Phase66 人類の欲望、人類の夢


シードピアと言う世界において誕生した、“コーディネイター”と言う新たなる人類の歴史、それは一人の男の存在から始まった。







――――ジョージ・グレン。







シードピア暦2800年代後期に誕生し、後に“ファースト・コーディネイター”と呼ばれるようになった存在。

名も明かされぬ科学者によって、遺伝子操作を受け、この世に生を受けたジョージ・グレンは、幼い頃から脅威の身体能力と頭脳を発揮、若くして“天才”の名をものにした。

また、さらに時が経つに連れ、最終的には自ら宇宙船の設計の責任者として携わるなど、常人では考えられない頭脳を見せ付けたのだ。

そして、シードピアの歴史が、30世紀(2900年代)を迎えようとしていた頃、ジョージは自らの秘密を告白した。

それが、新たなる人類・コーディネイターの存在が明かされた瞬間だった。

“遺伝子調整によって、脅威の能力を得る存在”

その面が大きく現れたことにより、後に“ナチュラル”と呼ばれるようになった旧人類たちにとっては、憧れと妬みが同時に膨らむことにも繋がった。







その衝撃の告白から30年足らずの頃、シードピアの宇宙空間に1基の大型コロニーが建造された。



“メンデル”と名付けられたそのコロニーは、主に遺伝子工学を専門に扱う研究所が軒を連ねることから、“遺伝子実験コロニー”とまで呼ばれるようになっていた。







事の発端と、その物語は、このメンデルの一角にある、一つの研究所で起こった。























G.A.R.M.R&D(Genetic Advanced Reproductive Medical Research Development)』と呼ばれた研究施設では、遺伝子工学はもとより、ある驚くべき計画をも考え出していた。





それは、“人工子宮によるコーディネイターの誕生の実験”。





簡単に言えば、母親の子宮を象った特殊な装置を用いて、今のコーディネイターのさらに上を行く存在を作り出そうと言うコンセプトを持った実験。

それによって作り出された人間は、通称“スーパーコーディネイター”と呼ばれるようになる……はずだったのだが…。

その実験の難易度は予想以上に高く、何度やっても失敗の繰り返しだった。

失敗作として生み出された存在は、ほとんどが“処分”と称して、その命を奪われてしまった。

因みに、一部の科学者たちの情けによって、処分を免れ、いずこかに逃がしてあげたケースも、極僅かながら存在したと言う…。

余談だが、その中には、後のカナードや劾も存在したと言う…。

実験の失敗を繰り返し、業を煮やした主任研究員―――ユーレン・ヒビキは、最後の実験に打って出る。

当時、妻であるヴィア・ヒビキの胎内には、二つの受精卵があった。

その内の一つにコーディネイター処置を施し、その子をスーパーコーディネイターとして誕生させようと言うのだ。

無論、ヴィアはこの件には断固反対した。

自分の子供が、今までの失敗作のような末路をたどる悪夢は、見たくなかったのだ。

しかし、強い決意と欲望を持ったユーレンたちの意志を曲げることなど、容易なことではなかった。









結局、妻の反対を押し切り、実験開始に着手したユーレンは、計画通り、受精卵の一つにコーディネイター処置を施し、それを人工子宮に移した。

余談だが、ヴィアはこの実験に立ち会うことはほとんどなかった。

実験は絶対失敗するに決まってる。

そう思うと、これから生まれてくる子供に会わせる顔がなかった。

痛ましいヴィアの心情を察するものなど、誰も居るはずがなかった……。









だが、この最後の実験に限って、ヴィアの考えとは正反対の事態が起こる。

コーディネイター処置が施されてからおよそ7ヵ月後、人工子宮から一人の少年が誕生した。

しかも、これまでの実験の失敗作とは全く違う、完璧な成功体。

ユーレンたち科学者の念願がついに叶った瞬間であった。

その上、神の悪戯か、それと同時にヴィアがナチュラルの女の子を出産したのだ。

ユーレンとヴィアの夫婦にとって、これほどまで嬉しい出来事はなかった。

“スーパーコーディネイター”と“ナチュラル”の双子。

ヒビキの血を受け継ぐものたちの、感動的な瞬間だった。









しかし、その幸せも、束の間でしかなかった………。















二人が生まれて間もない頃、ブルーコスモスファミリーを名乗る過激派の一派が突然メンデルを襲撃すると言う事件が発生した。

その矛先は、双子の赤ん坊にも向けられた。

しかし、その動きを事前に察知していたヴィアは、彼女らの妹夫婦であるヤマト夫妻に二人を託した。

その後、ヒビキ夫妻がどうなったかは、定かではないが、公式記録では二人は襲撃の際凶弾を浴びて死亡したとされている…。















メンデルから脱出し、難を逃れ、ニュートラルヴィアへと戻ってきたカリダは、託された二人の赤ん坊の今後の処遇を考えていた。

このまま二人を自分たちの我が子として迎え入れることも可能だ。

しかし、二人は双子でありながら、ナチュラルとコーディネイター。

その上、男の子はスーパーコーディネイターと呼ばれている存在。

事情が複雑だ。

ナチュラルならまだしも、スーパーコーディネイターと呼ばれる人種は極めて異例だ。

だが、せめて二人を普通に育てて、立派になってほしい。

悩んだ末に彼女は、もとから親交が深かったアスハ家を訪ねた。

ニュートラルヴィア有数の氏族・アスハ家の当主、ウズミ・ナラ・アスハもメンデルの悲劇を耳にしていたのだが、そこから逃れたスーパーコーディネイターの赤子を見るなど、彼にとっては初めての機会だった。

だが、やはり色々と不安が付きまとう。

いずれその秘密は明かさねばならないときが必ずくる。

せめてそのときまで、何も知らずに育ったほうがいい。

そう考えた二人は、男の子をヤマト家で、女の子をアスハ家でそれぞれ育てることを決定した。









その日以来、キラはヤマト家で、カガリはアスハ家の末裔として育てられ、二人がライガーシールズに入隊するまで、ごく平凡に暮らしていった。












だが、やはり大きな不安は続いていた。

“いつ二人の関係が明かされてしまうか。”

“それを知ったとき、二人はどんな反応を見せるのだろうか。”

“そのとき、二人は自分たちを怨んだりはしないだろうか。”

カリダは何度もそれを考え、心が押し潰されそうになりそうなほど、苦悩したと言う……。



























「……今、話したことが、二人の出生に関わる秘密全てよ。」

…シードピアに訪れて以来、てれび戦士たちは色んな出来事や事実に終始驚きっぱなしだったが、今回のキラとカガリの出生の秘密ほど、ここまで驚愕したことはなかった。

「…つまり、ヤマト隊長たちは、“メンデルの悲劇”から逃れることの出来た、幸運な人間だったってことか…。」

静かに結論付けたゴルゴの言葉に、キラはゆっくりと頷いた。

「…僕も、自分がどうしてコーディネイターとして生まれたのかが分からなかったし、初めてそれを聞かされた時も、“何が最高のコーディネイターだ”って、自分自身を呪いそうになってしまうくらい、僕は悲しんだ…。」

ゆっくりと語るキラの声は、どこか悲しそうだった。

当たり前だ。

自分が普通のコーディネイターとは違う存在であり、ましてや実の母親も他界していると知れば、尚更なことだ。

その時の苦しみはきっと、非常に耐えられないものだったのかもしれない……。

てれび戦士は、彼の心境を察し、静かに眼を伏せた。

「……だけど、今はもう気にしていないよ。」

――――――?

「たとえ、それが事実だとしても―――――。」





















「僕の母さんは唯一人、“カリダ・ヤマト”以外、ありえないから…。」





















その言葉には、自分をここまで育ててくれた“母親”に対する、“感謝”と“愛情”の念が込められていた。

「……ありがとう…っ…キラ…。」

カリダの瞳にも、涙の粒が。

自分の記憶の中で、ここまで優しい心を持つ息子を育てた記憶があっただろうか…。

ほんとに、彼は立派になってくれた。

何よりもそれが、カリダにとっての誇り以外の何物でもなかった。

「あの〜…ちょっと聞きたいんですけど…。」

ここで遠慮がちに、甜歌と愛実が質問を投げかけた。

「…その……、お話の中に出てきた、ウズミさんって、誰なんですか…?」

「…先ほどの話から察するに、カガリさんのお父さんのようですが……。」

てれび戦士たちにとっては聞きなれない名の人物である。

「あ、そう言えば話したことがなかったね…。」

キラが思い出したかのような仕草を見せると、簡単に説明した。

「ウズミさんは、僕たちライガーシールズの創設者であり、最高責任者でもあるんだ。」

「…つまり、ライガーシールズの…最高司令官……。」

「うん……“中立国の気高き獅子”と呼ばれていて、シードピアでその名を知らない人はいないって言うほどに、有名な人でもあったんだ。だけど、ブルーコスモスファミリーの襲撃で、重傷を負って…一時期、意識が全然戻らなかったんだ……。」

どうやら、一命は取り留めたようだが、仲間たちの悔しさは一際大きいようだ。

それはそうだ。

キラたちの直接の上司、ましてやカガリの親だ。

心が痛んでしまうのも、仕方がない…。

周囲に重い空気が再び漂う。

「…私は…悔しかった……。」

ふと、カガリが重い口を開いた。















ニュートラルヴィアが…私たちの国が戦場になるなんて…、とても考えられなかった。

自分がこんなにも無力だと思うと、尚更だった。

……だけど、お父様は最後まで、自分の志を貫いた。

……お父様は、“小さくても消えることのない”『希望』と言う名の灯を、私たちに託した……。

…だから、私たちは戦うっ!

お父様から託された意志と、希望の灯を胸に、私たちは戦い続ける!

その希望の灯が、平和と言う名の夜明けとなって、シードピアを照らす、そのときまで…!







私たちは……絶対に挫けない!!!!!










―――――カアアアアアァァァァァッ!!!!!






















『うおおぉっ!!!??』






カガリの体が急に輝きだした。

その光景に見覚えのあるキラとラクスは、眼を見開いた。

「…!キラ…もしや、これは……!!」

「そんな…まさかっ!!??」

途端、カガリの胸の奥から、鈍い痛みが。

「ッ!?…ぐっ…ぁぁあっ…!!!」

咄嗟に胸元を両手で押さえ、痛みをこらえるカガリ。

すると、眩い輝きと共にオレンジ色の宝石が、カガリの体内から姿を見せた。









「「あぁ〜っ!!それは!!!!」」





『シードクリスタル!!!!!!』





――――ビュワアアァァン!







――――!!!???
















前触れもなく空間に“穴”が開いた。

そこから飛び出したのは、光の翼で飛び回る黄色の携帯電話だった。

「なっ?!何だあれは!?」

「携帯電話……にしてはちょっとおかしいですよ!?」

周囲が困惑する中、キラとラクスは、GUNDAMの適合者として覚醒したがゆえ、あの携帯電話には見覚えがあった。

ただ、自立飛行して自分たちのところへと飛んでくると言うシステムは初耳だが……。

すると、携帯電話がカガリの存在を認識したのか、そのまま一直線に彼女に突っ込んできた。

「うわっ!?」

思わず防御の姿勢で身構えたが、予想に反して、携帯電話はカガリの右手に収まった。

「……!?」

何が起こったのか、カガリには理解できなかった。

てれび戦士たちも、カナードたちも混乱している。

だが、キラとラクスは十分に理解していた。

アイコンタクトを交わし、2人はカガリに歩み寄った。

「…予想外だったよ、カガリ。」

「私たちと同じ、SEEDを持つものでしたのね…。」

そう言って2人が取り出したもの、それは自分が持つものと同じ形の携帯電話だった。

「携帯電話型デバイス・ビルドマイザー。GUNDAMの適合者の証だよ。」

「これでカガリさんも、私たちと同じ戦士ですわね。」

…SEEDを持つもの……?…自分が……!?

まさか、そんなこと…!?

カガリは人一倍混乱していた。

それはそうだろう……いきなりそんなことを言われても、信じられるはずがないのが普通だ……。

















「やれやれ…冗談じゃねぇぞ…!」

















「……?」

困ったと言うような表情で、野次馬のジェスが司令室に入ってきた。

「ジェスさん、どうしたのですか?」

「いや……ゾロアシアのテレビ局から連絡が入ってさ…。」

ゾロアシアから?

また何か事件でもあったのだろうか……?















「実は……、向こうでパトリック・ザラ議長の水死体が発見されたそうなんだよ…!」

















――――――――え゛!?









――――――――ザラ議長の水死体!!!???









「「「ああああぁぁぁぁっ!!!!!!」」」









ここで声を上げたのは卓也、甜歌、愛実の3人。

有沙女王と共に、ゾロアシアに隠密行動に出ていたメンバーたちだ。

すると、衝撃の事実を告白した。













「そう言えば僕たち……!」

















「そのザラ議長の死体を見たってこと……!」

















「すっかり報告し忘れてた……!!!」

















ライガーシールズはもちろん、レッドとゴルゴですらこの報告は初耳だった。

















「「な゛、なんだって〜〜っ!!!!!???」」











『早く言えよ〜っ!!!!!!!!』












































「…“アカツキ”、目覚めたようですね…。」

セトナは、新たなるガンダム・アーマーの適合者の誕生に、笑みを浮かべた。

「あの……セトナさん、ここは一体何なんですか?」

「カオティクスルーインの深いところのようですが……。」

レイシー兄弟は、周囲を見渡しながら声をかけた。

セトナとの再会を果たしたレイシー兄弟は、杏奈、有沙女王、黒い団子三兄弟を引き連れて、カオティクスルーインの奥深くへと足を踏み入れていた。

ガンダムが封印されていたR.G.B.の場所から、さらに深いところへと………。







「……さぁ、着きましたわ。」







『………?』







たどり着いた場所は、先ほどのR.G.B.のポイントとは、比較的狭い場所。

目の前にはいかにも厳重なセキュリティが敷かれていそうな、巨大な鉄の扉。

「この扉の向こうには、GUNDAMの計画と同時に進行し、開発が進められていた、“全ガンダム・アーマー対応”“大型特殊アタッチメント”が封印されております。」

「「ガンダム専用の……」」

『特殊アタッチメント!!??』

どうやら様子からして、とても強固なアイテムであることは確かなようだ。

それを裏付ける言葉が、セトナの口から明かされた。

「闇の魔人・パトリックは、絶大な妖力で世界を絶望と混乱に叩き落した恐怖の存在。その力は無限に大きくなります。それは最悪の場合、ガンダム・アーマーだけの力では抑えきれないほどになります。」

てれび戦士の目が見開かれた。

もしもそうなったら、確実に勝ち目がない。

――――カタカタカタカタ………カタッ。

「そうなってしまった場合、そのアタッチメントの力を借りる必要がある確率、99.99%」

悪魔の電卓・愛美が現状を計算する。

彼女の計算の的中率は異常なまでに高いから、それもある意味怖いものである。

「だからこそ、皆さんをここへとお招きしたのです。」

「だとすれば尚更、すぐにこの扉の封印を解くべきではないか。」

「はい、有沙さま。しかし……。」

不意にセトナが言葉を濁した。

すぐに扉を開ければそれで済む話……のはずだが……。

彼女がここで押し黙ると言うことは……。

「もしかして……何か問題でも…?」

「……はい、実は…あちらに………。」

セトナが指差した先には、扉に取り付けられた謎の紙とキーボード。

その紙には――――――。






















『以下のヒントを参考に答えを導き、6文字のパスワードを入力せよ。』

○てれび戦士		○レインボー・ガーディアンズ	○アンダー・ワールド・ファミリー	○ライガーシールズ
○アークエンジェル		○サーペントテール		○ブルーコスモス・ファミリー		○ファントムペイン
○エターナル・フェイス	○ミネルバ			○ファントムレイダーズ		○エクステンデッド
○スピリチュアル・キャリバー	○ディスタンス・フォース	○オルカファイターズ			○ドルフィンナイツ
○ダイダルストライカーズ	○デンライナーポリス		○テレヴィア			○シードピア
○ニュートラルヴィア		○ゾロアシア・ワールド	○アストレイバー・アイランド		○ガンダムアーマー
○モビルスーツ		○モビルアーマー
・ヒント1:全てを英語表記にしてみる。
・ヒント2:その状態で空欄に入る言葉を推理する。
・ヒント3:英語表記時の“空白”は、文字数から省くこととする。
*尚、一部には独自の英語表記の場合もあるので、要注意。



















それを見た瞬間、全員が唖然とした。

これはどうみても……。

「…暗号、だな…。」

「しかも、今回は以前のものよりもかなり難しそう………。」

ここでセトナが口を開く。

「最初に申し上げますが、このアタッチメント計画は私たちの関わった計画とは別に進められていたもので、私でもここの暗号は解けていないのです……。」

セトナでも解けない暗号。

こうなってはてれび戦士も頭を抱える一方だった……。











この暗号を解いたその先、何が待ち受けるのだろうか………。



---to be continued---


☆あとがき
新たなる暗号・スケルトンクロスワードの登場でございます!
『リリなの コミックアンソロジー』の中にあったものを参考に、独自にペイントで書き上げた物でございます☆
このクロスワードが完成したとき、今後の展開で登場予定の究極武装が明らかになります!
ぜひとも、コピペして、挑戦してみてください!

さて、次回なんですが、さらなるドタバタな展開が待ち受けております。
注目すべきは終盤パート、早くも“あの男”が登場します!










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