Sweet White Day





春の兆しを少しずつ見せる3月。

気候がだんだんと暖かくなるこの時期、それは同時に、恋の兆しを見せる時期でもあった。

朝焼けの光が、少しずつさしてきた頃、キラは目を覚ました。

そして、他の子供たちやラクスに気付かれないように、忍び足でキッチンへと向かっていた。

キッチンに着くなり、キラはゆっくりと冷蔵庫を開けた。

その中から、たくさんのクッキーが作られていた大きな皿を取り出した。

しかも、その形が全部ハロの形に統一されており、普通のプレーンだけでなく、
ホワイトチョコ、ストロベリーチョコ、ビターチョコと、合計4色のクッキーが形よく出来上がっていた。

「うまく出来た。」

キラは、そのクッキーの出来に満足すると、それを一つずつ丁寧に、袋に詰めた。

「ラクス、喜ぶだろうな……。」

笑みを浮かべたキラは、1ヶ月前のバレンタインのことを思い出していた。



冬の寒さが徐々に和らいでいった2月の中旬頃。

子供たちが寝静まった、月が綺麗な明るい夜だった。

いつものとおりにベンチに座り込んで、漣の音色を聞きながら水平線を眺めていると、
突然「キラ。」と、自分を呼ぶ声がして、彼はゆっくりとその方向に視線を動かした。

「…?ラクス。子供たちと寝ていたんじゃなかったの……?」

「ええ。キラに、お渡ししたいものがありまして…。」

そう言いつつ、ラクスは頬を少しピンク色に染めて、綺麗にラッピングされた小さな箱を差し出した。

「バレンタインのチョコレートです。お受け取り頂けますか?」

「え!?もしかして…ラクスの手作り?」

「はい…!気に入っていただけるように、一生懸命作りました☆」

ラクスの飛び切りの笑顔を受け取ったキラは、それに答えるように微笑を見せ、ラクスの手作りチョコを受け取った。

「ありがとう!早速、開けてみていい?」

「もちろんですわ☆」

キラは器用な手つきでラッピングを解き、箱を開けた。

すると中には、ハロを象った大きなチョコレートが入っていた。

しかもよく見てみると、ホワイトチョコレートで何かメッセージが書かれていることに気付いた。

そこには、『From My Lover “Kira Yamato”』――私の愛する人、キラ・ヤマトへ――と書かれてあったのだ。

その言葉を目にしたキラの心の中に、溢れんばかりのラクスからの愛情が感じられた。

キラは思わず、感激のあまりの衝動でラクスを抱き寄せた。

「……このメッセージ、感動したよ…!ホントに、ありがとう…ラクス…☆」

「…キラ…☆」

唐突な彼の行動にラクスは若干驚いたが、しばらくの間、彼に甘えることにした。



あれから1ヶ月、キラはラクスの居ない時にひそかにこうしてホワイトデーの準備をしていた。

今でも彼の脳裏には、このプレゼントを受け取るラクスの笑顔ばかりが、浮かび上がっていた。

そんなことを考えつつ、キラは手作りのクッキーが入ったピンク色の袋を、冷蔵庫にしまいこんだ。

「あとは、渡すタイミング…だね…。」


しかし、なかなか渡すタイミングがつかめず、そうこうしているうちに夕暮れ時を迎えてしまった。

「結局渡せなかったな…」

まぁ、仕方ないか。

なかなか二人きりになれるタイミング、なかったからね。

……なんて半ばあきらめかけていた、その時だった。

「あら?どうしました?」

「いや…ラクスにクッキーを渡そうと思ったんだ。」

「まぁ、どうしてまた?」

「いや、何でって。今日、ホワイトデーでしょ?だから、2月のバレンタインのお返しに……って、ええぇっ!!??」

驚いて振り返ると、そこに居たのは愛しくてたまらない、ピンクの妖精だった。

「ラ、ラクス…!?いつからそこに居たの?」

「はい。今日のキラの様子、何だかそわそわしていて、気になってしまったものですから…。」

行動自体が余計に怪しませてしまった。

キラはそう察知したのか、ちょっと反省した。

「ところで、そのお返しって……、ひょっとして、これですか?」

そう言って差し出されたのは、ピンク色の小さな袋だった。

それは紛れもなく、キラが用意していたクッキー入りの袋だった。

「えっ?どうして、それを……?」

「はい、子供たちにお菓子をあげようと思って、冷蔵庫を開けたら、こちらが入っていましたので、
何か変だと思いまして、中身を見たら、こんな書置きが…。」

その書置きと称された一枚の紙には、次のような一言が書かれていた。

―――From My Lover Lacus。

『愛するラクスへ。』

その筆跡はまぎれもなく、自分が書いたものだった。

「…結局…ばれちゃったね。」

苦笑いするキラに、ラクスは天使の微笑を見せた。

「お返しのクッキー、確かに頂きました。とても可愛い仕上がりでしたわ。」

「ありがとう、ラクス☆」

つられてキラも笑顔を浮かべた矢先、なぜかキラがわざとらしくしゃべりだした。

「あれ?ラクス、ひょっとして、チョコクッキーを一つ、食べた?」

「え?」

「チョコレート、くっついてるよ?」

言われたラクスはキョトンとした。

するとキラが、互いの吐息がかかるくらい近くに来て、隙をついた。


「ここにあるじゃない。」


―――ペロッ。


「!!!??////」


ラクスは一瞬何が起こったかわからなかったが、口元に手を添えたと同時に、何が起こったか瞬時に理解され、
彼女の顔はりんご以上に真っ赤に染まってしまった。

それを見たキラは、袋からチョコクッキーを一つ取り出して、悪戯っぽく微笑んでこう言った。

「ごちそうさま☆☆☆」

まるで余裕を見せるかのようなスマイルを見せたキラは、そのままクッキーを口に運んだ。

してやられたような顔をしたラクスは、僅かに残った悔しさを紛らわしたかったのか、
強引にキラの顔を引き寄せて、自分の唇とキラのを重ねた。

「んんっ!!????」

いつも以上に深いキスに、キラはさすがに困惑した。

今頃になって、いたずらが過ぎたことを後悔した。

しばらくして、ようやくシルエットが二つになった。

さすがに長いキスをしていたのか、二人は荒い呼吸を繰り返していた。

ようやく息が整ったところで、ラクスは再び微笑んだ。

「こちらも、ご馳走様ですわ☆☆☆」

「………やられた。」

そして、しばらくしたのち、二人の笑い声が海岸に響き渡った。

それを見守っているのは、これから瞬きを見せる星たちかも知れない……。


二人の心に、お砂糖よりも甘い贈り物を……。

そして、この話を読んでくれたみんなの心に、暖かい贈り物を……。

Happy White Day☆



--End--




☆あとがき
ホワイトデー記念の短編小説でございます☆
以前、シンステでホワイトデーの小説を書きましたが、今回はキララクでございます☆
……と言うものの、今回はちょっと駄文になってしまったようです(苦笑)
でも、最後は結構甘めになりましたし、結果オーライかな?






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