――――――えええぇぇぇぇっ!!!!!
プラズマ界の大魔導師プレシア・テスタロッサが、てれび戦士たちの船を訪れ、摩訶不思議な出来事を目の前で見せてから数分足らず、リーフにまたしても大振動が発生した。
「シードピアの闇の魔人が復活したかもしれないですって!?」
「どういうことですか、さくらさん!!」
レッドとちひろは、その衝撃的情報を口にした目の前の3人、スピリチュアル・キャリバーのさくら、ジェミニ、フワニータの3人に詰め寄った。
3人は互いに眼を合わせ頷き合うと、ジェミニが指を鳴らした。
――――パチンッ!
空間モニターが出現し、ある場所の情景が映し出された。
それは、森の中にある、破壊された石碑だった。
「10日ほど前、ボクたちの基地があるスピリード島の墓場のすぐ近くで、こんな場所を発見したんだ。」
「後に調べて解ったのですが、ここはかつて、シードピアで猛威を振るったとされる、闇の魔人が封印されている場所であると言うことが、判明したのです。」
それに真っ先に反応したのが、テレヴィアの歴史学者・杏奈だった。
「闇の魔人……“パトリック・ハミルトン”のことですね…?」
てれび戦士たちはもちろん、ジェミニたちも驚きの目を向けた。
「杏奈先生、どうして知っているんですか?」
「この間、“エヴィデンス歴史館”に行ったとき、その魔人に関する歴史が残されているのを見つけたのよ。」
杏奈としての解釈に寄れば、闇の魔人、パトリック・ハミルトンは、古代シードピア時代においてその名を轟かせた、言わば、“世界を穿つ者”。
“黙示録の三騎士”と呼ばれる3人の魔導騎士を側近とし、世界全土を闇に染めようとした恐怖の存在であるらしい。
しかし、究極の切り札・GUNDAMを所有する戦士たちによって、三騎士もろとも、パトリックは何処かの地に封印され、現在に至っているとか。
「……でも、さくらさん、ジェミニさん、どうしてその魔人が復活したかもしれないと言えるのですか?」
「うん…その答えは、ココにあるよ。」
ジェミニの応答を受けたのか、空間モニターは壊れた石碑の傍にある、謎の文字を見せた。
φ л λ ι θ ι λ ж ψ э σ л σ ф г ж λ ι ч э ю ι ξ ж ю э б ι ξ ю л ы э ю л φ л λ э ι θ ж σ ж п ф
「……これは……シードピアの古代文字か…?」
「…でも…なんて書いてあるの?七世、わかんない。」
司令官格の竜一と七世には、理解不能な文字の並び。
「あれ?あの文字、どこかで見たような……。」
チアキはどこかで見たことがあるような思いを馳せていた。
彼はただ一人、その記憶を手繰り寄せる。
そんな中、ジェミニたちは語り始めた。
「実はこの古代文字、解読する方法が一つだけあるんだ。」
「そのカギが、この石盤。」
そう言ってフワニータが持ち出してきたのは、丁度、人間の肩幅より少し小さめの大きさを持つ、重そうな円盤型の石盤。
一見は何の変哲もなさそうなものに見えるが――――――。
「あぁ!その石盤の周辺に書かれている文字は!!!」
いち早くレッドが気付いた。
彼の言葉に気付いたてれび戦士たちも、その場に居合わせているステラやマユ、プレシアすらも気付いた。
その石盤には、シードピアの古代文字が合計で26個刻まれていたのだ。
「成る程……、その石盤を使ってわたしたちにも理解が出来る言葉に変えたと言うわけだな…。」
「その通りです、プレシアさん。」
ジェミニたちはこの石盤に刻まれている26個の古代文字を、アルファベットのA〜Zに変換して解読したと言う。
その結果―――――――――。
φ л λ ι θ ι λ ж ψ э σ л σ ф г ж λ ι ч э ю ι ξ ж ю э б ι ξ ю л ы э ю л φ л λ э ι θ ж σ ж п ф
↓
SEKIHI KOWARERU TOKI YAMI NO MAJIN MEZAME SEKAI HOROBU
↓
セキヒ コワレル トキ ヤミ ノ マジン メザメ セカイ ホロブ
――――――『石碑 壊れるとき 闇の魔人 目覚め 世界 滅ぶ』!?
「……そんで…どう言うことだ?」
ゴルゴを初め、一部のメンバーたちはまだ状況を認識していなかった。
だが、レッドを初め、ほとんどの仲間たちは状況認識と同時に驚愕に目を見開いた。
レッドは大慌てでとどのつまりを簡潔に伝えた。
「だから、石碑が破壊されて、パトリック・ハミルトンが目覚めてしまったら最後、“シードピアそのものが滅亡してしまう”ってことだよ!!!」
―――――――――えええぇぇえええぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!
「どどどっ、どうすんだよ!もう既に石碑が壊されているんだぞ!?」
「そそそっ、そんなことを言われましても……!!」
ゴルゴたちUWBのメンバーたちは大混乱しだした。
レッドたちがどうにか彼らを宥めようとしたが、返って逆効果のようだ。
「何だか、とっても大変なことに、なっている…気がする。」
「…うん。マユもそう思う。」
てれび戦士たちの混乱している様子に、ステラとマユは、呆然としていた。
「むぅ……、闇の魔人・パトリックが目覚めたとするならば、対抗できるのはおそらく、GUNDAM以外あり得ぬだろうが、だとしてもそれが一体どこにあるのだろうか……。」
そのプレシアの何気ない推測的な一言、いや、その言葉の中にあった一つの単語を聞いたチアキは、重要なことを思い出した。
「……GUNDAM……!ああぁっ!そうだ、GUNDAMだ!あ〜、もう、どうして気付かなかったんだろ!」
突然のチアキの大声に、その場に居た全員が眼を向けた。
ドクターレイシーにいたっては、弟の言葉に疑問を感じた。
「チアキ……、どうした…?」
「兄さん!ほら、あの時偶然見たあの“古代文字”!あれを解読できれば“GUNDAM”に近づけるかも!」
“一体何のこと?”と言葉にしそうになったが、すぐに冷静に思い出してみた。
何故か彼の頭の中で木魚の音が最初になり始め、3秒後には“チ―――ン”と言う音と同時に、チアキの言葉の意味を見出した。
「ああぁっ!!そうか!あれか!今すぐ持ってこよう!!」
「よしっ!」
兄弟そろって大急ぎで、その答えである“クリスティア島”で見つけた謎の石盤を取り出してきた。
その重そうな石盤を慎重に取り扱い、真ん中のテーブルまで持ってくる。
石盤を初めて見たスピリチュアルキャリバーとプレシアたちは、驚きを隠せなかった。
「こ、この石盤、まさか!!??」
「“カオティクスルーイン”の壁画の一部!?」
ドクターレイシーとチアキは、事の端末を説明した。
「先日、我々は“クリスティア島・カオティクスルーイン”に赴き、調査を行っていたのです。」
「この石盤はその調査のときに、偶然発見したものです。」
二人の話を引き継ぐように、ゴルゴは加わった。
「その後、盲目の伝道師・マルキオさまにこの石盤を解読してもらったのです。」
それによると、シードピア究極の切り札・GUNDAMの力を身に纏った戦士が、驚異的な闇の力に立ち向かう様子ではないかと言う。
だが、それが人間なのかロボットのような兵器なのか、未だ判っていないそうだ……。
「実は、その解読の直後、偶然にもとんでもない発見をもう一つ見つけてしまったんです。」
「とんでもない、発見って?」
さくらたちはもちろん、レッドたちですらも知らなかった事実がある。
徐にチアキは、石盤に書かれている絵画の一部分に手を触れた。
すると―――――――。
――――カチッ、ピピピ!
ウイイィィィィン
―――――!!!
石盤の中から機械音が響き、その場に居た全員が驚きの声を上げた。
まもなくして、石盤の中に封印されていた立体映像が再生された。
現れたのは、ラクスと同じようなピンク色の髪を持ち、リボンと首飾りを身に着けた、一人の少女。
『こんにちわ。私はセトナ・ウィンタース。未来の世界で復活するかもしれない一つの災厄を防ぐために、この石盤の中にメッセージを残します。』
シードピア暦1943年、世界の歴史上かつてない大事件“シードピア・クライシス”が発生しました。
このとき、世界滅亡を目論み、魔導騎士たちとともに猛威を振るったとされるのが、闇の魔人“パトリック・ハミルトン”。
しかし、そのパトリックは、私たちが造り上げた切り札“GUNDAM”の力によって、完全に封印されました。
…とは言うものの、その封印も、何年続くかも解らない一時しのぎでしかありません。
近い将来、再び闇の魔人が復活するかもしれません。
闇の魔人が目覚め、魔導騎士たちが復活したとき、シードピアは完全に滅ぼされます。
そこで、万が一に備えて、私のこの身をコールドスリープモードにすると同時に、このカオティクス・ルーインに“GUNDAM”を封印します。
もしも、再び“GUNDAM”の力を欲するときが来たならば、その封印を解いてください。
『尚、封印を解くには、ユーザーコードとパスワードの入力が必要です。それらを暗号化したのが、こちらの文字です。』
ユーザーコード:ξ э φ г ж л
パスワード:л г й э щ
現れたのは、まさしくシードピアの古代文字だった。
「チアキ、もしかしてこれが、この間言っていた……。」
「はい、GUNDAMの封印を解くためのパスワードです。」
そして、セトナと名乗った少女は、最後のメッセージを伝えた。
『この暗号がわかったならば、“シードクリスタル”と共に遺跡最深部へ……。この世を救う扉が、開かれることを信じて……。』
それを最後に、再び立体映像は石盤の中に封じられた。
“開いた口がふさがらない”。
その言葉しか思いつかない展開。
「道理でそなたたちが、GUNDAMの名とシードクリスタルの存在を知るわけね……。」
ようやくプレシアもてれび戦士たちがなぜここまで知っているのか、納得した。
「ともかく、これでGUNDAM復活への大きな一歩を踏み出したな。」
レッドの言うとおり、自分たちは大きな収穫を手にしたも同然の状況にあった。
「よし、パスワードの解読はレイシー兄弟に任せるぞ。」
「了解。」
「承知しました、ゴルゴ伯爵。」
その指示を受け取ると、状況を察したフワニータが動いた。
「チアキさん、ドクターレイシーさん、古代文字の解読でしたら、この石盤を使ってください。」
差し出されたのは、円形の石盤。
古代文字・合計26文字が刻まれた、さしずめ“暗号解読盤”とも言うべき石盤。
受け取るべきかどうか一瞬迷ったが、一秒でも早く解読するには、欠かせないものだろう。
二人は、フワニータから石盤を受け取った。
「よーしみんな、おそらくパトリック・ハミルトンは、このシードピアのどこかにいるはずや!全員、気を引き締めて、警戒にあたってくれ!」
『了解!!』
『アイアイサー!!』
レッドの号令で、さらに気合を入れるティアーズたち。
プレシアは、そんな彼らの姿を、頼もしく思うのだった。
テレヴィアの勇者・てれび戦士…か……。
一見して、所詮は子供の集まりだろうと思っておったが、どうやらそれは間違っていたようだな…。
彼らは何より、プラズマ界の平和と、ナチュラルとコーディネイター、二つの人類を理解しようとしている。
その一人一人の純粋な心が一つとなって、宝石にも勝る何にも変えられない大きな輝きを作り出しているのだろうな……。
そう……光り輝く、七色の虹のように……。
…………月明かりが宵闇を照らす、プラズマ界・シードピア。
その暗闇の中、ニュートラルヴィアの市街地“アプリリウス銀座”のビルの屋上に佇む、純白の上着とスカートを身に纏う少女。
そしてその手には、大きめの紅い宝玉のついた、金色と白の配色が施された大きめの杖。
丁度、少女の身長とほぼ同等の大きさはあるかもしれない。
「ここが…シードピア、なんだよね……。」
少女は、自分の肩に乗っている小さなフェレットに話しかけた。
「今、僕たちが居るのは、この世界の中立国・ニュートラルヴィア。“コーディネイター”と“ナチュラル”と言う、二つの人類が共存している、唯一つの国なんだって。」
「でも、この世界は、その二つの人類が戦っているんだよね…。」
夜だからだろうか、少女が見た目ではとてもそんな雰囲気は窺えない。
だけど、その裏で確実に双方の人類は戦いを続けている。
それだけは確かだ…………。
少女は、ふと、空間に特殊モニターを呼び出し、通信を行った。
「こちら、“アースラ04”高町なのは、及び、“アースラ06”ユーノ・スクライア。たった今、管理外世界45番、通称“シードピア”に到着しました。」
「現在僕たちは、中立国・ニュートラルヴィアにいます。本部“プロヴィデント・フォートレス”、指示をお願いします。」
---to be continued---
☆あとがき
ふぃ〜……、ようやく更新できました〜…。
やっとの思いでSEEDPIA第3章、開始に至りました。
ここから本格的に“リリカルなのは”シリーズのキャラたちとてれび戦士やSEEDキャラ、サクラ大戦キャラと大きく絡ませていければいいなと思っております。
それでは、これからもSEEDPIA CRISISをよろしくお願いします。