Phase56 テレビの反乱
−TELEZONBIE Awakening−



『叉丹、GUNDAMの場所が判明したわ。これからそこに乗り込んで強奪するから、あなたはニュートラルヴィアを頼むわよ。』

「フ…任せるがいい、殺女…。」

ニュートラルヴィアの遥か上空、そこから街を見下ろす謎の剣士・葵叉丹。

「……長年パトリックさまに仕え続け、ついに我らの悲願が達成されるときがきたか……、どれだけこのときを、待ち続けたものか……。」

だが、その成就をさらに確実なものにするには、忌まわしき戦士たちを葬らなければならない。

すでに、準備は整えてある……。

「さあ、お前たち……、今こそ目覚めさせてくれよう…、我が秘術を持って……!」

叉丹は、懐から幾つかの数珠を取り出し、それをこすり合わせるように両手で印を結ぶと、呪文を唱えだした。











“ゲドウガンジン…ゲドウガンジン…オンバサラ・オンバサラ・ビサバエソワカ・オンバサラ・オンバサラ・ビサバエソワカ”







―――――オーンバサラアアァァッ!!!!!








妖力が叉丹の体から開放され、その力がニュートラルヴィアの“テレビ”全てに注がれていった。

さらに、最も強大な妖力が、ニュートラルヴィアの発信中継地点である、アプリリウスタワーに注がれた。

その瞬間、ニュートラルヴィア全域の全ての電波回線がシャットダウンされ、テレビが音信不通となった。

「…時は来たれり…、今こそ蘇るがいい……、邪なるサイバーモンスター・テレゾンビたちよ!!!

































――――ヴィーッ!ヴィーッ!ヴィーッ!



『エマージェンシー!エマージェンシー!“ドルフィンナイツ”ニ緊急出動要請!総員、ブリッジニ集合セヨ!』

“白兵戦特殊部隊・ドルフィンナイツ”。

それは、オルカファイターズに並ぶ、“ダイダルストライカーズ”の第2主力部隊の総称。

モビルスーツ戦を専門に扱うオルカファイターズに対し、ドルフィンナイツはその名称どおり、白兵戦をメインとする。

それゆえか、機動兵器戦では主に戦車や戦闘機と言ったものが主軸となっている。

そんな彼らの活動拠点である、水空両用突撃艇“ナイトスピアフィッシュ”内部に響いたブザーの音で、ドルフィンナイツの全クルーがブリッジに集合した。

モニターが起動し、通信相手の顔が表示された。

「ロンドさま!」

ダイダルストライカーズの“雇われ”司令官、ロンド・ミナ・サハクである。

『ドルフィンナイツ諸君、たった今“ニュートラルヴィア・アプリリウス銀座”に、未確認生命体が現れた。』

それと同時に、出現した敵の画像が出された。

体は並みの人間と同じだが、頭部がテレビでできている。

しかも、そのテレビの部分から虹色の怪光線を発し、市街地を次々と破壊している。

『出現時の敵の数は150体、今後もさらに敵は増大する傾向が高い。一体何者なのかすらも判明していない未知の敵だ。くれぐれも、注意してくれ。』

「了解しました!」

『よし、ドルフィンナイツ、全軍出撃!』

『イエッサー!』

通信が切れると、ドルフィンナイツの主力メンバーたちが一斉に動き出した。

「よぉ〜し、一気に奇襲を仕掛けるで!ジーナ、ナイトスピアフィッシュ、全速力や!」

「OK!団長、まっかせて〜っ!」

ドルフィンナイツのハイテンションガール・ジーナの操舵により、ドルフィンナイツはニュートラルヴィアに向けて突撃していった。































『どひぇええぇぇぇっ!たたたたた、大変ッス〜ッ!!!!』





のんびりとくつろいでいたてれび戦士たちのところに、警報ブザーと共にラビがものすごい驚きの形相で、駆け込んできた。

「どっ、どないしたんやラビ!?」

次の瞬間、てれび戦士たちは驚きと共に大絶叫した。









『えらいこっちゃ、えらいこっちゃ〜っ!アアア、アプリリウス銀座全域に、テテテテテ、“テレゾンビ軍団”が〜ッ!!!!!!!!』







えええぇぇえええぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!
















ブリッジ内部でもその存在は確認されていた。

しかも、ほんの何十体どころの話ではない。

驚くべきことに、なんと合計で400体以上も確認されていたのだ。

かつてテレヴィア全土を震撼させた“テレヴィアン・クライシス”のとき、異形の存在“魔王”が解き放ったとされている、伝説のサイバーモンスター“テレゾンビ”。

それがシードピアに突如現れた。

あり得ない非常事態の発生が引き金となり、真っ先にティアーズ全軍出動となった。

































「冗談じゃねぇ!キラたちのいないときにこんなことになるなんざ……!」

「文句を言ってる暇はないですよ!」

リーダーのキラが不在のライガーシールズは、アークエンジェルチーム、サーペントテールチーム全軍の出撃となり、必死の攻防を繰り返しているものの、無限に湧き出てくるかのような“テレビの化け物”にきりきり舞い。

「それにしても、これだけ大量の化け物、一体どこの誰が繰り出してきたんだ!?」

「仮にB.C.F.だとしても、ここまでハイテクな作戦は思いつかないはずだが……!」

イライジャと劾の予測は正しかった。

そもそも、テレビの中に自我を組み込んで稼動させる技術自体、今のシードピアでは到底不可能である。

何者かが意図的に組み込ませでもしない限り、それもかなり以前から……。

B.C.F.でも到底このような技術を有することは考えられない……。











『戦闘エリアに大型戦艦反応接近中!これは……“ナイトスピアフィッシュ”!











G.L.B.本部のミリアリアからの緊急通信を耳にしたメンバーたちは仰天した。

それと同時に、自分たちのエリア全域で振動が発生。

「お、おい、これってまさか…!?」

徐々に振動が大きくなり、次の瞬間――――――。







カジキに似た大型戦艦が地面の底から這い出してきた。







「うおおぉぉっ!!??」

しかもライガーシールズたちの丁度真後ろから這い出てきたということもあり、その場にいた全員が度肝を抜かれた。

そして、戦艦のサイドハッチから、1台の装甲戦車と、1台の装甲バイク、1台の装甲サイドカーが飛び出した。

「…フッ…久々に現れたか、ドルフィンナイツ。」

ダイダルストライカーズの第2特殊部隊・ドルフィンナイツが、ついにその姿を見せた。

『よぉーし、これよりドルフィンナイツ、ライガーシールズの援護も兼ねて、前方の未確認生命体の強制排除を開始する!全軍、攻撃開始や!』

『了解!』

大海原の騎士と、獅子の守護者。

二つの戦士たちの、協同戦線が張られた。































一方、こちらはそんな彼らの場所とは正反対のポイント。

「……こんなにたくさんいたなんてね…。」

特殊バイク・マシンデンバードで現場へと向かっていた野上良太郎は、目の前の現状に声を震わせた。

彼の眼前には、合計で100体は余裕でいるだろう、テレビの化け物の大群が……。

とても一人では対処ができない……。

「良太郎さーん!」

「…!?」

振り返ると、自分を追いかけてきた3人組の姿が。

「聖夜(のえる)!翼(つばさ)!理来(りく)!」

先ほどまでライブパフォーマンスを披露していたミストの3人だ。

彼らも目の前にあふれかえっているテレビの化け物に、一瞬、息を呑むも、すぐに気を取り直した。

良太郎も、乗っていたデンバードから降りて、パスを取り外した。

「みんな…行くよ!」

『オウッ!』

良太郎の言葉により、ミストの3人も“彼と同じ黒いパス”を取り出すと、4人の腰に銀色のベルトが装着された。

それと同時に―――――。





「モモタロス、行くよ…!」

『よぉ〜し!』

良太郎の背後には炎のように燃える“赤鬼”の怪人が。





「出番だぜ、ウラタロス!」

『ハイハイ。』

聖夜の背後にはクールな“青い亀”のような怪人が。





「たのむよ、キンタロス!」

『おっしゃ!』

理来の背後には怪力自慢の“黄色の熊”の怪人が。





「リュウタロス、今日も踊るぜ!」

『オッケー☆』

翼の背後には子供っぽい印象の“紫の竜”の怪人が。





それぞれ現れて、それらがそれぞれの体に憑依した。





ベルトに取り付けられた、赤、青、黄、紫のボタンをそれぞれ押すと、軽快なミュージックホーンが流れ――――。



『変身っ!』



彼らの持つパスが、バックル中央部に触れた。



“Sword form”	“Rod form”	“Ax form”	“Gun form”


分解されたプラットフォームスーツがベルトから取り出されると、それが一瞬で全身に纏い、その上から特殊材質で作られたアーマーが取り付けられた。

さらにその後、それぞれにそれぞれのイメージカラーの“仮面”が取り付けられた。





「俺…、参上!」

赤い仮面の戦士は、口上とともにポーズを決め―――。



「お前、僕に釣られてみる?」

青い仮面の戦士は、女性を口説くかのようなキザな台詞を口にし―――。



「俺の強さに、お前が泣いた!」

金色の仮面の戦士に至っては、変身とともに舞い散った懐紙吹雪が雰囲気を演出し―――。



「倒すけどいいよね?答えは聞かないけど!」

紫の仮面の戦士は自己中心的な言葉で場のムードを作り出す。



「今日は全員まとめてクライマックスだぜ!」































レイシー兄弟は、“絶句”の言葉しか思い浮かばない予想外の展開に見舞われていた。

自分たちの故郷・テレヴィアにしか存在し得ないはずの、レインボー・ガーディアンズの砦・R.G.B.が、シードピアの遺跡“カオティクスルーイン”で発見されたのである。

しかし、かなりの年月が経ったのだろうか、建物全体は汚れているようだ……。

言い知れぬ予感を感じつつ、レイシー兄弟、キラ、ラクスは、早速R.G.B.の内部へ入り込んだ。

セキュリティの諸々は設定されていないのか、意外とすんなり入ることができた。

そして4人は、ある部屋へとたどり着いた。

「…ここは…、司令室だな……。」

「でも、中の設備がちょっと違うよね………。」

「「………????」」

テレヴィアという世界のすべてを知るわけでもないキラとラクスにとっては、ちんぷんかんぷんだったかもしれない……。

ペンライトを取り出し、周囲を見渡す二人の兄弟。

キラとラクスも、何かの捜索を手伝おうと、小型ライトを取り出す。

司令室の設備は、必要最低限のものであれば十分にそろっていた。

ふと、キラの目に何かが飛び込んできた。

「…!…ドクターレイシー、あれ!」

「…?」

キラが指差したもの、それは1台の“冷凍睡眠カプセル”。

その中にいたのは、GUNDAM封印解除の鍵を残していった、一人の少女だった。

「見つけましたね、セトナさん。」

「この人が、GUNDAMと深い関わりを持った……?」

事態を少し理解できていないラクスにとっては、セトナの姿を見るのは初めてであった。

そして、セトナの眠るカプセルの横には、大型の機械に隣接するコンピュータが。

「あれ!?兄さん、これ!」

チアキが何かに気づいた。

大型の機械に何かの文字が彫られてあるようだ。

その文字は――――――













“GUardian of Nexus-mankind Defend Awakening Maximum”SYSTEM













「ま、まさか?!」

「こんなところにGUNDAMが!?」

もっと何か大型の兵器なのかと予測していたのだが、その意外な小ささに、一瞬、呆然としてしまった。

「と、とにかく、封印を解こう。弟よ、頼むぞ。」

「了解。」

チアキは早速、コンピュータのモニターと本体を起動させた。

『G.U.N.D.A.M.-SYSTEM再起動ノプロセスヲ実行シマス。所定ノ動作ヲ実行セヨ。』

電子音声が発せられ、ユーザーコードとパスワードの入力画面が表示された。

「えーっと、GUNDAM再起動のためのユーザーコードとパスワードを入力……。」

チアキは懐に入れていた紙切れを取り出し、以前に解読した暗号が間違っていないかをしっかり確認した後、キーボードを使ってしっかりと入力した。

「ユーザーコードは、“SETONA”…、パスワードは…“DELTA”…っと…。」

誤字脱字がないかも確認した後、「OK」をクリック。

すると、別ウインドウで次の動作の指示が出された。

「…最後に、“シードクリスタルをセット”して……。」

キラから青色のシードクリスタルを受け取り、所定の位置にセットした。

「……完了…っと…。」



―――――カチャッ



再び、「OK」をクリック………。









『ユーザーネーム、及ビ、パスワード、承認シマシタ……。』

沈黙の後、再び響いた電子音声、それと同時に起動する、R.G.B.内部におけるすべての施設。

『エネルギーパワー開放、“GUardian of Nexus-mankind Defend Awakening Maximum”SYSTEM、再起動シマス…。』

さらに、それに平行して、冷凍睡眠カプセルの解凍も開始され――――――。











ドカ―――――ン!









爆発音が響いた。









『わっ!?』









カツン…カツン…カツン…カツン…









ゆっくりと近づく足音。

ハイヒールの靴音のようだ。









「…道案内、ご苦労様、てれび戦士…。こんなところにGUNDAMがあったなんてね…。」













現れたのは黒き魔性の女。

その姿は、男にとっては極めて刺激が強い露出度の高い服装、背中には人間ならざる黒い翼を生やしていた。

「ゲゲッ!?も、もしかして、後をつけられて…た……!?」

「フフフ……、さすがのあなたたちも、アタシの気配には気づけなかったようね…。」

ただならぬ雰囲気が部屋全体を包み込んだ。

ここでキラとラクスが前に出た。

「あなたは…何者ですか?」

「…様子からして、魔人・パトリックと関わりが深そうに見えるけど……。」

推測的なキラの一言に、魔性の女は不気味な笑みを浮かべた。

「フフフフフフ……、少しは勘が冴えるみたいね。“SEEDを持つもの”と言われているだけあるわ……。」

その瞬間、彼女の瞳が妖しく光った。

「そう…、アタシは魔人・パトリックに仕える魔導騎士の一人、殺女(あやめ)。主・パトリックさまに伝説の力“GUNDAM”を献上すること。それがアタシの目的よ!」

その一言とともに、どこからか刀を取り出した。

しかも、その刃の長さは通常の1.3倍にも及んでいる大きなものだった。

「さぁ…おとなしくそこをお退き。GUNDAMを明け渡すのよ。」

彼女の手にしている刀の刃は普通のものとは長さが格段に違うゆえ、数歩離れた場所でも十分に届く距離だった。

脅迫のつもりだろうが、もちろん、ここで素直に従う彼らではなかった。

「あなたの脅迫に従うつもりはありません。」

「あなたたちの目的が、この世界すべての排除であるならば、尚のことです。」

レイシー兄弟もそれに続く。

「我々もキラさん、ラクスさんと同じ意思です。」

「虹の勇者として、絶対お前には負けないからな!」

彼らの返答に、殺女はさらに笑みを浮かべた。

「…やっぱり、そう簡単には曲げなかったわね…。」

そういうや否や、彼女は握っていた刀の柄を握りなおした。





「でも、必要最低限の装備しか持っていないあなたたちに、何ができるっていうの?」





――――ギクッ!!





図星を指された。

そう、彼ら4人は遺跡調査とGUNDAM復活と言うことばかりに頭がいってしまい、このような非常事態は想定していなかったのだ。

「できる筈がないわよねぇ…☆」

悪魔の笑みを浮かべる殺女に、全員が苦虫を噛み潰したかのような表情になった。

「結局、あなたたちはここでくたばるしかないのよ。すでにニュートラルヴィアにもアタシの仲間が、作戦を実行しているはずだしね。今頃、あなたたちの仲間たち、苦しんでいるかもねぇ……ホホホホホ…!」

絶句した。

自分たちがこの遺跡に入ったときから彼女らの作戦が始まっていたと言うのか。

逃げ出して彼らの援護に回ろうも、出入り口は一つしかなく八方塞がりの状態。

行き詰っていた……。

「さて、あまりここで時間をとるのもいけないし……、そろそろ終わりにしましょう。」

そう言うと、殺女は刀を大きく振りかぶり、4人は思わず目を強く閉じ―――――。













「じゃ、さよなら。」













振り下ろされ――――――。



















――――――ガキンッ!



















何かに阻まれた。















『………?』







レイシー兄弟、キラ、ラクスは、“来るはずの痛みがない”ことに疑問し―――――。







「――――――!!!!」







殺女は“居るはずのない存在”を目の当たりにして、目を見開いていた。











刃の先端部分には――――――。















「へへっ、残念でした☆」













大きな赤い目のコウモリが噛み付いていた。













次の瞬間、彼女の体はガラスを突き破って外へと“蹴り飛ばされた”。













背後から現れた、一人の少年によって………。
















「てれび戦士、SEEDを持つもの…、時間を稼ぐから、そっちは急いでGUNDAMを復活させて!」







作業を促す言葉を口にした後、少年はガラスが割れた窓から身を乗り出し――――。

「あ、あの――――。」

「キバット!」

「よっしゃ!」


キラが言葉をかけるまもなく、少年は外へと飛び出していった。

“キバット”と呼ばれたコウモリと共に………。



---to be continued---


☆あとがき
……調子に乗りすぎてホントにすみませんっ!!!(土下座)
勢いあまって、とうとう「あの作品」にまで手を出してしまいました……。(汗)
まぁ、出すとしても今までの参戦作品よりは出演者は極力抑える予定ですけれどもね……。

さて、第3部予告に出しておきながら今までずっと引っ張り続けてきたテレゾンビの襲来、ようやく書き起こすことができました!
それに呼応して先陣を切るのは、てれび戦士、ライガーシールズ、ドルフィンナイツ、そして電王4人衆!
次回から書き起こす戦闘パート、キバってクライマックスで、がんばりたいと思います!










inserted by FC2 system