Phase55 遺跡の砦


甜歌の呼びかけで、リーフのブリッジに集合したてれび戦士たち。

さらに、その場にはライガーシールズ・アークエンジェルチームの面々も集まっていた。







『えええぇぇえええぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!』







またしてもリーフ大激震……。

無理もない。

自分たちが捜し求めていたGUNDAM復活のカギが、意外な形で見つかったのだから。

「ちょ、ちょっと待て、甜歌!?」

「シードクリスタルが見つかったって、本当か!?」

「ホントホント!キラさん、あれをみんなに見せてあげてください!」

「う、うん……。」

キラは自分の手の中にある宝石をてれび戦士たちに見せた。

それを見た全員の目つきが、一変した。

「ま…間違いないぞ…!」

「本物のシードクリスタルだ……!」

ここでレイシー兄弟が会話に加わった。

「暗号化されたパスワードとシードクリスタル。GUNDAMを復活させるための必要最低限のアイテムがこれで出揃いましたね。」

「レッド隊長、ゴルゴ伯爵、GUNDAMの調査と復活の作業は、我々にやらせてはくれませんかね?」

唐突な二人の申し出に、レッドとゴルゴは驚いた。

「え?お前らだけで大丈夫なんか?」

「何か不安だぞ……。」

「大丈夫ですよ、お任せください。」





























「……わかった、あとはこっちでどうにかしてみよう。また連絡する。」

重々しく言葉を発した男は、通信を切るとため息をついた。

「失礼します。」

そこに、お茶を入れてきた一人の女性士官が。

「おぉ、ギンガか。すまんな。」

茶を受け取り、一口すする。

だが、その表情は少々暗かった。

「団長、何かあったの?」

「……今さっき、オルカファイターズから連絡で、向こうで預かっといた恭也と美由希の妹さんが見つかったそうや。ただ……。」

「…ただ?」

朗報かと思いきや、それどころの事態ではないことが、次の瞬間に理解される。

「…今回の一件でヤフキエルの攻撃をまともに受けて、瀕死の重傷らしいんや。」

「…っ!!!!」

「しかも、驚くべきことに、その妹さんが魔法使いやった言うから、信じられへん話やろ。」

“寝耳に水”どころの事態ではない。

自分たちの常識が大きく覆されたような感じがした。

「それで……そのお二人の妹さんは……?」

「…キングロブスターの集中治療室で手術を受けたあと、病室に運ばれたそうやけど、未だに意識が戻っていないんやて。」

同じ“ダイダルストライカーズ”として、二人に同情は隠せない。

特に彼女―――ギンガ・ナカジマ―――は、今の恭也と美由希の気持ちが、手に取るように分かっていた。

もしも自分の妹、あるいは両親が同じような状況にたたされていたら、その時の苦しさは想像がつかない。

「…ともあれ、そんな子を乗せている状態でキングロブスターを動かすことは出来へんし、戦闘になってしまったらますます危険が高いしな。」

「……では、当面は我々でフォローをするということですね。」

「その通りや。我々、ドルフィンナイツの久々の出撃が近づいてきたかも知れん。かなり苦労するところが多いと思うが、しっかり頼むで。」

「はい、ダンチョ団長!」

































「SEEDを持つものが見つかったと?」

「はい、マルキオ導師」

ドクターレイシーとその弟・チアキは、キラとラクスを連れて、シードピアの遺跡島“クリスティア島”へと足を運んでいた。

しかし、さすがのマルキオ導師も、“SEEDを持つもの”がキラだったとは思いもしなかった。

“意外と身近に存在するかもしれない。”

かつて愛実が口にしていた予測が、意外な形で的中したのである。

「それで、マルキオさま、これから僕たちは遺跡に入って、GUNDAMの封印を解きに向かいます。闇の魔人・パトリックが再び復活したそうなのです。」

「…だとすれば…、一刻を争うでしょう。…そうだ、プレア、あれを渡してあげなさい。」

「はい。」

プレアは部屋の奥から何かを取り出してきたようだ。

それは、クリスタルの結晶で出来た不思議なアイテム。

形は直方体、一つの面には0〜9までの数字が彫られていた。

「これは、以前に遺跡の近くで発掘されたものです。きっと、何かの役に立つかもしれません。」

その形状を見たレイシー兄弟は、そろって同じ事を考えていた。

〔……RGリモコンに似ているような気が………。〕













――――ガッタン、ガッタン、ガッタン、ガッタン……

独特の機械音を鳴らしながら、地を踏みしめて進む、大型歩行機械・レイシーウォーカーマシン。

レイシー兄弟と、キラ、ラクスの4人は、マルキオ導師と別れた後、早速カオティクス・ルーインへと向かった。

巨大な遺跡の周りを回りながら、入り口を探し続けるも、それらしきものは一向に見当たらない。

「こんなに大きな遺跡をグルグルと回り続けていても、時間がかかるんじゃないですか?」

「そう言われましても………。う〜ん…。」

もうすでに回り始めて2週目になる、このままでは埒が明かない。











「……あれ?兄さんストォ〜ップ!!!!











『うわわわっ!』











不意にチアキが急ブレーキをかけた。

「いたたた…、どうしたのだ弟よ!?」

立ち止まった場所は、カオティクスルーインの西側方面。

見た目からして、入り口など見当たらないような岩盤の場所だった。

「あっちあっち!」

「…え?」

チアキが指差した先は、斜め後ろの遺跡の壁。

ドクターレイシーは、弟の指差す先にウォーカーを動かす。

「……ここだ!」

チアキは叫ぶや否や、マシンから降りて、目的のところへ……。

「……この形、どこかで……。」

「弟よ、何か見つけたか?」

「兄さん、これ……。」

「むむっ?」

チアキの視線の先には、剣のような形をした謎の絵が。

しかし、その剣の鍔の部分に相当する場所には窪みが掘られていた。

丁度、直方体が一つ入る程度の大きさ。

レイシーウォーカーのコンピュータがその窪みを計算、一つの結論を導き出した。

「弟よ、その窪みにこの結晶をはめてみるのだ!」

ドクターレイシーは、先ほどプレアからもらったアイテムをチアキに投げた。

「了解。」

チアキがそれを受け取り、窪みにセットする。

形も大きさもピッタリだった。

結晶が窪みにはまると、虹の輝きを放ち、それが一つの絵を完成させた。

それを見た瞬間、兄弟は目を疑った。



「えぇっ?!これってもしかして!?」



「“伝説のリモコン”!?」




そう、その姿形、そしてボタンの配置まで、まぎれもなくテレヴィアに伝えられてる、てれび戦士・究極の切り札である伝説のリモコン“レインボーリモコンブレード”と全く同じだったのだ。











――――ゴゴゴゴゴゴゴゴ………………











すると、突如として地震が発生した。

「うわわわっ!?」

「おとととと?!」

「キャッ!?」

「ラクス!」


レイシー兄弟はバランスを崩し、ラクスもウォーカーから落ちそうになったが、キラが機転を利かせて彼女の体を支えた。

だが、それ以上にビックリすべきことが同時に起こっていた。

「あぁっ?!い、遺跡の壁があぁっ!!??」

なんと、先ほど結晶体をはめた伝説のリモコンの絵が描かれた壁が、地面に埋まるようにスライドしていったのだ。

「こ、これは!?」

「「!!!!!」」


ドクターレイシーもキラもラクスも、思いもしなかった展開に度肝を抜かれた。





――――ゴゴゴゴゴゴ………ガゴンッ!





大きな音と共に地震と、壁のスライドが終わった。

その奥には空洞が奥まで続いている。

ついに、“カオティクスルーイン”内部への入り口が開かれたのだ。

「こんなところに内部への入り口があったなんて……!」

「……よし、弟よ、早く乗れ、急いで内部に乗り込むぞ!」

「了解!」

チアキは早急にウォーカーに乗り込み、ドクターレイシーが操縦桿を握った。

そして4人は、シードピアの未知の領域へと足を踏み入れた。













背後の闇の影に気付かぬまま………………。

















「礼を言うわよ、てれび戦士。アタシも中に入らせてもらうわ………。」







































ニュートラルヴィア・アプリリウス銀座のH-16地区“ハイペリオン・パーク”。

その片隅に何気なく姿を見せた、3人の少年たち。

―――カチッ

CDラジカセの再生ボタンを押すと、摩訶不思議且つ印象的なヒップホップミュージックが流れ始めた。

その軽快な音楽に合わせて、レベルの高いダンスパフォーマンスを披露する、3人の少年たち。

外見からして、てれび戦士たちとほぼ同年代だろうか。








聖なる使命 胸に秘めたWarrior	翼の船で未来 離れ 遥か

陸海空 時を越える地はどこか 記した書は 焼け落ちた








その音楽と共に語られ、歌われる詞は、シードピアの未来の行く末を案じているかのような、不思議な印象の歌詞だった。








不時着した騒がしい街 彷徨い	フルサトの音信さえ途絶え 今宵

錆び付く気持ちはね返す勢い 奮い立つ tough boys








その印象深い歌詞と音楽に引き寄せられ、徐々に集まる住民たち。

ふと、彼らの曲を聴いていた住民の一人が、傍らに置かれているCDケースに眼を向け、徐に一つ手に取った。

そのジャケットには、今踊っている3人の少年たちが写っており、タイトルであろう一文と、彼らの呼び名であろうユニット名の名前が記されていた。







『勇気は時を越える/M-ist』

『“M-ist” are Noel Takeda Tsubasa Simada Riku Tanaka』








そんな3人を見守る二人の男女。

「改めてみてみると、やっぱりミストって凄いよね。」

「うん。3人もこの世界を楽しんでいるみたいだし。」

彼らの歌う歌詞の中には、未来から現代に向けたメッセージが込められている。

それを少しでも受け止めてくれれば……。









――――ズド――――――ン!!!!!!!!











「!!!!???」

突如響いた爆発音。

それと同時に、アプリリウス銀座全域に非常警報が発令された。

『緊急事態発生!緊急事態発生!アプリリウス銀座D-31地区に、未確認生物が多数出現!市街地を破壊しつつ、西側に向かって侵攻中!市民の皆さんは、至急避難してください!』

市民たちはその言葉を聴き、青ざめた瞬間に四方八方に逃げ惑った。

「良太郎!」

「うん!」

彼の意思に呼応したのか、どこからか白いバイクが現れた。

良太郎はそれにまたがると、懐から黒いパスを取り出し、ハンドル部分の窪みにセットした。

エンジンがかかり、ハンドルをひねると、白いバイク――マシン・デンバード――が起動。

現場へと直行した。

さらに、その後を追いかけるように、“ミスト”と呼ばれた3人組も現場に向かった。





































「……真っ暗で何も見えないな…。」

「レイシーウォーカーのヘッドライトでも、明かりが足りないかも……。」

遺跡に足を踏み入れて20分は経つ。

4人は未知の遺跡をただ彷徨っていた。

しかし、依然として目的地が見えない。

それどころか、この通路は明かりすら灯されていない。

長年封印されていたと言うことも原因にあると思われるが、ここまで異常に暗いと、視界が悪くなるかもしれない。

「……?ドクターレイシーさん、あれ。」

不意にラクスが指差した先。

そこには、大きな岩盤が立ち塞がっていた。

「ここが目的地……かな?」

「え〜っと…壁の強度はそんなに硬いものではないですね。では、小型ミサイルを使いましょう。」

ドクターレイシーは、ウォーカーを数歩下がらせて、ターゲットをロックした。

「レイシー・ミニミサイル、ポチッとな。」

ボタンを押すと、マシンの右側に装備された小型ミサイルランチャーから、全長8pのミニミサイルが発射され、狙い通り岩盤のみを破壊した。

壊した岩盤のさらに奥は、巨大な空洞になっていた。

4人はさらに奥へと進む……。

「…巨大な部屋みたいな場所になってる…。」

「かなり広いね……。」

「それに、意外と声も響きますわ……。」

どうやら巨大なドームのような場所になっているようだ。

チアキは懐から高電力のペンライトを取り出し、辺りを見渡してみた。

すると、自分たちの目の前に何か巨大な建物があることに気付いた。

しかも、その建物、形状的に見てどこかで見た雰囲気がある……。

「……あれ?…この建物…どこかで見たような……。」

ドクターレイシーもペンライトを取り出し、周囲を散策する。

すると、入り口の壁際に大きな箱が貼り付けられているのに気付いた。

中を開けると、幾つもの電源スイッチが。

「これは……ブレーカーのスイッチ…?

周囲を注意深く見てみると、岩肌むき出しの壁に幾つもの電気ケーブルが配線されているのに気付いた。

まともな電気すら通って居なさそうなこの場所に、なぜこのようなものが……。

何か嫌な予感がする………。

そう感じたドクターレイシーは、ブレーカースイッチを片っ端から一斉起動させた。

ドーム内部に設置された多くの電球・蛍光灯が付けられ、全体が明るく照らされた。

いきなり照らされた明かりに、キラとラクスは思わず目を瞑った。

明かりに慣れて、まともに目を開くことが出来ると、二人は思わず目を見開いた。

“古代の遺跡”と呼ぶには相応しくない、機械的な壁が何箇所も取り付けられており、まるで何かの秘密基地のような場所だった。



























「ああああぁぁぁぁ!!!!!!!」



























突然響いたチアキの叫び声。

「ど、どうしたチアキ!?」

兄が駆け寄り、弟の様子を見ると、見開かれた目線が一点に集中しており、さらに体を大きく震わせて“その物体”に指をさしている。

ドクターレイシーも、チアキの視線の先をたどってみた。

すると――――――――。











通常、“この世界に存在し得ない建造物”の姿が眼に留まり、ドクターレイシーもチアキと同様に固まった……。















状況を飲み込めないキラとラクスは、首を傾げるばかり。









数刻を待って二人が口を開いた。











「…なぁ、チアキ……俺って…夢でも、見てるのかな……。」















「……大丈夫だよ、兄さん……僕も今、…そう思ってたところから……。」















「じゃあ…、これって、現実……!!??」















「……しかありえないでしょ、この状況では………。」















そして次の瞬間、二人は同時に絶叫にも似た奇声を発した。



















「「なんでここに“R.G.B.”があるんだよぉ〜っ!!!!!!??????」」



















テレヴィアにしか存在しないはずの、てれび戦士たちの砦の一つ・“レインボー・ガーディアン・ビルディング(R.G.B.)”。

















それが、なぜカオティクスルーインの内部にあるのか……!!??



---to be continued---


☆あとがき
構成当初から書きたかったネタ、ようやく解禁です☆
実は、第1章や第2章などで随所で“虹の勇者”の言葉が出てきたのは、こういうことだったりします。

さて、今回は予告どおり、ダイダルストライカーズの第2部隊・ドルフィンナイツのリーダー格2名、ダンチョ団長とギンガの二人が登場でございます。
ちなみに、アキッキーさんのアイデアにより、このシードピアにおけるギンガ、スバル、ティアナの3人は魔法使いではないと言う設定で参りたいと思っております。
さらにはなんと、“タイムトラベル”繋がりで、天てれ史上最強のアイドルユニットM-istにもご登場いただきました☆
まぁ『“タイムトラベル”繋がり』、とくればどの勢力に属しているかは、大体予想はつきますよね。

……と言うわけで次回は、『良太郎&M-ist、変身!』でございます!










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