジャッジメント・ポセイドン”に加え、“パワード・ダイダロス”を搭載します!」
ミッションルームのオペレーターを勤めるリオを中心に、着々と動きが進められていく。
「ドルフィンナイツのメンバーとの合同戦闘になるとは、随分久しぶりだな。」
キングロブスターのメインブリッジにて、戦闘態勢を整えたセイコーは、今までにない大規模戦闘を予感していた。
『セイコー!』
「お?ダンチョ団長か。」
『今回は両方の船に“パワード・ダイダロス”が搭載されることになった。ワシらはそれを使って救助活動の傍ら、B.C.F.の連中を片付けておく。そっちはいつものように、MSを使っての巨大兵器の撃墜を頼む。』
パワードダイダロス――――――。
それはダイダルストライカーズ最大の切り札・ファイナルウェポンの中でも指折りの強さを誇る大型ウェポン。
滅多に使われることのなかった大型兵器が、久方ぶりにベールを脱ぐ。
「よし、わかった。」
『……あれ?ところで、恭也と美由希はどないしたんや?いつもやったらブリッジにおるんやなかったっけか?』
その質問に、セイコーは苦笑いを浮かべた。
「黒鬼の用心棒と一緒に、準備を整えてるよ。それに、今回は彼らにはオーシャンガーディアンズと共に護衛を任せることにしたからな。」
『え?なんでや?』
「だって、ドルフィンナイツが全員出て行っちゃったら、基地内部の警備とかどうするんだよ?」
『……あ。』
よくよく考えてみたら、“オーシャンガーディアンズ”は確かに基地の防衛を目的とするチームだが、彼らは“モビルスーツ部隊”。
つまり、カイザーホエールの“外”の守りのみを担当する。
…と言うことは、“外は頑丈でも中は手薄”と言うことになる。
その状態で、もし敵が内部から攻撃を仕掛けてきたらひとたまりもない。
そこで、オルカファイターズでありながら、生身の状態での剣術にも長けている恭也と美由希、そして彼らの用心棒であるネガタロスが急遽、待機要員としてシフトすることになったのである。
「……あいつらも本気みたいだね…。」
「…あぁ…。」
恭也と美由希の視線の先には、城塞都市へと向かう巨大要塞型モビルアーマーの後姿が。
おそらく、あと1時間足らずで向こうに到着し、総攻撃を開始するだろう……。
だが、これでエターナル・フェイスが黙っているはずがないだろう。
間もなく向こうもあの巨大兵器目掛けて攻撃を開始するはずだ。
「………む!!?」
「どうした、ネガタロス。」
「…要塞(モビルアーマー)が動いたぞ。」
「「!!??」」
次の瞬間、彼らのポセイドンアームズが警告音を響かせた。
『警告!巨大砲、起動を確認!』
そのとき、4つのエネルギー光線が放たれ、巨大な轟音と共に大爆発が起こった。
「うわあぁっ!!!!」
「きゃあぁっ!!!」
「ぐっ!!!??」
その衝撃波と熱風は、遥か彼方のこのカイザーホエールの島まで届いた。
「何だ、これは!!??」
『ゾロアシアワールド、ビーム被弾!ゾロアシアワールド、ビーム被弾!被害面積、約8%!被害面積、約8%!』
ポセイドンアームズのマイクロCPUが向こうの被害状況を瞬時に報告。
一発でこの威力!!!??
おそらく、これは誰もが予想だにしなかっただろう。
ブルーコスモス・ファミリーの巨大兵器は、確実にシードピアの大地を灰にする。
この攻撃を眼と肌身で感じた全員が、そう確信した。
『恭也!美由希!応答してくれ!』
「セイコーか!?」
恭也がマルチャージャーを取り出し、通信に応じた。
『さっきの轟音は何なんだ!?』
「……モビルアーマーがゾロアシアに攻撃した瞬間に起きた爆発音だ…!!!」
『なにぃぃっ!!!??』
「付け加えておくと、その攻撃でゾロアシアの全体の8%がやられたそうだ…!!!」
このとき、出撃直前のメンバーたち全員が、恭也の報告を聞き、耳を疑って絶句した。
未だかつてない敵との死闘が待ち構えている。
全員が肌身でそう感じた。
突如現れたカブトとガタック、2体のゼクターを追いかけていたステラたちは、いつの間にかリュミエール岬から少し離れた、小さな洞窟にたどり着いていた。
「…ここ…?」
「…のようだな……。」
2体のゼクターが洞窟の入り口の前で上空静止していることから、おそらく間違いはないだろう。
「誰かと思ったら……、ロアノークとステラだったか。」
「「!!!」」
聞きなれた青年の声。
彼のその声に、二人は耳を疑った。
「ま…まさか…!!!!」
「…うそ……!!??」
洞窟から姿を見せたのは一人の青年。
白いワイシャツとジャケットに白いジーンズ、爽やかに決めた容姿とは裏腹に、その表情は“自分こそが一番だ”と言いたそうな雰囲気が出ていた。
「お前、二人と知り合いのようだが……何者だ…?」
徐にプレシアが訊ねると、青年は自分の右手の人差し指を天に向けてゆっくりと突き出すと――――。
「おばあちゃんは俺をこう名付けた……、“天の道を往き、総てを司る男”……。」
――――天道総司!
顔と名前が一致しやすい男――――、初対面の誰もがそう思うかもしれない。
「久しぶりだな、ロアノーク。」
「…B.C.F.から忽然と姿を消して、どこに居たかと思ったら、ニュートラルヴィアに隠れていたとはな…。」
意外な人物との再会に内心では驚くも、すぐに冷静さを取り戻し、天道と名乗った男と会話する。
「俺はずっとここに住んでいたわけじゃない…、気の向くままにこのシードピアを旅して、転々としているだけさ。」
どうやら彼は元B.C.F.所属、今は流れ者の風来坊と言ったところか……。
ここで彼に出会ったのも、単なる偶然と受け取ったほうがよさそうだ。
「…さて、用件を片付けよう。」
天道はそう言って視線を洞窟のほうへ向けると、、それが合図だったのか、洞窟から二人の男女が現れた。
その二人の顔を見た途端、ネオとステラの表情がさらに驚愕の色に染まった。
「ひ、ひよりお姉ちゃん!!??」
「加賀美もか!?」
天道の実妹・日下部(くさかべ)ひよりと、天道の唯一無二のパートナー・加賀美新(かがみ・あらた)。
どちらも天道と同じく、元B.C.F.所属のメンバー。
彼らも天道と同様に組織を去って、流れ者になったというのだろうか…!?
ふと、よく見ると加賀美は一人の少女を抱えていた。
それは、ゾロアシアで表舞台に立っていたはずの、ラクス・クラインだった。
だが、その考えを断ち切ったのは加賀美とひよりだった。
「こいつは、本物のラクスじゃない。“替え玉”として使われた少女、“ミーア・キャンベル”だ。」
――――!!!??
「この子はもうすぐ、“用済み”として、殺されてしまうところだったから、僕たちがゾロアシアから助け出した。」
「彼女の命をかくまってやれるのは、お前たちだけだ。こいつを連れてってやってくれ。」
加賀美から差し出された、ミーアの身柄。
それを、プレシアが徐に受け取る。
「…判った。匿っておこう。」
――――バシュン!
「「「「キャッ!?」」」」
突然近くの岩場が崩れた。
何が起こったのか――――、その疑問は天道の次の一言で明らかになった。
「…お前ら、つけられてたらしいな…。」
―――!?
天道たちの視線は、自分たちの真後ろ。
その方向を振り向くと、銃を構えた少年たちが。
「…!アウルとスティングか!?」
「…フレイも…!!」
防音設備が施されているカイザーホエールの病棟エリア。
その静かな廊下を黙々と掃除する、奇妙な姿の男。
外見は見る限りでは“巨大なウサギ”と表現するべき姿。
「俺がここに雇われてから、何年ぐらい経つかね……。」
彼はかつて、B.C.F.の戦闘機人計画の過程において、特殊な改造を施され、ウサギの獣人となった。
しかし、その計画が明るみにされると同時に、関係者であった一人の少年科学者と共に脱走。
以降、彼―――シゾーはダイダルストライカーズの一員として生活をしている。
普段は基地の清掃を初めとする雑用や見回りを担当するのだが、有事の際は戦闘にも参加する。
ただし、その戦闘の機会がほとんどないのが実情なのだが……。
「ま、“働かざるもの食うべからず”と言う言葉もあるし、ここは静かに働くとするピョンね。」
そう言って、シゾーは掃除道具を持って次の場所に向かおうとして――――。
「……?」
何やら不可解な力を感じた。
振り返ると、突き当たりの通路を通る、一人の少女の姿が眼に留まった。
「……ピョン?」
一瞬、仲間の誰かかと思ったのだが、それは違った。
ダイダルストライカーズのメンバーの中では、一度も見たことのない顔だった。
少女はそのまま通路をまっすぐに進んでいった。
「…あっちの方向…、確か、あの剣豪兄妹の末っ子が寝ている部屋のあたりだったよな…?」
そう、この病棟には、異世界から迷い込んだ二人の兄妹―――恭也と美由希の妹、なのはが収容されている。
あの少女はそこに向かっているのか?
……と言うよりも、それしか考えられることはない。
なぜなら、この病棟には今、なのはしか収容されていないのだから。
「…何かあるピョン……、追いかけるピョン…!」
シゾーはすぐに、少女の後を追いかけていった。
赤と緑のオッドアイの少女の底知れぬ力を知らないまま……。
---to be continued---
☆あとがき
本格的な大激戦直前!的な展開となった第68話でした。
今回から新たに、『仮面ライダーカブト』が電撃参戦!
それに伴って今回は、天道、加賀美、ひよりのメインキャラ3人と、カブト&ガタックのゼクターコンビにご登場いただきました!
また、今回はそれと同時にB.C.F.の未確認データを僅かながら修復し、さらに天道たちはかつてB.C.F.に所属していたと言うことなので、彼らのプロフィールもB.C.F.のデータベースに掲載いたしました。
さて、次回以降なんですが、ゾロアシアのMS戦の前哨戦として、いきなりライダーバトル勃発!?&テレビに登場したメインのゼクターシリーズ計7機(カブト&ガタック込み)総登場!!!と言うてんこ盛りな内容でお届けしようと思います!
さらに、次回・第69話の終盤パートでは、これまで触り的な登場でしかなかった“あのキャラ”がなのはと接触します!