Phase51 光と闇のプレリュード
〜2nd Blank 奇襲〜


「フフフフ……。」

レクイエム内部に設けられた“D.S.C.”の軍事工廠内部。

その最深部には、魔導生命体・降魔の培養装置が備えられた。

言わば、ヤフキエル量産の中枢を担う重要拠点である。

その内部で、悪魔の微笑を浮かべ、自信満々の士気を高める、最高責任者ブレント・ファーロング。

「さて、人間風情が何処までねばれるか……見ものだな…。」

そうしている間にも続々と量産されていく降魔。

それと同時並行して製造されてゆくヤフキエルの外部装甲。

「まぁ、精々あがいて欲しいものだな。そして、思い知るが良かろう………。」

















―――――自らの弱さをね!!!!!!!!

















「畜生!こんなに大量の敵を相手にできっかよ!」

『シン!文句を言ってる暇があったら、目の前のことに集中しろ!』

コックピット内部に、リーダーの怒声が響く。

そして、目の前のモニターには、数えるのがイヤになるほど大量に展開されているヤフキエルの群れ。

いくら撃破しても全然数が減らない一方で、ミネルバチームは大苦戦を強いられていた。

まるで人工頭脳を持っているかのようなヤフキエルの攻撃に、全員が手も足も出ない状況だった。

地上にもヤフキエルの群れ、上空にもヤフキエルの群れ。

もはやそこらじゅうヤフキエルで埋め尽くされていたのだ。

『こんのぉ〜!とっとと消えなさいよ!』

ルナマリアの声が響いた。

彼女の操るネメシスのレーザーサーベルが、ヤフキエルの上半身を引き裂く。









『どけええぇぇぇぇっ!!!!』









すると、突然通信回線越しに極めて大きな怒声が鳴り響いた。

それと同時に2機のMSが戦闘に介入し、一気に20機以上のヤフキエルを切り裂いた。

一方の機体は、両腕の部分からビームサーベルを繰り出し、もう一方の機体は両腕に大型対艦刀を握り締めていた。

しかし、どちらのMSにも肩の部分にシンボルマークが刻まれていた。

それは――――――。













「……シャチの、エンブレム…!?」













『戦闘区域に8機のMS介入!これは……!!“オルカファイターズ”です!!』

ジェネシス・フォートレスのオペレーター、メイリンの報告で、エターナル・フェイス全軍が驚愕し、全てのMSが別方向の一点に集中した。

そこには、シャチのエンブレムを肩に取り付けたMSの一群がその場に佇んでいた。

それにしても、B.C.F.と対立していた存在でありながら、ある時を境に忽然と出てこなくなったあの部隊が、なぜ今頃ここに……!!??





「オルカファイターズ………!なぜ彼らが……!!??」

メイリンからの報告を受けたアスランも戸惑いを隠せない。

オルカファイターズとくれば、導き出される結論は一つ。

反B.C.F.派としてその名を知られる謎の部隊・ダイダルストライカーズが動き出したと言うことだ。

『失礼する。お前がエターナル・フェイスのMS部隊のリーダーか?』

通信モニターに回線を入れてきたのは、金髪に白スーツの風貌と言う、見た目からして少々厳つい雰囲気が窺える男だった。

「はい。ミネルバチームリーダー、アスラン・ザラです。」

『そうか。俺はオルカファイターズ第2遊撃部隊“チームオクトパス”のリーダー、カイト・マディガンだ。』

「第2…遊撃部隊……!?」

『俺たちオルカファイターズは、2つの主力と1つの特殊部隊によって編成されている。今頃、もう一つの主力部隊も、ニュートラルヴィアに到着しているはずだ。』

















『くそっ!まさか、ニュートラルヴィアが戦場になるなんて……!!!』

悔しそうなカガリの声が通信越しに響く。

この緊急事態はライガーシールズですら予測していなかった。

ニュートラルヴィアの市街地・アプリリウス銀座の全域の40%はすでに火の海と化していた。

その炎を見下ろすようにして、200機以上のヤフキエルが展開していた。

『うろたえる暇があったら目の前の敵を片付けることを考えろ!』

カガリに釘をさすのは、ライガーシールズの特殊部隊サーペントテールのリーダー・叢雲劾。

今回の緊急事態を受け、急遽、彼らもアークエンジェルチームの後方支援に回ることになっていた。

「ミリアリア!風花ちゃん!周囲の状況は!?」

『ダメ!ニコルもカナードも、押されてきているわ!それに、ティアーズもヤフキエルの大群に行く手を阻まれて、合流が遅れるみたいなの!』

『イライジャも状況が全然よくないみたい!このままじゃG.L.B.も危ないかもしれない!』

二人からの報告を受け取り、キラの表情もますます険しくなった。

これだけ大量の稼動兵器、いくら撃墜してもキリがない。









――――――ギュアアアアァァァァァッ!!!!!!









――――――ドゴオオォォォン!!!!!










突如、自分のMSの目の前を大型レーザーが通り抜け、一気に40機のヤフキエルが撃墜された。

それを皮切りに、上空に点在していたヤフキエルも、1機ずつ撃墜され始めた。

『アプリリウス銀座区域外に、新たなMSの反応あり!これは……!ダイダルストライカーズです!』

「えっ!!??」

ミリアリアの報告でキラが絶句すると同時に、周囲も驚きの声を上げた。

『なっ!?何だと!!??』

『まさか…オルカファイターズか!!??』

劾の考えを的中させるかのように、さらに上空から一本の刀を携えた真っ赤なMSが降り立った。

『よぉ!劾!久しぶりだな!』

『貴様…、ロウ・ギュールか!?』





『ヒャッホー☆命中☆』

『奇襲は大成功だ!』

オルカファイターズの主力MSのシーガルとぺリッパー。

ブルーコスモス・ファミリーのMS“ナイトメア”のOSを応用して作られたオリジナルMSである。

パイロットごとに固有武装が設定されており、先ほどの奇襲攻撃は、通信ライン越しに喜びの声を上げるタカティンとウェンツによるものだ。

タカティンが地上のヤフキエルを両肩のレーザーキャノン砲で一掃し、ウェンツがビームスナイパーライフルで精密狙撃を行っていたのだ。

「だが油断はできないよ。ひょっとしたら、さらなる援軍も到着するかもしれないからね!」

奇襲がうまくいったとは言え、まだまだ戦闘は序の口。

アスミンが先を見越してさらなる警戒を送る。

『よーし、チームスキッド、これよりニュートラルヴィアの支援活動に入る!』

『タカティンとウェンツはこのまま攻撃続行!少しでも相手の頭数を減らして頂戴ね!』

『『オッケー!』』

角田と山川の指示で、二人は攻撃を再開した。

残りのメンバーも、ライガーシールズとティアーズの援護のため、一斉に動き出す。

『アスミン、君はライガーシールズと合流しているロウのところへ向かってくれ!』

「OK!任せときな!」

アスミンも指示を受け取り、アプリリウス銀座方面へと向かう。

「こんどん!みのぽー!隊長たちの足を引っ張るんじゃないぞ!」

『わかってますってば!』

『がんばりまーす。』





「随分とややこしいことになってるじゃねぇか。オレも手助けしてやるぜ!」

そんな彼の調子いい言葉に対し、劾は内心、己のライバルとの意表をつく再会に、驚いていた。

『ロウ、貴様が“ダイダルストライカーズ”に参加していようなど、思いも寄らなかったぞ。』

「へっ、悪いが積もる話は後だ。今は――――――。」

話を区切って、ビームライフルを取り出し、劾の後ろのヤフキエルを落とす。

「この邪魔くせぇ“神の番人”を潰すのが先だぜ!」

ロウはジャンク屋という職業柄、MS戦は荒削りな部分があるが、己の信念の高さは一級品。

王道ではなく、己の“アストレイ”を歩み行く彼だからこそ、今の彼があるのかもしれない。

劾は、ロウのそういうところを気に入っていた。

『……フッ…、違いない!』

ライバル同士の二人は、久々の共同戦線を張ることにした。













『左舷後方8時の方向より、増援のヤフキエル部隊、接近中ッス!』

「チィッ!キリがねぇな!」

思わず竜一は唇をかんだ。

「黒い団子三兄弟は8時の方向に回ってヤフキエルを撃墜しろ!」

『『『アイアイサー!!』』』

有沙女王が部下に的確に指示を送る。

てれび戦士たちは、ドクターレイシーが量産したMSマサムネでヤフキエル軍団に対抗していた。

その威力は凄まじく、装備する大型の刀・ムラサメマルによってヤフキエルが次々と切断されていった。

しかし、合計で200機以上、その上絶え間なく続く増援の数々。

どういうからくりでヤフキエルを量産しているのか、今のティアーズたちには知る由もなかった。

「あれ!?」

「ユリア、どうした!?」

「戦闘区域に新たなモビルスーツの反応があります!」

「B.C.F.か!?」

竜一は、B.C.F.の指揮官機が近づいてきたのかと思ったのだが、その予測は覆された。

「それが……現状のこちらのデータベースには載っていないんです!」

「なっ、なにぃっ!?」

次の瞬間――――――――。









“手甲型パーツを取り付けた謎のMS”が介入し、その鉄拳でヤフキエルを5機分まとめて吹っ飛ばした。















「わわわわわ!ななっ、なになに!?」

一瞬の出来事に、甜歌も思わず声を震わせた。

すると、それに加えて3機のMSが戦闘に介入し、ヤフキエルの排除を開始した。

『テレヴィアから来訪した“てれび戦士”諸君、お初にお目にかかる。我々はB.C.F.に相対する特殊部隊・ダイダルストライカーズである。』

おそらくリーダー機であろう、先ほどヤフキエルを吹き飛ばしたMSから、全周波回線で通信が繋げられた。

『“てれび戦士”諸君、我らダイダルストライカーズも、B.C.F.の作戦の阻止のために、協力させてもらおう。』

見ず知らずの相手に突拍子のない言葉を口にされ、甜歌は戸惑った。

それは無論、他の戦士も同様であったが――――――。

『ダイダルストライカーズとやら、救援の申し入れ、快く受け入れよう!』

「ちょっ……!!??有沙女王さま!?」

てれび戦士たちの大方の考えを覆した有沙女王の言葉に、全員が度肝を抜かれた。

『口を挟んでいる暇はない!今はヤフキエルを撃墜させることだけを考えるのじゃ!』

「『りょ、了解!』」

どうやら彼らの真意を問いかけるのは当分先のようだ。

















「はああぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

気迫の入った掛け声と共に刀を振り下ろし、敵機を一刀両断する。

スピリチュアル・キャリバーの主力でもある可変式モビルスーツ・ワイバーンである。

彼らのモビルスーツもまた、ダイダルストライカーズのシーガルやぺリッパーのように、パイロットごとの特殊装備が成されている。

彼女―――真宮寺さくらの場合は、大型の日本刀が備わっている。

もちろん、彼女だけでなく、ワイバーンに搭乗しているメンバーたちには、それぞれ特有の武装が備わっている。

『これ以上は行かせません!』

エリカのワイバーンは、ヤフキエルに相対するであろう“天使”をイメージしたフォルム。

さらに、右腕は5連装ガトリングビームマシンガンが取り付けられている。

普段から護身の度に、十字架型のマシンガンを乱射している彼女らしい、後方支援特化になっている。

『エリカさん!下がって!』

通信音声と共に現れたのは、ジェミニのカスタムワイバーンだ。

彼女の特有武装は、ショットガンと大型日本刀が合体したような、いわゆる“ガンブレード”とも言うべき装備である。

しかし、今の彼女のワイバーンはMA(モビルアーマー)形態。

しかも、全速力で30〜40機近くのヤフキエルの大群に直進していった。

だが、その際彼女は、自らの霊力を解放しつつあった。







『ミフネ流剣法………イッツ・メンキョカイデン!』

















ターニング・スワロー!!!!























瞬間、彼女の機体の先端部分から、愛馬・ラリーを模した炎の塊が姿を現した。

刹那、それがヤフキエルの大群の中央を突破した後、ヤフキエルは爆発、四散した。

しかし、一向にゴールが見えない。

『はぁ、はぁ、はぁ………この数、相手に出来ないよ…!』

『まるで、無限に機数が補充されていくかのようです…!』

このメカニズムは、一体どうなっているのだろうか………。

ふと、カメラの視線の先にあったヤフキエルが撃墜された。

そこには、純白のボディのワイバーンが2機。

総司令官・大神と、部隊長・大河の操るワイバーンである。

わずかに違うのは固有武装。

大神は大型の刀が二本に対し、大河は日本刀と子太刀がそれぞれ一本ずつ備わっている。

『大丈夫か、みんな。』

『状況はどう?』

二人の通信に応えるのはエリカとジェミニだ。

『全然ダメです。いくらやっつけてもどんどん増えてきます〜。』

『まるで、“無限の軍勢”と戦っているような雰囲気だよ。』

無限の軍勢―――。

まさにその言葉が似合う展開であった。













「――――ッ!!!!!!ジェミニ!!!後ろっ!!!!!!」

























突如響いた大河の叫び声。

ジェミニが振り向くと――――――。

















「――――――!!!!」

















大きく腕を振りかぶったヤフキエルが眼前に迫っていた。

















「しまった!!!!!」

















“Accel Shooter”

















「シュ――――トッ!」

















――――ズガッ!!!

















ヤフキエルの攻撃が届くかと言うようなギリギリの瞬間、横から桜色のレーザー光線が放たれ、ヤフキエルの頭部を貫いた。

攻撃を受けたヤフキエルはそのまま海面に落下した。

「い、今の攻撃は……!?」

「――――ああぁぁっ!!!!!」

「ど、どうした、新次郎!?」

「あ、あれあれ!!!」

新次郎が指をさした先に向けた視線。

そこに映ったのは…………。









「まっ、まさか!?」











『『あのときの魔法使い!!??』』













そう、数日前にてれび戦士たちを窮地から救ってくれた、あの白い魔法使いだったのだ。

しかも、よく見ると今回は彼女と相対するような黒い翼を持った魔法使いも引き連れていたようだ。

だが、そう考える間にその二人は、瞬く間にスピリチュアル・キャリバーの周辺のヤフキエルを完全に撃墜していった。

そして、一段落がつくと、すぐさまニュートラルヴィアへと直行した。

「また、忽然と飛び去っていきましたね……。」

『本当に、あの少女たちは何者なんだ……!?』

















同じ頃、こちらはゾロアシアワールド上空。





「まとめて…潰れろおおぉぉぉっ!!!!!!!」





真紅の服を纏った少女が、手に持つ鉄槌を振り下ろすと同時に、周囲に展開されていた魔力鉄球を豪快に撃ちまくった。

速度と破壊力が増した鉄球は、狙い通り敵機を撃ち落した。



“Explotion!!”

発せられた電子音声と同時に“弾薬”が排出され、攻撃力が増強されると、剣全体から炎が上がった。

瞳を閉じ、それを構えた女性騎士は、敵が近づくのを感じると同時に、眼をカッと見開いた。





「紫電……一閃ッ!!!!」





炎と共に振り下ろした剣の一撃は、確実に“神の番人”を切り裂いた。

ここで通信を入れて、仲間たちの様子を見る。

「皆、状況はどうだ!?」

『いくらぶっ潰してもキリがねぇ!!』

『こっちもザフィーラと合流したんだけど――――。』

『敵の数が減少している傾向が一向に見られない。まだまだ時間がかかる。』

「くそっ……ブレント・ファーロングめ……!!」

















―――――!!!

「これはっ!!」

「恭ちゃん!!」

キングロブスターのメインブリッジで出動待機している、特別遊撃戦力の恭也と美由希は、どこか懐かしい“気”を感じた。

『ん?』

「どうしたんだ、二人とも。」

二人の異変を感じ取ったジョージとセイコーは、二人に視線を向けた。

「セイコー、大至急俺たちを出撃させてくれ!」

突拍子もない恭也の言葉に、ジョージの目が点になった。

『はぁ?何なのさ、いきなり。』

「なのはが……あたしたちの妹がこの世界にいるんです!」

美由希のその一言を聞き、セイコーの目つきが変わった。

「……本当か!?」

セイコーは以前、この二人が入隊するとき、気になる話を耳にした。

不思議な陣形の影響でこの世界に迷い込む際に、末の妹の姿を見かけたらしい。

もしかしたら、その子も何かしらの影響でこのプラズマ界に迷い込んでしまったかもしれないと言うのだ。

以来、セイコーたちダイダルストライカーズは協力の傍ら、その末の妹の捜索にも全力を尽くしていたのだが、どうやら二人が一足先に感知したようだ。

余談だが、二人がいち早く妹の居場所を突き止めることが出来たのは、“霊力”が備わっているからであった。

二人の話を耳にしていた美沙も、現状を整理し、言葉を並べた。

「二人の話が本当だとするならば……その子は一刻も早く保護しなきゃいけないわね。」

「場所は分かるか!?」

「おそらく、ニュートラルヴィアです!」

ポイントの推測も受け取ったセイコーは決断を下し、格納庫への内戦通信を繋げた。

「ジャン班長、プロフェッサー、恭也と美由希の“カスタム・シーガル”の準備は出来てるか!?」

『おぉ!セイコーさん、大丈夫ですよ!ロウのアイデアを元に、完璧に仕上げておきましたぜ!』

『二人のためのチューンナップも完了しているわ。乗り込んでくれるなら、いつでもいいわよ!』

「よぉし!これから二人がニュートラルヴィアに向けて発進する!最終調整を始めてくれ!」

『了解しました!』

『任せてちょうだい!』

回線を切り、セイコー、ジョージ、美沙は念を押した。

「もし、その子の身に何かが起こったら――――。」

『迷わず助けてあげるんだ!』

「でも、保護したら早急に戻ってくるのよ、いいわね!?」

「「はいっ!!!」」

















――――――――ズゴゴゴゴゴゴ…………!!!!!!







『うわわわわわああぁぁ………!!!!!』






次元航行船・カイロシアは、スピードクイーン羅夢の大暴走で、シードピアに近づきつつあった。

「全開バリバリィ〜☆」

彼女はご機嫌絶好調なものの、クルーたちの表情は恐怖そのものだった。

どこかにしがみ付いているのが精一杯だった。

「ブレエエェェェェェキッ!!!!!!!!!」



――――――ガシューーーン!!!!!



『どわわあああぁぁぁっ!!!!!!』








そして、急発進&急ブレーキが彼女の大きな欠点でもある。

案の定、羅夢は目的地に到着すると最大級のブレーキをかけて、全員その場で転がってしまったのだった。

「管理外世界45番・シードピアに、とうちゃ〜く☆あ〜、楽しかった♪」

羅夢がふり向いた先には、彼女の大暴走の影響でくたくたになっていたクルーの面々が。

「あれ?どうしたの、みんな?」

何気ないその一言が引き金となったのか、即座に人間体に変身したアルフが掴みかかってきた。

「おい羅夢、おまえ調子に乗るな☆」

アルフの表情は笑顔そのものだったが、なぜかこのときばかりは羅夢の背筋が凍った。

この状況になってしまったら、もはや逆らえない。

それは、誰よりもフェイトが一番良く知っていた。

「いかにあんたがスピードクイーンだと言っても、スピードの出しすぎにもほどがあるだろ。マジでふざけるな☆☆」

「あ、アルフ、言葉と表情が一致していないんだけど……。」

「悪いけどフェイトは黙ってて〜☆」

“言葉と表情が一致しない。”

これは非常に危険な兆候でもあった。

アルフは今、本気で怒っている。

狼の頃の野性の本能が目覚めたと言っても過言ではない状況だった。

「あんたも安全航行のルールを把握して運転しろ。もし今度あんな暴走を引き起こしたら……容赦なく噛み殺す☆☆☆

「じょっ、冗談抜きで怖っ!!!」



「だったら少しは……学習しやがれ!!!!!!!!



――――――ヒイイイィィィィィィッ!!!!!!



この一括でリンディを除く全クルーの度肝が抜かされたのは、言うまでもない。







―――――ヴィーッ!ヴィーッ!ヴィーッ!











またしても艦内全域にサイレンが鳴り響いた。

オペレータのエイミィ・リミエッタが回線を繋げる。

『大変大変大変〜!!!』

「どうしたの、エイミィ!?」

『とっ、とにかく大変なのよ!これを見て!!』

全員が光学映像に眼を向ける。

映し出されたのは、一人の少女。

状況からして、どうやら場所は“ニュートラルヴィア”のようだ。

途端、その少女は懐から何かを取り出すと、目を伏せ、足元にオレンジ色の魔法陣を作り出した。











――――魔法陣!!??











ありえないことだった。

シードピアの住人が、使うはずのない“ミッド式魔法陣”を形成していたのだ。

そして、彼女の周りにオレンジ色の光が発せられ、それが収まった場所には――――――。

















“フェイトと瓜二つの少女”が佇んでいた。

















『…………えええぇぇぇぇっ!!!!!!!!』











全員が驚きの声をあげた。

特にフェイトに至っては、言葉を失って混乱していた。

なぜ自分があの場所にいるのだろうか………!?







だが、リンディはただ一人、別の反応をしていたことを、誰も知る由もなかった。









(そう言えば、あの場所には“彼女”も住んでたのよね………。)











しかし、このときは彼女も、“すでに過ぎ去った過去の事実”を知る由もなかった…………。



---to be continued---


☆あとがき
大変長らくお待たせ!の第52話!どうにか予告どおり戦闘パート一本で仕上げてみましたけれど、実際に表現するとかなり難しいですね。
おまけに今回はA4原稿7枚分の文章……、疲れた………。(ちなみに、下書き原稿だけで約20kbありました。)

さて、今回の終盤で、前触れなくマユ&アリシアが魔法少女として覚醒しました!!!
……え?文章を見る限りではアリシアだけなんじゃないかって?
ノンノン、ちゃんとマユもいますよ☆
これが何を意味するか、察しの言いかたは即座に見当が付いていると思いますよ☆
…と言うわけで、次回はマユ&アリシアの初陣も含めて執筆していこうと思います!
それと、次回はシードクリスタルの場所も判明する予定ですので、ぜひご期待を☆










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