愛しのジャンポール





キラは無意識のうちに、オノゴロ本島の市街地に訪れていた。

目的もなく、ただぶらぶらしていた。

しかし、彼は戦前は一人の戦士として戦っていた。

こんな日があってもいいかなと思うようになった。


周辺の市街地の探索を終え、必要と思うようなものを買ったキラは、市街地郊外の公園に足を運んだ。

「ふぅ……疲れた。」

とりあえず一休みすることにした。

そばにあったベンチに腰掛けると、傍らになぜかクマのぬいぐるみがあった。

「あれ?………だれのかな……?」

キラはその辺に荷物を置き、ぬいぐるみを手に取った。

「…かわいいな…これ……。」

思わずそう呟いた、そのときだった。


「あ〜〜っ、やっとあった!!」


「えっ!?」

突然聞こえた声に反応したキラは、その方向を向いた。

そこに居たのは、可愛らしい女の子。

金髪で頭にはピンクのリボン、そしてエメラルドグリーンの、ドレスのような洋服を着ていた。

その子を見て、キラはすぐに察知した。

「このぬいぐるみ…もしかして、君の?」

「うんっ!!」

返事をしたと思ったら、すぐさま少女はキラのところに駆け寄り、クマのぬいぐるみを受け取った。

「よかったぁ〜!心配したんだよ、ジャンポール。アイリス、寂しかったんだから!」

「…えっ…“ジャンポール”って、そのぬいぐるみの名前?」

「そうだよ!アイリスのたった一人の“友達”☆」

少女のその無邪気さに、思わずキラは笑みをこぼした。

彼はアイリスと言う少女の仕草に、「何だか今時の子供みたいだな」と思っていた。

「さあ、お母さんが心配しているはずでしょ?お家に、帰ったほうがいいよ。」

そう言ってキラがその場から立ち去ろうとした時、突然背中に衝撃が走った。

ギクッとしたキラは、後ろを見やった。

そこには、勢いよく背中に抱きついたアイリスの姿があった。

「……アイリスを置いていかないで…!」

「え?……あ…いや…、どうしたの?」

突然のことに戸惑ったキラだが、アイリスの口から意外な言葉が飛び出した。

「…アイリス…、パパとママ…いないの……。」

「…えっ!!?」

「戦争で…死んじゃって…、だから…アイリスずっと、ひとりぼっち…っ…。」

キラは思わず目を見開いた。

気付けば、アイリスは嗚咽を漏らして泣いていた……。

キラはそんな彼女を、優しく抱き寄せていた。

「…じゃあ、僕の家に来る…?君と同じような友達も居るから…。」

「友達…?」

「うん。きっと、君の友達になってくれるよ。だから、一緒に行こう?」

「……うんっ…!」

早速キラは、アイリスの手を引き、ラクスや孤児たちのまつ家へと向かった。

アイリスはその間、キラの手の温かさを感じていた。

―――お兄ちゃんの手……とても温かい………。


「わかりました。そういうことなら、引き取りましょう。」

「ありがとうございます!」

住居に戻った後、キラはすぐさまアイリスを連れ、マルキオ導師の礼拝堂にやってきた。

事情を説明されたマルキオ導師は、もちろん孤児となったこの少女を、引き取ることになった。

「ところでお嬢さん、名前はなんて言うのかな?」

「イリス・シャトーブリアン。“アイリス”って呼んでください。」

「うむ、しっかりしているね。これからよろしくね、アイリス。」

「はい、マルキオさま!」

二人は、握手を交わした。

そしてアイリスは、外に居た孤児たちと一緒に気持ちよく遊んだ。

孤児たちも新しい仲間が増えたことに、喜んでいた。


その晩、アイリスはしばらくキラたちの家で暮らすことになった。

「ラクス・クラインですわ。これからよろしくお願いしますね、アイリスさん。」

「よろしく、ラクスお姉ちゃん!」

“お姉ちゃん”と呼ばれたラクスは、思わず頬を染めた。

キラは彼女の仕草に、また微笑を浮かべていた。

「キラお兄ちゃん、もしかしてって思うけど……。」

「…?なに?」

「お兄ちゃんは、ラクスお姉ちゃんの『こいびと』?」

「えっ!?」

唐突かつ、予想外な質問に、キラとラクスは固まった。

「やっぱりそうなんでしょ?アツアツだね〜☆」

「ちょ…ちょっと、アイリスさん……!もう、恥ずかしいですわ……!」

アイリスの予想だにしない言葉に、二人は揃って顔をリンゴのように真っ赤に染め、お互いからともなく目を背けた。

そのやり取りを見ていたキラの義母、カリダは心からの笑みを浮かべていた。

「あらあら、アイリスちゃんって意外と、おませさんね〜。微笑ましいわ。」

「もう…母さん!」

「はいはい。さあ、夕飯にしましょ。」



ジャンポール、今日はねアイリスの新しい友達がたくさん出来たよ。

今までずっと独りぼっちでね、とても寂しかった。

でも、いまは寂しくないよ。

とても温かい人たちがいるから。

アイリス、これからも頑張るよ……………!!



--End--




☆あとがき
短編コラボレーション第2弾は、キララク+アイリスです!!
タイトルはまたしても、サクラの歌謡曲の中から取ってみました。
ちなみに、今回アイリスは“親を亡くしてしまった戦災孤児の一人”と言う設定で出演させました。
さらに今回は、カリダ・ヤマトも特別出演でございます☆

ところで余談とは思いますが、“ぬいぐるみを大事に抱えている”と言う点を除けば、
アイリスはステラによく似てる?って思うのは、気のせいでしょうか……!?







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