<アンダースタジオドーム・第2厨房室>
新参戦キャラクターの調整に負われている一方で、大忙しの撮影スケジュールにてんてこ舞いとなっている『フュージョンワールド・パニック』シリーズ。
毎度のごとく多くの出演者が裏方も兼任し、各種ケータリングや備品買出し、あげくには食事の配布など、もはや猫の手も借りたいと思うほどの状況に見舞われていた。
アスナ「キリトくん、お待たせ!サンドイッチ出来たよ!」
キリト「サンキュー!持っていくぜ!」
それは、最近参戦を表明した彼ら――S.A.O.チームも例外ではなかった。
たまたま、アスナが料理ができると言うことをスタッフが知ったため、次の撮影までの間、ケータリング補充のヘルプを任されたのだ。
白斗わかば「はやてさん!ディアーチェ!ケーキとクッキーが出来ました!」
はやて「おぉ!おおきにな。」
ディアーチェ「おぬしが手伝いに来てくれて助かるぞ。」
突然現れたこの少女――白斗わかば。
ミッドチルダのとある学校に通う学生で、ディアーチェとシュテルのクラスメートであり親友の間柄。
(余談だが、戦闘機人と言う設定で参戦しているマテリアルズ3人も、現場を離れればれっきとした学生なのだ。)
そのディアーチェがこの壮大なドラマに出演することが決まり、彼女もその活躍を楽しみにしていたと言う。
そんな中、彼女はそのディアーチェから連絡を受け、このアンダースタジオドームへ足を運び、今回の件に巻き込まれる形で厄介になることに…。
白斗このは「うわあぁ…これは大変すぎるよぉ…。」
レヴィ「大丈夫?このは。」
かたやこちらは白斗このは。
わかばの妹で、レヴィの大親友である。
彼女もどうやらわかばについていく形で今回の現場に巻き込まれたようだ。
そんな厨房の様子をジーッと見つめる小さな影。
いつの間にかスタジオ内に紛れ込んでいた赤いキツネと白いキツネのようだが…。
違うのは背中に羽がついてて尻尾も二本ずつ?
首元にはそれぞれペンダントがついていることから、誰かのペットのようだが…?
<アンダースタジオドーム・撮影スタジオ>
さてさて、こちらは現在緊迫した撮影の真っ只中のメインスタジオ。
アキッキーVSマーベラスの戦闘シーンの本番が行われている。
しかも、アキッキーはアカレッドのスーツアクターもやっているということもあって、これまでにない気迫がみなぎっていた。
ただ、そこまでは良かったものの……。
空課長「あぁー、カットカット!」
珍しくそのアキッキーが間違いを繰り返していて撮影がなかなか進まない状況になっていた。
空課長「どうしたのよ、アキッキー。これでNGテイク6回目よ。」
アキッキー「す、すみません…。」
雷電「先輩がこんなに間違えるなんて…。」
ソラ「いつもの先輩らしくないですよ?どうしたんですか?」
アキッキー「あぁ、その……何て言うか、ものすごく緊張しちゃってさ…。」
現在、アキッキーの目の前には、ゴーカイレッドのスーツを着たマーベラスの姿がある。
偉大なスーパー戦隊の実質的な先輩である彼との共演は、彼にとってとても喜ばしいことではあるのだが、同時に大きなプレッシャーでもあったのだ。
そんな彼の元に、コースケとダイスケが歩み寄る。
コースケ「大丈夫だって、アキッキー。ミスなんてどこでもつき物でしょ?」
ダイスケ「そうですよ。コレまでどおりに自分らしさを出していけば大丈夫ですって。」
アキッキー「う、うん…、そう、だよね…。」
二人のはげましを受けて、再び撮影に入るも、やっぱり緊張からくるせいか、今まで以上に覚束ない動作が目立っていた。
そんな彼の姿を見て、しびれを切らしたものが一人。
「DVバルカアアァァァンッ!!!!!」
――ズドドドオオォォンッ!!!
『どわあああぁぁぁぁぁっ!!!???』
『!!!!!?????』
コースケの突発的なバルカン連射攻撃で、戦闘兵役のスーツアクター十数人が吹き飛ばされた!
突発的な状況に空課長も他の一同も声をかけることができずに呆然…。
しかし、そんな周りの空気すらもお構いなしにコースケはアキッキーの傍による。
コースケ「ちょっと!アキッキー、何やっているのさ!」
アキッキー「チーフ…。」
コースケ「そんな弱気、僕の知っているアキッキーじゃないよ!しっかりしてよ!」
このとき、空課長は「その台詞、台本にないんだけど!?」と思ったのだが、しかも、まだカメラが回っているのを知ってか知らずか、アキッキーはとうとう本音を漏らした…!
アキッキー「……無理だよ、ボクには…。」
コースケ「ッ!!」
アキッキー「あの男……マーベラスはかつて初代アカレッドが認めた、戦隊の後継者なんだ。
それに引き換え、ボクは成り行き上で戦隊になった、“紛い物”ととっても差し支えない…。
今までボクは弱気になっていたみんなの心を奮い立たせてきたけど…。
ボクがこんななさけない状況じゃ…。」
そのアキッキーの言葉が、今まで溜め込んでいたコースケの怒りを大爆発させた!!
「この……ッ、大馬鹿ヤロオオォォォッ!!!!!!!」
―バキイイイィィィッ!!!!!!
「!!!!????」
アキッキーの胸倉を掴んでまさかの鉄拳炸裂!!??
この状況には全員が目を見開いて呆然…。
しかし、それすらお構いなしにコースケは続けた。
俺だってな、アキッキーの過去を初めて知ったとき、自分なんかがこの力を受け継いでよかったのかって迷っていたよ!
でもな!…先代のタイムファイヤーが、俺をもう一度奮い立たせてくれたんだ!!
“一人はみんなのために、みんなは一人のために戦うのがスーパー戦隊”だって!
“誰かのことを心配している暇があったら、自分の感じたことを戦いに活かせ”ってな!!!
お前が自分を信じなかったら、一体お前は何を信じて戦っているんだ!!??
俺は…いや、俺たちは、アキッキーと言う一人の戦士の力を信じて戦う!!!
だから!!!お前も俺たちを信じろぉっ!!!!!!
……その瞬間、スタジオ全域が静まり返った……。
普段のコースケとはかけ離れたと言っても過言ではないその口調も当然だが…。
空課長「……ハッ!…か、カットカット!!!」
何より一番驚いたのは…。
コースケ「……あ!…えっと、あれ…!?」
空課長「……コースケ、あんたねぇ…、我を忘れてアドリブ入れたでしょ!?それもたっぷりと!!」
コースケ「…あ〜…、す、すみません…!アキッキーがあまりにもみっともなかったもので…。」
雷電「いくらみっともないからって、あれはやりすぎだろ…。」
ダイスケ「しかも先輩に鉄拳なんて…。」
ソラ「無意識とはいえ、あそこまでやることはなかったんじゃ…。」
コースケ「で、でもさ…。」
そんな雰囲気を振り払ったのは、殴られた当人の言葉だった。
アキッキー「………ありがとうございます、チーフ。」
コースケ「…えっ!?」
アキッキー「ずっと、心配してくれてたんですね。
マーベラスさんを目の前にして、いつも以上に緊張していたボクのことを…。」
コースケ「…あぁ。本当なら、後で気合を入れなおしてやろうと思ってたんだけど…、
そうも言ってられない状況みたいだったから、つい、ね…。」
アキッキー「いえ、おかげで緊張も吹っ切れました!これなら行けます!」
………その直後、そのアドリブシーンは改変が加えられて正式な台本の台詞として緊急採用され、撮影は進められたと言う……。
--Following SEEDPIA CRISIS Phase207…--
--シードピアクライシス207話本編につづく…--
編集者・コースケの独り言
更新復帰前と言うことで、僕のオリジナル舞台裏エピソードを書き下ろさせていただきました。
……ちなみに後半の撮影現場の僕のアドリブ、今度の207話本編で大きく活用されます。
このアドリブが本編でどう活かされるのか、色々と妄想しながらお待ちいただきたいと思います!