Phase57 黒きキバと光の翼



「ぐふっ?!」

突然背後から蹴り飛ばされた殺女は、思いもよらない状況に頭が困惑していた。

あのとき、確実にあの4人を斬れたはずだった。

だが、あのコウモリがいともたやすく刃を受け止めていた。

「く……っ、一体何がどうなってるの……?!」

痛みが残る頭を必死に抑えながら状況を整理する。







――――!!??







と、殺女の脳裏に引っかかる節が。

先ほど刃を受け止めたコウモリ。

よく見ると、デカイ顔に翼がついている姿だった。

しかも、大きな赤い目を持っており、翼の羽ばたき方も独特―――――!!??



そこまで考え、彼女の脳裏に一つの可能性が過ぎった。










――――まさかっ!!!!










視線を動かすと、傍らに先ほどのコウモリを従えた一人の少年が現れた。

「……!!!紅渡(くれない・わたる)っ……!!!」

ゆっくりと歩み寄り、丁度いい距離を保つと、口を開いた。

「……1000年ぶり、かな…殺女。」

彼の声を聞き、彼女の目つきが一気に凶暴なものへと一変した。

「あんたがどうしてここにいるのよ!それに、一体どういうつもりで攻撃してきたの?!アタシたちの使命を忘れたの!?」

殺女は、自分たちの“仲間”であるはずの少年の行動が信じられなかった。

「それはもう僕らにとっては意味はないよ。それに、たとえGUNDAMを手にしたとしても、それを扱えるかどうかはわからないじゃないか。マルキオ導師も言ってたはずだよ。GUNDAMを手にするのはSEEDを持つものだって。」

「どうやら…、すっかり人間たちに感化されたようね…!」

「そう受け取ってもらってもいいよ。どっちにしても僕らは……、もう君たちに従うつもりはないからね!」

強い意志でそう言いきり、相棒の名を叫んだ。

「キバット!」

「よっしゃ、キバって行くぜ!」

キバットと呼ばれたコウモリは、渡の右手の中に納まり、彼の左手に噛み付いた。

「ガブッ!」

キバットの牙から未知の力が注入され、彼の中に眠る力の覚醒を促した。

同時に、どこからともなく鎖が現れ、それが渡の腰に絡みつき、一本の赤いベルトを練成した。

「変身!」

掛け声と共に、キバットをベルトの中心部に“装着”。

その場所を中心に超音波が発せられ、渡の体を次第に揺らがせ、変化させていった。

そして、まるで体中の鎖が一気に解き放たれるかのように、渡の中の力が解き放たれた。

コウモリの翼を模した黄色い仮面、赤い胸の筋肉、黒い腕と足、右足には力を封印しているかのような銀色の拘束具と鎖。

シードピアの闇の一族の王の目覚めであった。































ピピピピピ………ピコーン。

『冷凍カプセル、解凍完了シマシタ。』

R.G.B.司令室、そこでは一つの作業が完了していた。

冷凍完了の合図が告げられ、ハッチがゆっくりと開いた。

ラクスと告示するピンク色の髪の少女、その瞳は、エメラルドの色だった。

目がゆっくりと開かれると、その視線をゆっくりと、レイシーたちに向けた。

「SEEDを持つものと……虹の勇者…ですね…?」

「……はい。」

冷凍カプセルで眠りについていた少女――セトナ・ウィンタースの質問に、キラが答えた。

彼女は、しばしの沈黙の後、冷凍カプセルから降り、GUNDAMシステムが封印されている大型機械に手を添えた……。

「……できることなら、このままGUNDAMを知らずに、静かな時が流れてほしかったのですが…。」

……何世紀もの間眠り続けていた彼女も、心の中では戦争根絶を望んでいたようだ。

「…それはもはや、叶わぬ夢となりそうですね……。」

静かに語りかけるような口調の彼女の目は、寂しさをも醸し出していた。

「…セトナさん、外の世界ではすでに、魔人・パトリックの配下たちが動き出しているそうです。今でも、我々の仲間たちが窮地に立たされているのです。ぜひ、GUNDAMを……。」

ドクターレイシーの言葉を受け取ったセトナは、封印解除に用いられたシードクリスタルを取り出した。

「…そのまえに、このクリスタルはどなたの……?」

「……僕です…。」

セトナの眼前には、真剣な目つきのキラがいた。







「SEEDを受け継ぎし者よ……汝の魂を示せ。」







彼女が口にした言葉、それが意味するのはただ一つ。

「GUNDAMと言う、大いなる力を手にするに相応しき大義があるか否か……、それに相応する魂の根源を、示しなさい。」

………数刻の間を待ち、キラはゆっくりと己の言葉を紡いだ。









安らかなときの中で生きていたい……。

それは、僕の心の中でも何度も願っていたことだ…。

でも、それだけだったら、逃げていることと同じだから……。

『何もできない』って言って、何もしなければ、もっと何もできなくなる………。

だから、僕は……僕らは戦うんだ…!

ただ、“敵を倒す”んじゃなく、僕らの意志を、貫くために……!



キラは、セトナの手の中にあるシードクリスタルを、奪い取るかのように握り締めた。



「僕は……力が欲しいんだ…!!!」







――――――カアアァァァァァッ!







その意志に呼応したのか、シードクリスタルが強い輝きを放った。

彼の心の中に眠る強い意志が、真の覚醒を促したのだ。



「キラ…。」



優しい言葉をかけるのは、ピンク色の歌姫。







わたくしもまた、キラと同じ志を持って、あなたと共に歩みます。

想いだけが大きくても何も変えることはできない。

力だけが強くても、変えるべきものに気づくことはできません。

わたくしたちがGUNDAMを欲したのは、今のわたくしたちにとって、それらを示すに必要だと感じたのです。

今のわたくしたちにとって、たとえそれが過ぎた力だとしても……。



わたくしたちは、“平和の歌”とともに、その力を持って困難な道を歩みます!







――――――カアアァァァァァッ!







ラクスの体から、紫色の光が発せられた。

「「うおっ!?」」

「ラクス?!」


レイシー兄弟とキラは、突発的なことに仰天する以外ない。

しかし、キラの驚きは別の意味にあった。

そう、自分にとっても似たような状況があったのだから……。

ラクスは何かを感じ取ったのか、自らの両手を自分の胸に当てた。

「…う…っ!」

痛みをこらえるような少々苦痛な表情を浮かべ、ラクスは自らの胸元から出てくる何かを手にした。

それは、キラのそれと同じ、紫色の種の宝石。

レイシー兄弟はまたまた驚愕した。



「「しっ、シードクリスタル!!!」」



SEEDを持つものが、新たに現れた……。

セトナは、継承者の真の覚醒を確認し、微笑を浮かべた。

「…あなたたちの魂の根源、確かに見届けました…。さぁ、そのクリスタルをここへ……。」

セトナが促した先には、クリスタルを収めるケースが備えられた、先ほどの大型機械。

その上には、5つのシールドケージがあった。

それぞれに、名称であろうネームプレートがつけられている……。

導かれるかのように、キラは“FREEDOM”の前に、ラクスは“CREED”の前へと立った。

それぞれのケースの中に、クリスタルを収める……。











『シードクリスタル、認証シマシタ。GAM-AT01 FREEDOM、GAM-AT-04 CREED、全システム起動ヲ確認。』











Gundam-Armer-Model Adopted-Types.

長年、実験と失敗が繰り返され、その果てにたどり着いたG.U.N.D.A.M.システムの最終進化形態。

その想いの全てが、今、SEEDを持つものに託される。

































暗闇の戦士・キバの猛攻は想像をはるかに超えていた。

目にも留まらぬスピードで、いとも簡単に相手を蹴散らしていく。

「ハアッ!」

「ごふっ!?」

鎖で封印され、重量が増している右足の蹴りは、どのキックよりもかなり重いものであった。

殺女はその蹴りでまた壁にたたきつけられた。

その体はすでに傷だらけ、息も絶え絶え状態だった。

「さぁて、どうする、殺女?」

キバットがベルトから離れ、相手を挑発する。

「降参するならば、今のうちだよ。」

「誰が……降参するのよ!」

妖力を用いた鬼火を放った。

しかし、キバがそれに徹するはずがなく、容易に鬼火を受け止め、それを握りつぶした。

「はっきり言うよ。今のあなたでは今の僕には勝てない。」

力の差は歴然。

「…こ、こうなったら……GUNDAMもろともここを潰してくれるわ!









―――出でよ、魔操機兵(まそうきへい)・神威(かむい)!!!









足元に陣形が浮かび、殺女がそこに吸い込まれたかと思いきや、その陣形から大型の人型戦闘兵器が姿を見せた。

腰部には大型の刀が備えられ、左腕の部分には大型の機関銃。

「げっ!魔操機兵を取り出しやがった!」

その身長は並の人間の2.5倍以上。

さすがのキバでもこの大きさの兵器を相手にするのは、荷が重い。

ここは“アームドモンスター”の力を借りるしかないか。

そう考え、キバはベルトの“笛”を使おうとしたのだが――――

『フエッスルは使わせないよ!』

神威は大型の刀を振り下ろし、キバに攻撃する。

「うわっ?!」

とっさの判断で回避をしたものの、フエッスルを使っても召喚に一瞬の時間がかかる。

その一瞬たりとも油断ができないとあっては、キバとてどうしようもない。

さらに回避した先には、左腕の機関銃があったのに、キバは気づくのが遅れた。

瞬間、キバはその銃撃をまともに浴びてしまった。

「ぐわあぁぁっ!!!」

油断し、敵の攻撃を受けたキバは、まともに吹き飛ばされた。

ダメージが案外大きかったのか、まともに動けない。

神威が、その彼に近づこうとして――――――。















バシュン!











バチッ!












低威力のレーザー光線が、神威のカメラアイに直撃した。

『……?!』

「…え…!?」

その視線の先には―――――。









決意のまなざしを秘めた、“SEEDを持つもの”がいた。









二人の左腕には、特殊なブレスレットが装備され、右手には携帯電話と思しきものが。

だが、キラの持つ携帯電話の形が微妙におかしなことになっている。

“まるで拳銃のように”折れ曲がっているのだ。

アンテナに相当するところが銃口、液晶画面がバレル部分、ダイヤル部分がグリップとトリガーになっているかのようだった。

だが、“まるで”ではなく“本当に”銃になっていたことを、即座に知ることになる。

キラがそれを使い、レーザー光線を繰り出したのだ。

そのレーザー光線で殺女の神威を牽制する。

『…その程度の攻撃で、この神威を倒すことはできないわよ!悪あがきのつもり?!』

殺女が挑発するも、少しも動じないキラとラクス。

それどころか――――――。



「ラクス……行くよ!」

「…はい!」



キラは携帯電話をもとの形に戻し、ラクスは携帯電話を開き、それぞれテンキーを用いてコードを入力。



“2・0・5” “9・0・1”



そして、『ENTER』を押した。



――――――““Activation””



携帯電話を閉じ、そして二人は、高らかに発した。









「幾千年の永き時を越え、受け継がれしその魂――――。」



「想いを力に変え、今こそ目覚めよ、守護者の力よ……!」





―――――ガンダム・アーマー、ビルドアップ!!!!














二人の手により携帯電話はそれぞれのブレスレットに装填され、さらに電子音声が発した。

















““Stand by ready,Build up.””



---to be continued---


☆あとがき
またまた中途半端なところで区切ってしまいましたが(苦笑)、いよいよGUNDAMのネタが解禁でございますよ!
…と言っても、セットアップシークエンスやアイテムはまんま『仮面ライダー555(ファイズ)』のアレですね。(苦笑)
さて、次回はいよいよガンダムアーマーの全貌が明らかになります!
計画から1年半近く、ようやく書きたかったネタの完全解禁でございます!

…とはいえ、さすがにここまでくると、どんな形のアーマーになるんだと言う方も中にはいることかと思われます。
…なので、もうすでに解禁確定と言うこともありますし、ここでネタばれ情報を公開しちゃいましょう!



実は、ガンダムアーマーの元ネタなんですが……。


おそらく、一部の二次創作作家の方々ならやりかねないかも知れない――――――


ロボットの○○化をヒントにしてみました!


………はい、もうここまで言えば、大体想像はつきますよね。
……そう、アレでございます。(笑)










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