Phase64 未来の虹


―――――えええええぇぇぇぇぇぇ!!!!!!









ラクスが突如としてゾロアシアのテレビに姿を見せていたなど露知らず、こちらは、もう何度目か分からないリーフ内での大絶叫。

しかし、今回はその中でも飛び切り予想外な展開だった。

「遺跡の中で!?」

「R.G.B.が見つかった!!??」


GUNDAMの復活のため、レイシー兄弟はキラ、ラクスと共に、“カオティクスルーイン”に乗り込んだ。

その際、2人は遺跡内部でR.G.B.を発見したのだ。

「ドクターレイシー、それは何かの見間違いではないのか!?」

「有沙女王さま、我々もそう思ったのですが、これは現実と受け止めざるを得ない事態となってしまっております。」

「その証拠に、この写真を見て。」

ドクターチアキが取り出した1枚の写真。

それは、特殊カメラ・パチリパチリで撮った遺跡内部にあったR.G.B.の姿だった。

だが、見た目でしか信じないゴルゴは、この写真を否定した。

「おいドクターレイシー、これ合成なんじゃねぇのか?」

「…確かに写真で見た限りでは、これが真実とは思えんのぉ……。」

「ゴルゴに合わせるつもりはないが……俺もそう思うな…。」

無論、この写真と同じものを仲間のてれび戦士たちにも配ったが、案の定、半信半疑であった。









「でしたら、実際に出向いてみては、いかがですか?」









――――!?

おしとやかな女性の声。

ラクスが来たのかと思ったのだが、その考えは間違ってた。

現れたのは―――――。

「おや?およよよ?セトナ殿ではありませんか…!」

『え?セトナ!!?』

ドクターレイシーの言葉を耳にした、チアキを除くてれび戦士全員とレッド、ゴルゴは、目を見開いた。

セトナといえば、確かGUNDAMに関わる重大なメッセージを残してくれた存在。

まさかその彼女がここに現れようとは……!!

「皆さんが、てれび戦士ですね?」

「「あ、はい、そうです。」」

代表して挨拶するも、なぜかハモってしまったレッドとゴルゴ。

だが、次の彼女の一言で、全員が硬直することになってしまう。

余談だが、次に発した言葉は、レイシー兄弟ですら耳にしていないことを、最初に言っておく。



























「未来のテレヴィアには、少しは馴染めましたか?」





























……………………はい!?























聞き間違いか?











はたまたジョークなのか?













その場にいたてれび戦士全員が硬直する。











恐る恐る、レッドは震える声でセトナに問う。























「あの〜………。」















「…はい?」



















「セトナさん…今、なんておっしゃいました」





















数刻の間を置き、セトナは微笑みつつ、ゆっくりと“先ほどの言葉”を紡いだ。



































――――“未来のテレヴィア”には、少しは馴染めましたか?















































『未来のテレヴィア〜〜〜〜ッ!!??』















































アストレイバー・アイランドから少し離れたところに位置する孤島。



名もなきその島は、見た目は極々普通の無人島である。









だが、その“見えないところ”では、大海原の戦士たちが密かに活動していた……。













「…ほぉ…、大した設備だな。」

“黒い鬼”は、初めて目の当たりにする、“組織”の大きさに感心した。

「高町恭也、高町美由希…これが、お前たちの言う、“ダイダルストライカーズ”とやらの秘密基地か?」

「そうだ。超弩級海上要塞“カイザーホエール”、それがこの基地の名前だ。」

「外から見る限りでは、ちょっと大きめの無人島にしか見えないけれどね。」

そう、普段はライラック家とサニーサイド家の所有するこの島の裏は、想像を遥かに上回る超巨大秘密基地。

ただし、その存在は、スピリチュアル・キャリバーを除き、シードピアの人間たちには知られていない……。

「言っとくけど、ネガタロス、絶対にあたしたちの仲間に危害を与えちゃダメだよ。」

「…当然だ…。」

ネガタロスと呼ばれた黒鬼は、そう答えるも、恭也は心の奥ではまだどこか不安が残っていた。





















昨日、二人の下に、彼は現れた。





















「お前の望みを言え。どんな望みでも一つだけ叶えてやろう…。お前が払う代償は、たった一つ………。」





















突発的に現れたにも関わらず、いきなり『見返りを求める代わり望みを叶える』と言うのは、人間から見れば少々妙な話だ。

「……信じられない、と言うような顔だな…。」

「……一応聞くが、見返りは何だ!?」

警戒心を払いつつ、恭也は慎重に言葉を選ぶ。

「…安心しろ…、危害を加えるつもりはない…。」

「……何?」

恭也が意外な言葉に眼を丸くしたにも拘らず、鬼は言葉を続けた。

「『願いを叶える代わりに見返りがいる』といったが、それは決まり文句でしかない。俺自身、そんなものには興味はない。俺に興味があるのは唯一つ、強さだけだ。」

「……強さ…か…。」

その一言を耳にし、恭也は俯いた。

「俺にも、強さがあればな……。」

「………?」

“何か訳あり”。

そう感じた鬼は、しばらく様子を窺った。

やがて彼は、恭也が、大切な末の妹が重傷を負い、守りきれなかった悔しさを内に秘めていることを知った。

彼は人間とは違う存在ゆえ、その気持ちは理解できなかった。

だが、これだけは言える。

『彼は“もっと強くなりたい”と望んでいる』………と。

それを知ってか知らずか、恭也は目線を上げた。

「おい!」

「……何だ?」

「お前がどんな望みも叶えるって言うなら………!」











――――お前の力を、俺にくれ!













「ただし、俺の妹やその友達、俺たちの仲間たちには手出しをしないと、約束してくれ!」



「…っ…恭ちゃん……!」





決意の強い眼差し、『妹を守るためなら命も捨てる覚悟』と言い出しかねないような、覇気のある言葉。

「……それは、“お前とともに戦ってほしい”と、そう言うことでいいんだな……?」





「………あぁ!!」





鬼は、その全てを受け入れた。









「……その望み、確かに聞き入れた…、契約成立だ。」













その言葉とともに、鬼は実体化を果たす。

全体の色が真っ黒に染まり、所々に赤いライン。

その瞳は、真っ赤に染まっていた。

「…さて、これからお前と行動を共にするのだから、お前の名前くらいは聞いておこうか……?」

「…高町恭也。それが俺の名だ。お前は?」















「……ネガタロス……とでも呼べ。」

























……通路を歩くうち、2人に連れられていたネガタロスは、“病棟エリア”へとたどり着いていた。

その一角にある病室。

そこには、恭也と美由希の末の妹が眠っていた。

「……………。」

酸素マスクを取り付けられ、全身が包帯で巻かれた痛々しい姿。

「……こいつが、お前らの…。」

「…あぁ……末っ子の、なのはだ。」

美由希が傍らに寄り添い、なのはの頬に手を当てる。

彼女の瞳は、悲しみのせいか、少し揺れていた……。

(今の2人の心境を、“辛い”とか“悔しい”と表現するのだろうか……。オレは兄弟と言う存在を持ったことがない。イマジンだから当然のことだが……、この二人の心を察することは、オレには到底出来るはずがないな……。)

イマジンという存在は、いわば一人一人が天涯孤独。

兄弟と言う関係を知らない彼らにとって、今の2人はどんな風に映るのだろうか…………。











































大型モビルスーツを投入する…ですと?」

「はい。」

ドミニオン・ベース最深部の謁見の間。

三大幹部とロンドの前に現れたブレントは、ついに次なるプランを発表した。

「並みのモビルスーツの2倍以上の全高を誇る巨大モビルスーツ、コードネーム“DOOM(ドゥーム)”でございます。」

DOOM――――――、それは、“破滅”を意味する言葉。

シードピアの人間たちに、破滅と言う名の未来を与えんとするそのモビルスーツは、あらゆる点を凌駕していた。

大きさもさることながら、全身のありとあらゆるところにビーム兵器を搭載し、さらには移動要塞型モビルアーマーにも変形できると言う点も備え付けてある。

ただし、ブレントが言うには、この巨大MSはまだ試作段階にあり、テストも兼ねた今回の出撃で成果を見て、後に正式採用を申請しようと考えているそうだ。

『じゃが、これは我らにとって最高の傑作となりそうじゃ。』

「左様にございます。今度こそコーディネイターに引導を渡しましょう!」

再び士気が上昇した幹部たち。

だが、ジブリールはここで素朴な疑問を口にした。

「ところで、ブレントよ。このモビルスーツは操作する時点で難航しそうなのだが、誰が操縦するのだ…?」

すると、ブレントはこれ以上ない悪魔の笑みを見せた。

「フフフ………その一言をお待ちしていました…!」

「…何?」

「私には今回、このテストに相応しい究極の秘策を用意してあります。」

“テストを兼ねた今回の戦闘に相応しい存在”、と言うことだろうか。

意味深なその言葉。

4人は首をかしげた。

『その秘策とは、なんじゃ?』

「はい、それは…………!」















――――――パチンッ!















指を鳴らしたと同時に入ってきた一人の青年。

一瞬、また新たなエクステンデッドかと思われたが、それは違っていた。

B.C.F.のパイロットスーツを身に着けたその青年、その顔を見た瞬間、4人全員の表情が歓喜と驚愕の色に変わった。





『なっ、なんと……!!!』









「こ、この男は……!!!」









「まさか……!!!」









「……素晴らしい…!!!」









“コレ以上ない最高のカード”

その言葉がピッタリの展開となった。

『フフフフフ……ハハハハハハ……ハ〜ッハッハッハッハ……!!!!面白い!!!実に愉快だ!!!コーディネイターどもの絶望する顔が目に浮かんでくるわ!!!』

「よし、準備が整い次第、ヤフキエル、ナイトメア共々、ドゥームを差し向けろ!!ターゲットの指定は、お前に任せる。」

「…御意!」

ブレントは、幹部たちのご機嫌を取る事に成功し、自分の気分も上々となった。

そして、彼はつれてきた青年に声をかけた。















「我々の命運のため、しっかり頼むぞ―――。」





















「アスラン・ザラ………。」



































名を呼ばれた彼は瞳を開いた。

しかし、そのエメラルドの瞳に輝きはなく、まるで何かに操られているようだった。















「全ては、蒼き清浄なる世界のために………。」



---to be continued---


☆あとがき
急展開連発の第64話となりました。
ちなみに、今回B.C.F.の会話の中で出てきた巨大モビルスーツDOOM、僕の脳内イメージでは、SEED DESTINYのデストロイガンダムとなっております。
これが差し向けられたとき、そこは文字通りの地獄絵図となるでしょうね……。
果たして、彼らの運命は!?

そして次回の前半パートでは、時の守り手の主要メンバーが再び登場!彼らの口から、シードピア誕生の秘密が語られます!











inserted by FC2 system