Phase45 Linkage of Watering
“The sequel”


“謎の少女によってB.C.F.大惨敗!”

エターナル・フェイス特殊部隊“ファントムレイダーズ”の拠点・アレクサンダー内部でも、その波紋は広がっていた。

「……Unbelievableな状況になってる…。」

「あの女の子、何者なの……!?」

実は、彼らもまたティアーズとB.C.F.の戦いの様子を光学映像を通して一部始終を見ていた。

「一人の女の子があれだけ大きな砲撃を放てるなんて……!」

拓巳だけでなく、仲間たちも映像を通して目の当たりにした謎の少女の攻撃力に、絶句せざるを得なかった。

「こんなこと考えたくねぇけど、常識外れの“魔法”でなきゃ、あんな攻撃は出来ねぇぞ。」

「そんなの当たり前でしょ!第一、魔法なんてのがこのシードピアにあるわけが―――。」



「ちょ、ちょっと待って。」



―――?

謙二郎の言葉を江莉が否定しようとした矢先、遼希が割って入ってきた。

「“魔法”って言えば……、そう言えば、ティアーズの件に関して言い忘れてたことがあったんだけど……。」

「…?何だ?」

ブライアンがその会話の中に入る。

「リーダー、“プレシア・テスタロッサ”と言う人物をご存知ですか?」

「…あぁ。シードピアにおいて絶大な魔法力を誇っていた、あの大魔導師のことか?」

「でも、確かその人、既に死んでいるって言う噂じゃなかったっけ?」

謙二郎のその言葉を、梨生奈の次の報告が否定することになった。







「それが……、そのプレシアさんって言う人が、この間“ティアーズ”と接触したみたいなのよ……。」











――――えええええぇぇぇぇぇぇ!!??













「だ、だってプレシアは既に死んでいるって……。」

「謙二郎!それはあくまで噂話よ!それを真に受けてどうすんの!」

謙二郎と江莉を中心に、またしても大混乱が始まってしまった。

極秘隠密行動任務を受託して以来、自分たちの予測を大いに覆すありえない展開ばかり。

こうなってしまってはもはや周りを落ち着かせるのも、イヤになってきそうだ。

特に、リーダー格のブライアンと小百合は、さらに頭を悩ませることとなっていた………。

ちなみに、その後の一時間近くの間、この大騒ぎは静まる様子はなかったと言う。

「……遼希、なんか、いつもわたしたちが混乱の引き金になってない…?」

「…うん…僕もそう思う……。」

報告しなければ良かったかも……と、他愛無いことを考えていた遼希と梨生奈だった………。









“テンポラル島”―――――――――。

ニュートラルヴィアや、ゾロアシアから遥かに遠く、アストレイバー・アイランドの中心地“スピリード島”からも遠く離れた場所に位置している、“シードピア最後の楽園”と呼ばれる場所。

そこには通称“ドラゴンミスト”と呼ばれる、とても分厚い低気圧の塊が島の周りを覆ってしまっているため、肉眼ではその島を捉えることはできない。

しかし、何故か中心部だけは台風の目のようにポッカリと穴が開いており、そこから太陽の光が差し込んでいる、不思議な場所でもあった。



『謎の魔法使い武力介入!?』

『正体不明の少女、B.C.F.に大打撃!!』

ニュートラルヴィアの新聞の一面や雑誌のトップページなどは、てれび戦士たちを突然救った謎の少女の話題で持ちきりだった。

世間の一部では“新手の化け物”ではないかと言う話も出てきている。

島の秘密の場所でひっそりと暮らす“プラズマ界の大魔導師”プレシア・テスタロッサは、ニュートラルヴィアで起こった前代未聞の事件の内容を、少々険しい顔つきで見つめていた。

「…………。」

“ティアーズ”を突然助けた謎の少女。

そして、普通の少女ならやらざる行為を容易にやってのけるほどの実力。

「…“ディスタンス・フォース”が動き出した、と言うことね………。」

しかもこの服装と集束砲から見て、どうやら“アースラチーム”のようだ。

…と言うことは……。

そう考え、プレシアは傍らの写真に眼を向けた。

そこに写っていたのは、今は遠い過去の記憶。

忘れられることのない、悲しい記憶。

あの子は無事に育っているだろうか……。

“あの時”、彼女らに託した少女は……。


「プレシア。」


不意に聞こえた凛とした声。

視線を向けると、一人の女性が跪いていた。

黒と濃い茶色を基調としたスーツに、白のジャケットと白い帽子。

明るさと暗さを併せ持つような薄茶色のショートヘアと、吸い込まれそうな蒼い瞳。

「……リニス。どうしたの…?」

「はい。頼まれていた“例のデバイス”、まもなく最終調整に入ります。」

“デバイスの最終調整”。

それを聞き、プレシアは幾分か間を置き、ゆっくりと立ち上がった。

「…私も立ち会うわ。」











「失礼します!」

「…うむ、全員揃ったようだな…。」

エターナル・フェイス本部“ジェネシス・フォートレス”。

その司令室には、『緊急徴収』の指示によって集合した、主力部隊・ミネルバチームの面々がいた。

シンが最後に到着したことで、全員が揃った。

デュランダルが全員を見渡すと、本題を切り出した。

「たった今、ニュートラルヴィアに出向いている“ファントムレイダーズ”から、予想もつかなかった信じがたい映像が届けられた。早速だが、その映像を君たちに見せる。」

デュランダルは、届けられた映像を見せる。

映し出されたのは、ニュートラルヴィアの市街地の近郊・リュミエール岬だった。

そこに停船している一隻の大型戦艦。

その船の紅いカラーリングに、メイリンは見覚えがあった。

「あれ!?あの船って確か、ティアーズの……。」

「…え?ホント?」

その後ろには、これまた見覚えのあるブルーカラーの戦艦。

「あ、あの蒼い船は…!」

「B.C.F.の、大型戦艦!?」

「……この流れ、まさか…!?」

案の定、B.C.F.の船からはMSが多数出撃、ティアーズに対して奇襲攻撃を開始した。

幾分かした後、ティアーズの船から戦闘機が続々と出撃。

さらには、いつの間にか用意していたのか、一機のMSが出撃した。

「ティアーズの奴ら、いつの間にMSを造ってたんだ!?」

シンだけでなく、ミネルバチームの面々も、ティアーズのずば抜けた科学力に言葉が出なかった。

「うむ、確かにそれも驚くべき出来事の一つだろう。だが、そんなことよりも遥かに驚くべきことが、このあと起こる。」

『………???』

デュランダルの意味深な言葉は、この後の映像で理解することになる。

「……?!ジュール先輩!あれ!!」

「…!!?な、なんだアレは!?」

シホが指差したところと、イザークの目線の先が交わるところ。

そこには―――――。









“ピンク色の光”を身に纏った女の子が“空に浮いていた”。











「…じょっ、冗談だろ…!?あ…、あれって、まさか…!?」

「“魔法使い”って訳じゃないでしょうね…!!?」

シンとルナマリアの、ありえない推測は、あっさりと核心に迫っていた。

デュランダルの次の一言で。

「その“まさか”、かもしれないよ。」

――――マジで!!??

全員が眼を見開き、心の中でそう叫んでいた。

「それを証拠に、コレを見たまえ。」

デュランダルが指差した映像。

そこには衝撃的な光景が捉えられていた。

あの魔法使いの女の子の下へ、ピンク色の星が無数に集まり、一つの球体を作り出した。

しかも、それは星が幾つも集まるごとに巨大化し、ついには少女の身長とほぼ同等の大きさにまで達した。

次の瞬間、少女は手に持っていた杖を振り上げ――――。









大型砲撃を放った。









そのエネルギーはB.C.F.の戦艦に命中し、あわや撃沈かと言うほどの大ダメージを与えた。









「あ、ありえねぇ……!絶対ありえませんよ、あんな攻撃!!!」

映像の再生が終わって数秒後、シンが一瞬の沈黙を破るように、取り乱し始めた。

「確かにシンの言うとおりだ。どう考えても不自然すぎる。」

アスランも内心では驚きつつ、シンの言葉を受け止める。

「たった一人の女の子がB.C.F.のMS群に―――。」

「苦もなく圧勝するなんて信じられない…!」

「ましてや、彼女は生身の状態だったはずだ。」

ルナマリア、メイリン、レイの3人も自分の目を疑うほど驚いていた。

やがて、周囲がザワザワと騒ぎ始めた。

そんな彼らをなだめたのは、イザークの副官でありストッパーでもある彼だった。

「おいおいお前ら落ち着けって。一応、デュランダル司令の前だってこと忘れんなよ。」

――――あ。

ディアッカの忠告で、全員が冷静さを取り戻した。

「だがしかし、君たちがそれだけ驚くのも無理はないだろう。」

いずれにせよ、シードピアの歴史にとっての未曾有の事件だと言うことには変わりない。

それに、もしかしたらその魔法使い、あるいはその一連がこのゾロアシアに現れることもありえなくはないはずだ。

「敵か味方か、あるいは別物か、それを見定めることも大事だってことですね?」

「その通りだ、シン・アスカ。」

場合によっては、その魔法使いと敵対する可能性も少なくないからね。

「ミネルバチーム諸君、今後もさらに警戒してくれたまえ。」

『了解!』















なのはの介入によってシードピア全土が混乱の真っ只中に入った頃――――。

4次元空間・C.D.フィールド(サイバー・ディストーション・フィールド)では、既に一つの動きが出始めていた。

次元空間を優雅に進み行くは、銀色のボディを持つ、一隻の次元航行艦船。

ディスタンス・フォースの所有するL級艦の一つ・通称“カイロシア”である。

そのブリッジに一人の女性士官が入ってきた。

「みんな、どう?今回の旅は順調かしら?」

ブリッジに待機しているクルーたち―――裕太、エリー、羅夢―――は各々で報告を始める。

「はい、艦長。現在第3船速で航行中、目的地・シードピアにはあと300べクサで到着予定です。」

「先行隊として、アースラ04及びアースラ06が到着。その後、戦闘に介入した模様です。」

「それ以後、特に目立った形跡はないようですが、今後も二人は戦闘に接触する可能性は高いかと思われます。」

「そう。なのはさんたちも到着早々に派手にやっちゃったわねぇ…。」

すると、背後からもう一人の女性クルーが紅茶を手にブリッジへと入ってきた。

アースラチームのクルーの一人である通信オペレーター、エイミィ・リミエッタだ。

「失礼します、リンディ艦長。」

エイミィは、手に持ってきた紅茶を、キャプテンシートに座るリンディ・ハラオウンに差し出した。

「ありがとね、エイミィ。」

リンディは、受け取った紅茶を口にしつつ、今後の対策を練る……。

「それにしても、シードピアにあの“特A級次元犯罪者”が紛れ込んでいるとなると……ちょっと厄介になるわね…。」

下手をすれば、シードピアの存亡に関わりかねない。

“あの男”の存在は……!

「危なくなってきたら、すぐに現場に向かってもらわなくちゃ。ね、クロノ?フェイト?」

名を呼ばれた二人―――クロノ・ハラオウン、フェイト・T・ハラオウン―――は、彼女の言葉に答える。

「大丈夫。任せてください、艦長。」

「私たちは、そのためにここにいるのですから。アルフもよろしくね。」

フェイトは、傍らにいるオレンジ色の狼に声をかけた。

「心配しないでよ、いざって時は、アタシがフェイトを守ってあげるから☆」

「うんっ」









人知れず、波紋の連鎖広がるシードピアに近づいてゆく、次元世界の魔導師たち。







運命の歯車は、すでに動き始めていた……。









---to be continued---


☆あとがき
『波紋の連鎖・後編』ようやく書きあがりました。

今回はエターナル・フェイスとディスタンス・フォース中心でお送りしました。
そして、予告にありました新規登場キャラの一人、なのはシリーズのゲストキャラ・リニスがここで初登場!
さらにディスタンス・フォースのクルーメンバーとして、天てれMAX2006年度新人てれび戦士の3人もさりげなく初登場です!

さて、今回のエピソード、なにやら意味深な文章が出てきていることに気付きましたでしょうか…?
実はその文章、今後のストーリー展開の複線となるかもしれないのです。
どんな展開が待つかは、しばらくは皆さんのご想像にお任せします☆










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