Phase219 FWパニック・CONCLUSION -DARK SIDE-
黒き神託と暗躍の鬼鳥 〜Roll the Dice〜
………亜空間のさらに奥深くにある謎の人工惑星。
その内部は、プラズマ界のあらゆる場所から切り取った亜空迷宮で構築されている。
無論、シードピア連合はその惑星の存在を全く知る由もない。
そして、もちろん……。
亜空軍でさえも……。
「おーい、フィル・マクスウェル!そっちはどう!?」
惑星内部の研究区画の一つで、声が聞こえた。
「…ブラック指令か。こちらは抜かりない。」
フィルと呼ばれた男は、視線の先にある数多くのカプセルを見つめる。
その中には、一目見れば戦闘機人ともとれそうな数多くのアンドロイドたちが封印されている。
しかし、それはその戦闘機人のデータを極秘裏で入手して作り上げたアンドロイドたち。
「はぁ〜……それにしてもお前のアンドロイド技術はすごいもんだな。」
ブラック指令と呼ばれた黒い衣服の少女は、フィルの科学者としての才能に感心する。
「これでもかつてはエルトリアの科学者。これくらいのことは造作もない。」
自信満々に言い放つフィルの言葉に、ブラック指令は同士としての頼もしさすらも感じている。
そんな二人の片隅には、彼らと同様にカプセルの中で眠りについている一人のピンク色の髪の少女がいた。
そのカプセルの基盤には、「IR-S07」という製造番号と思しきシリアルコードが書かれていた…。
(覚悟しなさい、ユーリ…。今度はあんたが絶望を味わう番よ…!!)
「ほぉ……仮面ライダーの力か…。」
所変わってこちらはトレーニング施設の一角。
そこでは、一人の怪人と一人の男が“新しい備品”の実験を行おうとしていた…。
「ある異世界で見つかった“パンドラボックス”なるオーパーツ、そのテクノロジーを私なりに解析して生み出したものだ。」
「ハッ、貴様にそんなマネが出来ようとはな…。」
怪人が生み出したというライダーベルトに、男は感心と共に興味を示す。
「これをキミに進呈しよう。折角だから、その力を一度試してみるといい…。」
「…いいのか、ビズネラ。隙あらば、これを使ってお前を殺すことも出来るんだぞ…?」
「そのときはそのときさ。それに、これがあれば、君の憎む“あの少年”を苦しめることも、簡単なはずだよ?」
ビズネラと呼ばれた怪人は、男の威圧感に圧倒されることなく、淡々とした口調でアイテムを薦める。
「……ハハハッ……、いいだろう。」
やがて男はその誘いに乗り、ベルトを受け取った。
<エボルドライバー!!>
男はベルトを装着し、そして、ビズネラからさらに渡された二本のボトルを装填する
―――ゴポッ!<コブラ!>
―――ゴポッ!<ライダーシステム!>
<エボリューゥション!!>
組み合わせが認識され、男は邪悪な笑みを浮かべた。
「It's Show Time…!!!」
決め台詞を口にし、ベルトのレバーをゆっくりと廻す。
やがて、ボトルのエネルギーが外に放出され、男の前後に特殊なボディスーツが形成される…!!
<Are You Ready!?>
「変身…!!」
その瞬間、男の体は禍々しい仮面ライダーへと変貌した……!!
一方、こちらは人工惑星の中枢部。
そこは、この惑星に拠点を構える巨大組織の“神”が鎮座する玉座の間。
つまり、普段は幹部のみが入ることを許される、謁見の間でもあるのだ。
「偉大なる神々よ、四天王が一人、“幻空魔界教主フメイン”。」
「同じく、“電脳魔王カーンデジファー・アレクシス”。」
「もう一人、“暗黒創世王スカーレッド・シャドームーン”、参りました。」
四天王と呼ばれる暗黒の幹部陣のメンバーである3人が、その場所に入り、玉座の前でひざまずいていた。
その玉座の周りには、神の側近である4人の大幹部が並び立っている…。
「フフフフフ……揃ったようだな。」
ふと、その玉座から謎の声が聞こえた。
そこには、複数の翼を纏った謎の生命体の石像が鎮座している。
声はそこから発せられているようだ…。
「諸君、亜空軍の崩壊作戦の件について、現状を報告しろ。」
「は。ブルーストーカーのほうは、当初の目的であるダイモン謀殺に向け、いよいよ計画実行に乗り出しました。」
「亜空軍のアドラメレクも轟沈寸前にまで追い詰められ、タブーの抹殺計画ももうすぐ実行段階に移行できる予定です。」
「向こうからの極秘裏での引き抜きも完了しておりますゆえ、一両日中には、我らの新たな信奉者であり下僕として合流し、その信奉を拡散させる足がかりが整うことでしょう。」
計画は順調に進んでいることが伺える。
ふと、大幹部のうちの二人が口を開く。
「しかし、問題はキュゥべぇのほうだ。あやつ、どうやら欲を張りすぎたせいか、しくじった様だ。」
「ほむらも詰めが甘かったな。アカレッドとマーベラスを撃ち損じるとは…。」
現状のシードピアとアカレッドたちの状況も把握していたようだ。
その話を聞き、玉座の石像も渋る。
「確かに……彼奴らの強運が異常だったこともそうだが、あやつら、ツメの甘いところを…。」
自身の配下の失態の処分について考えるべきかと思っていたが、そこにカーンデジファーが口を挟む。
「キュゥべぇの処分については、既に松永久秀に任せてあります。ほむらの処分もこちらのほうで下します。」
「ふむ…任せる。…さて、次なる問題はシードピアの連合軍どもだ…。本格的に攻め入る算段は整いつつあるとはいえ、奴らの結束は想像以上だ…。侮ることは出来ぬぞ。」
「仰せの通りです。ほむらとキュゥべぇと言う駒を切り捨てることは前々から決まってはいるものの、戦力の削減の痛手は否めません。」
「グルルルル……。」
玉座の石像の言葉に、大幹部のうちの別の二人も同意する。
向こうの戦力の高さや、次第に整いつつある結束、こちらにとっても苦戦は必至だ…。
それならば、新たな仲間を出迎えると言う考えはどうかね?
本格的な侵略を開始するなら、同士を迎え入れ、一方で向こうにまつわる様々な情報を仕入れることが上策。
それが人の世の倣いであり、戦の基礎的な足がかりでもあろう?
『!!??』
それまで聞いたことのない声が玉座の間の周囲に響いた。
凛々しさと爽やかさを兼ね備える一方で、うかがい知ることの出来ぬ狡猾な雰囲気すらも漂わせる…。
そう、一癖も二癖もあると言ったような声だ。
「何者だ?!姿を見せろ!!」
玉座の石像の要請から間もなく、亜空間のゲートが開き、一人の男の姿が現れた。
腰まで伸びるほどの長い白髪、纏う衣服は海を彷彿とする青色をメインとしたもの。
頭部には独特の髪飾りをあしらい、左手には煙管を持っている。
闇を彷彿とする彼らの軍勢にはらしからぬ存在感だ……
お初にお目にかかるぞ、暗闇を統べる神と、その信奉者たちよ。
我が名は“鬼鳥(きちょう)”。
バサラワールドの東方の地・“東離”からやってきた幻術使いだ。
此度は、そなた等の同士である松永弾正久秀の紹介を受けてこちらに参った。
先ほどの会合、実に面白い。
一部始終を興味深く聞かせてもらった。
さて、前振りの言葉はここまでにして、早速こちらの用件を述べさせてもらおう。
黒き神託を全うする者たちよ………。
その布教活動に、私も加わらせてはくれないかね…?
---to be continued---
☆あとがき
またまたやってしまいました、事前予告なしのニューカマーです。
今回、目をつけたのは『Thunderbolt Fantasy 東離剣遊紀』。
ご存知、「まどマギ」作者の虚淵玄さんの書下ろしによるオリジナル人形劇シリーズです!
人形劇とは思えない動作やアクションに見入ってしまったのがきっかけだったりします。
その顔見世として、鬼鳥が出てきましたが、このままシードピアの敵として立ちはだかるのか…!?
それとも……!?