――――――ヴィーッ!ヴィーッ!ヴィーッ!
てれび戦士の活動拠点・リーフの艦内全域に、突如としてアラートが鳴り響いた。
仮眠を取っていた戦士たちも、この警告音に、飛び起きざるを得ない。
すぐさま、ラビが全軍に報告を開始した。
『たたたたた、大変ッス〜ッ!!!緊急事態発生ッス!!空中コロニー“レクイエム”方面から、100機以上の未確認飛行物体が、ニュートラルヴィアに向けて急速接近ッス!!てれび戦士総員、配置につくッス〜ッ!!!』
ラビからの緊急報告を受けたレッド、ゴルゴ、てれび戦士全員は、すぐさまブリッジに集合した。
有沙女王がブリッジに設けられた、特注の玉座に腰掛け、傍らには“黒い団子三兄妹”が控えた。
そして、彼らより少し遅れて、竜一、七世がブリッジに合流し、キャプテンシートに腰掛けた。
「ユリア、上空の未確認物体の画像は取れたか。」
「はい、光学映像に出します!」
ユリアの言葉と共にモニターに映し出されたのは、それまで見たことのない中型兵器だった。
全体のボディは緑色系統に近く、顔面は五角形のホームベース状の装甲が成され、背中には一対の白い機械的な羽が取り付けられていた。
すると、それらの兵器群の背後に控えていた数機のナイトメアが、全周波回線を使ってきた。
<シードピアの大地を巣食うコーディネイターよ、そして、彼らをかばう全ての人間たち、並びに、てれび戦士全軍に告ぐ。我らは、偉大なる軍神ロンド・ギナ・サハク様の配下・独立機動群ブルーコスモス・ファミリーである。>
「げげっ!ブルーコスモス・ファミリー!!??」
「あいつら性懲りもなく……!!!」
「おまけにあんなに大量の兵器、いつの間に造り上げたんだ!??」
レッド、ゴルゴ、竜一は彼らB.C.F.の急速的な準備に、言葉を漏らした。
<命令するわ……死になさい。>
――――――!!!!!!!!!!
<あなたたちコーディネイターと、彼らをかばう全ての人間たちは、もはや私たちにとっては存在の価値すら一欠けらもないわ。シードピアの害虫も同然よ。あたしたちが誇る“神の番人・ヤフキエル”の名の下に、この大地から跡形もなく消えなさい!全ては――――――。>
蒼き清浄なる世界のために!!!!
その言葉と同時に、ヤフキエルと呼ばれた100機以上もの機動兵器が一斉に動き出した。
「B.C.F.の余裕が完全になくなっている確率……100%。即ち、私たちを完膚なきまでに叩き潰す確率……200%。つまり、有無を言わせない究極の無差別攻撃を仕掛けてくる確率、100万%!!!」
“悪魔の電卓”・愛美が現状を電卓で分析すれば――――。
「炎のように燃え盛り とどまることを知らぬ怒り 怒りの雨と悲しみの雨 それらが混じり降り注ぐ されどその雨 癒されることなし そう それは憎しみのスパイラルなのさ……。」
“闇の吟遊詩人”郁哉が現状をポエムとして口にする。
「皆のもの、理解しておろうな。」
有沙女王の怒りの言葉を耳にしたてれび戦士は、迷うことなく頷いた。
「もはや彼らに、一切手加減無用じゃ!ティアーズ全軍、出撃じゃ!!!!」
『了解!!!』 『アイアイサー!!!』
B.C.F.の高らかな宣戦布告は、てれび戦士だけでなく、シードピアの全ての戦力に響き渡っていた。
それは無論、ダイダルストライカーズにも……。
「とうとう始まりやがったか……。」
「ま、どうせ避けられない状況だろうとは思ったけどな……。」
モニター越しに、上空から接近するヤフキエルを見つめている、第2遊撃部隊チームオクトパス。
「……相手に対しての命令が“死ね”だと…!?シードピアの害虫だと…!!??」
「…!?アグニス!?」
どうやら先ほどの彼らの宣戦布告が気に食わなかったのか、アグニスは見るからに極度の怒りに満ち溢れていた。
「我慢ならんっ!!!!!あいつらの常識を覆してくれる!!!!!」
そのアグニスの怒りの一言を合図に、チームオクトパスが動いた。
「…よし、オルカファイターズ、チームオクトパス、出撃だ!!」
「おう!!!」
カイトの指示で、チームオクトパスがすぐさま格納庫へと向かった。
それと同時にカイトは小型ツール・マルチャージャーを使い、セイコーとの回線をつないだ。
「セイコー、チームオクトパス、これより出撃する!」
『了解。十分注意しろよ!』
「ヤフキエル全軍、二手に散開、それぞれニュートラルヴィア、ゾロアシア・ワールドに向けて急速接近中!」
「チームオクトパス、ぺリッパー、シーガルへの搭乗を開始!」
メインブリッジでも目まぐるしくも慌しい状況に包まれていた。
『大量生産が可能な兵器を手に入れたことで、向こうもかなりの自信をつけているね…。』
「だけど何としてでも、奴らの作戦だけは阻止しなきゃ!」
セイコーとジョージは光学映像を通して、大量のヤフキエルを見据えていた。
「チームスキッド、全MS起動完了しました!」
「チームオクトパスも、全機起動を確認しましたぁ☆」
メル&シーが主力部隊の出撃準備完了を告げた。
「キングロブスター、まもなく海面に浮上します。」
プラムの報告と同時に、ブリッジのモニターが、青空を映し出した。
ネビュラオーシャンに、その夕焼け色の船体を見せる。
オルカファイターズの活動拠点・キングロブスターがその姿を見せたのだ。
彼らはニュートラルヴィア、ゾロアシア・ワールド、アストレイバー・アイランド、どの国にも比較的近い場所に出てきていた。
簡単に言えば、三つの島々が三角形の頂点とするならば、キングロブスターはその三角形の中心に位置しているのである。
それを確認するとセイコーが傍らの通信コンソールに手をかけ、全ての機体に通信を繋げた。
「いいか?この戦いの勝敗は、君たちと、それぞれの国の精鋭たち、そして、いずれ後に次いで出撃するであろうスピリチュアル・キャリバー、その全てにかかっている。一度たりとも失敗は許されないぞ!」
副官の美沙が彼の言葉を引き継ぐ。
「各国の精鋭たちと連携を取って、うまくヤフキエルの侵攻を防ぐのよ!準備はいい!?」
『よぉ〜し!“シザース・カタパルトシップ”、ロック解除!オルカファイターズ、全軍出撃!!!』
ジョージの合図で、キングロブスターの“鋏”が切り離された。
するとそれは、まるで意志を持つかのようにそれぞれの目標地点へと移動を始めた。
“シザース・カタパルトシップ”はキングロブスター最大の真骨頂とでも言うべき、“強襲上陸艇”であり、チームスキッド、チームオクトパスのそれぞれの作戦基地も兼ねている。
鋏の上部は、それぞれのコントロール専用のサブブリッジが備えられており、自律コントロールも可能なのだ。
今、深海の戦士が、再び動き出した……………。
『緊急事態発生!緊急事態発生!シードピア上空より未確認機動兵器が多数出現!ニュートラルヴィア、ゾロアシア・ワールドへ向けて進行している模様!隊員は至急“ミッション・ブリーフィングルーム”集合せよ!繰り返す!シードピア上空より未確認機動兵器接近中!隊員は至急集合せよ!』
シードピアシアターハウスの館内全域に響く緊急警報。
それを聞きつけた“劇団員”たちは、早急に劇場裏手に設けられた特殊シューターに飛び込んだ。
このシューターは、飛び込むことで普段着から瞬時に戦闘服へと着替えることが可能な上、劇場の地下300m地点に設けられた“ミッション・ブリーフィングルーム”に直結している。
「司令、全員集合しました!」
リーダーを務める大河新次郎の気合の入った一言で、全員が敬礼した。
それを確認した総司令・大神一郎も、その後に次いで敬礼し、状況を説明した。
「警報での報告の通り、先ほど、シードピア上空より、謎の機動兵器が現れた。現状で確認されている数だけでも、合計200機以上は確認されている。しかも、たった今シードピア全土に向けて、このようなメッセージが放送された。」
大神はそう言うと、傍らのテープを再生した。
<シードピアの大地を巣食うコーディネイターよ、そして、彼らをかばう全ての人間たち、並びに、てれび戦士全軍に告ぐ。我らは、偉大なる軍神ロンド・ギナ・サハク様の配下・独立機動群ブルーコスモス・ファミリーである。>
次の瞬間に発せられた、唐突かつ無情な言葉に、全員が言葉を失う。
<命令するわ……死になさい。>
――――――!!!!!!
<あなたたちコーディネイターと、彼らをかばう全ての人間たちは、もはや私たちにとっては存在の価値すら一欠けらもないわ。シードピアの害虫も同然よ。あたしたちが誇る“神の番人・ヤフキエル”の名の下に、この大地から跡形もなく消えなさい!全ては――――――。>
蒼き清浄なる世界のために!!!!
「…ひどい…こんなのひど過ぎるよ!」
「……アイリス…ゼッタイに許さない!!!」
コクリコとアイリスは、これ以上ないくらいの怒りの感情を露にした。
「…もはや彼らには、言葉での説得は無意味ですね。」
織姫、レニと共に、レクイエム・コロニーから緊急帰還したラチェットの言葉どおり、もはや体裁をとる余裕すらなくなってしまっているようだ。
「……確かに、もはや奴らには一切の手加減も許されない。彼らの野望は、なんとしてでも阻止しなければ!みんな、くれぐれも用心してくれ!」
『了解!』
霊力の力を司る戦士もまた、再び目覚めるときが来た。
「すでにライガーシールズも防衛活動を開始している。地上のほうは彼らのほうに任せよう。俺たちは上空でのヤフキエル迎撃だ。頼んだぞ。」
『はいっ!』
「新次郎、出撃命令だ!」
「はいっ!」
――――特捜部隊スピリチュアル・キャリバー、出動せよ!
――――Roger!
『臨時ニュースをお伝えします!先ほど、過激派組織・ブルーコスモスファミリーが、ニュートラルヴィア、ゾロアシアワールドに対して、武力侵攻を開始すると宣言しました!上空には、多数の機動兵器が展開されており、双方の国に甚大な被害を及ぼす可能性が極めて高いとされております!市民の皆様は、当局の指示に従い、速やかな避難をお願いいたします!繰り返します……。』
テレビのニュースは、忌まわしきB.C.F.の話題で持ちきり。
とうとう彼らの怒りが頂点に達してしまったようだ。
このテレビの放送も、あとどれくらい持つだろうか……。
「主はやて!」
「はやてちゃん!」
名を呼ばれた車椅子の少女は、振り返り、二人に向き直った。
「B.C.F.のことなら知っとるよ。ヴィータとザフィーラは?」
「ゾロアシアでヤフキエルを迎え撃つと、先ほど連絡がありました。」
「この分だから…多分、なのはちゃんたちも出てくるはずだわ……。」
「…ん……。」
自分たちがこのシードピアに滞在して、もうすぐ1年半……。
出来れば、戦争に関わることなく、静かに暮らして生きたいと思っていたのだが………。
アースラチームも動き出し、“特A級次元犯罪者”も紛れ込んできているとなれば……それももはやかなわぬ夢になりそうだ。
だが、この未曾有の危機に、自分も黙っているわけには行かない。
「リインフォース。」
『はい、我が主。』
名を呼ばれ、銀髪の女性が姿を現した。
「……静かに暮らすのも、もうおしまいや。あたしも出る。」
八神はやては決意を固めると、車椅子から降り、自分の足で立ち上がった。
この1年半の間、リハビリを続けてきた結果、ここまで回復してきたのだ。
リインフォースが傍らに寄り、彼女の小さな体を支える。
「シグナムとシャマルは、ゾロアシアに向かって、ヴィータとザフィーラの援護を頼むな。」
「しかし…。」
「それじゃあ、はやてちゃんは一人でニュートラルヴィアへ…!?」
誰か一人でも援護が必要なのではと思ったのだが………。
「大丈夫や。向こうにはなのはちゃんとユーノくんも居るし、それに、あたしが生きてる限りは、みんなはあたしが居らんでも、大丈夫やろ?」
異例ではあるが、はやての守護騎士たちは普段は彼女の“魔力供給”でその命を繋ぎとめている、不思議な存在。
つまり、彼女の命=守護騎士全員の命と言える。
「“いつまでも傍にいてあげることが守ることじゃない”。フェイトちゃんのとこのアルフが言うとった言葉やで。」
守り方にも様々な形がある。
シグナムとシャマルは、改めてその気持ちを知った。
「……わかりました、我が主。」
「でも、無理しないでね。」
「そっちもな。」
気を引き締めて、少女は“夜天の主”としての指示を仰いだ。
「“夜天の主”八神はやての名において、“烈火の将”シグナム、“風の癒し手”シャマルに命ずる。城塞都市に赴き、“紅の鉄騎”ヴィータ、“蒼き狼”ザフィーラと共に、神の番人を殲滅せよ!」
「心得ました、我が主。」
「ヴォルケンリッター、出陣します!」
了承の言葉と共に、二人は“騎士甲冑”に身を包み、空高く舞い上がった。
それを見届けた後、状況を察したリインフォースが、金色の腕輪がついたフィンガーレスグローブを取り出した。
その腕輪には、5つの色のアクセントが施されている。
「主、これを……。」
「うん。」
はやてはそれを受け取り、左手につけた。
このアイテムと、はやてのペンダント。
二つが合わさるとき、“夜天の主”としての覚醒を果たす。
彼女は数刻の後、金色の腕輪に付けられた5つのアクセントのうち、“黒”のほうを押し込んだ。
『Standing by』
電子音声と同時に、足元に自らの魔法陣を形成し、ペンダントとしてつけていた小さな十字架を取り外した。
“目覚めよ、夜天の光”
“吹きぬけよ、祝福の風”
『ユニゾン・インッ!』
『Kreutz-form Anfang!』
“蒼天の金十字”が“夜天の腕輪”の手袋の甲にはめられ、それを合図にはやてとリインフォースは、融合した。
---to be continued---
☆あとがき
ありゃ〜?どこで間違えてこうなったんでしょうか……。当初の予定と大幅に狂ってしまいました……(T_T)
次回こそは戦闘パート一本で頑張りたいと思います!
さて、今回は初お披露目の点が幾つか出てきましたね。それぞれの設定のイメージ元は、次の通りです。
キングロブスター“シザース・カタパルトシップ”→ドラグーンネスト(ZOIDSシリーズ)
シードピア・シアターハウス作戦司令室→大帝国劇場地下の作戦司令室(サクラ大戦シリーズ)
さらに、冒頭のB.C.F.の宣戦布告時のセリフ、実はこれの元ネタ“ダイの大冒険(DRAGON QUEST)”だったりします(第15巻参照)
そして、はやてが用いたアイテムの“夜天の腕輪”と“蒼天の金十字”。
実はこれ、仮面ライダー電王の“デンオウベルト”のシステムを参考にアイデアを練った僕のオリジナルで、半年ほど前から温め続けていたものだったりします(苦笑)
これが一体何を意味するのか、文章を読めばすぐに、検討がついているのではないのでしょうか?
それでは、これにて。