THE IDOLM@STER DS特別編 秋月涼誕生日記念
〜Style〜

(原作:DaisukeP)



この日、765プロ本社は大荒れだった。

先日、テレビのニュースで『菊地真がイジメ!?』と言う報道がなされたため、本社の電話は就業開始から断続的に鳴り響いていた。

事実、この日の新聞の芸能欄にはこの一件の記事が掲載されていた。

「真ちゃんのアレはガセです!!あの子と真ちゃんはただの練習仲間です!!」

事務員の音無小鳥も、ダイスケたちと共に電話の応対に追われる状況が続いていた。

「早速真の記事に関するアレばっかりですね・・・。」

「そうね・・・。真の代わりに助っ人を私にした方が良かったかしら・・・。」

「いや、先輩にしたらさらにひどくなりそうな・・・。」

「なんですって〜!!」

「二人とも、電話の応対してください!!私と小鳥さんとスタッフ達だけじゃ足りないんですから・・・。」

またまた喧嘩になりそうになった二人に釘を刺したのは、765プロの次期プロデューサー候補でもある、所属アイドルの一人・秋月律子だ。

「ゴメン・・・。」

またしても取り乱しそうになったことに、空はすぐに非礼を詫びる。

「ところで・・・、律子・・・。」

「なんですか?」

「涼君はアレを見た後どうなった・・・?」

「今朝、様子を見に行ったんですけど・・・。」

















今から数時間前、某所にある秋月涼の家に向かった律子は・・・。

―――ピンポーンッ!!

『はい?』

「あっ、叔母様?律子です。今朝のニュースを見て涼はなんか有りました・・・?」

「あっ、律っちゃん!?涼なんだけど・・・、部屋で寝込んでるの・・・。」

「そう・・・。分かった!!仕事が終わったらもう一回寄るね。」



秋月涼―――。

765プロの所属アイドルである律子の従弟にあたる少年。

外見は女の子に似ているがゆえ、同性のクラスメートに告白されることもしばしば・・・。

そんな彼にも、“律子みたいなアイドルになりたい”と言う夢がある。

ところが、そんなある日のこと、ひょんなことから性別を偽り、765プロと親交の深い876(バンナム)プロの所属アイドルの一人として活動することになったのである。



実は、今回の騒動にはその涼も関わっていると言うのだから、従姉である律子としても非常に心配しているのだ・・・。

















「なるほど・・・。学校も休んでるのか・・・?」

「念のためにさっき涼のクラスメイトにメールしたら体調不良で休んでるわ。」

「そうか・・・。」

間接的とはいえ、自分も今回の騒動に関わったとなれば、落ち込まないわけがない・・・。

「ねぇ、真と涼君の共通点ってなんだと思う・・・?」

「真と涼の共通点ね・・・。真は男の子に見えるのが嫌いで、涼は逆になるわね・・・。」

「俺も同じ意見だな。」

「なるほど・・・。こういうのに相談出来る人っているかしら・・・。」

さすがにこれは複雑だろう・・・。

・・・と、3人が唸りそうになった途端―――。



「あの・・・。」



小鳥が遠慮がちに手を挙げた。

「んっ・・・、小鳥さん・・・、どうしました?」

「最近、買った同人誌なんですが・・・、参考になれば・・・。」

そう言って差し出したのは、マニアックな人なら食いつきそうな内容の同人誌だった。

「何々・・・、『フタナリLOVE』・・・?」

「なんか・・・、性転換系作品ですね・・・。」

「確かにエロいけど・・・、コレが使えるの・・・?」

「さあ・・・。」

・・・それ以前に、なぜ小鳥がこんな本を?

「性転換・・・?先輩使えますよ!!」

「ふぇっ・・・、本当に!?」

ダイスケに心当たりのある方法があるようだ。

「えぇ、花寺の後輩に『有栖川』っているんですけど・・・。」

「なるほど・・・、アリス君ね!!」

“アリス”こと有栖川金太郎(ありすがわ・きんたろう)。

ダイスケの母校・花寺学園の後輩に当たるのだが、女子のような外見と、女子そのままな趣味を持つ事に悩む、いわゆる性同一性障害者

彼の存在が糸口になると確信した空は、すぐに動き出した。

「ダイスケはアリス君に相談役の協力要請・・・、律子は亜美達つれて涼を説得し、捕獲した後765プロへ。小鳥さんは引き続き電話応対お願い!!」

「了解って・・・、先輩は・・・?」

「お昼の情報番組で弁解してくる!!」

「あっ・・・、行ってらっしゃい・・・。」

稲妻のごとき電光石火。

あっという間に彼女はお昼の情報番組を放送中のテレビ局へと向かっていった・・・・・・。



















お昼時、テレビの情報番組で空が――――。

『ハッキリ言います・・・。今回の事件で真君は、後輩アイドルをイジメてません!!』

・・・と、今回の一件の弁解をしているころ、福沢家では、アリスとユキチがその番組に釘付けだった。

「ずいぶん、荒れてますね・・・。」

「そうだな・・・、俺、ファンなのに・・・。」

心中複雑な面持ちで視聴していたとき、アリスの携帯電話の着信音が響いた。

――――ピッ!

「もしもし・・・。」

『あっ、アリス!!765プロのダイスケだ!!』

「徳井先輩!!どうしたんですか?」

意外な電話の相手に、アリスも驚かざるを得ない。

『今、ドコにいる・・・?』

「ユキチの家ですが・・・。」

『ユキチもいるのか・・・。アリス、福沢姉弟と柏木先輩、後、薬師寺先輩達を呼んでくれないか・・・。』

突発的な連絡に、アリスは困惑する。

なぜ彼らを呼ぶ必要が?

「薬師寺さんも・・・?どうして・・・。」

『良いから速く!!場所は、765プロ本社な!!』

「・・・。分かりました・・・。」

『んじゃ、後で!!』

――――ブツッ

「誰から・・・?」

「徳井先輩・・・。後、柏木さんと薬師寺先輩と祐美ちゃんを呼んでって・・・。」

「なんで、柏木さん達を・・・?」

「さぁ?」

ユキチも首を傾げるも、とりあえず二人は言われたとおりにすることに・・・・・・。

















テレビ局での情報番組の生放送が終了した直後、急いで事務所に戻ろうとしたとき、タレントクローク通路で意外な人物と遭遇した。

「お疲れさまで〜す!!」

「お疲れ、空・・・。」

「お疲れさま。って・・・、蓉子!!なんでココにいるの?」

「討論番組のゲストよ・・・。」

「なるほど・・・。」

水野蓉子(みずの・ようこ)―――――。

リリアン女学園の元・紅薔薇さま。

学園卒業後は法律の勉強のため、大学へと進学、その後、弁護士としてデビューし、新たなスタートを切った。

現在は、765プロ、876プロ、そして961プロの専属顧問弁護士を兼任している。

「ところで・・・、今日この後の予定は・・・?」

「まだ、新人だからあんまりテレビ出演とか依頼は少ないわ。この後は直帰するけど・・・、大事な話でも有るの?」

「えぇ・・・。今日の件をアリス君達と中心に相談しようかと・・・。」

今日の件・・・・・・真の件であることを察知した蓉子は、表情を引き締めた。

「なるほど・・・。分かったわ。765プロの顧問弁護士として相談に載りましょ。」

「サンキュ!!」

















ところ変わって、再び765プロ。

「おっはよ〜ございま〜す!!」

この時間になって真が事務所にやってきた。

「真!!お前、学校は!?」

「学校は、休んでます。いや〜、ダイスケさんからもらった変装キットを使って記者達を欺いたりしていたからこんな時間になっちゃいましたよ・・・。」

「そうか・・・。」

「それに・・・、日曜は『東京ジョイポリス』でイベントなのに主役がいなくちゃ明日のリハーサルが出来ないでしょ!!」

リハーサルと本番に備えたいが故か、迂闊に学校に出て来れないと判断したようだ。

「そうだな・・・。涼君も一緒にな。」

「涼君も・・・?」

ダイスケは、今現在の状況を真に報告した。

「今、律子と亜美達が涼君を説得したそうだ。後、先輩と蓉子さん、それに高校の先輩と後輩を765プロに向かわせてる。」

「もしかして・・・、今朝の件についてですか・・・?」

「そうだな・・・。」

当事者の一人であるがゆえ、真も今回の件は非常に行く先が心配であった。

「まさか、クビになるって事は・・・。」

「証言次第では、あり得るが・・・。」

「そんな・・・。」

「大丈夫。みんな真の事は信じてるし、もし、そうなっても減給か謹慎位だと思うよ。」

「そうなんだ・・・。」

ダイスケが気遣うも、やはり不安は尽きなかった・・・・・・。

















話は少し遡り、再び涼の家。

「はぁ・・・。やっぱり真さんを傷つけちゃったかな・・・。」

部屋に閉じこもり、今回の件をずっと引きずっている涼。

・・・・・・と、そこへ―――。





「涼〜!!」





「うわっ・・・、律子姉ちゃん!?事務所の仕事は・・・?」

突然の来訪者。

それは従姉の律子だった。

「まなみさんから涼君の説得をしてって頼まれたの。」

所属の876プロにも情報が及んでいたこの情報、大勢の人に迷惑をかけてしまったことを気に病み、涼は思いっきり落ち込んでしまった・・・。

「僕・・・、芸能界向いてないのかな・・・?」

失敗を大きく引きずってしまう涼に、律子はイライラが募った。

「あ〜、もう!!昔のダイスケさんみたいになってどうするの!!」

「え・・・ダイスケさんが・・・?」

律子は、今の涼の姿を昔のダイスケに重ねてみていたのだ。

「ダイスケさんは・・・、765プロに入る前はアンタみたいなヘタレで弱気な性格だった・・・。けど、芸能界に入ってから性格が変わったって言っていたわ。」

「ダイスケさんが・・・、変わった・・・?」

“誰でもきっかけ一つで変われるもの・・・”。

それは誰でも同じことだ。

「だから・・・、みんなに謝って・・・。」

「律子姉ちゃん・・・、僕・・・。」







―――――ガチャ!







「ハイ、ソレまでだよ!!」



「へっ・・・。」



いきなりドアから双海亜美が出てきた、と思ったら。



「ぎゃおおぉぉぉん!!」



―――パコンッ!



―――ドサッ




そのまま気絶してしまった。



「悪いわね・・・、涼・・・。しばらく寝ていてもらうわ・・・。」

ここで、律子の携帯から着信音が響いた。

―――ピッ!

「こちら、律子!!涼の説得と捕獲に成功。えっ、真が来た!?了解、急いで向かうわ!!」

















「う〜ん・・・、ココはどこ・・・?」

涼が目を覚ました。

「やっと起きたか・・・。」

いきなり目の前に意外な人たちがいて、涼はビックリ仰天!

「うわっ、ダイスケさんに真さん!!どうしてココに!?」

「ボク達はダイスケさん達が今朝の件について相談したいから呼んだの。」

「なるほど・・・。」

どうやらここは、765プロの会議室のようだ。

「もうちょいしたら先輩も来るし・・・、なんか飲むか?。」

「じゃあ、ポカリで・・・。」



「ダイスケ〜!!」



「おっ、ちょうどいい具合に先輩が来たか・・・。どうぞ!!」

ドアが開け放たれたと同時に、空が入ってきた。

「お待たせ!!」

そして、傍らには高木社長と、涼には見慣れない人物の姿も。

「ダイスケさん、あの人は?」

「先輩の隣にいるのは、765プロと876プロと961プロ専属顧問弁護士の水野蓉子さん。」

「よろしく。」

「よろしくお願いします。」

「早速だが本題に入ろう。」

挨拶を済ませたところで、社長が早速、本題を切り出した。

蓉子の立会いの下、今回の一件に関する、真の証言を記録することに。







「まず、ボクと涼君は2週間前からずっとお台場海浜公園で明日のイベントに向けて合同の自主トレをしていました。」

「それについては、俺と先輩や765プロ・961プロのアイドル達もフジテレビからの行きや帰りに何回か見てるし、差し入れもした。」

「週刊誌に載った事件が撮られたのは、先週の日曜日ね。」

「その日は、昨日仕事があって自主トレが出来なかったから、練習内容をいつもの2倍にしたら・・・。」

急に詰め込みすぎたことが祟り、重度の疲労が体にのしかかってしまったと言うことだ。

「それで撮られたのね。」

「ハイ。」

「幸い、写真に写っていた涼君が女の子って事は書いてあるから良かったけど・・・。コレからが問題よね・・・。」

今後の弁解に関してもまだまだ問題は多くあることだ。

どうすれば・・・・・・。

「ダイスケさん、今、柏木さん達が到着しました。」

ここで、律子が新たな来客者の告げた。

しかし、その来客者の名前は空にとっては予想外だった。

「柏木、たち・・・?」

確か呼んでくるのはアリスだけだったはず・・・。

「実は、アリスや柏木さんだけじゃなく、薬師寺先輩たちや福沢姉弟も呼んでおいたんです。」

ダイスケの予想外の一言に、空も『全然聞いてないよ!』といわんばかりの驚きの表情を浮かべた。

へぇ!?ちょっとダイスケ!!『薬師寺兄弟』はアリスの烏帽子だから分かるけど・・・、なんで『銀杏王子』に『福沢姉弟』まで呼んだの!?」

「アリスと電話した時にユキチも一緒にいたからってのと、こういう悩みには烏帽子も必要かな・・・って。」

意外な来客が増えてしまったようだ・・・。

「・・・。分かったわ。律子、柏木さん達をココへ通して。」

「はい。」







律子に通され、かつてのリリアンの後輩と花寺の同級生・後輩たちが勢ぞろいした。

「お久しぶり、空さんに、蓉子さん。」

「久しぶり・・・。ま、涼君にちゃっちゃと自己紹介して。」

適当に促され、一人ずつ簡単に自己紹介した。

「ダイスケ君の知り合いの柏木だ。よろしく。」

「よろしく・・・。(凛々しくてカッコいいな・・・。)」

次に出てきたのは、外見から区別がつかない双子の兄弟だった。

「元クラスメイトの薬師寺だ。日光と呼んでくれ。」

「同じく、元クラスメイトの月光だ。」

そして、見分けのつかない姉弟がもう一組。

「俺は、ダイスケさんの後輩の福沢祐麒。ユキチって呼んで。んで、コッチは姉の祐巳。」

「よろしくね、涼さん。」

「コイツらは双子だからな・・・、なるべく愛称で呼んでくれ。」

「はぁ・・・。」

双子の兄弟を二組も見ることになるなんて、涼にとっては初めての経験だった。

「はじめまして、僕は、有栖川。」

「よろしく。なんか可愛いな・・・。」

最後に出てきた人は、外見からして女の子に見えるが・・・・・・

「あぁ、涼君に言うの忘れていたが・・・、コイツ女の子みたいな格好してるけど、男だぞ。」

(え・・・こんなに可愛い人が男の人・・・。)

状況を理解した瞬間――――。

「ぎゃおぉぉぉん!!」

――――バタンキュ〜ッ


「あっ、涼君しっかり!!」

涼、またしても気絶・・・・・・。









5分後・・・・・・

「気がついたか?」

「すいません・・・、また倒れちゃって・・・。」

「なあに・・・、俺も初めて会った時はんなもんだったから。」

確かに、初対面でいきなり外見との大きなギャップを目の当たりにすれば、気絶するのも無理はない。

「驚かしてゴメンね。」

「いいえ、大丈夫ですから・・・。」

「そうか・・・。」

とりあえず、この件は一段落。

「そういえば・・・、ダイスケ。今日俺達を呼んだのは?」

「あぁ、芸能ニュースってコレは朝のトップだったから有名だと思いますが・・・。」

ダイスケは早速、今回の一件に関する真実を、この場にいるみんなに告げた・・・・・・。









「なるほど・・・、つまり『真さんと涼君は親友であり、イジメなんか一切していない』って事だね。」

「そういう事よ。」

今回の騒動の真実を知った彼らは、納得した表情になった。

「分かった。ココにいる花寺同窓会役員が証人として認めよう。」

「「「ありがとうございます!!」」」

ようやく、騒動の集結の兆しが見えてきた・・・!

「876プロには私から今回の件を伝えておくわ。」

「お願いします。」

「後は・・・、どう挽回するかだな・・・。」

いずれにせよ、どこかの公式の場で今回の一件に関する謝罪をメディアに伝えなければならない。

「一応、日曜は東京ジョイポリスで真のファン感謝イベントが有るからね・・・。」

謝罪の場を作れる機会があるとしたら、そこしかない。

「涼君、日曜の予定は?」

「日曜の予定は休みですが・・・。」

「良し、765プロからのオファーで秋月涼。今日休んだ代わりに、日曜はしっかり働いてもらうぞ!!」

「そうですね・・・。お願いします!!」

名誉挽回の意味も込めて、しっかり頑張ってもらわねば!

「っで・・・、なにやるの?」

「まず、今回の件についてファンに謝る事!!次に、特訓の成果を見せる為、1日限りのスペシャルユニットを組む。」

「スペシャルユニット・・・?」

真と涼のスペシャルユニットで、楽曲を披露し、一気にファンの心をさらにがっちり掴もうと言う算段だ!

すると、柏木が口を挟み、ナイスなネーミングを二人に贈った。

「それなら、そのユニット名、『ウインド・ティル』なんて名付けてみたらどうだい?」

「『ウインド・ティル』・・・?」

「『風の尻尾』か・・・。カッコ良いな・・・。」

自分たちの今後の道を示してくれるかのようなクールなユニット名、二人にとってもしっくりくるものだった。

「柏木先輩、相談相手とユニット名のネーミングありがとうございます。」

「そっちこそ・・・、僕らはファンなんだから・・・。そろそろ僕らは帰るけど、日曜日に用事が無かったら見に行くから。」

「私からも、他の薔薇様達や妹を連れて見に行くね。」

「「皆さん・・・、お世話になりました!!」」







――――バタンッ







さて、今日の山場はとりあえず越したと言っていいだろう。

しかし、まだまだこれからだ!

「さて・・・、俺達は日曜の為にもう一仕事するか・・・。」

「そうね。今日は残業してでもやるわ。」

二人は早速、今度のファン感謝イベントの最終調整に入る。

「涼君、ボクらはイベントで歌う歌の練習をしよう。」

「ハイ、真さん!!」

本番まで残り僅か。

その全てを注ぎ込んで、最高の歌を披露するために、頑張らねば!

「真、涼君。アンタらに本番で披露してもらう曲だけど・・・、コレはどう?」

「「『Style』?」」

手渡されたのは、歌詞が綴られた一枚の紙。

「曲のテープと楽譜は、レッスン室に置いてるから。」

「二人とも・・・、2日で覚えられるか?」

一瞬、ダイスケの脳裏に不安が過ったが・・・。

「ダイスケさん・・・、ボクを誰だと思うんですか?」

「そうだったな・・・、真は、SMAP特に、木村拓哉の大ファンだったし・・・。じゃあ、今日から泊まり込みでレッスンだ!!」

「「ハイッ!!」」







その後、二人は二日がかりでダイスケと共に泊り込みでレッスンを重ねていき、ついに、運命の本番…!!





















本番当日の日曜日、東京ジョイポリス内控え室では、真と涼が、空とダイスケと共に最後の確認を進めていた。

「いよいよ本番だ。二人とも・・・、準備は?」

「バッチリです、ダイスケさん!!」

「私もバッチリです。けど・・・、衣装が私服なんですか・・・?」

今回の衣装、またいつものような特別なものかと思ってたら、意外にも二人とも私服でスタンバイしていた。

「真、説明を頼む。」

SMAPファンでもある真が、その理由を簡潔に説明した。

「『Style』って曲をコンサートでやった時に、木村拓哉さんは私服で歌っていたんだ。」

「へ〜。」

「だから、ボク達も同じように私服でやろうって提案した訳。」

「分かったか。」

「なんとなく・・・。」

さて、もうすぐメインイベントの時間だ!

「そろそろ、先輩と亜美達の前座が終わる頃だから、ステージ袖に行くか・・・。」

「「ハイッ!!」」













東京ジョイポリス内特設ステージ。

今回の前座は、空がプロデュースする亜美&真美の漫才トーク。

「まぁ、この東京ジョイポリスには私イチオシのアトラクションが有るんですよ。」

「何ですか?」

「あそこの『ラブ&ベリー』のコーナー。」

「何時でも遊べるってか、もう置いてないし。」

「そうでした!!」

「「どうも、ありがとうございました〜!!」」

お客さんの笑いもそこそこつかめたと言ったところか。

拍手に送られ、二人はステージ脇へと引いた。

そして、入れ替わるように空がステージ上に上がってきた。

「ハイッ、双海姉妹の双子漫才いかがでしたか?さぁ、お次は本日のメイン!!『菊地真ファン感謝イベント』の前に・・・、ただ今から『緊急公開記者会見』を開催させて頂きます。すみませんが、記者の皆さんは前に来てもらいませんか?」

観客が少しどよめく。

この場で記者会見をやると言うことは、おそらく、例の件に関してだろう。













真とダイスケ、そして空がスタンバイし、緊急会見が始まった。

「え〜っ、本日はボクのファン感謝イベントの時間をさいてこのような記者会見をしてもらってすみません。」

「まず、今回の件について、菊地真本人と被害にあったアイドル本人と相談した結果・・・、本人達はイジメていないという事が、報告されてます。次に、菊地真の今後の処分ですが・・・、既に対象となったアイドルと和解していますので、処分は無し。また、所属事務所も提携先な為、こういう事が無いよう、コレからも努力していく考えを持ってます。」

「ちょっと良いですか?」

手を挙げたのは、ジャーナリストの中でもその名を知られている、“野次馬のジェス”ことジェス・リブル。

事件の真実の追及には人一倍こだわっている。

「どうぞ、ジェス・リブルさん。」

「今回の処分に関してですが・・・、ちょっと甘過ぎませんか?」

ジェスの言葉にも一理ある。

今回の一件はもう少し処分を重くしてもいいと思うが・・・。

「確かに・・・、ジェス・リブルさんの言う通り、処分が甘いと思われる人もいます。しかし・・・、今回の事件の証人として、私立花寺学園同窓会役員の柏木優さん、私立リリアン女学園同窓会役員兼765プロ顧問弁護士の水野蓉子さんに立ち会ってもらいました。」

「柏木優に水野蓉子だって・・・!?」

「あの、大手金融会社の常務に若手注目女性弁護士とダイスケさんは知り合いだったのか・・・?」

記者はもちろん観客もこれ以上ないどよめきを見せた。

意外な人物がその名を挙げていること自体、彼らにとっては予想もしなかったことだったから。

(柏木さんってやっぱり凄い人だったんだ・・・。)

ステージ脇で控えている涼も、改めて二人の凄さに関心を示した。

「ハイハイ・・・、静粛に!!って皆さん・・・、忘れてません?俺は花寺で空さんがリリアンの出身だったの・・・?」

「あ、そうだったな・・・。」

二人の出身校に関しては彼らも少なからず耳にしている。

その伝手があったと言うことか・・・。

「・・・っという事で以上を持って765プロ緊急公開記者会見を終了します。ありがとうございました。」

これで、今回の一件は決着を見た。

真は一旦ステージの袖へと引き、同時にスタッフが手早くテーブルと椅子を片付けて、今回のメインイベントの準備を整えさせた。

そして、数分の間をおいた後、改めて空とダイスケがステージ上に上がった。

「さぁ、大変長らくお待たせいたしました!これより765プロ主催、『菊地真 ファン感謝イベント』の幕開けです!」

「それじゃ、本日限りのスペシャルユニット『ウインド・ティル』カモ〜ン!!」





「涼さん、準備は良い?」



「ハイッ!!」



観客席の黄色い歓声に迎えられ、二人はステージへと上がった・・・・・・。





後日談ではあるが、この『ウインド・ティル』は意外な事に大好評で1日限定どころかシングルを2曲出すまでヒットしてしまった・・・。





風の尻尾“Wind Tail”―――。

それは、この世界を駆け巡る風を追いかける風。

巻き起こる大きな風を追いかけるようにして、自然のコントラストを作り出す、小さな追い風。

二人に立ちはだかる大きな風も小さな風も、その追い風を纏っていけば、雲の彼方まで行けるだろう・・・





--THE END--



あとがきと言う名のフリートーク
DaisukeP「涼君誕生日記念SS『Style』いかがですか?」
   空「一応、前回の続きになるのね。」
DaisukeP「そう言う事。」
   空「ところでさ・・・、今回のテーマソングの『Style』って?」
DaisukeP「以前、SMAPのアルバム収録曲をテーマにしたんだけど、
     今回は、ディスク2に収録されてる木村拓哉さんのソロナンバーをテーマソングにしたんだ。
     まぁ、1回聞いてみて。」
   空「分かったわ。んで・・・、次回は?」
DaisukeP「次回作の候補は2つ。1つは、俺初の『らき☆すた×アイマス』クロス作品(ちなみに、主役はこなた。)
     『ドリームクラブ×アイマス』クロス作品の予定だ。」
   空「次回作も期待して良いわね!!」
DaisukeP「もちろん!!」

空&DaisukeP「それじゃあ、ごきげんよう。」
編集者・コースケの後書き

アイマスDS発売直前の秋月涼誕生日記念SSと相成った、今回のスペシャルSS、いかがでしたでしょうか?
ちなみに、最後の4行、“ウインド・ティル”と言う名前にこめられた思いを、僕の勝手な妄想でまとめてみたりしてますけど、DaisukePさん、いかがでしょうか?
さてさて、次回のSSもどうやら凄いことになりそうですね…。
らき☆すたとのクロスと、ドリームクラブとのクロス……まるっきり想像がつきませんね…。
どういう形になるか、次回も期待していますよ☆







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