「ぐふっ?!」
突然背後から蹴り飛ばされた殺女は、思いもよらない状況に頭が困惑していた。
あのとき、確実にあの4人を斬れたはずだった。
だが、あのコウモリがいともたやすく刃を受け止めていた。
「く……っ、一体何がどうなってるの……?!」
痛みが残る頭を必死に抑えながら状況を整理する。
――――!!??
と、殺女の脳裏に引っかかる節が。
先ほど刃を受け止めたコウモリ。
よく見ると、デカイ顔に翼がついている姿だった。
しかも、大きな赤い目を持っており、翼の羽ばたき方も独特―――――!!??
そこまで考え、彼女の脳裏に一つの可能性が過ぎった。
――――まさかっ!!!!
視線を動かすと、傍らに先ほどのコウモリを従えた一人の少年が現れた。
「……!!!紅渡(くれない・わたる)っ……!!!」
ゆっくりと歩み寄り、丁度いい距離を保つと、口を開いた。
「……1000年ぶり、かな…殺女。」
彼の声を聞き、彼女の目つきが一気に凶暴なものへと一変した。
「あんたがどうしてここにいるのよ!それに、一体どういうつもりで攻撃してきたの?!アタシたちの使命を忘れたの!?」
殺女は、自分たちの“仲間”であるはずの少年の行動が信じられなかった。
「それはもう僕らにとっては意味はないよ。それに、たとえGUNDAMを手にしたとしても、それを扱えるかどうかはわからないじゃないか。マルキオ導師も言ってたはずだよ。GUNDAMを手にするのはSEEDを持つものだって。」
「どうやら…、すっかり人間たちに感化されたようね…!」
「そう受け取ってもらってもいいよ。どっちにしても僕らは……、もう君たちに従うつもりはないからね!」
強い意志でそう言いきり、相棒の名を叫んだ。
「キバット!」
「よっしゃ、キバって行くぜ!」
キバットと呼ばれたコウモリは、渡の右手の中に納まり、彼の左手に噛み付いた。
「ガブッ!」
キバットの牙から未知の力が注入され、彼の中に眠る力の覚醒を促した。
同時に、どこからともなく鎖が現れ、それが渡の腰に絡みつき、一本の赤いベルトを練成した。
「変身!」
掛け声と共に、キバットをベルトの中心部に“装着”。
その場所を中心に超音波が発せられ、渡の体を次第に揺らがせ、変化させていった。
そして、まるで体中の鎖が一気に解き放たれるかのように、渡の中の力が解き放たれた。
コウモリの翼を模した黄色い仮面、赤い胸の筋肉、黒い腕と足、右足には力を封印しているかのような銀色の拘束具と鎖。
シードピアの闇の一族の王の目覚めであった。
ピピピピピ………ピコーン。
『冷凍カプセル、解凍完了シマシタ。』
R.G.B.司令室、そこでは一つの作業が完了していた。
冷凍完了の合図が告げられ、ハッチがゆっくりと開いた。
ラクスと告示するピンク色の髪の少女、その瞳は、エメラルドの色だった。
目がゆっくりと開かれると、その視線をゆっくりと、レイシーたちに向けた。
「SEEDを持つものと……虹の勇者…ですね…?」
「……はい。」
冷凍カプセルで眠りについていた少女――セトナ・ウィンタースの質問に、キラが答えた。
彼女は、しばしの沈黙の後、冷凍カプセルから降り、GUNDAMシステムが封印されている大型機械に手を添えた……。
「……できることなら、このままGUNDAMを知らずに、静かな時が流れてほしかったのですが…。」
……何世紀もの間眠り続けていた彼女も、心の中では戦争根絶を望んでいたようだ。
「…それはもはや、叶わぬ夢となりそうですね……。」
静かに語りかけるような口調の彼女の目は、寂しさをも醸し出していた。
「…セトナさん、外の世界ではすでに、魔人・パトリックの配下たちが動き出しているそうです。今でも、我々の仲間たちが窮地に立たされているのです。ぜひ、GUNDAMを……。」
ドクターレイシーの言葉を受け取ったセトナは、封印解除に用いられたシードクリスタルを取り出した。
「…そのまえに、このクリスタルはどなたの……?」
「……僕です…。」
セトナの眼前には、真剣な目つきのキラがいた。
「SEEDを受け継ぎし者よ……汝の魂を示せ。」
彼女が口にした言葉、それが意味するのはただ一つ。
「GUNDAMと言う、大いなる力を手にするに相応しき大義があるか否か……、それに相応する魂の根源を、示しなさい。」
………数刻の間を待ち、キラはゆっくりと己の言葉を紡いだ。
安らかなときの中で生きていたい……。
それは、僕の心の中でも何度も願っていたことだ…。
でも、それだけだったら、逃げていることと同じだから……。
『何もできない』って言って、何もしなければ、もっと何もできなくなる………。
だから、僕は……僕らは戦うんだ…!
ただ、“敵を倒す”んじゃなく、僕らの意志を、貫くために……!
キラは、セトナの手の中にあるシードクリスタルを、奪い取るかのように握り締めた。
「僕は……力が欲しいんだ…!!!」
――――――カアアァァァァァッ!
その意志に呼応したのか、シードクリスタルが強い輝きを放った。
彼の心の中に眠る強い意志が、真の覚醒を促したのだ。
「キラ…。」
優しい言葉をかけるのは、ピンク色の歌姫。
わたくしもまた、キラと同じ志を持って、あなたと共に歩みます。
想いだけが大きくても何も変えることはできない。
力だけが強くても、変えるべきものに気づくことはできません。
わたくしたちがGUNDAMを欲したのは、今のわたくしたちにとって、それらを示すに必要だと感じたのです。
今のわたくしたちにとって、たとえそれが過ぎた力だとしても……。
わたくしたちは、“平和の歌”とともに、その力を持って困難な道を歩みます!
――――――カアアァァァァァッ!
ラクスの体から、紫色の光が発せられた。
「「うおっ!?」」
「ラクス?!」
レイシー兄弟とキラは、突発的なことに仰天する以外ない。
しかし、キラの驚きは別の意味にあった。
そう、自分にとっても似たような状況があったのだから……。
ラクスは何かを感じ取ったのか、自らの両手を自分の胸に当てた。
「…う…っ!」
痛みをこらえるような少々苦痛な表情を浮かべ、ラクスは自らの胸元から出てくる何かを手にした。
それは、キラのそれと同じ、紫色の種の宝石。
レイシー兄弟はまたまた驚愕した。
「「しっ、シードクリスタル!!!」」
SEEDを持つものが、新たに現れた……。
セトナは、継承者の真の覚醒を確認し、微笑を浮かべた。
「…あなたたちの魂の根源、確かに見届けました…。さぁ、そのクリスタルをここへ……。」
セトナが促した先には、クリスタルを収めるケースが備えられた、先ほどの大型機械。
その上には、5つのシールドケージがあった。
それぞれに、名称であろうネームプレートがつけられている……。
導かれるかのように、キラは“FREEDOM”の前に、ラクスは“CREED”の前へと立った。
それぞれのケースの中に、クリスタルを収める……。
『シードクリスタル、認証シマシタ。GAM-AT01 FREEDOM、GAM-AT-04 CREED、全システム起動ヲ確認。』
Gundam-Armer-Model Adopted-Types.
長年、実験と失敗が繰り返され、その果てにたどり着いたG.U.N.D.A.M.システムの最終進化形態。
その想いの全てが、今、SEEDを持つものに託される。
暗闇の戦士・キバの猛攻は想像をはるかに超えていた。
目にも留まらぬスピードで、いとも簡単に相手を蹴散らしていく。
「ハアッ!」
「ごふっ!?」
鎖で封印され、重量が増している右足の蹴りは、どのキックよりもかなり重いものであった。
殺女はその蹴りでまた壁にたたきつけられた。
その体はすでに傷だらけ、息も絶え絶え状態だった。
「さぁて、どうする、殺女?」
キバットがベルトから離れ、相手を挑発する。
「降参するならば、今のうちだよ。」
「誰が……降参するのよ!」
妖力を用いた鬼火を放った。
しかし、キバがそれに徹するはずがなく、容易に鬼火を受け止め、それを握りつぶした。
「はっきり言うよ。今のあなたでは今の僕には勝てない。」
力の差は歴然。
「…こ、こうなったら……GUNDAMもろともここを潰してくれるわ!」
―――出でよ、魔操機兵(まそうきへい)・神威(かむい)!!!
足元に陣形が浮かび、殺女がそこに吸い込まれたかと思いきや、その陣形から大型の人型戦闘兵器が姿を見せた。
腰部には大型の刀が備えられ、左腕の部分には大型の機関銃。
「げっ!魔操機兵を取り出しやがった!」
その身長は並の人間の2.5倍以上。
さすがのキバでもこの大きさの兵器を相手にするのは、荷が重い。
ここは“アームドモンスター”の力を借りるしかないか。
そう考え、キバはベルトの“笛”を使おうとしたのだが――――
『フエッスルは使わせないよ!』
神威は大型の刀を振り下ろし、キバに攻撃する。
「うわっ?!」
とっさの判断で回避をしたものの、フエッスルを使っても召喚に一瞬の時間がかかる。
その一瞬たりとも油断ができないとあっては、キバとてどうしようもない。
さらに回避した先には、左腕の機関銃があったのに、キバは気づくのが遅れた。
瞬間、キバはその銃撃をまともに浴びてしまった。
「ぐわあぁぁっ!!!」
油断し、敵の攻撃を受けたキバは、まともに吹き飛ばされた。
ダメージが案外大きかったのか、まともに動けない。
神威が、その彼に近づこうとして――――――。
バシュン!
バチッ!
低威力のレーザー光線が、神威のカメラアイに直撃した。
『……?!』
「…え…!?」
その視線の先には―――――。
決意のまなざしを秘めた、“SEEDを持つもの”がいた。
二人の左腕には、特殊なブレスレットが装備され、右手には携帯電話と思しきものが。
だが、キラの持つ携帯電話の形が微妙におかしなことになっている。
“まるで拳銃のように”折れ曲がっているのだ。
アンテナに相当するところが銃口、液晶画面がバレル部分、ダイヤル部分がグリップとトリガーになっているかのようだった。
だが、“まるで”ではなく“本当に”銃になっていたことを、即座に知ることになる。
キラがそれを使い、レーザー光線を繰り出したのだ。
そのレーザー光線で殺女の神威を牽制する。
『…その程度の攻撃で、この神威を倒すことはできないわよ!悪あがきのつもり?!』
殺女が挑発するも、少しも動じないキラとラクス。
それどころか――――――。
「ラクス……行くよ!」
「…はい!」
キラは携帯電話をもとの形に戻し、ラクスは携帯電話を開き、それぞれテンキーを用いてコードを入力。
“2・0・5” “9・0・1”
そして、『ENTER』を押した。
――――――““Activation””
携帯電話を閉じ、そして二人は、高らかに発した。
「幾千年の永き時を越え、受け継がれしその魂――――。」
「想いを力に変え、今こそ目覚めよ、守護者の力よ……!」
―――――ガンダム・アーマー、ビルドアップ!!!!
二人の手により携帯電話はそれぞれのブレスレットに装填され、さらに電子音声が発した。
““Stand by ready,Build up.””
---to be continued---
☆あとがき
またまた中途半端なところで区切ってしまいましたが(苦笑)、いよいよGUNDAMのネタが解禁でございますよ!
…と言っても、セットアップシークエンスやアイテムはまんま『仮面ライダー555(ファイズ)』のアレですね。(苦笑)
さて、次回はいよいよガンダムアーマーの全貌が明らかになります!
計画から1年半近く、ようやく書きたかったネタの完全解禁でございます!
…とはいえ、さすがにここまでくると、どんな形のアーマーになるんだと言う方も中にはいることかと思われます。
…なので、もうすでに解禁確定と言うこともありますし、ここでネタばれ情報を公開しちゃいましょう!
実は、ガンダムアーマーの元ネタなんですが……。
おそらく、一部の二次創作作家の方々ならやりかねないかも知れない――――――
ロボットの○○化をヒントにしてみました!
………はい、もうここまで言えば、大体想像はつきますよね。
……そう、アレでございます。(笑)