劣勢の状況から一気に形勢逆転したてれび戦士たちのもとへ、特捜部隊スピリチュアル・キャリバーが合流した。
主要メンバーたちの操る可変式モビルスーツ・ワイバーンが降り立ち、神体に乗り込んだ叉丹と対峙する。
『…現れおったか、スピリチュアル・キャリバー。』
『…葵叉丹、だな……。』
『…いかにも。さすがに貴様らは、私のことをすでに熟知しておったようだな……。』
自ら前線に降り立った総司令・大神一郎が、目の前の敵機のパイロットを確認する。
彼らにとって、叉丹は世代を越えた因縁深い敵でもある。
何百年も前、彼ら魔導騎士たちがシードピアに現れたとき、その脅威を最終的に抑えたのは、他ならぬ先代のスピリチュアル・キャリバーたちである。
特に、その際に最大の脅威となったパトリックの片腕として猛威を振るっていたのは、魔導騎士の筆頭・葵叉丹なのである。
『貴様がパトリック共々この世に復活していたとは思わなかったぞ。』
『フ…そうであろうな。私も暗き地の底で永遠の眠りにつくかと思われていた……だが、あるお方のお蔭で、私は妖力を取り戻し、こうして再び世界を席巻できる機会を得られたのだからな……。』
『……あるお方…!?それは誰なんです!?』
『…それをお前たちに語る必要がどこにある…?…だが、もし知りたくば……。』
――――ここで私を倒してみることだ!!!
『臨むところだ!』
大神のワイバーンが、2本の大型日本刀を抜刀したのを合図に、スピリチュアルキャリバーたちの戦闘が始まった……。
[これってひょっとして……、予想以上の大バトルに発展しそうだよ…?]
「このままじゃニュートラルヴィアの被害がますます大きくなっちゃうよ!」
ますます嫌な予感が起こりそうな気がしてならないクライマックスフォーム=理来と、ライナーフォーム=良太郎。
だが、クライマックスフォームとなって憑依しているモモタロスたちはまだまだ俄然やる気だった。
「へっ!上等だぜ!こうなったら“デカイ物にはデカイ物”、デンライナーで勝負だ!」
その瞬間、『プァ―――――ン』と言う音が周囲に鳴り響いた。
同時に、上空に4つの穴が現れ、そこから4台の新幹線型マシン・デンライナーが飛び出してきた。
赤、青、黄、紫―――――。
先端の窓にあたる部分はどれも、ソード、ロッド、アックス、ガンの4つの形態の電仮面を模している。
「よぉし、行くぜ行くぜ行くぜぇ!」
勢いそのままに、クライマックスフォームはデンライナーに乗り込んだ。
[デネブ、俺たちもゼロライナーで援護するぞ!]
「オーケー!」
汽笛と共に、緑色の機関車型マシン・ゼロライナーが現れた。
デネブと合体したゼロノス・ベガフォームが即座に乗り込む。
「行っちまった……。」
ゼロノス・アルタイルフォーム=聖夜は、急転した状況に頭が理解しきれないようだ。
[どうする……?]
「ここは、彼らを見守る以外、なかろうな……。」
ウイングフォーム=翼&ジークも、複雑な面持ちで彼らを案じた。
「…でも、大丈夫だよ…きっと…。」
だが、良太郎は心のどこかで確信できることがあるのか、微笑を浮かべていた。
「本気を出したら強いから、モモタロスたち……。」
「デンライナーとゼロライナーを取り出したか、電王たち…。」
ドラゴン形態と成ったキバの背中に乗っている次狼は、この戦いがさらなる大きなスケールになりそうな予感を察知していた。
「あとは…彼らに…任せる…。」
「イザと言うときは、キャッスルドランも居るしね。」
ラモン、力も、自分たちの外出時間がそろそろ門限になることを感じ取っていた。
[…よし、次狼さん、力さん、ラモン、3人は一旦キャッスルドランに戻って。]
「…おう。」
「うん…。」
「気をつけてね。」
3人はそれぞれ肖像形態となり、キャッスルドランへと帰還した。
「あとは……お互いの体力次第…かな……。」
モビルスーツならではの巨大な銃撃音が響き、巨大な刀が打ち合って大きな音を立てる。
さらに、ダメージを受けて倒れるときに、自分が巻き込まれてしまうのではないかと言う緊迫感。
モビルスーツはおろか、戦闘機にすら乗ってないてれび戦士たちは、今まさにその雰囲気をリアルに体感していた。
「うわわわっ!」
「うひゃっ!?」
前線に出ていたてれび戦士たちは、ほとんど逃げる場所がなく、あたふたとしていた。
「つ、つ、愛実!どうすんのよぉ〜!」
「そんなことあたしに言ったってしょうがないでしょ!!」
「でもでも、はやくどこかに逃げないと〜!」
「も〜、少しは落ち着きなさいよ!」
甜歌と愛実がここまで大混乱するのも、珍しいかもしれない。
と、そこに、ドルフィンナイツ最強の前線メンバーが合流した。
スバルとギンガの二人だ。
「てれび戦士のみんな、こっちだよ!」
「『自分たちの船に避難させて』って言う、ダンチョ団長からの特別処置よ!はやく!」
『は、はいっ!』
二人に連れられ、てれび戦士たちはすぐに“ナイトスピアフィッシュ”に乗り込んだ。
6人を内部に連れて行った後、スバルはD.S.の携帯ツールの一つ、“マルチャージャー”を取り出した。
「ティア、エリオ、キャロ!てれび戦士たちを船の中に避難させたよ!もう大丈夫!」
「了解!後はこっちに任せなさい!」
スバルからの通信を受け取ったティアナは、マルチャージャーの通信を切り、クロスミラージュを構えなおした。
「さぁて、てれび戦士の安全も確保されたことだし、エリオ、キャロ、とっととあの化け物を片付けるわよ!」
「『はい!』」
『チィッ…!』
叉丹の操る神体は、後手後手に回ってきていた。
それもそのはず。
時を越えた因縁の敵・S.C.の猛攻に加え、ドルフィンナイツの召喚した2騎の竜の炎熱攻撃、その上、電王たちが時の列車で猛攻、さらには裏切り者のキバが構えている。
―――――こうなれば、奥の手だ!!!!
千古不易(せんこふえき)・五行霊氣(ごぎょうれいき)!!!!!!
不意に、周辺が負のオーラに包まれた。
立っているだけで背筋が凍るような、そんな雰囲気だった。
だが、異変はすぐさま訪れた。
『っ!大神さん!』
『どうした!?』
『れ、霊力が、う、ば…われ……。』
エリカのワイバーンがひざを突いた。
『ぁ…っ…!』
『し、しま…っ…!』
『い、一郎、叔父……!』
立て続けに、さくら、ジェミニ、新次郎の機体も膝をついた。
『……ぐっ!?』
その異変は大神の体にも届いていた。
体の中の力が根こそぎ奪われていく、そんな雰囲気だった。
「「きゃああああぁぁぁぁぁぁっ!!!!」」
隣で悲鳴が響き、カメラアイを動かすと、なんと先ほど少女によって召喚された竜たちも倒れてしまっていたのだ。
「フリード!どうしたの!?フリード!」
「ヴォルテール!しっかり……っ…?!」
――――ドサッ
「……キャロ…!?」
地面に倒れ伏した音。
エリオの背筋が凍りつき、聞こえた方向に視点を向けた。
すると案の定、キャロがヴォルテールの傍で倒れていた。
「ッ!!!キャロッ!!!!」
エリオが駆け寄り、すぐさま抱き起こす。
どういうわけか、彼女は急激に息を切らしていた。
彼女の震える手が、エリオの腕を掴む。
「…エリ、オ…くん…、…ちからが…ぬけていく……。」
「キャロ…ッ…!!」
この後継を目の当たりにし、ここにきて一気に形成が逆転してしまったことを大神は悟った。
『くそ…っ…、あいつに霊力と魔力を吸い取られてしまったのか……!?』
『フッ、霊力と魔力がなければ、お前たちも形無しさ。』
『そうは問屋が卸さない』と言わんばかりに、汽笛と警笛の音を響かせ、デンライナーとゼロライナーが突っ込んできた。
しかも2つのマシンは縦列連結をしていた。
『デンライナー&ゼロライナー・バトルフォームチェンジ!』
『ハイパー・ドラゴンライナーモード!』
その掛け声と同時に、前方から順番に、巨大ドリル、プロペラ、竜の頭、6本の巨大アックス、四角形型ドーム、4連装キャノン、犬型の大砲、サル型の爆弾、キジ型の誘導ミサイル、竜の尻尾が断続的に展開。
『調子に乗るなよ、バケモンが!!』
電王クライマックスフォームのその一言を合図に、一斉射撃が始まった。
フリーエネルギーと呼ばれる特殊な力による攻撃で、神体に“これでもか”と言わんばかりに攻撃を仕掛けてくる。
それは、神体とその周辺に断続的に爆発を起こした。
しかし――――――。
「小癪な!これでも食らうがいい!“獣之数字”!」
すると、魔法陣が浮かび上がり、中から大型の髑髏が次々と出現した。
その数、なんと666体。
「うえっ!?なんじゃこの髑髏の大群はぁっ!!!」
不気味としか言いようのない光景に、電王は内心でもかなりビビった。
その隙をつかれたのか、髑髏の群れが次々とデンライナーとゼロライナーに体当たりを仕掛けてきた。
「うああああぁぁぁぁっ!!!」
「ぐわあああぁぁぁぁっ!!!!」
あれだけの攻撃を食らえば無事ですむはずがない。
結局、半分以上を被弾してしまったデンライナーとゼロライナーはレールから脱線、急転直下して崩れてしまった。
「み、みんな!!」
再び劣勢に立たされた状況に、良太郎たちもついに追い込まれた。
『…取るに足らぬ烏合の衆と思っていたが、ここまで俺を追い詰めたことを褒めてやる。だが、それもこれまでだ!』
神体の本体の左腕が上がり、妖力による巨大な雷雲が形成された。
『この“雷破”で…一気に片付けてくれよう!』
――――とどめだああぁぁっ!!!!!!
全員が敗北を確信した瞬間、巨大な雷が放たれ――――――。
そのエネルギーが“上空で”受け止められた。
『な゛っ!!!!????』
雷破を受け止めたのは、一人の少女だった。
「な…なんや、あの女の子は…!?」
ダンチョ団長を初め、クロ教官とヒロ委員長はもちろんのこと、“ナイトスピアフィッシュ”のブリッジで戦闘を目の当たりにしていたブリッジクルーと、避難してもらっていたてれび戦士たちも、目の前の光景に唖然とした。
だが、てれび戦士たちは別の意味でびっくりしていた。
金色のツインポニーテール、黄色と黒のアンダースーツ、アズールカラーと朱色のマント、サーモンピンクの瞳、背中に輝く黄色い光の翼、そしてその手には“橙雷の戦斧”。
見間違うはずがない。
てれび戦士たちの隠し切り札的存在が、ここで合流していたのだ。
(マユ…アリシア…、来てくれたんだ……!!!)
バリアジャケットを身にまとい、アリシアと融合したマユは、五行霊氣の影響が及ばない場所から戦況を見据えていた。
斜め下に、神体を見下ろす角度で……。
「…この状態から逆転するには…アレしかない……、アリシアちゃん、コントロールをお願い!」
{まかせて!}
マユは“アックスフォーム”の状態でハルバードを垂直に構え、魔法陣を展開。
すると、周囲にオレンジ色の電撃魔力スフィアが形成されていった。
「アルカス・クルタス・エイギアス。疾風なりし天神、今導きのもと撃ちかかれ。バルエル・ザルエル・ブラウゼル。」
{スフィア計30基、形成完了。1基ごとの斉射は毎秒6発、継続時間は5秒にセット!}
[Clear to go, My dear lady.]
これから放つ魔法は、リニスとプレシアから学んだものの中では最大級の威力を誇るもの。
速度は本家には及ばないものの、破壊力は十分だ。
ターゲットを見据えたマユは、ハルバードを握りなおし、大きく振りかぶった。
{打つは爆雷、響くは轟雷!}
[Photon Lancer “Phalanx Shift”]
「打ち砕け!ファイアッ!!!!」
ハルバードが振り下ろされたのと同時に、合計900発もの電撃が神体に襲い掛かった。
「ぐおおおぉぉぉぉ!!!!!!???」
間髪いれず打ち込まれた雷撃、しかもデンライナーに放った自分の攻撃より、数も攻撃力も大きい。
これをまともに食らって立っていられるはずがない。
ついに神体はコントロールを失い、崩れたビルにもたれかかった。
その瞬間、五行霊氣の効力が消えうせた。
キャロの魔力とS.C.の霊力が、同時に完全復活を遂げた。
再び訪れた逆転の好機。
大神たちとヴォルテール、フリードは、再び立ち上がった。
「ジェミニ、行くよ!」
「オッケー、新次郎!」
ジェミニと新次郎のワイバーンがモビルアーマー形態に変身、上空へととんだ。
そこに、戦線復帰したデンライナー・ゴウカとゼロライナー、さらにキャッスルドランも合流した。
「よぉし、一気にケリをつけるぞ!」
「おう!」
先ほどのダメージは簡単には消えるはずがない。
神体の体中から電流が帯びている。
それが大ダメージを物語っていた。
「ぐ…っ……お、おのれぇぇ…!!!!」
神体をどうにか立ち上がらせ、体勢を立て直そうとした、その矢先。
「狼虎滅却!」
「ミフネ流剣法、イッツ・メンキョカイデン!」
モビルアーマーとなった新次郎とジェミニのワイバーンが、霊力を開放し、神体へと向かってきた。
「くらえっ!!雲雷疾飛(うんらいしっぴ)!!!」
「ターニング・スワロー!!!」
炎と光の刃。
2人のサムライ戦士の特攻は、満身創痍となりつつある神体にとって、防ぎきれるものではない。
「ぐはあぁっ!!??」
神体の制御が完全に失われつつある今が、最後の好機。
「さくらくん、エリカくん、やるぞ!」
「「はい!!」」
3機のワイバーンは、それぞれの固有武器を構えた。
「瞳に写る、輝く星は」
「みんなの明日を、導く光!」
「今こそ、その聖なる輝きを」
「「「大いなる希望の力に代えて!」」」
―――破邪剣征 桜花乱舞!!!!!!
その必殺技の発動と同時に―――――。
「今がチャンス!エリオ、キャロ、一気に決めるわよ!」
「「はいっ!!!」」
ティアナが援護射撃でさらに追い討ちをかける。
「フリード、ブラスト・レイだ!」
「ヴォルテール、ギオ・エルガ!」
エリオとキャロも、2騎の竜の放つ、最後の最後での全力全開に全てをかける。
「キラ、こちらも最後の勝負です!」
「よし!」
GUNDAMを装備したキラとラクスも、最後の追い込みに取り掛かる。
「「Exceed Crystal Charge」」
エネルギーが2人の体を駆け巡った。
「フルチャージ・フェザーインパクト!」
「ハイマット・フルバースト!」
『ぐわああああぁぁぁぁぁっ!!!!!!』
予想を覆す多大な反撃の前に、ついに神体は陥落寸前まで追い込まれた。
そして、その最後の締めを待ってたかのように、上空から3つの影がそこに迫ってきた。
「今だ!」
良太郎=ライナーフォームが、デンカメンソードのターンテーブルを一回転させた。
黄金の光のレールが天に向かって延び、それに飛び乗った良太郎は、デンライナーとゼロライナーの間に構えた。
そのうえに、キバが合流したキャッスルドランが乗っかる。
「よぉ〜し、良太郎!最後はビシッと必殺技を決めてやれ!」
「俺たちとキバのエネルギーをお前に乗せるぞ!」
「頼んだよ!」
デンライナー、ゼロライナー、キャッスルドラン。
全てのフリーエネルギーが中心に集まり、放たれたと同時に、ライナーフォームがその中心を高速で駆け抜けながら、神体へと突撃する。
「憑かず、離れず、電車斬り!」
フルスロットルブレイカー!!!!!!
「ぐあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」
良太郎の決死の攻撃は、
見事、神体を真っ二つに斬り裂いた。
「こ、こんな、馬鹿なことが……!!!
……おのれ悔しや…口惜しやあああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
ドカ―――――――――ン!!!!!!
負け惜しみを断末魔に、叉丹は神体共々爆散した。
結局、パトリックたちを復活させた張本人に関することは聞きだせずじまいに気付いたのは、それから数分後のことだったが、後に“テレゾンビ事件”と呼ばれるようになった今回の一件は、終わらせることが出来たので、良しとしよう……。
「……ま、いいですけどね…。」
オーナーの前には、旗が倒れてしまった食べ残しのチャーハンが。
どうやら、今回の戦闘が終了したと同時に、倒れてしまったようだ…。
「デカ長、コーヒーをどうぞ。」
「ありがとう。」
デンライナーの従業員・ナオミが、コーヒーを差し出し、チャーハンの皿を片付ける。
コーヒーを口にする一方で、“デカ長”と呼ばれたオーナーは、幾つかの写真を取り出した。
その中の一枚に写し出されていたのは、一枚の壁画だった。
壁画に描かれていたのは、シードピアに実在したとされる人物の絵。
“闇の魔人”と相対する、“虹の聖王”と呼ばれた人物の壁画であった。
「……ゼロライナーチームの二人の報告が、正しければ…。」
――――同時に“あの人”も復活しているでしょうね……。
視線を移したところに置かれたもう一枚の写真。
そこにあったのは、飾られた壁画の前に置かれてあったと思われる、何かによって破壊されていた、カプセルの残骸だった。
---to be continued---
☆あとがき
『テレゾンビ事件』編、これにてミッションコンプリート!!!!
長かった〜……。
今回は必殺技のオンパレードとなりました。
(簡略ながら)これだけ多くの必殺技の演出を書き起こしたのって、今回初めてかも……(苦笑)
まぁ、やりすぎ感もありますけれどもね……(苦笑)
さて、次回からまた新展開、出番が少なくなってきている陣営のキャラもそろそろ目立たせてあげましょう!
……とは言いつつ、またまた新キャラ登場フラグが高いのは気のせいでしょうか…。
しかも、今回の終盤あたりで、あからさまに“それが出ます”みたいな雰囲気が……。