Phase68 修羅 或いは天の道


『ヴィーッ! ヴィーッ! ヴィーッ! ヴィーッ!』

てれび戦士たちの拠点・リーフにおいて、またしても非常警報が発令された。

『たたたたた、大変ッス〜!!!特A級非常警報発令の緊急事態発生ッス〜!!!』

特A級非常警報――――――。

それは、国全土を巻き込む大災害事件の予兆でもあった。

『ブルーコスモス・ファミリーのレクイエム・コロニーから、超巨大モビルアーマーが降下中ッス!!!総員、配置に付くッス〜ッ!!!』









ラビからの緊急報告を受け取り、すぐさまブリッジへと集合したてれび戦士たち。

有沙女王がすぐに専用のシートに腰掛、竜一と七世もそれぞれのシートに着席した。

「上空に出現した巨大モビルアーマーの詳細を確認、光学映像に出します!」

ユリアのオペレートにより、巨大モビルアーマーの映像が出された。





『なんじゃありゃ〜!!!???』





「あれってモビルアーマーって言うよりはむしろ、巨大な要塞や!これはなめたらあかんわ!」

あれだけ巨大なモビルアーマーを造り上げてしまうという彼らの底力に、レッドは若干引き気味になった。

「あれ!?有沙女王さま、レーダーを見る限りでは、あいつらニュートラルヴィアを通り過ぎていくようですよ?」

「…何?」

ゴルゴの言葉に、有沙女王とてれび戦士は耳を疑った。

レーダーを確認し、その位置を確認する。

「…確かに、ニュートラルヴィアからは外れているようじゃが…。」

ふと、ここでまたしても“悪魔の電卓”愛美が現状を電卓で分析した。

すると、予想を覆す展開が明らかになる……!

「方角が南西の確率……100%…即ち、ゾロアシアワールドが狙われた確率……200%!!??









『………え゛!!??』







出撃すべきか否かの複雑な状況。

今のてれび戦士たちの立場は、まさにそれが当てはまっていた。











































同じ頃、こちらはリーフが停泊しているリュミエール岬。

「わぁ〜☆うみ〜☆フフフッ☆☆」

「待って〜、ステラお姉ちゃ〜ん。」

「アリシアも遊ぶ〜☆」

ブルーコスモス・ファミリーが再び動き出したことなど露知らず、ステラ、マユ、アリシアの3人は浜辺で無邪気に遊んでいた。

その背後には、ネオとプレシア、リニスの姿が。

「…懐かしいわね、アリシアの元気な姿…。」

「そうですね……。」

一度、プレシアは愛娘を失い、自らの魔力で新たな命と力を吹き込んだ。

それゆえか、彼女にとって、アリシアの心からの笑顔と無邪気に遊ぶ姿は、心の奥に懐かしさを感じた。

一方、ネオにとってはいつものパターンと言うような光景だった。

「そう言えばステラ、とことん海が大好きだって言ってたっけ…。」

しかし、B.C.F.に入ってからはそういう機会がほとんどなかった。

あんな少女の顔を見たら、なぜか自分も心が和む……。

もしかしたら、自分はこんな安らぎが欲しかったのかもしれない……。



















――――――ブルルルルルル……



















「「「?」」」

不意に変な音が響いた。

虫の羽の羽ばたきにも似た、変な音………。







「あ!赤いカブトムシ!」

「青いクワガタムシもいる!」







マユとアリシアの言葉を聴き、元B.C.F.の二人は耳を疑った。











“赤いカブトムシ!?”



“青いクワガタムシ!!??”






視線を上に向けると、二人の少女の言葉どおり、2対のメカ昆虫が円を描くように飛びまわっていた。







「まっ、まさかっ!?」





“カブトゼクター”“ガタックゼクター”!!??」



















B.C.F.で極秘裏に進められていたと言う、白兵戦特化型強化兵士計画・通称『マスクドライダーシステム(M.R.S.)プロジェクト』

その中枢を担っている、“コア・インゼクター”シリーズ

中でも指折りの強さを誇る、“太陽の戦士・カブト”と“月光の勇士・ガタック”。

それが今、なぜここに……!!??







突如現れた2体のゼクターに驚くネオは、近くで眼を見開くステラたちのもとへと駆け寄った。

その後を、プレシアとリニスが続く。

6人が集合すると、カブトゼクターは彼らの目の前に降下し、角を上に動かした。

何か伝えようとしているようだが……。

先に様子を察したのは、マユだった。

「…もしかして…、“こっちに来て”って言いたいんじゃない?」

すると、カブトゼクターが踵を返し、そのまま一直線に飛んでいった。

その後をガタックゼクターが追いかける。

…どうやらマユの考えは正解らしい。

「ネオ、追いかけよう!」

「よし!」

6人は導かれるままに、カブトとガタックの後を追いかけていった……。











































『Warning!!! Warning!!! Warning!!! Warning!!!』







アストレイバーアイランド郊外・ダイダルストライカーズ拠点・カイザーホエール内部でも、緊急警報が鳴り響いた。

「ブルーコスモス・ファミリー出現!オルカファイターズ及びドルフィンナイツに、緊急出動要請!!」

カイザーホエールの中枢・ミッションルームでは、指揮官を務める藤枝かえでが、施設全体に指示を仰ぐ。

「特A級非常警報発令、超大規模攻撃の可能性あり!“エンド・オブ・バミューダ”“ジャッジメント・ポセイドン”に加え、“パワード・ダイダロス”を搭載します!」

ミッションルームのオペレーターを勤めるリオを中心に、着々と動きが進められていく。







「ドルフィンナイツのメンバーとの合同戦闘になるとは、随分久しぶりだな。」

キングロブスターのメインブリッジにて、戦闘態勢を整えたセイコーは、今までにない大規模戦闘を予感していた。

『セイコー!』

「お?ダンチョ団長か。」

『今回は両方の船に“パワード・ダイダロス”が搭載されることになった。ワシらはそれを使って救助活動の傍ら、B.C.F.の連中を片付けておく。そっちはいつものように、MSを使っての巨大兵器の撃墜を頼む。』

パワードダイダロス――――――。

それはダイダルストライカーズ最大の切り札・ファイナルウェポンの中でも指折りの強さを誇る大型ウェポン。

滅多に使われることのなかった大型兵器が、久方ぶりにベールを脱ぐ。

「よし、わかった。」

『……あれ?ところで、恭也と美由希はどないしたんや?いつもやったらブリッジにおるんやなかったっけか?』

その質問に、セイコーは苦笑いを浮かべた。

「黒鬼の用心棒と一緒に、準備を整えてるよ。それに、今回は彼らにはオーシャンガーディアンズと共に護衛を任せることにしたからな。」

『え?なんでや?』

「だって、ドルフィンナイツが全員出て行っちゃったら、基地内部の警備とかどうするんだよ?」

『……あ。』

よくよく考えてみたら、“オーシャンガーディアンズ”は確かに基地の防衛を目的とするチームだが、彼らは“モビルスーツ部隊”

つまり、カイザーホエールの“外”の守りのみを担当する。

…と言うことは、“外は頑丈でも中は手薄”と言うことになる。

その状態で、もし敵が内部から攻撃を仕掛けてきたらひとたまりもない。

そこで、オルカファイターズでありながら、生身の状態での剣術にも長けている恭也と美由希、そして彼らの用心棒であるネガタロスが急遽、待機要員としてシフトすることになったのである。











「……あいつらも本気みたいだね…。」

「…あぁ…。」

恭也と美由希の視線の先には、城塞都市へと向かう巨大要塞型モビルアーマーの後姿が。

おそらく、あと1時間足らずで向こうに到着し、総攻撃を開始するだろう……。

だが、これでエターナル・フェイスが黙っているはずがないだろう。

間もなく向こうもあの巨大兵器目掛けて攻撃を開始するはずだ。

「………む!!?」

「どうした、ネガタロス。」

「…要塞(モビルアーマー)が動いたぞ。」

「「!!??」」

次の瞬間、彼らのポセイドンアームズが警告音を響かせた。

『警告!巨大砲、起動を確認!』

そのとき、4つのエネルギー光線が放たれ、巨大な轟音と共に大爆発が起こった。





「うわあぁっ!!!!」



「きゃあぁっ!!!」



「ぐっ!!!??」



その衝撃波と熱風は、遥か彼方のこのカイザーホエールの島まで届いた。

「何だ、これは!!??」

『ゾロアシアワールド、ビーム被弾!ゾロアシアワールド、ビーム被弾!被害面積、約8%!被害面積、約8%!』

ポセイドンアームズのマイクロCPUが向こうの被害状況を瞬時に報告。

一発でこの威力!!!??

おそらく、これは誰もが予想だにしなかっただろう。

ブルーコスモス・ファミリーの巨大兵器は、確実にシードピアの大地を灰にする。

この攻撃を眼と肌身で感じた全員が、そう確信した。

『恭也!美由希!応答してくれ!』

「セイコーか!?」

恭也がマルチャージャーを取り出し、通信に応じた。

『さっきの轟音は何なんだ!?』

「……モビルアーマーがゾロアシアに攻撃した瞬間に起きた爆発音だ…!!!」

『なにぃぃっ!!!??』

「付け加えておくと、その攻撃でゾロアシアの全体の8%がやられたそうだ…!!!」

このとき、出撃直前のメンバーたち全員が、恭也の報告を聞き、耳を疑って絶句した。

未だかつてない敵との死闘が待ち構えている。

全員が肌身でそう感じた。













































突如現れたカブトとガタック、2体のゼクターを追いかけていたステラたちは、いつの間にかリュミエール岬から少し離れた、小さな洞窟にたどり着いていた。

「…ここ…?」

「…のようだな……。」

2体のゼクターが洞窟の入り口の前で上空静止していることから、おそらく間違いはないだろう。







「誰かと思ったら……、ロアノークとステラだったか。」









「「!!!」」











聞きなれた青年の声。

彼のその声に、二人は耳を疑った。

「ま…まさか…!!!!」

「…うそ……!!??」

洞窟から姿を見せたのは一人の青年。

白いワイシャツとジャケットに白いジーンズ、爽やかに決めた容姿とは裏腹に、その表情は“自分こそが一番だ”と言いたそうな雰囲気が出ていた。

「お前、二人と知り合いのようだが……何者だ…?」

徐にプレシアが訊ねると、青年は自分の右手の人差し指を天に向けてゆっくりと突き出すと――――。







「おばあちゃんは俺をこう名付けた……、“天の道を往き、総てを司る男”……。」













――――天道総司!











顔と名前が一致しやすい男――――、初対面の誰もがそう思うかもしれない。

「久しぶりだな、ロアノーク。」

「…B.C.F.から忽然と姿を消して、どこに居たかと思ったら、ニュートラルヴィアに隠れていたとはな…。」

意外な人物との再会に内心では驚くも、すぐに冷静さを取り戻し、天道と名乗った男と会話する。

「俺はずっとここに住んでいたわけじゃない…、気の向くままにこのシードピアを旅して、転々としているだけさ。」

どうやら彼は元B.C.F.所属、今は流れ者の風来坊と言ったところか……。

ここで彼に出会ったのも、単なる偶然と受け取ったほうがよさそうだ。

「…さて、用件を片付けよう。」

天道はそう言って視線を洞窟のほうへ向けると、、それが合図だったのか、洞窟から二人の男女が現れた。

その二人の顔を見た途端、ネオとステラの表情がさらに驚愕の色に染まった。

「ひ、ひよりお姉ちゃん!!??」

「加賀美もか!?」


天道の実妹・日下部(くさかべ)ひよりと、天道の唯一無二のパートナー・加賀美新(かがみ・あらた)。

どちらも天道と同じく、元B.C.F.所属のメンバー。

彼らも天道と同様に組織を去って、流れ者になったというのだろうか…!?

ふと、よく見ると加賀美は一人の少女を抱えていた。

それは、ゾロアシアで表舞台に立っていたはずの、ラクス・クラインだった。

だが、その考えを断ち切ったのは加賀美とひよりだった。

「こいつは、本物のラクスじゃない。“替え玉”として使われた少女、“ミーア・キャンベル”だ。」

――――!!!??

「この子はもうすぐ、“用済み”として、殺されてしまうところだったから、僕たちがゾロアシアから助け出した。」

「彼女の命をかくまってやれるのは、お前たちだけだ。こいつを連れてってやってくれ。」

加賀美から差し出された、ミーアの身柄。

それを、プレシアが徐に受け取る。

「…判った。匿っておこう。」















――――バシュン!













「「「「キャッ!?」」」」














突然近くの岩場が崩れた。

何が起こったのか――――、その疑問は天道の次の一言で明らかになった。









「…お前ら、つけられてたらしいな…。















―――!?













天道たちの視線は、自分たちの真後ろ。

その方向を振り向くと、銃を構えた少年たちが。

「…!アウルとスティングか!?」





「…フレイも…!!」














































防音設備が施されているカイザーホエールの病棟エリア。

その静かな廊下を黙々と掃除する、奇妙な姿の男。

外見は見る限りでは“巨大なウサギ”と表現するべき姿。

「俺がここに雇われてから、何年ぐらい経つかね……。」

彼はかつて、B.C.F.の戦闘機人計画の過程において、特殊な改造を施され、ウサギの獣人となった。

しかし、その計画が明るみにされると同時に、関係者であった一人の少年科学者と共に脱走。

以降、彼―――シゾーはダイダルストライカーズの一員として生活をしている。

普段は基地の清掃を初めとする雑用や見回りを担当するのだが、有事の際は戦闘にも参加する。

ただし、その戦闘の機会がほとんどないのが実情なのだが……。

「ま、“働かざるもの食うべからず”と言う言葉もあるし、ここは静かに働くとするピョンね。」

そう言って、シゾーは掃除道具を持って次の場所に向かおうとして――――。

















「……?」

















何やら不可解な力を感じた。

振り返ると、突き当たりの通路を通る、一人の少女の姿が眼に留まった。

「……ピョン?」

一瞬、仲間の誰かかと思ったのだが、それは違った。

ダイダルストライカーズのメンバーの中では、一度も見たことのない顔だった。

少女はそのまま通路をまっすぐに進んでいった。

「…あっちの方向…、確か、あの剣豪兄妹の末っ子が寝ている部屋のあたりだったよな…?」

そう、この病棟には、異世界から迷い込んだ二人の兄妹―――恭也と美由希の妹、なのはが収容されている。

あの少女はそこに向かっているのか?

……と言うよりも、それしか考えられることはない。

なぜなら、この病棟には今、なのはしか収容されていないのだから。

「…何かあるピョン……、追いかけるピョン…!」

シゾーはすぐに、少女の後を追いかけていった。















赤と緑のオッドアイの少女の底知れぬ力を知らないまま……。



---to be continued---


☆あとがき
本格的な大激戦直前!的な展開となった第68話でした。
今回から新たに、『仮面ライダーカブト』が電撃参戦!
それに伴って今回は、天道、加賀美、ひよりのメインキャラ3人と、カブト&ガタックのゼクターコンビにご登場いただきました!
また、今回はそれと同時にB.C.F.の未確認データを僅かながら修復し、さらに天道たちはかつてB.C.F.に所属していたと言うことなので、彼らのプロフィールもB.C.F.のデータベースに掲載いたしました。

さて、次回以降なんですが、ゾロアシアのMS戦の前哨戦として、いきなりライダーバトル勃発!?&テレビに登場したメインのゼクターシリーズ計7機(カブト&ガタック込み)総登場!!!と言うてんこ盛りな内容でお届けしようと思います!
さらに、次回・第69話の終盤パートでは、これまで触り的な登場でしかなかった“あのキャラ”がなのはと接触します!










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