Phase53 光と闇のプレリュード
〜4th Blank 爆鎮〜


ニュートラルヴィアで新たに出現したヤフキエルは、これまで上空から飛来してきたヤフキエルと比べ、格段に異なっていた。

機動力も然ることながら、その全長も並みのモビルスーツに負けず劣らずの大きさ。

さしずめ、これは“ヤフキエルU(セカンド)”と呼称すべきだろう。

そのヤフキエルUの奇襲を受けたカナード、ラクス、ニコル、サーペントテールチームのイライジャは、苦戦を強いられていた。

『くそっ、何なんだ、こいつは…!?』

『皆さん、ご無事ですか!?』

『なんとか……、でも、これは今までのヤフキエルとは明らかに違いますよ!』

『確かにな、こいつは少々厄介だぞ…!』

ふと、ヤフキエルUが動いた。

背部のスラスターを吹かせて高速で飛び、4人を撹乱させる行動に移ったのだ。

『なっ、なんだこの速さは!?』

『MSのカメラが、全然追いつかない!?』







グゥォンッ!!!







ズガガッ!!!







『キャアアアァァァ!!!!』







ヤフキエルUの拳が、ラクスの“セイリョウ”の胸部を貫き、攻撃をまともに受けたラクスは、そのまま後方100メートルまで飛ばされた。

『ラ、ラクスさん!!(ドガンッ!)うあっ?!!!』

ニコルは隙を衝かれて、ヤフキエルU体当たり攻撃を食らい、そのまま体勢を立て直すことも出来ずに吹き飛ばされた。

『ニコル!……くそっ!』

『これ以上はやらせるかぁっ!!!!』

これで触発されたのか、カナードとイライジャはヤフキエルUに特攻を仕掛けていった。

しかし、“これで勝つなど『取らぬ狸の皮算用』”と言わんばかりに、配下の他のヤフキエルたちを二人に差し向けた。

『ジャマするなぁ!ザコの分際でぇっ!!!!』

カナードのセイリョウに取り付けられた砲撃戦用アタッチメント“パンツァーユニット”の大火力砲が一斉に火を吹いた。

その一閃がヤフキエルを一掃する。



だが、そこに“ヤフキエルU”の姿がないことに、二人は気付かなかった。



――――ヴィーッ!ヴィーッ!ヴィーッ!



『何ッ!!??』





『う、後ろ!?』













――――ズガッ!!!!





――――バキャァッ!!!!







カナードは右のスマッシュパンチを受け、イライジャは左のアッパーカットを食らい、吹き飛ばされた。











『『ぐああああぁぁぁぁっ!!!!!』』











二人はそのまま地面に叩きつけられ、瞬間、意識を手放した。











ヤフキエルUは、それを確認すると、最初に吹き飛ばしたラクスのMSに近づいてきた。

『…ぅ……ん………っ!?』

他の3人と同様、意識を手放していたラクスは、辛うじて眼を覚ましたが、ヤフキエルが自分に近づきつつあることを知り、同様を隠せなかった。

『ニコルさん!カナードさん!イライジャさん!応答してください!』

連絡を取ろうにも、回線が繋がらない。

先ほどの衝撃で通信系等が故障してしまったようだ。

その間にも近づいてくる神の番人。

普段冷静な彼女の心に、恐怖が芽生えた。

このまま死を待つしかないのか……?

(……キラ…ッ…!!!)











「ラクス――――――――ッ!!!!!!!!」











ズガッ!!!!









シュナイダーユニットに換装したセイリョウが、ラクスの目の前に現れた。

キラが駆けつけてくれた……!

(キラ……ッ!!!)







「…ラクスは、絶対に死なせない…!」









――――死なせてなるものかあぁっ!!!!!!!!





















同じ頃、ゾロアシアワールド。

こちらにも、ヤフキエルUの反応が新規に感知されていた。

しかも、その数は15体。

『キャアアアァァァ!!!!』







ズガンッ!!!







『うぐっ!!??』








『お姉ちゃん!?』

『ルナマリア!!』

容赦ない攻撃を繰り返すヤフキエルに、ルナマリアは押され、ついには体当たりをまともに受け、そのまま建造物に叩きつけられた衝撃で、気絶してしまった。

『ぐあっ!』

『チィッ!しつこいよ、あんたたち!』

『とっととくたばれっつーの!』

オルカファイターズ・チームオクトパスも、新たに出現したヤフキエルの猛攻に、防戦一方の状態だった。

『くそっ……、このままでは全滅だ……!どうすればいい……!!』

アスランもここにきて、急に弱気になりかけていた。

『シンもあの状態では………。』

カメラの視線の先には、ビルにぶつけられ大損傷を負った、シンのネメシスがあった。

そう、彼は突如現れたヤフキエルUに背後を衝かれ、そのまま吹き飛ばされてしまったのだ。

その影響で彼の音信は不通。

状況は最悪だった。











「…ぅ……ぅ、うぅ…っ………。」

起こそうとすると痛みがくる頭を必死にあげて、状況を整理する。

辛うじて計器は生きているようだ。

それを確認した矢先、シンは目の前の状況に絶句した。

「っ!!!ル、ルナマリア……!!??」

カメラアイのモニターに飛び込んできたのは、損傷してしまったルナマリアのネメシスが。

さらに、チームメイトたちとオルカファイターズが、徐々に押されてきている光景が眼に映ってきた。

「みんなが……!!!!」

信じたくない光景をまざまざと見せ付けられ、彼の胸が徐々に締め付けられていった。

家族を目の前で失って以来、誰よりも“絆”と言うものに敏感になっていたシン。

ここで彼らがやられてしまったら、また自分が孤独に成ってしまう。

脳裏に、自分の妹が腕の中で息を引き取った光景がフラッシュバックした。







「こんなところで………!!!」







―――――こんなところで俺はあぁっ!!!!!!!!















「「うおおおおぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!」」




















『誰よりも大切な存在を守りたい。』





その二人の少年の、何よりも硬い決意が、二人の体の中に眠る“何か”を目覚めさせた。













――――――――カアアアアァァァァァァッ!!!!!!



















空中コロニー“レクイエム”のB.C.F.本部・ドミニオンベースに駐留している旗艦・フレスベルグ。

そこで遠隔操縦による、ヤフキエルの大逆襲作戦を敢行していたフレイたちは、この後の地上の現状に、驚愕することになる。

「………あれ?…おかしいわね?」

「ミューディー、どうしたの!?」

「ヤフキエルに指示を送れないのよ遠隔通信の異常かしら……?」

『えっ!!?』

赤外線による遠隔通信が突然切れた?

考えがたい状況に、フレイも目を見開いた。

その言葉を耳にしたクルーたちも、視線をミューディーに集中させた。

「ほら、ここを見て。」

「……ホントだわ。通信が遮断されてる…。どう言うことかしら…!?」

「……!!!な、なんだよコレはよ!!!!」

モニターに視線を移したシャムスが声を荒げた。

「どうしたのシャムス、何かあったの!?」

「これを見ろ!」

そう言って彼が表示させた光学映像。

そこには、“蒼い光”と“紅い光”が眩いばかりに輝いていた。

しかも、ニュートラルヴィアとゾロアシア・ワールド、双方で。

「う、うそ!?何よ、この輝きは!!??」

「何か、嫌な予感がするわ………!!!」









その輝きは、ヤフキエルの工廠でモニタリングしていたブレントの眼にも飛び込んできた。

「…何ッ!!??」

ここまで強い輝き、しかもその影響でヤフキエルに異常が生じるとは考えられないことだった。

そう考えかけて、ブレントの脳裏にある事柄が過った。

それは、シードピアで伝説とされている“GUNDAM”の存在。

そして、それに深く関わると言い伝えられている、“シードクリスタル”。

「…バカな…、まさか……シードクリスタルが実在するとでも言うのか!!??」

















キラの操るMS・セイリョウから、突如として蒼い光が発せられ、それが収まったかと思いきや、そのセイリョウの背中部分に、コバルトブルーの翼が現れていた。

その直後、キラは目の前のヤフキエルUに向けて特攻。

シュナイダーユニットの標準装備である2本の大型対艦刀を振り下ろし、両腕を切り落とした。

さらに、そのまま間髪いれず、Xを描くように刀を振り下ろすと、ヤフキエルは爆散することなく、崩れ落ちた。

全てが終わると、キラの体に異変が。

「ぐっ!?」

突然体が青白く光りだしたかと思いきや、胸元から鈍い痛みが。

すると、胸元から光の中心と思しきものが取り出され、それが実体化された。

現れたのは、海の色を髣髴とさせる、蒼い宝石だった。







また、ゾロアシア方面でも、シンが驚くべき活躍を見せた。

紅い光が収まったかと思うと、シンのMS・ネメシスの背中に、真紅の翼が実体化していた。

「でぇあああぁぁぁぁぁぁぁ!」

叫び声と共に勢いそのままに、ヤフキエルUの大群に突撃し、次から次へと切り裂いた。

そして、最後の1機となると、サーベルをヤフキエルの頭部に投げつけ、ケリをつけた。

全てが終わると、シンの体に異変が。

「うぅっ!?」

突然体が紅く輝いたかと思うと、胸元から鈍い痛みが。

すると、胸元から光の中心と思しきものが取り出され、それが実体化された。

現れたのは、炎の色を髣髴とさせる、紅い宝石だった。







その二つの宝石は、どちらも形に置ける共通点があった。

その形は、例えるならばそう………“何かの植物の種のような形”、そんな感じだった。







ニュートラルヴィアで後方支援に回っているウェンツとタカティンは、ある異変に気付いた。

「あれ?もしかして……。」

「空中で……止まってる?」

そう、あの眩い輝きを目撃してから、上空に点在していたヤフキエルが静止していたのである。

『チームスキッド、聞こえるか?』

「お!“オクトパス”!」

ここで通信が入ってきた。

相手は、オクトパスの副隊長ジャン・キャリーと、そのメンバーのディアゴ・ローウェルだ。

『なぁ、そっちのヤフキエル、今どんな状況だ?』

「それが、空中に留まったままシーンと静まってるんだよね。」

『やはりか。こちらのヤフキエルも、あの強大な光が発せられてから、完全に静止している。』

「マジで?これってチャンスじゃん!?」

決着をつけるには今しかない。

通信していた4人は真っ先に同じ考えをしていた。

「セイコー!こちらチームスキッド、タカティン。ヤフキエル全軍完全静止!この場で、“ファイナルウェポン”の使用許可を!」

『こちらチームオクトパス、ジャン・キャリー、こちらのヤフキエルも完全に止まっている。今のうちに上空のヤフキエルを一掃するため、こちらも“ファイナルウェポン”の許可を要請する。』

数刻を待って、ブリッジから返答が届いた。









『よし!“ファイナルウェポン”導入を承認する!』



『スキッドは“エンド・オブ・バミューダ”を、オクトパスは“ジャッジメント・ポセイドン”を起動させます!』



『大海原の怒りをもって、爆裂的に鎮圧せよ!』







『了解!』









ダイダルストライカーズ最大の切り札・ファイナルウェポン――――――。

それは、大量の稼動兵器の撲滅や、大型戦艦の轟沈を目的に製造された、最終兵器の総称。

しかし、想像を絶する膨大な攻撃力を有し、使い方を誤れば、自分たちにも甚大な被害は避けられず、キングロブスターのリーダー格3人の合意承認がなければ、使用は不可能である。



「ウェンツ、準備はいいかい?」

「あぁ、任せときな。」

ウェンツのシーガルが装備したのは、“エンド・オブ・バミューダ”。

命中地点から半径1キロ以内の兵器を、完膚なきまでに凍らせる威力を持つ特殊氷結弾。

大型の専用ライフルに、弾丸を装填して使用する。



「ディアゴ、準備は出来たか。」

「いつでもいいぜ、副隊長!」

ディアゴが装備したのは、“ジャッジメント・ポセイドン”。

並みのモビルスーツの2倍近くの大きさを誇り、一撃で大型戦艦を破壊できるほどの威力を持つ高出力ビーム砲である。

ただし、一発撃つだけでMS1機分のエネルギー全てを消費してしまう危険があるため、“シザース・カタパルトシップ”に接続した状態で使用するのがセオリーである。











『Final Weapon Stand by.』













“エンド・オブ・バミューダ”のスコープが上空のヤフキエルを、“ジャッジメント・ポセイドン”の砲口が、ヤフキエルを大量に差し向けた“レクイエム”へと向けられた。



















『Target lock.Full Charge.』













「ファイナルウェポン“エンド・オブ・バミューダ”!」









「ファイナルウェポン“ジャッジメント・ポセイドン”!」













『発動!!!!』













『End of Bermuda.』









『Judgment Poseidon.』














その瞬間、大海原の裁きが下された。











――――――――ギュアアアアァァァァァ!!!!













――――――ドゴオオォォォン!!!!













『うわああああぁぁぁぁ!!!!!』





『キャアアアァァァ!!!!』














“ジャッジメント・ポセイドン”の高出力ビームをまともに受けたレクイエムは、またしても大打撃を受けることとなってしまった。

しかも、この攻撃の余波で、待機していた残りのヤフキエル、さらに赤外線通信機能すらも破壊され、チェックメイトとなった。











一方、“エンド・オブ・バミューダ”の射撃で凍らされてしまったヤフキエルは、成す術もなくシードピアの地表に落下した。

さらに、そこから遥か上空に居た残りのヤフキエルも、赤外線通信機能を破壊されたことで、飛行能力もなくなり、地上へと急転直下した。









それ以後、増援のヤフキエルが来ることはなかったと言う……。















こうして、シードピア全てを震撼させ、後に“ヤフキエル襲撃事件”と名づけられた大激戦は、B.C.F.の敗戦となり、幕を下ろした。























「…おのれぇ〜…!」

損傷を受けたレクイエム工廠内部で、作戦の失敗を悔やむブレント・ファーロング。

「まさか……シードクリスタルが現れることになろうとは…!」

シードクリスタルが現れたと言うことは、これから起こりうる可能性は唯一つ。









『GUNDAMの復活』











しかし、彼にとって“高町なのは”が堕ちたことは不幸中の幸いと言ってもいいかもしれない。

「彼女の存在は極めて大きい。ここで彼女が消えれば、こちらとしても比較的ラクに事が運べるからな……!」

まだまだシードピアを潰す作戦は残されているからだ。

「まぁ所詮、今回のはほんの小手調べでしかない。せいぜい、今後も足掻いてほしいものだな……。フフフフフフフ、フハハハハハ!」











――――――ハ〜ッハッハッハッハッハッハ………!!







---to be continued---


☆あとがき
アキッキーさんがまたしても凄い装備のアイデアを贈ってくれました☆ありがとうございます☆
ちなみに、ファイナルウェポン使用のときの随所に、『トミカヒーロー・レスキューフォース』のネタを取り込みました☆
……って言うか、今気付いたけど、もしかしてこのファイナルウェポンの元ネタって………!?

さて、実は次回の原稿はすでに8割方まで仕上がってきています。
もう少し時間をかけて修正すれば完成するかと思います。
ちなみに、その次回は“After Blank”と題して、戦士たちのその後の様子をお送りしたいと思います☆

……って、ん?
????「うわああぁぁ、どいてどいて〜!!!」
ちょちょちょ、どわああぁぁ!
ドッシ―――――ン!
(自転車に乗った少年と衝突……)
????「いたたたた……ごめんなさい、大丈夫ですか?」
…いたた…うん、どうにか…。
????「ホントにごめんなさい。」
いや、気にしないけど………そう言う君も気をつけてよ。
????「はい、失礼します。」
気をつけてね。
????「………はぁ、今日はかなり最悪なブルーに入るな、コレ………」 (そう言って立ち去る…………。)
……………えっ!!!???










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