……この本によれば、テレビの中の世界・“プラズマ界”に存在するシードピア…。
その世界は、異次元からの侵略者・亜空軍の攻撃によって、滅亡の危機に瀕していた。
そして、時を同じくしてミッドチルダがプラズマ界から消失、数多の次元世界も崩壊の一途を辿っていた。
しかし……平行世界からやってきた赤き勇者・アカレッドの導きと、偶発的に集まった光が重なり合ったことにより、その闇に立ち向かう希望の種が集まってくる。
“虹の輝きを宿す五色の勇者”・スーパー戦隊―――。
“正義の系譜を継承するマスクドヒーロー”・仮面ライダー―――。
“人類の光と闇を調和する愛の象徴”・プリキュア―――。
“銀色の輝きが映える巨大なる無敵の勇士”・ウルトラマン―――。
“鋼の鎧を纏いしガーディアン”・メタルヒーロー―――。
“シードピアの古代の戦士”・スマッシュブラザーズ―――。
……数えようと思っても数え切れない希望の種が、絶望の大きさに比例して肥大化していく…。
それは、終わりを見せることを知らない戦いのさらなる加速を意味していた…。
そして、その影響は、これからお見せする一連の出来事にも関連してくる……。
え?………さっきから色々と語っているボクが何者なのかって…?
フフフフフフ…………
Phase219 FWパニック・CONCLUSION -EXTRA SIDE-
虹の勇者、再び 〜ダンゼン!未来〜
…………こちらは現実世界“リアルワールド”。
テレビの中の世界で存亡をかけた戦いが繰り広げられていたことはもちろんのこと、その別世界が存在していたことなど、誰一人知るはずもない。
…………ただ、“彼ら”を除いては……。
―――ピカアァッ!
ヨーロッパ・フランスの某所。
帳も落ちた頃の村の片隅で、なぜか一瞬光が漏れた。
やがてそこに、一人の女性の姿が現れた。
見た目としてはギリギリ20代くらいだろうか。
「……?ここは…?」
眼を開けると見知らぬ光景。
そんな不思議な状況に見舞われた彼女は、周囲を見渡す。
自分が住んでいる場所とは大きく異なり、西洋風の雰囲気の建物が点々と存在し、その雰囲気も落ち着いている…。
「…どうしてこんなところに…?」
少なくとも、自分が普段住んでいるところではないことだけは確かだ。
……ノブコ。
「…………?」
……誰かの声が聞こえたような気がした。
周りを見渡すが、人の気配はない…。
……ノブコ。
「!!!」
今度ははっきりと聞こえた…!
姿が見えないのに、確かに自分の名前を呼ぶ少女の声が…!!
「誰?…誰なの!?……どこにいるの!?」
ノブコと名を呼ばれた女性は、言い知れぬ不気味な雰囲気に戸惑う。
よく聞いて、ノブコ。
私はあなたの味方よ。
あなたを導くためにここに来たの。
あなたの力が必要なの。
あらゆる困難を乗り越えた心を持つ、あなたの力が。
だからお願い、こっちに来て。
今から道を教えるから。
真剣な声のトーンに、どこか信じられそうな何かを感じたノブコは、不安を抱きながら前に進み始めた…。
「……ここは一体、どこなの?」
ここは“ドンレミ=ラ=ピュセル”。
かつては“ドンレミ村”と呼ばれていた、フランス東部の小さな村よ。
歩を進める中で自分の意識に語りかける声に質問するノブコは、その返答を聞き、自分がフランスに飛ばされたことを知った。
しかし、自分をなぜこの片田舎に飛ばしたのかは答えてくれなかった。
目的の場所に着けばいずれは分かるとのことだそうだ。
「…ところで、あなた、どうしてあたしのことを知っているの…?」
話題を変えて次の質問をぶつけてみた。
おそらく、ノブコと彼女は初対面になるはず。
…にも関わらずどうして自分の名前を知っているのだろうか…?
それについてはいずれ話すわ。
それに、この場所に連れてきたのはあなただけじゃないのよ。
「…え?」
……他にもいる?!
「おーい!信ちゃん!」
ふと、聞きなれた声が聞こえ、振り向いた。
そこにいたのは、自分らよりも背の低い一人の青年。
自分とともにテレビの世界を盛り上げた仲間だった。
「えっ!?クマちゃん!?」
“クマちゃん”と愛称で呼ばれた青年は信子のもとへと合流する。
「久しぶりじゃん!元気にしてた?」
「クマちゃんも元気そうね。…でも、どうしてここに?」
「あぁ…、実はセーメー様と玄武のおっさんに頼まれてここに着たんだよ。“別世界での新しい使命だ”って言って。」
「え!?それって、クマちゃんが以前お世話になったって言う…!?」
脳裏に浮かんだのは、かつて悪霊がらみの奇々怪々な事件に遭遇したあの出来事。
自身もかつてその人物とあったことがある。
「でも、その始めとしてここに向かえってのが、予想外だったけどな。」
「あたし…気がついたらこの場所にいたの。それで、頭の中に女の人の声が聞こえてきて…。」
「!?…信ちゃんも!?実はオレもなんだ!セーメー様たちとは別の、知らない女の人の声が…!」
「えっ!?」
……どうやらここに導いたのは同じ人間のようだ。
さあ、目的地はもうすぐよ。
このまま真っ直ぐ進んで。
再び聞こえた女の声。
二人はその声に導かれるまま、その先を進んでいった……。
所変わって、プラズマ界の某所。
街の中の片隅にある“ビューティーハリー”と書かれたサロンショップが存在する。
そこの店の従業員、店主である青年のセンスは時折的外れなものを提供するが、大抵は高評価なものばかり。
アルバイトとして働いている5人の少女たちの客あたりの良さも定評がある。
「今日も平和だねぇ〜、はぐたん☆」
「はぎゅぅ〜☆」
その店内でのんびりとくつろぐ少女と赤ん坊。
お客の数も少し落ち着き、小休止と言ったところのようだ。
「はな、お客さんみんな帰ったで。」
「ありがと、ハリー。」
そこに、店の経営を担う一人の青年と、その手伝いをする4人の少女たちが合流する。
「みんな最近どう?忙しそうだけど…。」
「まあね。フィギュアスケートの練習とか大会とか久しぶりに出るし、なかなかね。」
「わたしも新しいドラマのオーディションが控えているし、今度の役はぜひとも取りたいのよね。」
「わたしたちは新曲の制作中なのです。ルールーには作詞を考えてもらうのです!」
「曲のために詩を創作すると言うのはなかなかに困難ですが、人間たちの心に残るいいものを作りたいと思っています。」
「すごいね〜!」
仲間たちの活躍に嬉々とする表情を浮かべる、はなと言う名の少女。
彼女たちの活躍を最後まで応援してあげたい。
はなはそう思っているようだ。
―――カランカラン。
ふと、店内のドアが開かれ、二人の少女が入ってきた。
一人は桃色のロングヘアをなびかせる自分たちと同じくらいの中学生の女の子。
もう一人は、見た目はやや年下で、小学生相当の金髪の女の子だった。
「いらっしゃいませ〜!」
その二人を笑顔で出迎えるはな。
仲間たちもその後に続く。
「お邪魔するわね。あなたたちが新世代のプリキュアね。」
―――!!!???
突発的に看破された自分たちの正体。
その予想外の発言は一同を困惑させた。
「野乃なな、薬師寺さあや、輝木ほまれ、愛崎えみる、ルールー・アムール。あなたたちの力を貸してもらいたいのよ。」
しかも自分たちの名前すらも知っていると言うまさかの事態…。
「ど、どないなっとんねん!なんで彼女たちのことを知っとんのや!?」
ハリーと言う名の青年もこの状況にはさすがについてこれず、混乱するばかりだった。
「ごめんね、それを話している暇はないの。」
「みんな、これを見て。」
そう言って、二人は自身の超能力を使って一行の脳裏に映像を見せた。
そこに映っていたのは、多数のプリキュアたちが捕らえられた墓場のような場所。
その場所で、光のローブのようなものに包まれた謎の存在が立ちはだかる。
その中からは、“禍々しい巨大な茨”と“巨大な目玉”と“巨大な脳髄”が垣間見える。
さらにその周りには、敵軍の配下と思しき“謎の巨大な左手”の集団がうようよしていた。
そして―――!
――キャ〜〜〜!!!!???
彼らにやられて、墓場に監禁されてしまった、3人の桃色のプリキュアの姿が見えた!
――!!!!!!
「はるかさん、みらいさん、いちかちゃん!!??」
「今の…見た!?」
「ええ、確かに…。歴代のプリキュアたちが大ピンチの様子だったわ…!」
「まさか、先輩達に緊急事態が起こったのですか?!」
「正直、機械の体の私でも理解できません。」
案の定、はなたちは脳裏に焼き付けられた光景に困惑を隠せない。
それはもちろん、ハリーとはぐたんも。
「これがホンマの状況やとしたら……これってマズいとちゃうか!?」
先代のプリキュアたちが謎の敵にやられて囚われの身…。
それは即ち、自分たちの存在すらも危ぶまれる状況にも発展しかねないと言うことだ…!!
「未来に羽ばたく翼を持ったあなたたちの力が必要なの!」
「お願い、力を貸して!」
少女二人に懇願された一同、当然ながらどうするべきか困惑。
「お前ら、ちょっといいか?」
『!?』
ふと、店の入り口から青年の声が聞こえた。
一同が視線を向けると―――。
「チャラリート!?」
「パップルにダイガン!?」
「アンリも…!」
プリキュアたちの陰の立役者でもある、私立芸能事務所“まえむきあしたエージェンシー(M.A.A.)”のメンバーたちが並び立っていた。
さらに、ほまれの友人の”若宮アンリ”の姿もあった。
「あなたたち、どうして…?!」
「いやぁ、たまたま店の近くを通りかかったら、いきなりパップルがその二人に何かを見出したみたいで…。」
「僕は練習帰りに近くを歩いていたら、その子達からビューティーハリーの道を聞かれてね……。」
…と、パップルが二人の少女に歩み寄り、その顔を見つめた。
「…どこかで見たことあると思ったら、人生最大のぶっとびじゃないの。」
この二人を知っているのか……と思いきや――!!!
「あなたたち、伝説の魔法少女の“ウェディングピーチ”と“ナースエンジェル”じゃなくって?」
――――――………………え゛!!??
伝説の魔法少女〜っ!!!!????
“ウェディングピーチ”こと花咲ももこ。
愛天使とも呼ばれた伝説の魔法少女の一人で、確執が続いていた天使界と魔界の戦いを終結に導いたヒロインでもある。
かたや“ナースエンジェル”こと森谷りりか。
世界に生きる全ての人間たちと自然を守るために戦った、命の看護婦とも言われるヒロイン。
いずれも、かつてハートユナイティアでその歴史に名を残した伝説の存在であり、ある意味では、はなたちプリキュアの礎とも言える人物でもあるのだ。
「……そうだったんだ…、それであたしたちに…。」
自分たちの力と意志を受け継いだ後輩たちを守りたい。
はなたちは二人の先輩戦士たちの想いを察したのだった。
やがて一行はその願いを承諾、先輩戦士たちを助けるため、人々の愛と希望を守るため、かつてない過酷な戦いへと乗り込むことにした。
はぐたんの世話については、パップルたちとハリーに任せ、5人は準備を急いだ…………。
再びリアルワールドのフランス、ドンレミ村―――。
謎の声に導かれたノブコたちは、やがて一軒の家にたどり着く。
「ここは……?」
何の変哲もない小さな一軒家だが、ここに何かあるのか…?
「信ちゃん!」
「クマちゃん!」
二人の愛称を呼んだ、二人の男女の声。
振り返るとそこに、まさかの顔見知りがあった。
「アカネちゃん!」
「シュンスケ!」
いずれも、かつて仲間として数々の試練に立ち向かっていった仲間たちだったのだ。
「二人もこっちに来てたのね。」
「もしかして、そっちも!?」
「そうなのよ、いきなりこんなところに飛ばされたかと思ったら…。」
「聞きなれない女の人の声が聞こえてきて、次第にこっちにたどり着いて……。」
どうやら彼らも同じ流れでここにたどり着いたようだ。
―――ピカアァァッ!!!!
『?!』
ふと、彼らの傍でいきなり光の玉が出現、強く輝きだした。
そしてそれはやがて、一人の少女の姿を作り出した。
見た目は自分らよりやや年下、二つのシュシュを飾った黒髪に、胸元の谷間がちらりと見える真っ赤なドレスを纏った少女。
その雰囲気は、幻想的とも思えた。
ふと、彼女は地に降り立つとゆっくりとその眼を開いた。
「みんな、よく来てくれたわ。」
「あなたがわたしたちをここに…?」
「そうよ。私は遠坂リン。別世界から来た魔導師の一人よ。」
「魔導師……そういうことか。」
脳裏に言葉を投げかけたのも肯ける。
魔法使いが実在していたと言うのも驚きなのだが……。
「数々の試練を乗り越えてきた“元てれび戦士”、あなたたちに力を貸して欲しいの。」
『!!?』
“てれび戦士”―――。
それは自分たちも活躍していた“天才てれびくんシリーズ”に出演した、子役タレントの総称。
その名前をリンが出してきたと言うことは……!
「まさか、私たちをここに連れてきた理由って…!?」
「それだけじゃないわ。ノブコ、虹の勇者としてプラズマ界の戦乱を戦い抜いたあなたの勇気、私はそれに賭けてみたいと思ったのよ。」
―――!!!!
一同はさらに驚愕した。
「ぷ、プラズマ界!?」
「それって、確か信ちゃんが迷い込んだって言う…!?」
「テレビの中の異次元空間…!!」
その名前をまさか再び耳にすることになろうとは…!!
「どうしてあなたがその名前を……?!」
「私はその世界に移住したって言う“元地球人”に頼まれたの。自分たちの子孫にあたる新世代のてれび戦士たちを助けて欲しいって。」
ノブコの脳裏に浮かんだのは、あの地球人。
てれび戦士としてプラズマ界での戦いに挑み、その世界で恋した男を守るために残ったと言う仲間だった。
ノブコが選ばれた理由はおおよそ間違いなく、その戦いを彼女が知ったからこその抜擢なのだろう。
「でも…、どうして私たちを選んだの?」
しかし、他の3人については言わば巻き込まれた方。
どうして自分たちが選ばれたのだろうか…!?
「簡単なことよ。クマキ、シュンスケ、アカネ。あなたたちには他のてれび戦士たちにはない特別なものを持っているからよ。」
クマキには、かつて悪霊を退治するために様々な怪事件を解決してきた経験が。
シュンスケには、困っている・苦しんでいる人々を助けたいと言う正義感が。
アカネには、みんなを笑顔にしてあげたいと願う純真な心が。
……それぞれの心のうちにある秘めた強さと言うものを、リンは見抜いていたのだ。
「あなたたちの力が、きっとプラズマ界を救ってくれるはず。そして、その世界で戦う“てれび戦士”の仲間たちの助けになる。私はそう感じたのよ。」
まさか自分たちがそういう理由で選ばれたとは……。
でも、ほとんど何の伝手もない自分たちがプラズマ界に乗り込んで大丈夫なのだろうか…?
いささか、彼らの心と脳裏に不安が過ぎる………。
「行こう、プラズマ界へ。」
「の、信ちゃん!?」
それを遮ったのは、ノブコの決意の一言だった。
思わぬ一言にアカネは慌てる。
「オレも行く!」
「く、クマちゃんも!?」
そして、意外にもクマキも彼女の意志に賛同した。
シュンスケも予想外の流れにビックリした。
あの子の子孫はあたしたちにとっての後輩も同然!
今のあたしたちに出来ることは少ないかもしれないけれど、その子たちを支えてあげることが出来るなら、守ることが出来るなら……!
あたしはみんなを助けたい!
それがきっと、あの世界に残ったあの子への恩返しになるから…!
オレはそのプラズマ界がどんなものなのかは知らないし、信ちゃんの話は半信半疑だった。
だけど、今回のことで信じられるようになった!
地球と大きく異なるパラレル世界の存在を!
その世界で、仲間のてれび戦士たちが苦しんでいるなら、同じてれび戦士の先輩として、みんなを守ってあげたいんだ!!!
「シュンスケ、アカネ!オレたちで、出来る限りのことをやってみようよ!」
「力を合わせれば、プラズマ界のみんなの背中を押すことくらい、出来るでしょ、ね?」
決意を固めた二人の目と気迫はとても強かった。
過酷な戦いを経験したことのある二人だからこそ、それが言えるのかも知れない。
「……はぁ、仕方がないわね。考えてみたら、ここに呼ばれた時点で乗りかかった舟だしね。」
「あぁ、やるしかない。俺たちの勇気、後輩たちに伝えていこう!」
こうして、4人の戦士たちは戦いに名乗りを上げる決意を固めた。
その瞬間を見届けたリンも「これで決まりね」と、笑みを浮かべる。
「それじゃ、旅立つ前に…。」
…と、リンは右手をかざし、4つに分けた魔力をそれぞれの右手に宿らせた。
驚く4人の右手の甲には、赤い刺繍のような紋様が描かれた。
「あなたたちには、これからの戦いの助けになる、ある人たちを召喚してもらうわ。」
「「「「えっ?召喚?」」」」
「そう、私たちはそれを“サーヴァント”と呼んでいるわ。」
“サーヴァント”――――。
噛み砕いて説明すれば、“歴史や神話にその名を残した英傑や英霊の魂を具現化した存在”のことを指す。
リンの世界では、そのサーヴァントを召喚・使徒することで戦い抜くと言う知られざる戦い―――“聖杯戦争”が存在する。
今回、彼女はそのサーヴァントたちを、てれび戦士たちの遊撃戦力として提供しようと言うのだ。
「あなたたちの手の甲に刻まれた刺繍は、“令呪(れいじゅ)”と呼ばれる特殊なシルシ。サーヴァントの所有を示す証でもあるのよ。」
異世界の魔法の力は、なかなかに物騒なようだ。
「それで…そのサーヴァントって言うのを呼び出すには、何か必要なモノとかってあるの…?」
「フフッ…いい質問だわ、ノブコ。」
そう言うとリンは、どこからか4つのアイテムを取り出し、それをノブコたちに渡した。
ノブコ→旗の破片
クマキ→試験管
アカネ→ガラス瓶
シュンスケ→鎧の断片
「本来、サーヴァントの召喚に関しては、召喚者の精神に酷似した存在が呼び出されるけれど、“触媒”を使って思い通りのサーヴァントを呼び出す確実な方法も存在するわ。」
その特殊アイテムとして、“聖遺物”と呼ばれるものが存在する。
それを触媒に使い、召喚の儀式を行えば、狙ったサーヴァントを呼び出せる可能性が高いのだ。
今回は、手渡したその4つのアイテムを触媒に使い、4人の戦いを支えてくれるサーヴァントを呼び出すことにした。
やがて、雲の中から強く輝く満月が顔を出す。
その角度は丁度、ノブコたちの真上当たりと言ったところか。
そして、彼らの足元には、リンの手によって作り出された大型の召喚魔法陣。
中央には、触媒として与えられた4つのアイテムが鎮座している。
その魔法陣を囲むようにして並んだ4人のOBてれび戦士たち。
「さあ、全員で魔法陣に手をかざして。さっき教えた召喚の言霊を唱えるのよ。」
4人はアイコンタクトを交わし、令呪の刻まれた手を魔法陣に向けてかざす。
「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。手向ける色は…“虹色”」
ノブコの最初の言葉が響くと、魔法陣がその手向けた色を彷彿とする輝きに包まれる。
「降り立つ風には壁を。」
「四方の門は閉じ、王冠より出で―――。」
「王国に至る三叉路は循環せよ!」
続いてクマキ、アカネ、シュンスケが、一語一句間違うことなく詠唱の言葉を唱える。
少しずつ、魔法陣の輝きが強くなる……!
「閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。繰り返すつどに五度。」
「ただ、満たされる刻を破却する。」
少しずつだが、心臓の鼓動が早くなっていくのを感じる。
未知の出来事に緊張しているのかもしれない。
しかし、それでもたじろぐことなく詠唱を続ける…。
「――――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。」
「聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ!」
やがて周囲に稲妻が迸り、虹色の輝きはさらにその強さを増す。
「「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者。」」
「「我は常世総ての悪を敷く者。」」
……ついに、その魔力は最高潮に達する…!
「汝、三大の言霊を纏う七天―――!」
『抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!!』
―――ズドオォォンッ!!!!!!
その瞬間、大きな光の柱が魔法陣から放たれ、周囲に衝撃波と砂嵐が巻き起こった…!!
……………ややあって、その光と砂嵐は晴れ、そこには――――!
「………まさか、私の故郷で召喚されるなんて、夢にも思いませんでしたね。」
「それもそうですが、複雑な関係にあった我々が同志として会い見えると言うことも驚きです。」
「敵として、味方として、戦い抜いたあの日々は、オレたちの心に残っている。」
「うんうん!それを分かち合えることはイイコト!」
言葉では表現しがたい4人の姿がそこにあった。
ノブコたちは驚きの表情を浮かべながら、とりあえず一箇所に集まる…。
「……?」
「あの〜……あなたたちは…?」
困惑するノブコが発した第一声を聞き――。
「あぁ、これは失礼を。」
現れた4人は並び立ち、改めてノブコたちの前で跪く。
「虹の勇者とその同胞の皆さん、我らサーヴァント4騎、あなたがたの召喚に応じ、参上いたしました。」
そして、現れた4人のサーヴァントたちは、それぞれ一人ずつ自己紹介をする―――。
「私はジャンヌ・ダルク。ルーラー、即ち“裁定者”のクラスに属する者です。」
旗を携えた金髪の少女、それは地球の歴史においても有名な聖女であった存在である。
「我が名はジル・ド・レェ。ジャンヌの同胞として戦った、セイバーの一人であります。」
かたや、銀色の鎧を纏った実直なイメージの黒髪の男は、彼女の同志として戦争を経験した片腕とも言うべき存在。
「オレはジーク。ホムンクルスであり、キャスター…つまり術士のサーヴァントでもある。」
白と黒のシンプルな服装を着た、灰色に似た髪の赤眼の青年。
自らをホムンクルスと言った彼には、何か特別なものを感じざるを得ない…。
「ボクの名前はアストルフォ。幻獣を操ることが出来る、ライダーのサーヴァントだよ☆」
薄ピンク色の髪に黒のリボンを飾った女性は、どこかボーイッシュな雰囲気を感じる。
さしずめ、ムードメーカーといったところかも知れない。
ふと、それぞれの自己紹介が終わると同時に、4人は徐に立ち上がり、ノブコたちと視線を合わせる。
そして、ジャンヌが口を開く……!!!
「さあ、お聞かせください。」
あなた方が我らの、マスターですか?
---to be continued---
☆あとがき
アキッキーさんも驚かざるを得なかったOBてれび戦士の緊急参戦パートを、今年最後の更新として書き上げさせていただきました!
しかも、てれび戦士のパートは久しぶりに僕のオリジナルとなっています☆
さらにそれに併せて、アキッキーさんが強力に推していた新参戦作品、Fateシリーズがいよいよ顔見世です!!!
実はここ最近、僕自身もはまってしまっている『Fate Grand Order Arcade』が大きな影響になっていたりしています(笑)
今後のシードピアでも彼らサーヴァントの活躍を引き立たせて行きたいと思います!
ちなみに、冒頭のあの語り、アキッキーさんから最近届けられた“ある予告編プロット案”を踏襲して作ってみたものです。