魔法――――。



それは、その存在を憧れる者にとっては夢のような力だった。

もしも、それが実際に使えるとしたら、それでたくさんの人を救いたい。

もしも、そんな力があったら、仲間を助けたい。

そして、本当にその力を持つことが出来たら―――。













――――――自由に、空を飛びたい。















きっと、あこがれる少年や少女も、数多く居るかもしれない。

だけど、それは時として自分自身すらも蝕んでしまう。

僕はあの日、それを知った……。















「Spiritual」



(基盤SS:「君に伝えたいこと(maisyuさん)」)
<設定使用許可 承諾済み(2007.Jun.)>



















キラ・ヤマトは、1ヶ月以上前に、奇妙な事件に巻き込まれた。

恋人や友人たちと共に異次元世界の旅行に来ていたのだが、突然彼らのシャトルがエンジントラブルに見舞われ、墜落したのだ。

幸い、仲間と恋人は無事だったが、キラの方は全身傷だらけに加え、足にも損傷をきたしていたがゆえ、入院生活を強いられた。

しかし、リハビリの甲斐あって、少しずつではあるが回復し始めていた。



















いつものように、恋仲関係を持つガールフレンド・ラクスが見舞いに来てくれた。

壁に手をつきつつ、待ち合わせ場所に合流する。

「キラ。」

「やあ、ラクス。」

ピンク色の長い髪に、三日月を髣髴とさせる金色の髪飾り。

そして、白と水色のワンピース衣装で出迎えてくれた、キラの彼女。

その手には、見舞いの品が。

「これ、カガリさんたちから…。」

「ありがとう。いつもごめんね。」

「いえ。あなたが笑顔を見せてくれれば、それでいいのです。」

笑顔で何気ない会話を交わす二人。

そんなとき、突然外がざわつき始めていた。

「はいはい、退いて退いて!」

慌しく作業をする病院の職員たち。

運ばれているベッドには、彼らとほぼ同じくらいの年齢と思える一人の少女が横たわっていた。

その様子を痛ましげに見守る、一人の女性看護士。

キラの担当でもある、マリュー・ラミアスだ。

「マリューさん…今のは…。」

ため息をつきつつ、彼女が発した言葉は、二人にとっては意表をつかれた言葉でもあった。

「おそらくあの子…『時空管理局』の魔導師のエース・なのはさんでしょうね…。」

「えっ…?魔導師って……。」

「この辺りじゃよくあることよ。あなたのような患者さんがここに来たって言うことが、あたしたちには意外なのよ…。」

そう、今キラたちが居る場所は、自分たちが普段住んでいる世界とは全く違う別次元の世界なのだ。

“ミッドチルダ”――――――。

それがこの世界の呼び名。

この異次元世界では、魔法の存在が当たり前。

特にこのミッドチルダは、魔法技術の研究の最先端を行く場所。

故に、魔法使いがこの病院に運び込まれることも、少なくないとか……。





















魔法使いの少女が病院に担ぎ込まれてから、そんなに日は経っていない頃…。

ある日を境に、一人の少女が頻繁に見かけられるようになった。

ロングヘアーの金髪で、黒と白の衣服に身を包んだ、どこか雰囲気が暗そうな感じの少女……。

そんな少女が決まって訪れるのは、「高町なのは」のネームプレートが置かれた病室だった。

ここに来てキラも、リハビリがてら頻繁に病棟内を出歩くようになったこともあり、ほぼ毎日のようにその少女を見かけるようになった。

多くても、一日に2〜3回ほどではあるが、そのせいで顔見知りにもなった。

さすがに、お互いを名乗ったりするほどの時間は、さほどなかったけれども……。

―――ひょっとしたら、あの魔法使いの女の子の知り合いかもしれない。

いつしか、そう思うようになっていた。

















キラの足のリハビリが、順調に進み、痛みも少しずつひいてきたある日のこと。

突如、病棟の廊下に、絹を裂くような痛々しい絶叫がこだました。









――――ああああぁぁぁぁ!!!!



「!!」










心臓が飛び出るほどの衝撃的な声。

絶叫と同時に響く、何かが崩れたような物音。

その出所は、あの魔法使いの少女の病室だった。

運が良かったのか悪かったのか、リハビリ中のキラは偶然にもその病室の扉の目の前に通りかかっていた。

扉の向こうから、少女のすすり泣く声が漏れている。

気付かれないように扉に耳を当てる。

先生と看護婦の心配そうな声と、少女の嗚咽。

「…痛い…っ……痛い、よぉ……。」

「大丈夫?なのはさん…。」

少女を気遣う看護婦の声。

キラには聞き覚えがあった。

そう思った矢先、突然何かを平手で叩くような音が聞こえてきた。

「どうして…っ…どうしてなのよっ!!」

「なのはさん!ダメよ、足を叩いちゃ!!」


どうやら様子からして、あの子は自分と同じように足に重傷を負ってしまっているようだった。

しかも、これは自分のソレと比べ物にならないくらい尋常ではなさそうだ。

病室からのピリピリしたムードが、こちらにも手に取るように伝わってきた。

これ以上居たら僕も耐え切れそうにない。

そう判断したキラは、ひとまずこの場を立ち去った……。

























その日の午後、自分の病室のベッドに戻っていたキラは、横になって寛いでいた。

だが、あのときの少女の叫びを聞いた後のこともあってか、多少気にはしていた。



―――コンコン。



病室の扉のノックの音。

「どうぞ。」

笑顔で入ってきたのは、マリューだった。

「どう?キラくん、リハビリのほうは?」

「はい。まだ少し足は痛みますけれども、歩くことには何も問題はありません。」

「順調のようね。」

マリューは、キラに夜の分の薬を手渡し、今後の予定をカルテに記入していた。

「あの……。」

「…?なにかしら…?」







「あの魔法使いの女の子…、怪我がひどいんですか…?」







多少ためらいつつも、聞いてみた質問。

カルテに記入を終えた彼女は、傍らの椅子に座った。

「どうしたのよ、急に…。」

「リハビリで廊下を歩いていたとき、いきなりあの女の子の病室から悲鳴が聞こえて、こっそり聞いていたら、マリューさんの心配そうな声が聞こえていたので、少し気になって……。」

盗み聞きしたのは悪いと思いつつも、同じ病人として気になって仕方なかった。

彼はそう付け加えた。

マリューは小さなため息をつきつつ、ゆっくりと口を開いた。

「だったら、なのはさんの容態は非常に重いものであると言うことは、少し、見当はつくわね……?」

「…はい。」

「彼女はね、魔法の力の大きな負担のせいで、両足が壊れてしまったのよ。





なのはは、“時空管理局”と呼ばれる、次元犯罪などに対抗する大型組織の一員だったのだが、2〜3週間前に起こった事件で魔法力の負担が限界を超え、瀕死の重傷を負ってしまったのだという。

つまり、病院に担ぎ込まれる前から意識を取り戻すまでの数日間、彼女は生死の境を彷徨い続けていたということになる。

キラにはとても信じられなかった。

昔は魔法という力に憧れていた人間も少なくはなかったはず。

それさえあれば、何でも出来る。

そう考えてきたのが、音を立てて一気に崩れ行くような感じに駆られた。

「“信じられない”って言うような顔はしないで……。魔法という力も、時としては自分に害をなすこともありえなくはないわ。今の、なのはさんのようにね……。」

さらに数年前には自分たちの住んでいる世界の知らないところで、その魔法の力が音も立てずに牙をむこうとしていた事件も、実例として残っていることをマリューは告げた。

その事件の解決の立役者に、彼女が存在すると言う。

「だけどその負担は計り知れず、今回になってそれが一気に爆発しちゃったらしいのよ……。」

「…じゃあ…、それが後遺症になることは……。」

「……ないとは言い切れないわね…。」

魔法という、夢のような力が実在したと言う事実。

しかしその反面、使用者自らに大きな負担がかかるだけ、跳ね返る大きなリスク。

光と闇。

その全てを、キラは耳にした。

今の自分以上に大きな痛みを抱える彼女を何度も思うと、胸が締め付けられるようだった。



























「何を言い出すんだ、君は!」

それから2〜3日が過ぎた頃、病棟の患者たちが眼を覚ましてから3時間と経っていない午前中、いきなりなのはの病室内から響いた、先生の大声。

丁度、見舞いに訪れていたラクス、アスラン、カガリの3人も、そしてキラもその声を聞いて、異変に気付いた。

「まさか……。」

一言呟いたキラに、ラクスは何も言わず彼の傍らについた。

ただ、一言――――――。

「どちらに、行かれますか?」

「このまま、まっすぐ…。なのはさんの、病室へ。」

「はい。」

歩き出そうとするキラに、アスランとカガリは…。

「揉め事を起こすなよ。」

「いくら病人同士とはいえ、迷惑は避けたいからな。」

彼を気遣う言葉に、キラは微笑みつつ後ろの二人に返事した。

「大丈夫…心配しないで…。」

そういい残し、彼は早速目的地へと向かった。

「ウチの弟はホント、他人のことばっか考えてんな…。」

「カガリだって人のことは言えないんじゃないか?」

「お前に言われたくないよ!」

アスランとカガリの痴話喧嘩を背に、キラとラクスは無言で廊下をゆっくり歩いていった……。















なのはの病室前――――――。

開いている扉を覗くと、50代ほどの男性医師と、二人ほどの看護婦がいた。

その中の一人、マリューがこちらに気付いたのか、歩を進めて近づいてきた。

「キラくん。」

「マリューさん、どうしたんですか?」

「それが……。」

マリューが言いたいことは、先生となのはの言い争いで、大体の予想がついた。

「今までだって努力してきたのに、どうしてそこで投げ出そうとしているんだ。」

「だって…わたしの足はもう二度と使い物にならないかもしれないじゃない!それが判っているなら、努力する意味なんて……。」

予想が確信になりつつあると感じたキラは、ラクスに支えられたまま病室の中に入ってきた。

「え……キラ…くん…?」

「大丈夫です、心配しないでください。」

すると、医師がようやくキラたち二人の存在に気付いた。

「おや?君は確か…キラ・ヤマトくん…だったかな?」

二人のすぐ傍まで近寄ったキラは、単刀直入に用件を述べた。

「先生、もしかして、なのはさんのリハビリに関して、何かトラブルでも……?」

「…あぁ…、彼女が突然リハビリをやめたいと言って聞かないんだ…。」

キラは穏やかな表情を変えず、なのはを見つめた。

彼女の表情は、どこか諦めつつも諦めきれない。

そんな複雑な顔をしていた。

「先生、無理を承知でのお願いですけれども、説得、僕にやらせてはくれませんか?」

「君がかい?いや、しかし……。」

「彼女のことに関しては、マリューさんから大方のことくらいは聞いています。立場がお互いに違うと言うことも判っています。でも、同じ“病人”であれば、お互いに支えあうべきではないかと僕は思います。ましてや、同じ“足の患い”を持っているものであれば、尚更です。」

説得するどころか、こちらが説得されると言う、立場が逆転してしまったような状況に、医師も思わず苦笑いした。

彼の発言は、どこかしっくりくるところがある。

そう感じた彼は、決断した。

「では、やってみなさい。」

医師は席を外し、キラにそこに座るように促した。

その傍らには、ラクスが着いた。

キラの目線は常に、目の前のベッドで横になっている少女が。

しかし、少女はこちらに目を向けることはない。

席を譲ってもらって2〜3分くらい沈黙が続いたのか、キラは口を開いた。

「“誰とも話す気はない”……そんな顔をしているね…。」

どこか暗く、今にも叱責のカウントダウンが始まっているかのような、そんな感じを持つキラの低い声。

「ねぇ、どうして君は僕の眼を見てくれないの…?……黙っていたって、何も始まらないんだよ…?君が話してくれなきゃ、僕だってどんな言葉をかければいいか、わからないんだよ……?」

周辺にとっては、彼の口調はそんなに変わらないように思える。

しかし、理解者たるラクスは感づいていた。

彼の言葉に、誰もが気付かないほどの怒りの感情が含まれてきていることを……。

なのはは一瞬、彼の眼を見た。

瞬きすることもなく、一線の乱れもなく自分を見つめる、深い深いアメジストの瞳。

思わず彼女はその視線から逃れようと眼を逸らしたが、キラはそれを許さないと言わんばかりに、彼女の腕を握った。

「ダメだよ……逃げちゃ…。」

「…っ…!」

「言ったよね…?黙っても始まらないって……。全部、言って。」

その眼差しを直視してしまうと、自分はもう耐え切れなかった。

「わたし……わたし…っ…!」

漏れる嗚咽と、瞳から零れ落ちる雫。

その嗚咽の中から、彼女の告白が、かすれつつも聞こえてきた。

「…すごく…怖い…っ…!……体中が、痛く、て……もう、二度と…歩けない、って、考えると…っ……、もう二度と、飛べなく、なると思うと…っ……とても、怖いよぉっ……!」

慟哭の中での独白を聞き入れ、全てを察したキラは、腕を握ってた手を放した。

立ち上がり、満足に動けない少女の体を抱き寄せるキラ。

せめて、同じ患いを持つものとして、この痛みだけは分かち合いたい。

自分のわがままだと言うことは、判ってはいるが、これだけは、譲れなかった。

なのはは、その抱擁を拒否しようともせず、独白を続けた。

「…だけど…、だけど…っ…、何度もそう、やって…っ…考えるうちに…、自分の夢すらも…投げ出そうとして……っ…!」

一目の見てないところで、彼女は苦しんでいたのだ。

独白を耳にし、自分も辛くなりそうな衝動に駆られたキラは、なのはの背に回した腕の力を強めた。

「辛かったんだね……。落ち着くまで、傍に居てあげるよ。」

「でも……でも……。」

こんなところで泣くことは出来ない。

そう言いたかったのだろうが、それを遮ったのはラクスだった。

「耐え難い痛みを背負って、辛くない人間なんて、どこにもいないのです。」

悲しい出来事を知って泣かない人間なんて、最初から怖がらない人間なんて、どこにもいない。

人間はいつも、それを知っているから、泣くことが出来る、それを受け止めてくれる人も居る。

それは、“決して独りきりじゃない”と言うメッセージでもあった。

「だから…泣いていいのですよ、高町なのはさん…。心の底から、泣いてください。」

切なくも、優しく温かい言葉………。

フェイト以外で今までこんな人たちは居ただろうか……?

溢れんばかりの、自分を包み込む心地いい温かさ。

もう、涙を抑えることすら、出来なかった…………。

「…う……ひっ…く……、うわああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」

なのはは無我夢中でキラの背にしがみつき、まるで赤ん坊のように号泣した。

ただ、今まで溜め込んでいた自分の苦しみを全て吐き出すかのように、ひたすら泣きじゃくっていた……。



















やがて、彼女の泣き声が収まってきた頃、扉の向こうからまた別の人の声が。

「なのは……。」

振り向くとそこには、なのはにとってのかけがえのない存在が居た。

「フェイト…ちゃん…っ…!」

名を呼ばれた金髪の少女は、3人のところに向かった。

「君、フェイトって言うんだ。」

「確か、あなた、いつもこの病院で、何度もすれ違ってましたね。」

「あ、やっぱり覚えてた?」

フェイトの発言に、キラは苦笑いを浮かべた。

二人が顔見知りだったと言うことは、ラクスもなのはも予想だにしなかった。

「先ほどの様子、見させていただきました。キラさん、わたしの友達の心を開いてくれて、感謝します。」

「ううん、気にしないで。」

「いえ。わたしにも責任はあります。」

なのはの大事な存在だと言うのに、そんな彼女の心の痛みに気付けなかった自分に、フェイトは腹立っていた。

「フェイトちゃん、もういいんだよ。」

そんな彼女の言葉を否定したなのは。

顔は涙で濡れていたものの、表情は笑顔そのものだった。

「わたしのほうこそ、今までずっと辛かったことを溜め込んでいたのに、それを伝え切れなかった…。わたしも、謝るべき…だと思うんだ。ごめんね、フェイトちゃん。」

「…っ…なのはっ…!」

耐え切れなかったのか、フェイトはなのはに抱きついた。

なのはも何も言わず、彼女の背に自分の腕を回した。

「なのは…っ、辛かったら、何でも言って…、あたしも、なのはを支えたいんだ…!」

「うん…っ…、ありがとう、フェイトちゃん…っ…。」

何やら、キラとラクスにとっては非常に言いにくい雰囲気が出来上がっていた。

これはもう友達以上の何か、特別な感情があるような……。

「さて、どうにか丸く収まったようですな。」

そんな雰囲気を遮るかのように発せられた医師の言葉。

「なのはさん、どうしますか?リハビリ、続けますか?」

質疑に対し、なのはは数分黙っていたが、簡潔に返答した。

「…はい、やります。少しでも早く、治したいです。」

「では、やりましょうか。」

掛け布団を取り、ベッドサイドから足を乗り出す。

ゆっくりと足を地面に着けようとするが、脳裏で“痛い”と感じる節が過り、なのはは眼を瞑る。

そんな彼女に、キラはアドバイスする。

「なのはちゃん、“痛い”とか“怖い”って思うのは当たり前なんだ。最初からリハビリですぐに回復する人なんて、どこにもいないよ。」

「キラも、足のリハビリが始まった頃は、とても痛かったのですよ。まずは、出来るところから。着けるところまでで、大丈夫です。」

「いい?体を強張らせないで。大きく深呼吸して……、落ち着いて…。大丈夫だよ……。」

不思議と、キラとラクスのアドバイスで心が落ち着いたなのは。

そのまま彼女の素足は、ひんやりした病院の床についた。

「よし。次は、立ち上がるところだね。」

ここでフェイトが、なのはに右手を差し出した。

「今の私にはコレくらいしか出来ないけれど、私の手を握って。」

「ありがと、フェイトちゃん。」

フェイトに支えられ、足に力を入れようとする。

しかし、力を入れるだけで、体に高圧電流が流れるような激痛に駆られる。

「あうぅっ…っ…!」

激しい痛みに耐え、立ち上がろうとするなのは。

その度に握られた手に力がこもり、フェイトもその痛みを感じ、わずかに表情を歪ませてゆく。

でも、この痛みに比べたらなのはのほうが何十倍も辛い。

痛みを分かち合えるなら、それでもいい。

フェイトは、なのはのリハビリの成功を祈った。

キラとラクスも、そして医師たちも見守る。

ゆっくりと…時間をかけて…自分の足で、もう一度立ちたい。

強く願うなのは。

「いいぞ、その調子!」

「あと少しです、膝を伸ばして……!」


足の筋肉全部、出せる限りの力を尽くして、完全に立ち上がるまで……あと少し――――!

なのはは、無意識に眼を瞑り、激痛に備えた。

そして――――――。



































「やった……!」









「なのはさん…!」


































キラとラクスの感激の声。

なのはは恐る恐る、閉じていた瞼をゆっくりと開き、目線を降ろす……。

その視線の先には、頼りなさそうな自分の細い足が、小刻みに震えつつもしっかりと体を支えている様子が映った。

「あ……あ……、わ…わたし……っ…!」

目線を見渡すと、安心しきった医師たちの笑顔が。

「うむ、リハビリの第1段階は、突破したようですな。」

目線を移すと、泣き笑いの表情で自分を見つめるフェイトが。

気づかぬ間に握っていたと思われた手が放されていたことから、自分ひとりの力だけでこうして立っているという事実にようやく頭が追いついた。

「やったね…なのは…っ…!」

「フェイトちゃん…!」

人目をはばからず抱き合う二人。

入院して以来、彼女の全てを蝕んでいた恐怖と苦痛、そして不安、その全てがようやく解消された。

復帰の兆しが、ようやく芽吹き始めたのだ。

「…何だか、凄いな、君たちの魔法は…。」

意味深なキラの発言に、抱き合っていた二人は視線を向けた。

“自分たちはそんなに凄い魔法は使った覚えはないけれど………。”

首を傾げ、眼をパチクリさせる仕草を見たキラは、ラクスと共にこれ以上ない微笑を見せた。

「“不安”や“絶望”と言う闇を払いのけ、“希望”や“未来”を見出すために戦う君たちの“勇気”。そして、何よりもお互いに支えあって生きようと、相手を思いやる“愛情”と言う名の宝物。」

「それは、貴方方が持っている普段の力では到底起こすことの出来ないであろう、最高の魔法ですわ。その思いを、これから先の世代の方々に、伝えていってくださいね。」

魔法の力がなくとも、勇気と愛情があれば“奇跡”と言う名の魔法は起こすことが出来る。

目の前が暗くても、その道のりが辛く耐え難いものになろうとも、愛し合う存在が居れば越えていける。

その全てを教えてくれた、キラとラクスの存在は、彼女らにとって大きなものとなった。





そして、二人の言葉の一つ一つは、彼女らにとって“スピリチュアル”なメッセージとなった……。



--End--




☆あとがき
今回はリリカルなのは×ガンダムSEEDのパラレルクロスオーバー短編をご覧頂きました。
こちらの小説、タイトルにも書かれておりますが、「ぐったり裏日記」と言うブログサイトの作品の一つの基盤使用の特別許可を頂いての執筆となっており、同サイトにも贈り物として出展したものです。

この作品、書き上げたのが今から2年前。
僕のサイトが本格的にリリカルなのはの作品の取り扱いを始める少し前の時期でした。
ですので、コレはリリなの×SEEDのプロトタイプと言ってもいいと思います。
しかし、今思えばこの作品、かなりグダグダなところがありましたよね…。
今回の短編、いかがでしたでしょうか?





おや?なにやら続きが書かれているようですよ?↓






〜おまけ〜







一日分の一通りのリハビリが終了して、ようやく一息つける頃になり、4人は談話を楽しんでいた。

その際ラクスは、二人に対してとんでもない質問をぶつけた。







「ところで、なのはさんとフェイトさんって、もしかして友達以上の関係ですか?」





――――ドキッ!











図星を指された二人はそろって、わかりやすい反応を示した。

「な、なんでそう思うんですか!?」

「なんでと申されましても、ねえ、キラ?」

「うん、あの時フェイトちゃんとなのはちゃんがあんなに抱き合っている姿を見たら、“友達”って表現するにはどうかなぁって思っちゃってさ。」

微笑みながら口にした、キラとラクスのごもっともな発言を聞き、なのはとフェイトはそろって恥ずかしそうに顔を赤らめ始めた。

それだけでも十分なのに、間髪居れずにキラが超弩級の爆弾発言を投下した。

「ひょっとして、二人は女の子同士なのに………。」













―――――――――恋人同士だったりして?













―――――――――ギクゥッ!!













「あらあらあら〜?もしかして、大当たりですか?」





「はうぅ〜……恥ずかしいですよ〜…///」





彼女ら二人の顔は、もはやリンゴ以上に真っ赤に染まっていたことは言うまでもない。



その後、キラとラクスからの容赦ない質問攻撃に、なのはとフェイトはとことんいじられ続けたらしい…。












………お目汚し、大変失礼しました。(汗)






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