Phase43 Intervention of Sorcerer


「てれび戦士たち、何とか状況を立て直し始めているね。」

「でも、まさか向こうも独自にMSを創っていたなんてね。」

リュミエール岬に程近い某所、ジェミニとフワニータはそこでB.C.F.とてれび戦士たちの戦いを見守っていた。

最初はB.C.F.の圧倒的優勢かと思われたが、てれび戦士たちの戦艦から発進した一機のMSの登場によって戦局は徐々に変化していった。

そのMSは思っていたよりも機動性が高いのか、軽快な動きで次々とMSを撃墜していく。

戦闘機の一群が相手をかく乱させ、隙を突きそのMSが相手をしとめる。

見事な連携であった。

だが、それでも大きな変化は見当たらなかった。

それどころか、まるでMSが無限に量産されているかのように、B.C.F.の船からは続々と増援が送り込まれていた。

「“疲れ知らず”ってところ、かな…。」

「これは、さすがにまずいんじゃないかしら…。」

この状況が続けば、以前とててれび戦士たちの不利な状況は変わらない。

そう思った矢先――――。



“別の力の流れ”が二人の中を過ぎった。



「「――――ッ!?」」



「ジェミニ……今の…!」

「フワちゃんも、感じた?」

その瞬間、上空に目線を向けた二人の目には―――。



“桜吹雪”を彷彿とさせるピンク色の光があった。





「案外しぶといわね、ティアーズの連中。」

フレスベルグのブリッジのキャプテンシートに座るフレイは、なかなか堕ちないティアーズの船を睨み付けていた。

たとえ外部の連中と言えど、コーディネイターを庇おうとするなら、奴らも敵。

“目障りな『イレギュラー』は速やかに排除”。

B.C.F.の3大幹部の紅一点・マティスの言葉を達成させるためにも、これ以上のロスタイムは許せない。

「ミューディー、増援の準備は?」

「奥の手に、シャドーアンカーを20機ほど、準備させているよ。」

「……オッケー☆じゃあ、10分後にそれを全機発進させて。」

フレイは悪魔の微笑を浮かべ、告げた。


―――彼らへの指令はシンプルに、“ティアーズの拠点への特攻”で!


「了解☆」

シャドーアンカーには、イザと言うときのための自爆装置が仕掛けられている。

しかも、特攻を仕掛けても簡単には爆散しないように特殊な構造がなされている。

それが20機も特攻してくるとなれば、さすがのティアーズも終わりだろう。

今度こそ引導を渡せる。

フレイの脳裏に、“勝利”の二文字が過ぎり―――――。


それはすぐさまかき消された。



ドッカ――――――ン!!!!



―――――!!!??



「なっ…!何なの!?」

突発的な爆発音と大振動。

「はぁっ!?さ、左舷格納庫損傷、被害面積65%!?」

シャムスの報告を聞き、フレイは驚愕した。

「うそ!?ど、どこからの攻撃よ!?」

「ちょ、ちょっと待って……!」

ミューディーとシャムスが攻撃の出所を探る。

すると、それを知ってか知らずか、ネオから通信が入ってきた。

『おいおいみんな!』

「ネオ!?」

仮面の下からは表情は窺えないが、口調を聞くからに状況は芳しくなさそうだ。

『ちょっとこれ見てくれよ!』

そう言ってネオは、自分のMSのカメラ画像をリアルタイムで送信した。

すると、そこに映っていたのは、B.C.F.はもちろんのこと、おそらくティアーズですらも驚きを隠せないであろう、大方の予測を覆す意外な光景だった。



――――――お、お、女の子ぉ!??



白で統一された上着と大き目のスカート。

栗色の髪と、まるでサングラスをしているかのように取り付けられた、星を象ったピンク色の仮面。

そしてその手には、いかにも魔法使いだと言うことを彷彿とさせる、大き目の赤い宝石が付いた杖。

信じたくないが、まさかこの少女が自分たちの船に攻撃を仕掛けたとでも言うのだろうか…!?

だが、よく見るとその少女は――――。



―――“宙に浮いて”いた。



「なっ、何で宙に浮いているのよ、あの子!!」

「そんなの知るかよ!」

未曾有の能力を持つ存在の突発的な介入によって、フレスベルグのブリッジ内部は大混乱し始めた。



瞬間。





『?!何だ!?いきなりこっちに攻撃してk―――――。』



―――――ザアアアアァァァァァァ…………。





ネオの通信画面が突然砂嵐に切り替わった。

それが意味するのは――――。

「なにぃっ!?」

「どうしたの!?」


「ロアノーク隊長の“ナイトメア”……シグナルロスト……!!」


“見ず知らずの相手に、自分たちの隊長が撃墜された。”

考えがたい現実を叩きつけられ、フレイは愕然とした……。

さらに、その衝撃が上塗りされるかのように、次々とシグナルロストの情報が飛び込んできた。

ここまで屈辱的な経験は、フレイでさえも味わったことがなかった





だが、当然、この“目の前で起こっている光景”を目の当たりにして、大混乱しているのは、B.C.F.だけではなかった。





「わぁ〜☆」

「何あれ?すごーい☆」

精神的なものも含め、年齢上まだてれび戦士たちよりは幼いステラとマユは、“お空に浮かんでいる女の子”をモニター上で目の当たりにして、大はしゃぎしていた。

そんな二人をよそに、七世を初めとするブリッジクルー、そして戦闘に赴いていたてれび戦士の面々は困惑していた。

「いきなり何かが飛び込んできたと思ったら、出てきたのは女の子一人だけ!?しかも宙に浮いているなんて!?」

そんなとき、オペレーターであるアンドロイド・ユリアが意外な報告を伝えた。

「計算してみたところ、彼女は科学力では解明できない未知の力を使っている模様です!」

“非科学的な未知の力”。

この言葉が示される、導き出された信じがたい答えは、唯一つ。


『まさか、“魔法を使っている”…ってことッスか……!?』


ラビがその言葉を口にし、ティアーズメンバーはハッとした。

『その予想、ありえなくもないかも知れねぇぞ。』

通信をつなげていた司令官の竜一も、ラビの予測に同意した。

実際、数日前に“マユを蘇らせた”と口にした、プラズマ界の大魔導師、プレシア・テスタロッサと接触し、彼女の魔法を目の当たりにしたのだ。

もしかしたら、その手とはまた別の魔法なのかもしれない。

「わぁ〜☆☆すごいすご〜い☆☆☆」

途端にブリッジに響いたステラのはしゃぐ声。

クルーたちは全員彼女たちのほうへとふり向いた。

「どうしたの、ステラ?」

「あの女の子のところに、ピンク色の星が、たくさん集まってる〜☆」




――――――え゛っ!?













――――――“星がたくさん……集まってる”!?














「そんなバカな話が―――。」と全員が思い、モニターに眼を向けた矢先、全員が表情を一瞬で変えた。










――――――――ホ、ホントに集まってる〜〜!!!???














モニターに映っていたのは、ステラの言うとおりの光景だった。

魔法使いと思しき少女のところへ、ピンク色の星の輝きが、“これでもか!”と言わんばかりに所狭しと集まってくる。

しかもこれはよくよく見ると………!!!

それは、MSのモニターを通じてその光景を見ていた竜一も思った。

『おい!よく見ろよ!……何か、物凄い力があの場所に集中しているような気がしないか!!??』















――――――ま、まさか!!!!????































「全力全開ッ!」




スターライトぉっ……ブレイカ――――――――ッ!!!!

























次の瞬間、まるで太陽すらも撃ち落としそうなピンク色の超大型砲撃が放たれ、そのエネルギーがB.C.F.の旗艦・フレスベルグの右舷格納庫に命中した。

しかも、その余波で船の底部に設けられた2基のスラスターも、損傷させてしまったようだ。

さらに、その瞬間フレスベルグの右舷格納庫は全壊したらしいと言うから、恐ろしいものである……。








――――――な、な、な…!なんじゃこりゃ〜!!!!!???








その瞬間、リュミエール岬エリアに点々としていた戦士たちは、そろって同じ言葉を叫んだのだった………。






なお、この直後B.C.F.が撤退を余儀なくされたのは、言うまでもないだろう……。


てれび戦士たちにとっては、複雑で微妙な勝利だった………。













「……ムッ?!この魔力反応は!」

ニュートラルヴィア近郊の孤島・クリスティア島の一角に位置する、一軒の家。

そのベランダで座禅を組み、精神を集中していた一人の女性が、巨大な“魔力”を感じ取り、目を見開いた。

徐に視線を反らすと、ニュートラルヴィアの方角から桜色の輝きが……。

「………。」

間違いない、“あいつ”がこの世界に来ている…!

「シグナム!」

“主”の声を聴き、名を呼ばれた女性はすぐに跪いた。

「主はやて。」

はやてと呼ばれた、車椅子に乗った少女が、シグナムの前に来た。

「シグナム、今の魔力の流れ…もしかして……!」

「…おそらく、主の推測どおり、高町なのはかと……。」

リインフォースを通じて向こうへと届けられた情報が、すぐさま“アースラチーム”に伝えられたようだ。

ふと、そこにその情報を届けた本人の声が。

『我が主。』

「…!リインフォースか…?」

それに返事をするかのように、正三角形の魔法陣が現れ、その中央からリインフォースが現れた。

「何か、あったんか。」

「はい。たった今、シードピアの調査の担当にリンディ提督率いる“アースラチーム”が抜擢された模様です。」

どうやら、なのはがこのシードピアに転送されてきたのは間違いなさそうだ。

自分も本格的に動き出すべきか。

はやてがそう考え始めたそのとき。

「それから、主はやて。もう一つ報告事項がありまして。」

「…?何なん?」

「グレアム提督の話では、この世界に“特A級次元犯罪者”が紛れているとか……。」

“特A級次元犯罪者”。

それは、彼女ら“ディスタンス・フォース”内部で、プラズマ界のあらゆる世界において広域指名手配されている、犯罪者のことである。

つまり、下手をすれば『次元世界1個を潰すのは圧倒的に容易なこと』と捉えるほど、非常に危険な存在である。

「リインフォース、それは誰なの?」

沈黙していたシャマルが口を開き、彼女に尋ねた。


「それが、私にとっても信じられないことなのだが………。」








次の瞬間、リインフォースが口にした、“犯罪者の名”。



「なっ?!何やて!!?」


「そんなバカな!!」


「っ!!うそ!?」




思いもよらない人物の名に、はやてたちも絶句せざるを得なかった……。



---to be continued---


☆あとがき
ちなみに今回のタイトルは、直訳すると「魔法使いの介入」と言う意味です。

はい、予告どおりなのはの代名詞である最強魔法“スターライト・ブレイカー”をぶっぱなしました。(笑)
しかもその攻撃でB.C.F.に大打撃!書いている自分でも、かなりビックリしちゃいました。(なんで?〔笑〕)

さて、次回はこの第43話の直後の展開でお送りしたいと思います。
しかも、この期に及んでまたまた新たなるキーパーソンキャラクターが登場することになりました。(またかい。〔苦笑〕)
それに関するヒントはこちら↓(反転でお願いします。)

・CV(キャラクターボイス)は『おはスタ』でお馴染みの山寺宏一さん
・『サクラ大戦・活動写真』からのダークサイドキャラ。
・キーワードは『ダグラス・スチュワート

このほかにも、『所々で名前は出ているけれど本編には出てきていない』キャラクターも出演させる予定です、お楽しみに☆










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