アイドルアルティメイト・ファイナルにおける春香の優勝―――。
美希の765プロ復帰と、響と貴音の765プロ移籍―――。
プロデューサーである中川空にとって、これほど喜ばしい出来事は今までもなかった。
IU・ファイナルの生放送が終了した後、その余韻に浸りつつ、美希、貴音、響の3人を加えた765プロは、ご機嫌な陽気で事務所へと戻っていった。
事務所に戻ってきた彼女たちを出迎えたのは、その放送の一部始終を視聴し、感激していた音無小鳥の涙交じりの微笑、そして765プロの事務員総出の大歓声だった。
「お帰りなさいっ!春香さん、優勝おめでとうございます!」
765プロからトップアイドルが誕生し、感慨無量のムードに包まれた事務所内。
「美希ちゃん!お帰り!」
そして、事務所の仲間たちは、美希の765プロ復帰も心から祝福していた。
余韻が覚めやらぬうちに、事務所の仲間たちによるささやかな打ち上げが行われることとなった。
空たちが事務所に戻ってくるうちに、みんなで持ち寄ったお菓子やジュース、さらに大人たちにも合わせたビールやチューハイと言ったお酒やにおつまみ系の軽食も用意されていた。
「さぁて、準備も整ったことだし、乾杯といこう!」
『はーい!』
乾杯の音頭は社長が取る。
まず、我が765プロから天海春香くんと言うトップアイドルが誕生したことを祝わねばなるまい。
おめでとう、天海くん。
君のIUでの活躍は、本当に見事なものだったよ!
如月くんも萩原くんも、みんなもよく頑張ってくれた。
また、彼女たちをここまで導いてくれた中川くんにも、賞賛を贈るべきだろう!
このIUにおける君のプロデューサー手腕は、とても輝かしいものだった!
君こそ、我が事務所が誇る一流のプロデューサーだよ!
ありがとう……!
そして、放送を見た諸君なら知っているだろうが、さらに祝うべきは、美希くんの765プロ復帰と、我那覇くんと四条くんの765プロ移籍と言う朗報だろう。
彼女たちはしばらく、アイドル候補生見習いとして、色々と勉強してもらうが、いずれは再デビューもあることだろう。
次回の活動から、諸君らで色々と教えてやってくれたまえ!
「では、改めて、天海くんのIU優勝を祝って、そして、美希くんら3人と765プロのさらなる活躍を祈って、乾杯ッ!!!!」
「かんぱ〜い!!!!!」
そして、ささやかな宴が始まった。
「ねぇねぇ、美希。」
ふと、空が美希の傍により、話を切り出した。
「ふと思ったんだけど、何で美希、あのとき961プロに移ったの?」
その話題が出るや否や、全員が一気に静まり返り、視線が集中される。
「………。」
美希はなかなか口を開かない。
よっぽどいいたくないことなのか…?
「ま、まぁ、いいじゃないか、細かいことは……。」
変なところで会話に加わる高木社長。
しかも、口調が微妙に棒読みになっているような……、それに…。
「……社長、目が泳いでいませんか?」
ダイスケの言葉にドキッとする社長。
もしかして………何か知ってる?
「それでしたら、私が代わりに答えてあげてもいいですけど?」
『え?』
意外な人物が名乗りを上げた。
空に並ぶ765プロの敏腕事務員としての顔を持つ律子だ。
「聞きましたよ、社長。美希が961プロに移る原因となった、あなたと美希の大喧嘩の発端……。」
「な、なんのことだね…?」
「とぼけても無駄ですよ?全く呆れましたよ…。」
次の瞬間、極めて予想外の発言を口にした。
「二人の大喧嘩に“美希のおにぎり”が絡んでいたなんて、あたしとしても予想外だったんですからね!」
「…………は??」
…………つながりが見えない。
何がどういう理由でそうなったわけ????
「……………あ!」
全員が首をかしげる中、ここで声を上げたのは、意外にもダイスケ。
しかも、美希のおにぎりが絡んでいたことに関して何か思い出した様子。
「ダイスケ、どうしたの?」
「そう言えば、もう1年位前になるんですけど……。」
1年前―――。
丁度、美希が765プロを飛び出した時期だ。
どうやらそのとき、ダイスケは何かを目撃していたようだ。
「午前のレッスンが終わった後の昼休みのとき、社長、めずらしくおにぎりがたくさん入ってた弁当箱を持ってきていて……、その昼休みのあとに社長が美希と大喧嘩していたところを見たような気が……。」
「それ、ミキのおにぎり弁当。」
『……………………はい!!??』
…………ここまでくれば完全に結びついたぞ。
千早とあずさが結論をまとめる。
「……つまり、美希が961プロに移る直接の原因となった、社長との大喧嘩は……。」
「社長が、美希ちゃんのおにぎりを勝手に全部食べてしまったことで起こった喧嘩だった、と言うことですか〜?」
「そういうこと。そんなくだらない理由であたしたちはとんだ苦労をするとこになったのよ!」
律子がそう言った瞬間……全員凍りついたように沈黙した。
貴音と響に至っても、その事実は初耳で言葉も出ない。
ダイスケと空も、呆れたとしか言いようのない感じになってしまった…
「……まさかアレが原因だったなんて……。」
「…喧嘩の理由が低レベル過ぎますよ、社長。」
「ぐ……そ、それを言わないでくれたまえ…。」
状況的に立場が悪くなっている高木社長、さすがにたじろいでいる様子だ…。
ここで春香が会話に加わった。
「それで、その件に関して、美希ちゃんには謝ったのですか?」
「え?あ、そ、それは……。」
「ううん、まだミキに謝ってないよ。」
またしても美希、あっさり且つバッサリと言ってしまった。
「ねぇねぇ真美、これってすぐにミキミキに謝ったほうがいいよね?」
「そうだよね、亜美!」
小悪魔な双子も、この状況を見て美希の味方に付いた様子。
さらに、伊織、真、やよい、雪歩も……。
「人の大好物を盗み食いするなんて、サイテー!」
「大人気ないですよ、社長。」
「美希ちゃんに同情します〜!」
「高木社長、すぐに謝ってください!」
これ以上大きなトラブルに発展してしまったら、収拾が付けられない。
高木社長はついに白旗を揚げた。
「わ、解った解った…。私も、それについては反省しているところだったのだよ…。」
美希の目の前まで歩み寄り、深々と頭を下げた。
「美希くん、あのときは本当に済まなかった。深く反省している!この通りだ!」
「………。」
数秒ほどの沈黙の後、美希が口を開いた。
「……、もう二度と、ミキのおにぎり、勝手に食べたりしないですか?」
「あぁ、もちろんだとも!」
「……じゃ、許してあげます☆」
美希のその言葉に、全員がホッとした。
これで、この件は貸し借りなしだ。
高木社長にとってはみっともない姿をさらしてしまったが、このくらいならどうってことはなかった。
「でも、美希がこの件で傷ついたのは事実でしょうし、社長には何かペナルティを与えるべきじゃないでしょうかね?」
…………律子、まだ納得がいかない様子だ。
「あ、そうだ。」
『?』
ふと、声を上げたのは響だ。
「実は、自分のペットたち、今まで961プロからエサ代をもらっていたんだけど、今度から765プロのほうでエサ代をもらおうかなって思ってたところなんだ。」
その話を聞き、空と律子がピピーンときた。
「なーるほど☆丁度良かったじゃない☆」
「……と言うわけで、高木社長、響のペットのエサ代の支給、よろしくお願いします☆」
「は!?わ、私がかね!?」
一難去ってまた一難とはよく言ったものだ、と、全員が改めて思った。
「“食べ物の恨みは恐ろしい”と言う言葉を、時折耳にしますが……、まぁ、それに比べれば比較的軽いものかもしれませんね。」
「貴音ちゃん、それって微妙に使い方間違っていない?それに、ちょっと冷めすぎというか……。」
苦笑いを浮かべるダイスケだが、こればかりは仕方がないかもしれない…。
「社長、お言葉ですけど、文句を受けるのはやめてくださいね。自業自得ですから。」
「その通り。あなたもよく言いますよね?“働かざる者、食うべからず”って!」
「そうそう!なんくるないさー!社長もしっかり働けよ!」
「そ、そんな〜…。」
――――ハハハハハハ…!
部屋の一面に響く笑い声。
それは、夜遅くになるまで続いたと言う……。
--END--
☆あとがき
ニコニコ動画やYoutubeで見つけた、アイマスSPのエンディング関連の映像を幾つか見て、突発的に思いついた今回のフリー小説の補完、いかがでしたでしょうか?
それにしても、美希の961プロ移籍の理由があんな単純なことだったとは……、あきれて物が言えませんよね。(苦笑)
さて、このおまけエピソードも、本編同様準フリー小説として配布させていただきます☆
これをお持ち帰り頂く場合は、本編の文章のみをコピペしてお持ち帰りくださるようにお願いします。
また、お持ち帰りいただく際、掲示板もしくはメールにてご一報をお願いします。
後日、そちらのサイトに遊びに行かせて頂きたいと思います☆